上 下
20 / 49

19:おかしいのは……

しおりを挟む
 


 ジュリアは、リディオを見てから、戸惑った表情でミケーレと生徒会長……侯爵家嫡男のノルベルトの顔を見る。
「私の認識がおかしいのでしょうか?誕生日の贈り物って、一方的に女性が贈るのが常識なのですか?」
 心底困惑しているジュリアの声に、ミケーレとノルベルトは大袈裟に驚いて見せる。

「いやいや。僕は魅力的な女性にあげたいとは思うけど、一方的に貰う事は無いねえ」
 ノルベルトは肩をすくめて、舞台俳優のように宣言する。

「私も婚約者のサーラとは贈り合うけど、一方的に貰う事は無いな。妖精姫に一方的に贈りたいとは思うけどね」
 ミケーレも殊更大きな声で、周りへ聞こえるように話す。

「私も貰ったらお返ししたいとは思いますけど、ちょっと量が多過ぎて全てには難しいのですわ。でも、お礼状は全て自分で書きましたのよ」
 ジュリアが申し訳無さそうに言うと、横の二人は「しょうがないよ」「当たり前だ」と擁護する。


 完全に置いてきぼりで蚊帳の外のリディオは、拳を握り、顔を真っ赤にして震えていた。
 馬鹿にされたのだと気付いたのだろう。

 そんなリディオを見て、ミケーレとノルベルトは鼻で笑う。
 そして、周りが一歩下がるほど、スッと表情を消して、冷たい視線でリディオを睨んだ。
「しかも何だっけ?うちの姫に向かって、貧乏とか言っていたか?」
「娼婦になる練習とか、侮辱もしていたな」
 一段下がった声音に、リディオの肩が揺れた。



「貧乏は君だろう?サンテデスキ伯爵令息」
 ノルベルトの言葉に、リディオは「え?」と驚きの表情をする。

「うちの商会に営業に来ていたよ。父の同窓生ってだけで、何も繋がりが無いのにねえ」
 呆れたように言われて、リディオは何か言い返そうと息を吸った。
 しかし、反論する前に、今度はミケーレが口を開く。

「うちにも来ていたね。叔父の伯爵家にも、男爵家にも来たらしい。私の婚約者の家には、母親同士が友人だからと借金の申込みまでしてきた恥知らずは、サンテデスキ伯爵家だったよね?」
 ミケーレの視線が更に冷たくなる。

「娼婦なのは、バーバラ男爵令嬢だろう?バーバラ伯爵夫人になりすましていたらしいじゃないか」
 ミケーレはリディオを追い詰める手を緩めなかった。


しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

今世は好きにできるんだ

朝山みどり
恋愛
誇り高く慈悲深い、公爵令嬢ルイーズ。だが気が付くと粗末な寝台に横たわっているのに気がついた。 鉄の意志で声を押さえ、状況・・・・状況・・・・確か藤棚の下でお茶会・・・・ポットが割れて・・・侍女がその欠片で・・・思わず切られた首を押さえたが・・・・首にさわった手ががさがさ!!!? やがて自分が伯爵家の先妻の娘だと理解した。後妻と義姉にいびられている、いくじなしで魔力なしの役立たずだと・・・・ なるほど・・・今回は遠慮なく敵をいびっていいんですわ。ましてこの境遇やりたい放題って事!! ルイーズは微笑んだ。

いつまでも甘くないから

朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。 結婚を前提として紹介であることは明白だった。 しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。 この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。 目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・・

完結 白皙の神聖巫女は私でしたので、さようなら。今更婚約したいとか知りません。

音爽(ネソウ)
恋愛
もっとも色白で魔力あるものが神聖の巫女であると言われている国があった。 アデリナはそんな理由から巫女候補に祀り上げらて王太子の婚約者として選ばれた。だが、より色白で魔力が高いと噂の女性が現れたことで「彼女こそが巫女に違いない」と王子は婚約をした。ところが神聖巫女を選ぶ儀式祈祷がされた時、白色に光輝いたのはアデリナであった……

精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果

あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」 ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。 婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。 当然ながら、アリスはそれを拒否。 他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。 『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。 その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。 彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。 『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。 「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」 濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。 ······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。 復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。 ※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください) ※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。 ※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。 ※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)

王妃はわたくしですよ

朝山みどり
恋愛
王太子のやらかしで、正妃を人質に出すことになった。正妃に選ばれたジュディは、迎えの馬車に乗って王城に行き、書類にサインした。それが結婚。 隣国からの迎えの馬車に乗って隣国に向かった。迎えに来た宰相は、ジュディに言った。 「王妃殿下、力をつけて仕返ししたらどうですか?我が帝国は寛大ですから機会をたくさんあげますよ」 『わたしを退屈から救ってくれ!楽しませてくれ』宰相の思惑通りに、ジュディは力をつけて行った。

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

さようなら婚約者。お幸せに

四季
恋愛
絶世の美女とも言われるエリアナ・フェン・クロロヴィレには、ラスクという婚約者がいるのだが……。 ※2021.2.9 執筆

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

処理中です...