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34:零落 sideリディオ
しおりを挟む昼食を誰かに奢って貰うのは、俺の矜持が許さなかった。
水を飲み、空腹を誤魔化す。
たかが学園の食堂の昼食代をケチるほど、あの女の言う通り、うちは貧乏に成り下がったのか?
人目を避けてベンチで時間を潰していたら、目の前にサンドウィッチが差し出された。
俺を慕う令嬢か?と思って振り返ったら、かつて同室だったマルツィオがサンドウィッチを持って立っていた。
舌打ちをして、顔を前に戻す。
「何だ。玉子サンドは嫌いだった?」
そういう問題じゃ無いんだよ。
「施しは受けない」
俺がそう言うと、マルツィオは馬鹿な事を言う。
「前にクラスの女子からクッキー貰ってなかった?」
お前の施しと、令嬢の好意からの贈り物を一緒にするな。
「あれは差し入れだ」
そう言うと、やっとマルツィオは黙った。
その後、何かブツブツ言ってたけど、俺には関係無いと聞き流した。
「それじゃ、僕は向こうで食べるから」
マルツィオは、サンドウィッチを持って去って行ってしまった。
はあぁ?!ここは、もう少し押すところだろ?
何のために声を掛けて来たんだよ。
「何だよ。もう1回勧められたら受け取ったのによ」
文句を言ったが、マルツィオが戻って来るわけでもない。
グウゥ~と腹が鳴った。
これ、授業中になったら恥ずかしいヤツじゃん。
俺は慌ててマルツィオを追った。
他人から見えない所でなら、パンを受け取っても良いと思い直したからだ。
マルツィオは、四阿のテーブルに一人で居た。
待ち合わせの振りして行って、パンを貰って食べれば周りにはバレないな!
そう思って一歩踏み出した瞬間、マルツィオは誰かに声を掛けた。
そして席に座った三人の女のうちの一人は……ジュリーだった。
俺の婚約者だった、あのジュリーだ。
マルツィオは、あの女が大財閥の娘なのを知っていたのに、態と俺に教えなかったんだ!
最初からあの女を狙っていたんだな!!
だから部屋も出て行ったのか!
俺は、マルツィオに陥れられたんだ!
ちくしょう。
絶対に許さないぞ、マルツィオ。
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