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22:愚者の愚行

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「身代わりのお飾りのくせに、いい気になってんじゃないわよ!」
 カーラが叫ぶと同時に、イレーニアが登校して来た。
「フェデリーカ、おはよう」
 カーラの存在を無視して、イレーニアはフェデリーカへ朝の挨拶をする。

 イレーニアと一緒に来たジェネジオが、カーラの前へと進み出た。
「その言葉、そっくりそのままお返しするよ」
 自然とフェデリーカを庇う形になる。

「君の行動は目に余ると、父が学園に言ってくれたんだけど、どうなるか楽しみだね」
 ジェネジオが言うが、カーラは鼻で笑う。
「だから何?私には侯爵家が付いてるのよ。子爵家だからって馬鹿にしないで」
 皆の目が点になった。
 カーラの中では、侯爵家は無敵のようである。


「まさか、この年で貴族の階級も知らないのか?」
「カルカテルラ子爵令嬢の中では、ベッラノーヴァ侯爵家が王族並に偉いらしい」
「ベッラノーヴァ侯爵家って、最近あれでしょ?借金までし始めたって……」
「まぁあの嫡男を見ていれば、どんな家か予想出来るよな」

 皆でカーラの言葉に反応して、それぞれが好き勝手に話し始めた。
 カーラ本人の事であったり、スティーグのベッラノーヴァ侯爵家の事だったりと、話題は事欠かない。
 さすがのカーラも、皆が誰の味方か気が付いた。


 侮辱された事に顔を真っ赤に染めているカーラをチラリと見て、ジェネジオが真面目な顔になる。
「何かされたら困るから、決して一人になってはいけないよ」
 フェデリーカの手を取り、真剣に注意する。

「食堂へは、私かオズヴァルドが来るまで行かない方が良い」
 ジェネジオがイレーニアへ顔を向ける。
「レーニも、解ったね?」
 反論を許さない口調でジェネジオが言うのに、フェデリーカもイレーニアも頷いた。



 昼休み。ジェネジオに言われた通り、フェデリーカ達は教室で男性陣を待っていた。
「お待たせ。オズヴァルドに途中で会ったから、席取りをお願いしたよ」
 教室に迎えに来たジェネジオは、大人しく待っていた三人に笑顔を向ける。
「さぁ、行こうか」
 食堂へ向かって歩き出した。

 チッ。
 途中で舌打ちが聞こえ思わず顔を向けると、空き教室の扉の陰からこちらを睨んでいるスティーグと目が合った。
「はぁ!?」
 フェデリーカが急に低い声を出したので、何事かと他の三人も視線を向ける。
「!アイツ……!!」
 ジェネジオが気付いた事に気が付くと、スティーグは慌てて逃げて行った。


「はぁ!?」
 食堂でフェデリーカ達四人と合流したオズヴァルドは、フェデリーカと同じように低い声を出した。
 顔は似ていないのに、やはり兄妹なのだと妙に皆を納得させた。

「おそらくだが、婚約を戻そうとしているのだと思う」
 食事が終わり、一息ついたところでジェネジオが先程のスティーグの行動を予測する。
「そうよね。このままではベッラノーヴァ侯爵家は没落の一途を辿るもの」
 イレーニアもジェネジオに同意する。

 フェデリーカとオズヴァルドは顔を見合わせる。
 ロザリアはそのような様子の四人を見て、首を傾げていた。


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