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18:勘違いからの
しおりを挟む翌日、リディオはジュリアを待っていた。
いつもは時間ギリギリに教室に駆け込むのに、朝早くから門の所でやって来る馬車を睨むように見ている。
「何あれ」
「気持ち悪い」
「あの人、例のサンテデスキ伯爵令息じゃない?」
横を通る生徒達は、リディオを見て眉を顰めた。
そうこうしているうちに、アンドレオッティ子爵家の馬車が到着する。
決して華美では無いが、今現在有る技術の粋を集めた馬車は、他の馬車よりも音を立てずに走り、静かに停まった。
扉が開き、ジュリアの姿が見えた。
リディオはジュリアに向かって駆け出す。
「おい!貧乏人!何でお前は!?」
いつものように罵倒しようとして、リディオは驚きに口を閉じた。
扉から出て来たジュリアに、生徒会長である侯爵令息が手を差し出したからだ。
その横には、公爵家の令息まで居る。
「誰だ、お前は」
公爵令息から威圧と共に発せられた言葉に、リディオは固まる。
生徒会長の手を借りて、馬車の階段を降りるジュリアは、リディオの方を見ようともしない。
その態度がリディオの怒りに再び火を点け、恐怖心を上回らせた。
「俺は!その女の婚約者だ!」
リディオが叫ぶと、やっとジュリアの視線がリディオへと向いた。
「本当なのかい?妖精姫」
公爵令息がジュリアに問い掛ける。
「もう、ミケーレお兄様ってば。その呼び方は恥ずかしいからやめてって言ってるのに」
すぐにジュリアの視線がリディオから外れる。
少し頬を染めながら拗ねて見せるジュリアは、とても可愛らしく見えた。
ジュリアの態度を見て、目の前の男は婚約者では無いと公爵令息……ミケーレは判断した。
そもそも本当に婚約者が居たのならば、2ヶ月前のジュリアの誕生日パーティーで発表されない訳が無いからだ。
それに、入学式にはミケーレがエスコートをしていた。
婚約者なら、入学式にエスコートするのは常識だと、そうミケーレは判断した。
その常識が無いからリディオが婚約破棄されただけなのだが、勿論ミケーレは知らない。
「おい!お前!本当にいい加減にしろよ!?婚約者の誕生日に贈り物をしてこないだけでなく、他の男とベタベタして!貧乏だから、娼婦になる練習でもしてるのか?」
リディオは、自分を無視したジュリアを罵倒した。
破滅への始まりである。
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