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37:見舞いへ
しおりを挟む「大丈夫ですか?」
マルツィオの病室に、良い匂いのするバスケットを持ったジュリアが居た。
良い匂いとは、花とかの匂いでは無く、食べ物の方である。
「あの、食べ物の制限は無いとお聞きしまして。病院のお食事は美味しくないのでしょう?」
ジュリアはバスケットを、ベッド脇の小さなチェストへと置いた。
勿論、きちんと許可を取ってからである。
「病室でも簡単に食べられるように、サンドウィッチにしてみましたの。うちの料理人が作った物なので、美味しく無いという事は無いと思うのですが」
ジュリアはバスケットの蓋を開け、中を見せてからまた閉じた。
マルツィオが特定の店のサンドウィッチをよく買っているとの情報を聞き、屋敷の料理人にサンドウィッチをお願いした。
さすがにその店のサンドウィッチを持参したら「なぜ?」となるであろう。
その辺の常識をジュリアは持ち合わせていた。
「わざわざすみません。アンドレオッティ子爵令嬢のせいでは無いのに」
ベッドの上で体を起こして座っているマルツィオは、見るからに痛々しい姿だった。
頬には大きな湿布が貼られ、左腕は固定されている。
見えないが、肋骨にもヒビが入っているので、固定バンドで締められている。
マルツィオはベッドに座っているが、体の後ろには大きなクッションが幾つも置かれており、自力で座位を保つ事が難しいのが証明されていた。
そして頻りに「このような姿ですみません」とジュリアに謝る。
あの日、リディオは意識を消失したマルツィオを蹴り続けた。
防御体勢を取れなかったので、これほどの大怪我になってしまったのだろう。
マルツィオの人となりに触れ、誠実な態度に好感を持ったジュリアは、見舞いを早々に切り上げた。
怪我人のマルツィオを気遣ったのもあるが、もう一つ理由があった。
「今回の件は、アンドレオッティ子爵家が完璧に支援致しますので、サンテデスキ伯爵令息を完膚無きまでに叩き潰しましょうね」
とても爽やかな、見様に依っては美しい笑顔でジュリアが宣言した。
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