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強い魔獣がいるみたいなので、探してみようと……周りが盛り上がってます

98:誰に怒れば良いんだ?

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 俺は、普通の野菜を買いに来たはずだ。
 魔物蕃茄トマトは、完熟トマトジュースを作りたいので買うつもりだった。
 だが、カウントダウンする茄子とか、歌う玉葱たまねぎなんかを選んだ記憶はない。二足歩行する人参にんじんとかな!

「欲しい野菜はこれで全部かい?」
 恰幅の良い肝っ玉母さんな女性が聞いてくる。
 ジルドに持たせていたカゴを、会計しようと台に乗せて貰って中身を確認し、覚えのない魔物野菜の多さに固まった俺に、にこやかに対応する店員。
 今更いらないとは言えない。
 普通の野菜も入っているし、毒じゃないからもう良いや。

「あぁ、会計を頼む」
 俺を見て苦笑いを浮かべた店員は、レイへと視線を移す。
「子供には子供らしい喋り方をさせた方が良いんじゃないかい?」
「ぶふっ!」
 間髪入れずに吹き出したのは、咲樹だ。
 ちなみに、今の俺の服装はウサギパーカーだがフードは被っていない。よって、俺にはケモ耳が付いていないんだが?髪色か!?
「親子でも兄弟でもないのですが」
 レイが冷静に返すが、否定するところ間違ってるからな?

「あら、ごめんよ。じゃあこっちのお兄ちゃんかい?」
 おばちゃんの視線がジルドへ向いた。
 いやいやいや。そもそも似てないし、黒髪紅瞳のジルドと俺に血縁は無理がある。あり過ぎる。では違うのか?いや、問題はそこじゃない。
「すまないが、俺は子供じゃない」
 ギルドカードを見せる。そこには『年齢27歳』としっかり記載されている。
 そんなに何度もまばたきしても、見えている情報は変わらないのだが……


「これか!?この服が悪いのか?」
 俺を子供と勘違いした店員は「悪かったね」とロリポップ……棒付き飴をオマケで数個くれた。
 最後まで子供扱いかい!
「ねえ、ヴィン。ちょっと黒狼バージョンに着替えて見せてよ」
 咲樹が言う。何で動物パーカーから動物パーカーに着替えるんだ?

「まあ良いが……ヨミ、ちょっとだけジルドの所へ行ってくれ」
<きゅ!>
 返事をしたヨミは、俺の胸元から出て肩へ行き、ボンっと身軽に飛んでジルドの頭に乗った。肩じゃないのか?どうしてもが良いのか?
 ジルドもヨミも上機嫌だが。

 ウィンドウで黒狼パーカーを選択して着替える。
 戦闘服は、優先登録されている物ならば思考だけで着替えられるが、普段着は選択式だ。
「着たぞ」
 黒狼パーカーに着替えた俺に無言で近付いた咲樹は、ジルドの頭からヨミを取り俺に持たせ、耳付きフードを被せた。
 俺の両脇に双子を立たせ、パシャリと撮影。
 思わず茫然と従ってた!

 我に返ったヨミが俺の胸元にイソイソと入る。
「ジルド!レイ!買った荷物を手に持ってヴィンと手を繋いで!」
 わざわざインベントリから荷物を出させて、何をしてるんだ?咲樹。
 素直に従う双子もアレだが。
 またパシャリと音がする。
「何がしたいんだ?咲樹」
 繋がれていた手を離し、咲樹へと駆け寄る。

「休日のお…兄弟」
 今撮影した画像を見せられた。
 買い物袋を持った魔族銀狼と魔族吸血鬼に手を繋がれている、黒狼パーカーを着たハーフリング。胸元には可愛い角兎。
「今、親子って言おうとしただろ」
 とりあえず咲樹の膝裏に蹴りを入れ、膝カックン状態にしておいた。


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