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16:堕ちた者(アンソニー視点)※胸糞注意と言うか、気持ち悪いですコイツ
しおりを挟むあれだけ美しいと思っていたリリーは、フェデリーコにも媚を売る、単なる娼婦だった。
しかも衆人環視の中で肌を晒して、貴族令嬢としての価値も、地に堕ちたな。
この女なら、まだあの地味で醜女な姉の方がマシだ。
婚約は破棄になったが、俺は伯爵家に養子に入ってるからな。
リリーも俺が継ぐと言っていたし、間違い無い。
伯爵家は俺のものだ。
そうだ、良い事を思いついた。
しょうがないからローズと結婚してやって、仕事をやらせよう。
リリーを愛人にして、あの豊満な体だけは愛してやろう。
リリーはフェデリーコと結婚すれば良い。
あんな恥晒しを妻にしたら、笑い者になるだけだからな。
それにどうせ奴とは愛の無い結婚になるのだから、俺が愛してやればフェデリーコの稼いだ金を貢いでくるかもな。
そして俺は、結婚後に本当に愛する人を探して、第二夫人にするか。
美人で清楚で、俺に従順な女が良いな。
そう思っていたのに!
生意気にもローズが断ってきやがった。
しかも俺は伯爵になれないなんて、嘘まで吐いて!
更に俺を好きじゃないだと!?
10年以上婚約者だったのにか!!
こんな女、力でいう事をきかせてやる。
一発殴れば大人しくなるだろうから、そうしたらその辺の部屋に連れ込んで、既成事実を作ってしまえば良い!
そうしたら、この生意気なクソ女は、フェデリーコと結婚出来なくなるな。
そう思っていたのに。
何でこんなに警備兵が早く来るんだ!
婚約者同士の痴話喧嘩だと言ってるのに、フェデリーコまで呼ばれ、俺は別れた婚約者に暴行しようとした犯罪者として拘束された。
現行犯なので、罪が重くなる事はあっても、軽くなることは無いだと!?
ふざけるな!
俺は、次期伯爵家当主だ!
王宮の地下牢に、父と兄が面会に来た。
やっと来たのかよ。
一晩牢屋で過ごしたなんて不名誉だが、まぁ良い。
早く出してくれ。
「何で伯爵家を継ぐなんて勘違いをしたんだ」
力無く言った父は、俺の前に1枚の紙を置いた。
今更なんだ。
これは学園入学の前日に見せられた、養子縁組の書類だろ。
「アンソニー、よく内容を見ろ」
兄に言われて、書面に目を通す。
『 誓約書
ローズとの婚姻がなされた際には
アンソニーをアムネシア伯爵家へ
婿養子として迎え入れる事を誓う
アムネシア伯爵家当主 イムハイド』
やはり俺を養子にするという内容で……誓約書?
ローズとの婚姻?
「内容を書き換えたのか!なんて卑怯な手を使うんだ、あの女は!!」
俺が机を叩いて立ち上がると、壁際にいた看守が飛んで来た。
それを父が大丈夫だと制すが、そんな事をしてる暇があったら説明しろよ!
「これはうちの金庫にずっと置いてあったんだよ。あの女がローズ嬢を指しているなら、絶対に無理だからね」
「大体婿養子と書いてあるのに、なぜ自分が伯爵家を継ぐと誤解出来るんだ」
父の後に俺を責める事を言ってきた兄。
侯爵家を継ぐ事が決まっているからと、常に俺を見下しているこの男が俺は嫌いだ。
「男を養子にするんだから、当主として迎える事なのは常識だろうが」
悔しいのかローズはしきりに「婿入り」だと言ってたがな。
可哀想だから、俺も合わせて「婿入り」だと言ってやってたがな!
「婿養子は、継承権の有る女性が居てこそ成り立つんだよ?君一人で、何で伯爵家を継げると思ったの?しかもリリー嬢との婚姻じゃ婿養子にはして貰えないのに」
え?男を養子にするのを婿養子と言うんだろ?
俺は希望通り、その日のうちに牢から出された。
ただし、侯爵家には帰されず、平民が暮らす町の、更に外れにある小さな家に、夕食を食べる事も出来ない僅かな金と共に置いて行かれた。
「奥さんが早く来ると良いな」
送って来た警備兵がそんな事を言って去って行った。
何だ。何のかんの言って、やっぱりローズは俺を選んだんじゃないか。
平民街で反省しろって事か。
しょうがないから許してやろう。
早く迎えに来い、ローズ。
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