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逃げたい……けど、誰も同意してくれそうもないのはなぜだろう
111:召喚獣
しおりを挟むHP、MP、EPの他にSpirit(精神)Pointとかあったら、今頃俺は瀕死だと思う。
隣のテーブルにいたちょっとお年を召した女性が「ほらほら、夫婦で子供の取り合いなんてしないのよ」と、言い合いをしていたレイと咲樹の二人を宥めたからだ。
この場合、夫婦と言われた二人よりも、子供と言われた俺のダメージの方がデカイ。
現実と違い、ジョッキがガラスではないので、何を飲んでいるのか見えなかったのも悪いのだろう。
いや、見えていたら取り上げられて、もっと精神的ダメージを受けたかもしれん。
「プププ……食べますか?」
ココアが新しく届いた玉子焼きを俺の前に置く。
「いらん。そして、笑いたいなら笑え」
それを頼んだのはミロだ。そして、砂糖入りの甘い玉子焼きだと店員が説明していたから、尚更いらん。俺は、チーズとかが入ったしょっぱい玉子焼き派だ。
「もう、機嫌直してよ~ヴィン~」
咲樹が話し掛けてくるが、とりあえず無視だ。コイツ、隣のおばちゃんに「子供が可愛すぎていつも取り合いになっちゃうんです」とか笑顔で言いやがったのだぞ。
場を収める為とはいえ、他になかったのか!?
レイは、こういう時は何を言っても墓穴を掘ると知っているので、ずっと無言だ。
「まぁまぁ、オレの子が戻って来たから、話聞こうじゃ~ん」
ミロの指示で、テーブルの真ん中を空けてコースターを置く。
その上に、小さなネズミ?コウモリ?翼のある小動物が降り立った
「鳥兜、なんかわかった?」
トリカブト?兜を被った鳥か、これ!
『大キイ魔獣、ガルム、違ウ。白イ、街ヨリ川、狼』
「それって、銀狼の事じゃね?」
ミロがレイを親指で指し示す。
『違ウノ。ガルム、同ジ、大キイ』
やばい。鳥兜、可愛い。小鳥のあのピチピチ言う声で、舌っ足らずに報告してる。
「ヴィン、話の内容はちゃんと頭に入ってますか?」
こっそり耳元でレイに注意される。
すまん。あまり入ってきてないな。
「明日は川の方に行ってみる?白い大きな狼が居るかもよん」
鳥兜に甘い玉子焼きをあげた後、ミロが提案してきた。
玉子焼きを食べ終わった鳥兜は、魔法陣に吸い込まれるように消えていった。これが召喚獣と従魔の違いなのだろう。用事が終わると強制的に戻るようだ。
しかし、川の方って軽く言ってるけど、川ってどこかにあったか?あの高台から見ても、川なんてなかったよな。
あ、地図!前にレイが丸付けてた地図があるはずだ。
「レイ、地図は?」
「ありますよ」
インベントリから地図を取り出したレイは、そのままインベントリへと戻した。
何してるのかな?レイさんは。
「とりあえず、テーブルの上を片付けましょうか」
言われて、テーブルへと視線を向ける。テーブルの上は、所狭しと料理が並んでいた。
うん。そうだったな。
俺とココアが盛り上がって、やたらと料理を注文したな、そういえば。
「あ、そのプリンはアタシのですよ」
「そのチーズ揚げ、オレ食べちゃうから取って!」
「はい、ヴィン。あ~ん」
「咲樹、自分で食べろや」
「オムライスいる人、取り分けますよ」
全員が手を上げる。
ため息を吐きつつも、全員に少しずつ取り分けるレイがいた。
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