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クランハウスに部屋を貰ったから、快適空間にしたいと思う
54:調味料屋と玉蜀黍
しおりを挟む調味料屋の池田堂を目指して歩く。
ちょっとした悪戯心でうるさい魔物玉蜀黍を胸元のヨミに近付けた。
『おう、アルミラージの変異種か』『レベル高いな』『俺を食うかい?』『アルミラージなら肉と一緒に焼いたのが好みかい?』『キラーバニーは肉食だがアルミラージなら雑食だな』『食うかい?』『食いたいかい?』『生だから甘みは足りねえかもな』
<ぎゅうぅ>
ヨミが凄い眉間に皺を寄せる。ウルセェって意思表示と見た。
ん?ちょっと待て。今とんでもない爆弾を落とさなかったか?
「アルミラージの変異種?」
<きゅ?>
可愛く見上げられても困る。
「そうですね。普通のアルミラージはサイズ変わりませんからね」
サラリとレイが肯定してくる。
<ここまで見事な黄金の毛をしているアルミラージは、確かに珍しい>
ガルムまで肯定しましたよ。
そういえば、いつの間にか薄い黄色から金色に色が変わってたな。
うちの子が1番。もう、それで良いと思います。深く考えない事にした。
【調味料屋 池田堂】到着。デカッ。
<儂は此処で待っていよう>
ガルムは、店の脇の邪魔にならない所へ自分から移動した。
「ありがとうな、ガルム。なるべく急ぐな!」
急ぐつもりはあるんだけど、スーパーとかデパ地下とかって、ついつい色々見ちゃうよな。
「あ!味塩胡椒!」
俺作チーズおにぎりには欠かせない調味料。
「レイ、あれ取って!シークワーサー胡椒!」
柚子胡椒のシークワーサー版。
俺の手ではギリギリ届かない位置に置いてある。
「コーレグースーだ!ここは沖縄!?」
島唐辛子の泡盛漬け。塩ラーメンに入れるのが好きだ。そして、やはり届かない位置。
クソぅ、何で俺はハーフリングなんだ。
背伸びしても棚の上の方のラベルがよく見えん。
「うはははは。諦めろ、ヴィン」
ユズコに抱き抱えられた。
子供が悪戯できないようになのか、棚の位置が少し高い。しかも俺好みの辛い系は、この中でも更に高い位置に置いてあった。
『高い位置に届かないのか』『子供は大変だな』『子供じゃなくハーフリングだな』『ハーフリングの子供か』『27歳は子供か?』『もう子供で良いんじゃないか?』『今日誕生日だしな』
個人情報!!もう捨てるか、クソ玉蜀黍。
『追いがつおツユがあるぞ』『醤油もあるな』『薄口のが塩分高いぞ』『酢もあるぞ』『味醂も買うといいぞ』『味醂入れると煮物に照りが出るからな』『砂糖も買わないとな』『塩は岩塩と海塩があるぞ』『ローズソルトも捨てがたい』『赤塩は鉄分多いからな』
主婦の知恵かよ。
ねぇ、マジでどこに需要があるの?この魔物玉蜀黍。
まさか焼いてる間もこのうるささ?
微妙に役立つ情報が混じってるのがムカつく。
今、魔物玉蜀黍は、レイの持っている買い物カゴの中だ。
小声だけど、さすがに鬱陶しい。
ユズコが俺を抱っこして、レイがカゴを持って一緒に買い物。傍から見たら休日のスーパーにいる家族状態だな。
そんな俺の胸元で、ヨミは自分の耳を両手で押さえて塞いでる。可愛いなぁ。
『胡椒だ』『ブラックペッパーか』『レインボーペッパーは香りが良い』『七味唐辛子も買わんと』『柚子多めが好きだ』『山椒多くしよう』『一味でガツンと』
「黙れ」
レイがポツリと呟く。
あれだけうるさかった玉蜀黍達がピタリと黙ったよ。
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