上 下
35 / 49

34:零落 sideリディオ

しおりを挟む
 


 昼食を誰かに奢って貰うのは、俺の矜持が許さなかった。
 水を飲み、空腹を誤魔化す。
 たかが学園の食堂の昼食代をケチるほど、あの女の言う通り、うちは貧乏に成り下がったのか?

 人目を避けてベンチで時間を潰していたら、目の前にサンドウィッチが差し出された。
 俺を慕う令嬢か?と思って振り返ったら、かつて同室だったマルツィオがサンドウィッチを持って立っていた。
 舌打ちをして、顔を前に戻す。

「何だ。玉子サンドは嫌いだった?」
 そういう問題じゃ無いんだよ。
ほどこしは受けない」
 俺がそう言うと、マルツィオは馬鹿な事を言う。
「前にクラスの女子からクッキー貰ってなかった?」
 お前の施しと、令嬢の好意からの贈り物を一緒にするな。
「あれは差し入れだ」
 そう言うと、やっとマルツィオは黙った。

 その後、何かブツブツ言ってたけど、俺には関係無いと聞き流した。

「それじゃ、僕は向こうで食べるから」
 マルツィオは、サンドウィッチを持って去って行ってしまった。

 はあぁ?!ここは、もう少し押すところだろ?
 何のために声を掛けて来たんだよ。
「何だよ。もう1回勧められたら受け取ったのによ」
 文句を言ったが、マルツィオが戻って来るわけでもない。

 グウゥ~と腹が鳴った。
 これ、授業中になったら恥ずかしいヤツじゃん。
 俺は慌ててマルツィオを追った。
 他人から見えない所でなら、パンを受け取っても良いと思い直したからだ。


 マルツィオは、四阿あずまやのテーブルに一人で居た。
 待ち合わせの振りして行って、パンを貰って食べれば周りにはバレないな!
 そう思って一歩踏み出した瞬間、マルツィオは誰かに声を掛けた。

 そして席に座った三人の女のうちの一人は……だった。
 俺の婚約者だった、あのだ。

 マルツィオは、あの女が大財閥の娘なのを知っていたのに、態と俺に教えなかったんだ!
 最初からあの女を狙っていたんだな!!
 だから部屋も出て行ったのか!
 俺は、マルツィオにおとしいれられたんだ!

 ちくしょう。
 絶対に許さないぞ、マルツィオ。


しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

完結 白皙の神聖巫女は私でしたので、さようなら。今更婚約したいとか知りません。

音爽(ネソウ)
恋愛
もっとも色白で魔力あるものが神聖の巫女であると言われている国があった。 アデリナはそんな理由から巫女候補に祀り上げらて王太子の婚約者として選ばれた。だが、より色白で魔力が高いと噂の女性が現れたことで「彼女こそが巫女に違いない」と王子は婚約をした。ところが神聖巫女を選ぶ儀式祈祷がされた時、白色に光輝いたのはアデリナであった……

今世は好きにできるんだ

朝山みどり
恋愛
誇り高く慈悲深い、公爵令嬢ルイーズ。だが気が付くと粗末な寝台に横たわっているのに気がついた。 鉄の意志で声を押さえ、状況・・・・状況・・・・確か藤棚の下でお茶会・・・・ポットが割れて・・・侍女がその欠片で・・・思わず切られた首を押さえたが・・・・首にさわった手ががさがさ!!!? やがて自分が伯爵家の先妻の娘だと理解した。後妻と義姉にいびられている、いくじなしで魔力なしの役立たずだと・・・・ なるほど・・・今回は遠慮なく敵をいびっていいんですわ。ましてこの境遇やりたい放題って事!! ルイーズは微笑んだ。

いつまでも甘くないから

朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。 結婚を前提として紹介であることは明白だった。 しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。 この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。 目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・・

精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果

あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」 ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。 婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。 当然ながら、アリスはそれを拒否。 他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。 『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。 その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。 彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。 『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。 「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」 濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。 ······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。 復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。 ※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください) ※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。 ※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。 ※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

(完結)あなたが婚約破棄とおっしゃったのですよ? 

青空一夏
恋愛
スワンはチャーリー王子殿下の婚約者。 チャーリー王子殿下は冴えない容姿の伯爵令嬢にすぎないスワンをぞんざいに扱い、ついには婚約破棄を言い渡す。 しかし、チャーリー王子殿下は知らなかった。それは…… これは、身の程知らずな王子がギャフンと言わされる物語です。コメディー調になる予定で す。過度な残酷描写はしません(多分(•́ε•̀;ก)💦) それぞれの登場人物視点から話が展開していく方式です。 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定ご都合主義。タグ途中で変更追加の可能性あり。

さようなら婚約者。お幸せに

四季
恋愛
絶世の美女とも言われるエリアナ・フェン・クロロヴィレには、ラスクという婚約者がいるのだが……。 ※2021.2.9 執筆

処理中です...