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サースティールート
夏休み、そして未来への一歩の日
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ぱちりと目を覚ますと、心の中は満たされたような不思議な気持ちでいっぱいだった。
(なんだか良い夢を見ていたような気がするけれど……)
心がキュンキュンするようなときめきでいっぱいになっていたような気さえするのだけど、一体自分はどんな夢を見ていたんだろうか。思い出せない。
(それにしてもここはどこだっけ?)
と、隣に感じるぬくもりに視線を移すと、ぎょっとする。
生きる宝石、世界一の美貌、美しさを具現化したような麗人が、私のすぐ真横でお眠りになっていらっしゃる……!
そうだここは王宮の客間。私はサースの隣に添い寝してしまっていたのだ。
寝起きに見つめるにはあまりに眩しすぎるお姿に、頭がクラクラとする。
(ああ、でもサースの寝顔を見つめられる機会は貴重なんだよね……)
そう思ったら、つい目をギンギンと見開いて、心に焼き付けるように見つめ直してしまう。
陶器のような白い肌、通った鼻筋、長いまつ毛、全てが彼を輝かせるために存在しているようだった。
(カッコイイ……)
ほうっとため息を吐きながら、いつまでも永遠に眺めていられるだろう自分を感じていた。
(でもサースは、外見が美しいだけじゃないんだよね)
その内面が……誰より聡明で、そして、温かくて優しくて、とても綺麗なんだ。
一緒に過ごした毎日で、私はどんな一日でも新しく知って行く彼に恋をしていた。
知らなかった彼を知っていく。
二人で新しい感情を芽生えさせていく。
昨日と同じ一日は一度だってなくて。
私はきっと、今日も明日も、まだ知らない彼に恋をし直して行くんだ。
(呆れられないといいな……)
だって私の想いは、きっと、とっても重い。
そう思いながらも、愛に飢えている彼ならば、もしかしたら喜んでくれるのかもしれないと……。
長く一緒に過ごして、彼のことを少しずつ知っていった今の私は、なんとなくそんな風にも感じている。
(分からないことや、不安なことは……聞けばいいんだ)
心からの誠意を込めた声を、彼は決して邪険にはしないのだから。
分かり合いたいと思いながら繋ぎ続けた手は、今も離されているわけじゃない。
「大好き……」
もう聞かれても大丈夫な私の独り言。
猫のぬいぐるみなんかじゃなくて、本当は起きているサースにだって伝えられる。
(そうは言っても恥ずかしいから……本当に本人に伝えられかと言われるとそうでもないかな……)
ピクリとも動かない彼の寝顔を見つめながら、一人顔を赤くする。
(…………うん)
やっぱり、この美しいお顔は、絵に残しておこう!
昨晩こっそりスケッチブックと鉛筆を持って来ていた。
しばらく願いを増やしてる余裕がなくてあまり描けてなかったのだけれど。
そもそも最初の願いは、まだ見た事のない彼を見たいってものだったんだ。あわよくばそんな彼の姿を描きたいと思う下心……じゃない、乙女心を込めた……。
机の上に置かれた画材を手に取ると、ベッドの上に体育座りをした。
そうして、サラサラと音を立てて鉛筆を動かし、美しい彼の寝姿を紙に写し取っていく。
(い、色気がすごい……)
起きているときの眉間の皺が無くなると、こうも天使のようなお顔になるのかと最初は不思議に思ったけれど、よく見るとうっすらと寝汗をかいているし、シャツがはだけて首筋も胸元もチラチラ見えているし、もうそこの匂いが嗅ぎたくて仕方がなくて自分を抑えるのが大変で……ああ、なんでもないです、ごめんなさい!自重します!
(集中、集中……)
またとないこのチャンス、しっかり絵に残しておきましょう。
それから、どれくらいの時間が過ぎたのか、私は何枚も何枚もスケッチを続けていた。
「……砂里?」
気だるげな声に顔を上げると、薄く目を開けたサースが私を見つめていた。
隠し撮り……もとい、寝ているサースを勝手に絵に描いていた姿を見られて、私は動揺した。
よく考えたら、寝てる姿を勝手に描かれたら嫌なはずだ。
「ごめんなさい……思わず本能が手を動かしてしまってました……勝手に描かれたら嫌だよね」
「……絵を描いていたのか?」
サースは一度何か考えるように頭に手を当ててから、ゆっくりと半身を起こして、私の手元のスケッチブックを覗き込んだ。
「……子供のような寝顔だな」
そっかな……大人の色気漂っていたよ。
サースはそう言うと至近距離で私をじっと見つめた。
な、なんですか?
「砂里が喜んでくれるなら、俺の絵くらい、いくらでも描いて構わない」
「……本当?」
「ああ」
漆黒の瞳が優し気に細められて私を見つめている。
「砂里、子供の俺に会ったことはあるか?」
「え?」
子供のサース?
なんだろう、今一瞬胸がキュンっとしたのだけど。
「どうやったら会えるの?」
子供のサースなんて、間違いなく、世界で一番可愛いじゃないですか!
「……分からないならいい。だが……」
そう言うと、彼の腕が私を抱きしめた。
必然的に私の顔は彼の首筋から胸元辺りに埋められてしまう。
ああ、さっきからずっと嗅ぎたかった最高の匂いが今ここに……!?
「小さな俺も、孤独なまま終わった俺も、君に会いたいと願っていたよ……」
え?
いつもより濃厚な匂いに頭がいっぱいになっていて、サースの台詞が聞こえてなかった。
私はぎくしゃくとしながら顔を上げた。
サースが少し驚いたような表情をしたのは、きっと私の顔が赤いからだろう。
「……なんて言ったの?」
「砂里……顔がすごく赤いが大丈夫なのか?」
サースを動揺させるほど赤面しているのかと、余計恥ずかしくなる。
「は、恥ずかしいだけで……」
何がどう恥ずかしいのかは、恥ずかしすぎてとても言えません!
「……何が恥ずかしいんだ?」
え、突っ込まれた!?
「な……」
いつもと少し違う、余裕を感じるサースの笑みに私は動揺する。
そして彼の瞳に見据えられると、いつだって逃げ場などなくなる。
「すごく……近くにサースを感じ過ぎて、ドキドキしすぎちゃったの……」
「だが俺は、お前の一番近くに居る権利を他の者に譲る気はないんだ」
え?
突然のサースの言葉に、意味を理解しようと彼の瞳を覗き込む。
「言っていただろう。俺の一番近くに寄り添いたいと」
それは眠る前に私が言っていた台詞。
「俺も同じことを思っている。誰にもこの場所を謙るつもりはない。生涯、君に寄り添い、一番近くには俺が居たいと願っている」
彼は眠る前に愛の言葉を私にくれたのに、あんな会話の返事を、今またくれようとしているんだって気が付く。
「この気持ちが君と同じものならば……」
そう言って彼は片手で私の頬を軽く撫でる。
「全てが終わって、君の世界での問題もクリアにしてから……結婚しよう、砂里」
頭が真っ白になった。
「万能魔法は……きっとうまく発動するだろう。君の世界の身分は……この先のリスクを考えて神の力を借りることにした。問題は俺が何も出来ない学生だと言うことだ。年齢の問題が無くなっても、生きていく術を確立するまで、待たせることになるかもしれないが」
「……はい?」
次から次へと話が進んで、もはや異次元の事柄のようにピンと来なかった。
「俺と君の結婚生活の話だ」
「けっこんせいかつ」
けっこんってなんだっけ……。
血痕、毛根、潔魂……当て字にすることすら苦しい漢字しか思い浮かばない……。
もはやまさかの、もしかしての、結婚だとして。
その結婚は、私の知ってる結婚の概念とは違うものなのかも知れない……。
「夫婦になることだ」
「ふ……」
ふうふ!ああ、もう夫婦しかないじゃない。
「結婚するの……?」
「ああ、嫌か砂里……?」
「い、嫌じゃないよ……」
だけど、ずっと、未来に怯えていた。
恋人にすらなれないんじゃないかと思っていたのに、いきなりそんな話になっても頭が付いて行かない。
「大丈夫だ。一つずつ越えて行く。君と共に未来を紡ぐ。今も未来も君と共に在りたいと願う、俺の気持ちを伝えただけだ」
サースは私の瞳を真っ直ぐに見つめながら言う。
「いつか全てをクリアにしたら……俺と結婚してほしい」
「……はい」
思わずしてしまった私の返事に、彼がはにかむように笑った。
そうしてゆっくりと美しい顔が近づいて来たから、私は驚くほど自然に……瞼を閉じた。
ずっとためらっていたのに、不思議なくらい今は彼を感じたいと思う。
そうして、唇に、初めて彼を受け入れた。
柔らかい感触に、全身が幸福で震える。
初めてのキスは、味覚がどうとか、そんなことが分かる余裕なんてちっとも持てなかったけれど。
さて。
朝になってから、私は一度自分の部屋に戻って、着替えてまたサースの元に飛んで来た。
今日は夏休み初日。これから一か月以上の、長い休みがやって来る。
本当はこの夏休みの間サースの手伝いをしようと思っていたのだけど、サース曰く、もう必要なくなるかもしれない、とのこと。
サースの胸に飛び込むようにして飛んでくると、そこは王宮の中庭だった。
いつの間に用意していたのか、サースは魔法院の黒いローブを着ていた。
多くの人がそこに集まっていて、魔法院のローブを着た人たちの中にはフリードさんの姿も見えた。
そして白い装束を着ている人たちはきっと聖女組合の方たちなのだろう。
いつもの皆も居た。アラン王子を中心にして、ロデリック様、ラザレス、ダレルさん、谷口くんにライくんもいる。
「砂里……待っていた」
サースは私を優しく受け止め、手を引くようにして皆の所に連れて行ってくれた。
そうして、私にも分かりやすく説明をしてくれた。
「これから、増えすぎた闇の魔力を、新たなものへと変化させる。俺たち5人のそれぞれの肉体を通した属性魔力を一か所に集めるので、砂里は願いを使い、全ての魔力へと変質可能な魔力へ変わるように願って欲しい。恐らくそれだけで、光の魔力が全ての魔力を包み込むようにして新たな魔力へと変化させてくれる」
「うん」
魔法院の人たちも聖女たちも、手助けが出来るように来てくれているのだそうだ。
何かあった時に、彼らにならば出来ることもあるんだろう。
「大丈夫なの……?」
だって、かつて闇の魔力は、サース様を魔王へと導いたのだと言っていた。危険はないんだろうか。
心配する私の台詞にサースは柔らかくほほ笑んだ。
「ああ。何も心配はいらない。彼らと共に試してみたが……。肉体が以前とは変化していることを感じている。闇の魔力を肉体に通しても違和感を感じない……。ただサラサラと通り過ぎていく。今日は、全てを終わらせる必要はないんだ。俺たちの肉体に少しだけ魔力を通し、それを万能な魔力へと変換させることが可能なのかどうかを試してみたいんだ」
「分かった」
お試しってことだよね。
私は願うだけでいいんだ。
「一つ問題がある」
「うん?」
「今まで存在していた魔力が減ってしまう。新たな魔力を、今まで通りに使いこなせるのかがまだ分からない。これから時間を掛けて検証する必要がある。魔法システムに頼り過ぎたこの世界が、変化に順応し、新しいものを受け入れられるのかも分からない」
サースの台詞に、アラン王子が説明を引き継ぐ。
「けれど、受け入れることでしか、世界を存続させる方法など見出せない」
「そうだ」
アラン王子の脇にずっと控えていた王宮の騎士ダレルさんが、控えめに一歩前に出ると、私を見つめて言った。
「私は魔法をほとんど使えず……剣の腕だけで騎士団長になりました。この度、私が適合者の一人であると言われたことは驚きましたが……しかし、話を聞いていて、私がその一人になったことには意味があるように思えました。魔法を使わずに、生き抜く術を知っている。魔力を失うことを……皆ほど恐れはしない。私のような意見を持つ者は、きっとこれからの未来には必要なのでしょう」
その視線をまっすぐに受けて、私は、ダレルさんの人柄を初めて感じることが出来たような気がした。
「少しずつ検証していく。今すぐ、世界の構造が覆される訳ではない」
サースの言葉に私は頷いた。
私の世界で、科学とか電気とかが減っちゃうようなものなんだよね。
でも急激に減るわけじゃないから、すぐに生活に困るわけでもない、と。
「砂里……丁度良い媒体があったから、ラザレスの剣を使わせて貰うことにした」
「魔法剣!?」
ゲームの中で、魔王サースに止めを刺したにっくき魔法剣!
「な、なんで睨むんだよ」
ラザレスがぎょっとしたような顔で私を見つめていて、自分が酷い形相をしているだろうことに気が付く。
しまった。乙女が未来の旦那様に見せていい顔じゃなかったよね。
だ、旦那様……。
良いよね。もうはっきり言っちゃっていいよね。
け、結婚申し込まれちゃったし。間違いなくプロポーズだったし。
キキキキ、キスも済ませちゃったし……。
「砂里……なぜ顔を赤くさせているんだ?」
はっ!!
「聞いているか?」
「うん。大丈夫……」
サースはラザレスの魔法剣に手を添えると、私を振り向いて言った。
「俺たちの魔力をこの剣に注ぎ込む。砂里は願って欲しい。万能な魔力へ変わるようにと」
「分かった!」
私の返事に頷いたサースは、私の片手を取るとそっと繋いだ。
「隣に居る。怖いことは何もない」
「うん……」
サースはやっぱり、世界で一番優しい……。
「慣れない……」
ラザレスが何か呟いていた。
「分かる。俺も彼女が欲しくなる」
ライくんも何か言っている。
「僕、彼女出来そうなんだよね」
谷口くんが言った一言に、全員の視線が谷口くんに注がれた。谷口くんは、悪びれることなくにっこりと微笑んだ。
「二人を見てたら、誰かに優しくしたくて仕方がないような気持ちになってさ。そしたら、僕にも優しくしたい子がいるなって気が付いたんだよね」
「それは少し分かるな。メアリーに優しくしたくなる……不思議なものだが」
「俺も、ローザに同じことを思う。分かる気がするな……」
ロデリック様もアラン王子も会話に入って来る。
(ん?あれ?まさかと思うけど……)
今さらかもしれないけれど、もしかしてこれって……。
「……私たちのことを言ってるの?」
皆の驚愕したような表情は、この後しばらく忘れられないものとなった。
(えぇ、だって、昨日初めて告白しあって、今日プロポーズがあって、まだ付き合い始めたばかりだと思うのに……なんで……?)
焦るようにサースを見上げると、彼もなんとも言えないような表情でみんなを見つめていた。少ししてからサースは困ったような表情で微笑んだ。
「俺はやはり人の心の機微に疎いのだな……」
「わ、私もだよ……」
サースだけじゃないよ、と言う思いを込めて握った手に力を込めたら、サースが微笑んでくれた。
「ならば一緒に知って行こう……」
「うん……」
なんでも一緒に分かっていってくれようとするサースは、やっぱり世界で一番優しい!
「あの~そろそろはじめていい?」
あれ、気が付くと皆の視線が痛い気がする。
「もちろんだ」
「行くよ?」
「ああ」
皆は集中するように瞼を閉じて、それぞれ魔法を唱えだした。
赤、黄、緑、水色、黒色の光が輝きだす。
光の渦が、魔法剣へと吸い込まれていく。
サースが合図のように、私の手を握り締めてくれた。
私は心から願った。
「ミューラー、叶えて。私たちの魔力を一つにして、なんにでも変われる魔力へと変化させて」
空から声が降って来る。
『叶えるよ、サリーナ』
結論から言うと、願いは叶えられて、万能な魔力を作り出すことが出来た。
けれど今日はお試しだけ。
飽和した闇の魔力は膨大で、私たちは一度魔力をリセットするようにして、崩れた魔力バランスを正さなければならない。
歪みの果てに、滅びるはずだった世界を、持ち直さないといけない。
新しい魔力の使い方も、これから調べていく。
まだまだ、サースの運命が変わった訳じゃない。
だけど、未来への新しい道が開けたんだと思う。
滅びではない未来へと続く可能性がここに。
サースはそれから一日忙しく過ごして、私はそんな彼の隣にずっと寄り添っていた。
私には魔法の難しいことは分からないし、出来ることと言えば、これからの為に願いを増やしておくことくらいかなって思って、彼の隣で、以前と同じように絵を描いていた。
私に出来ることは最初からとても少なかったと思う。
彼の隣に立っていても、彼と同じように理解することは難しかった。
けれどサースは、私の出来る数少ないことを、いつもとても大事に思ってくれた。
自分には出来ないことだと、私に憧れるとまで言ってくれた。
私の出来ないことは彼がやってくれたし、それは補い合いながら、二人で過ごせばいいのだと、教えてくれているみたいだった。
夜になり、サースが皆との話し合いの場から立ち上がると、私の手を引いて言った。
「砂里……一度帰ろう」
「うん?」
サースも帰るのかなって不思議に思う。
「これからは砂里の世界から、君と共にこの世界に通う」
「え?……本当?」
「ああ」
サースは私の手を引いて控室に荷物を取りに行く。
そこには、たぶん谷口くんちから持って来ていたんだろう。黒いトートバッグが置いてあった。
「俺は、君の世界で生きることを決めている。この世界の未来への道は、きっともう閉ざされてはいないだろうから」
サースはそう言うと、窓際に置いてあったバッグを持って振り返った。
窓からは、二つの月が輝く夜空が見えた。
サースは優しく細められた瞳で私を見つめている。
(あれ?)
急に、その光景にデジャヴのようなものを覚えた。
(どこかで見たことがある気がする)
あれ?どこで見たんだろう。ゲームの中とか……?
(いや違う……あれは……)
二つの月が輝く夜空を背景に、魔法院の黒いローブを着た彼が、愛しい人を見つめるように振り返る――
それはまるで、初めてミュトラスの願いを発動させたときに、私が描いていた彼の姿そのものだった。
あれ?っと私は混乱する。
(あの絵を描いたとき……彼が愛する人と幸せになってもらいたいなと願いながら描いていたけれど……)
その彼の愛する人が、今、私になっている――?
心臓がどきどきと高鳴った。
(だって彼の愛する人が自分になるなんて、本当に思ってなんていなかった)
そう願ったわけでもない。
少し前までの私なら、自分なんかでは彼にふさわしくないと思っただろう。
(だけど……)
私は彼の元へ歩いて行くとそっと手を繋いだ。
それだけで、彼は嬉しそうに微笑んでくれる。
(――今の私はもう知っている)
彼に笑顔が増え続けた日々。
私を見つけたときに、嬉しそうに微笑むこと。
彼を世界で一番幸せそうに微笑ませることが出来るのは私なのだって、今はもうちゃんと知っているんだ。
(その夜、部屋に帰った私はミューラーを呼び出して、確認のために今までと同じようにサースの魔王堕ちの未来を変えられないかの質問をしてみた。するとミューラーがなんでもないように言った。『未来はもう変わっているよ』私は黒猫を抱きしめながら、嬉し涙を止められずに眠った日)
(なんだか良い夢を見ていたような気がするけれど……)
心がキュンキュンするようなときめきでいっぱいになっていたような気さえするのだけど、一体自分はどんな夢を見ていたんだろうか。思い出せない。
(それにしてもここはどこだっけ?)
と、隣に感じるぬくもりに視線を移すと、ぎょっとする。
生きる宝石、世界一の美貌、美しさを具現化したような麗人が、私のすぐ真横でお眠りになっていらっしゃる……!
そうだここは王宮の客間。私はサースの隣に添い寝してしまっていたのだ。
寝起きに見つめるにはあまりに眩しすぎるお姿に、頭がクラクラとする。
(ああ、でもサースの寝顔を見つめられる機会は貴重なんだよね……)
そう思ったら、つい目をギンギンと見開いて、心に焼き付けるように見つめ直してしまう。
陶器のような白い肌、通った鼻筋、長いまつ毛、全てが彼を輝かせるために存在しているようだった。
(カッコイイ……)
ほうっとため息を吐きながら、いつまでも永遠に眺めていられるだろう自分を感じていた。
(でもサースは、外見が美しいだけじゃないんだよね)
その内面が……誰より聡明で、そして、温かくて優しくて、とても綺麗なんだ。
一緒に過ごした毎日で、私はどんな一日でも新しく知って行く彼に恋をしていた。
知らなかった彼を知っていく。
二人で新しい感情を芽生えさせていく。
昨日と同じ一日は一度だってなくて。
私はきっと、今日も明日も、まだ知らない彼に恋をし直して行くんだ。
(呆れられないといいな……)
だって私の想いは、きっと、とっても重い。
そう思いながらも、愛に飢えている彼ならば、もしかしたら喜んでくれるのかもしれないと……。
長く一緒に過ごして、彼のことを少しずつ知っていった今の私は、なんとなくそんな風にも感じている。
(分からないことや、不安なことは……聞けばいいんだ)
心からの誠意を込めた声を、彼は決して邪険にはしないのだから。
分かり合いたいと思いながら繋ぎ続けた手は、今も離されているわけじゃない。
「大好き……」
もう聞かれても大丈夫な私の独り言。
猫のぬいぐるみなんかじゃなくて、本当は起きているサースにだって伝えられる。
(そうは言っても恥ずかしいから……本当に本人に伝えられかと言われるとそうでもないかな……)
ピクリとも動かない彼の寝顔を見つめながら、一人顔を赤くする。
(…………うん)
やっぱり、この美しいお顔は、絵に残しておこう!
昨晩こっそりスケッチブックと鉛筆を持って来ていた。
しばらく願いを増やしてる余裕がなくてあまり描けてなかったのだけれど。
そもそも最初の願いは、まだ見た事のない彼を見たいってものだったんだ。あわよくばそんな彼の姿を描きたいと思う下心……じゃない、乙女心を込めた……。
机の上に置かれた画材を手に取ると、ベッドの上に体育座りをした。
そうして、サラサラと音を立てて鉛筆を動かし、美しい彼の寝姿を紙に写し取っていく。
(い、色気がすごい……)
起きているときの眉間の皺が無くなると、こうも天使のようなお顔になるのかと最初は不思議に思ったけれど、よく見るとうっすらと寝汗をかいているし、シャツがはだけて首筋も胸元もチラチラ見えているし、もうそこの匂いが嗅ぎたくて仕方がなくて自分を抑えるのが大変で……ああ、なんでもないです、ごめんなさい!自重します!
(集中、集中……)
またとないこのチャンス、しっかり絵に残しておきましょう。
それから、どれくらいの時間が過ぎたのか、私は何枚も何枚もスケッチを続けていた。
「……砂里?」
気だるげな声に顔を上げると、薄く目を開けたサースが私を見つめていた。
隠し撮り……もとい、寝ているサースを勝手に絵に描いていた姿を見られて、私は動揺した。
よく考えたら、寝てる姿を勝手に描かれたら嫌なはずだ。
「ごめんなさい……思わず本能が手を動かしてしまってました……勝手に描かれたら嫌だよね」
「……絵を描いていたのか?」
サースは一度何か考えるように頭に手を当ててから、ゆっくりと半身を起こして、私の手元のスケッチブックを覗き込んだ。
「……子供のような寝顔だな」
そっかな……大人の色気漂っていたよ。
サースはそう言うと至近距離で私をじっと見つめた。
な、なんですか?
「砂里が喜んでくれるなら、俺の絵くらい、いくらでも描いて構わない」
「……本当?」
「ああ」
漆黒の瞳が優し気に細められて私を見つめている。
「砂里、子供の俺に会ったことはあるか?」
「え?」
子供のサース?
なんだろう、今一瞬胸がキュンっとしたのだけど。
「どうやったら会えるの?」
子供のサースなんて、間違いなく、世界で一番可愛いじゃないですか!
「……分からないならいい。だが……」
そう言うと、彼の腕が私を抱きしめた。
必然的に私の顔は彼の首筋から胸元辺りに埋められてしまう。
ああ、さっきからずっと嗅ぎたかった最高の匂いが今ここに……!?
「小さな俺も、孤独なまま終わった俺も、君に会いたいと願っていたよ……」
え?
いつもより濃厚な匂いに頭がいっぱいになっていて、サースの台詞が聞こえてなかった。
私はぎくしゃくとしながら顔を上げた。
サースが少し驚いたような表情をしたのは、きっと私の顔が赤いからだろう。
「……なんて言ったの?」
「砂里……顔がすごく赤いが大丈夫なのか?」
サースを動揺させるほど赤面しているのかと、余計恥ずかしくなる。
「は、恥ずかしいだけで……」
何がどう恥ずかしいのかは、恥ずかしすぎてとても言えません!
「……何が恥ずかしいんだ?」
え、突っ込まれた!?
「な……」
いつもと少し違う、余裕を感じるサースの笑みに私は動揺する。
そして彼の瞳に見据えられると、いつだって逃げ場などなくなる。
「すごく……近くにサースを感じ過ぎて、ドキドキしすぎちゃったの……」
「だが俺は、お前の一番近くに居る権利を他の者に譲る気はないんだ」
え?
突然のサースの言葉に、意味を理解しようと彼の瞳を覗き込む。
「言っていただろう。俺の一番近くに寄り添いたいと」
それは眠る前に私が言っていた台詞。
「俺も同じことを思っている。誰にもこの場所を謙るつもりはない。生涯、君に寄り添い、一番近くには俺が居たいと願っている」
彼は眠る前に愛の言葉を私にくれたのに、あんな会話の返事を、今またくれようとしているんだって気が付く。
「この気持ちが君と同じものならば……」
そう言って彼は片手で私の頬を軽く撫でる。
「全てが終わって、君の世界での問題もクリアにしてから……結婚しよう、砂里」
頭が真っ白になった。
「万能魔法は……きっとうまく発動するだろう。君の世界の身分は……この先のリスクを考えて神の力を借りることにした。問題は俺が何も出来ない学生だと言うことだ。年齢の問題が無くなっても、生きていく術を確立するまで、待たせることになるかもしれないが」
「……はい?」
次から次へと話が進んで、もはや異次元の事柄のようにピンと来なかった。
「俺と君の結婚生活の話だ」
「けっこんせいかつ」
けっこんってなんだっけ……。
血痕、毛根、潔魂……当て字にすることすら苦しい漢字しか思い浮かばない……。
もはやまさかの、もしかしての、結婚だとして。
その結婚は、私の知ってる結婚の概念とは違うものなのかも知れない……。
「夫婦になることだ」
「ふ……」
ふうふ!ああ、もう夫婦しかないじゃない。
「結婚するの……?」
「ああ、嫌か砂里……?」
「い、嫌じゃないよ……」
だけど、ずっと、未来に怯えていた。
恋人にすらなれないんじゃないかと思っていたのに、いきなりそんな話になっても頭が付いて行かない。
「大丈夫だ。一つずつ越えて行く。君と共に未来を紡ぐ。今も未来も君と共に在りたいと願う、俺の気持ちを伝えただけだ」
サースは私の瞳を真っ直ぐに見つめながら言う。
「いつか全てをクリアにしたら……俺と結婚してほしい」
「……はい」
思わずしてしまった私の返事に、彼がはにかむように笑った。
そうしてゆっくりと美しい顔が近づいて来たから、私は驚くほど自然に……瞼を閉じた。
ずっとためらっていたのに、不思議なくらい今は彼を感じたいと思う。
そうして、唇に、初めて彼を受け入れた。
柔らかい感触に、全身が幸福で震える。
初めてのキスは、味覚がどうとか、そんなことが分かる余裕なんてちっとも持てなかったけれど。
さて。
朝になってから、私は一度自分の部屋に戻って、着替えてまたサースの元に飛んで来た。
今日は夏休み初日。これから一か月以上の、長い休みがやって来る。
本当はこの夏休みの間サースの手伝いをしようと思っていたのだけど、サース曰く、もう必要なくなるかもしれない、とのこと。
サースの胸に飛び込むようにして飛んでくると、そこは王宮の中庭だった。
いつの間に用意していたのか、サースは魔法院の黒いローブを着ていた。
多くの人がそこに集まっていて、魔法院のローブを着た人たちの中にはフリードさんの姿も見えた。
そして白い装束を着ている人たちはきっと聖女組合の方たちなのだろう。
いつもの皆も居た。アラン王子を中心にして、ロデリック様、ラザレス、ダレルさん、谷口くんにライくんもいる。
「砂里……待っていた」
サースは私を優しく受け止め、手を引くようにして皆の所に連れて行ってくれた。
そうして、私にも分かりやすく説明をしてくれた。
「これから、増えすぎた闇の魔力を、新たなものへと変化させる。俺たち5人のそれぞれの肉体を通した属性魔力を一か所に集めるので、砂里は願いを使い、全ての魔力へと変質可能な魔力へ変わるように願って欲しい。恐らくそれだけで、光の魔力が全ての魔力を包み込むようにして新たな魔力へと変化させてくれる」
「うん」
魔法院の人たちも聖女たちも、手助けが出来るように来てくれているのだそうだ。
何かあった時に、彼らにならば出来ることもあるんだろう。
「大丈夫なの……?」
だって、かつて闇の魔力は、サース様を魔王へと導いたのだと言っていた。危険はないんだろうか。
心配する私の台詞にサースは柔らかくほほ笑んだ。
「ああ。何も心配はいらない。彼らと共に試してみたが……。肉体が以前とは変化していることを感じている。闇の魔力を肉体に通しても違和感を感じない……。ただサラサラと通り過ぎていく。今日は、全てを終わらせる必要はないんだ。俺たちの肉体に少しだけ魔力を通し、それを万能な魔力へと変換させることが可能なのかどうかを試してみたいんだ」
「分かった」
お試しってことだよね。
私は願うだけでいいんだ。
「一つ問題がある」
「うん?」
「今まで存在していた魔力が減ってしまう。新たな魔力を、今まで通りに使いこなせるのかがまだ分からない。これから時間を掛けて検証する必要がある。魔法システムに頼り過ぎたこの世界が、変化に順応し、新しいものを受け入れられるのかも分からない」
サースの台詞に、アラン王子が説明を引き継ぐ。
「けれど、受け入れることでしか、世界を存続させる方法など見出せない」
「そうだ」
アラン王子の脇にずっと控えていた王宮の騎士ダレルさんが、控えめに一歩前に出ると、私を見つめて言った。
「私は魔法をほとんど使えず……剣の腕だけで騎士団長になりました。この度、私が適合者の一人であると言われたことは驚きましたが……しかし、話を聞いていて、私がその一人になったことには意味があるように思えました。魔法を使わずに、生き抜く術を知っている。魔力を失うことを……皆ほど恐れはしない。私のような意見を持つ者は、きっとこれからの未来には必要なのでしょう」
その視線をまっすぐに受けて、私は、ダレルさんの人柄を初めて感じることが出来たような気がした。
「少しずつ検証していく。今すぐ、世界の構造が覆される訳ではない」
サースの言葉に私は頷いた。
私の世界で、科学とか電気とかが減っちゃうようなものなんだよね。
でも急激に減るわけじゃないから、すぐに生活に困るわけでもない、と。
「砂里……丁度良い媒体があったから、ラザレスの剣を使わせて貰うことにした」
「魔法剣!?」
ゲームの中で、魔王サースに止めを刺したにっくき魔法剣!
「な、なんで睨むんだよ」
ラザレスがぎょっとしたような顔で私を見つめていて、自分が酷い形相をしているだろうことに気が付く。
しまった。乙女が未来の旦那様に見せていい顔じゃなかったよね。
だ、旦那様……。
良いよね。もうはっきり言っちゃっていいよね。
け、結婚申し込まれちゃったし。間違いなくプロポーズだったし。
キキキキ、キスも済ませちゃったし……。
「砂里……なぜ顔を赤くさせているんだ?」
はっ!!
「聞いているか?」
「うん。大丈夫……」
サースはラザレスの魔法剣に手を添えると、私を振り向いて言った。
「俺たちの魔力をこの剣に注ぎ込む。砂里は願って欲しい。万能な魔力へ変わるようにと」
「分かった!」
私の返事に頷いたサースは、私の片手を取るとそっと繋いだ。
「隣に居る。怖いことは何もない」
「うん……」
サースはやっぱり、世界で一番優しい……。
「慣れない……」
ラザレスが何か呟いていた。
「分かる。俺も彼女が欲しくなる」
ライくんも何か言っている。
「僕、彼女出来そうなんだよね」
谷口くんが言った一言に、全員の視線が谷口くんに注がれた。谷口くんは、悪びれることなくにっこりと微笑んだ。
「二人を見てたら、誰かに優しくしたくて仕方がないような気持ちになってさ。そしたら、僕にも優しくしたい子がいるなって気が付いたんだよね」
「それは少し分かるな。メアリーに優しくしたくなる……不思議なものだが」
「俺も、ローザに同じことを思う。分かる気がするな……」
ロデリック様もアラン王子も会話に入って来る。
(ん?あれ?まさかと思うけど……)
今さらかもしれないけれど、もしかしてこれって……。
「……私たちのことを言ってるの?」
皆の驚愕したような表情は、この後しばらく忘れられないものとなった。
(えぇ、だって、昨日初めて告白しあって、今日プロポーズがあって、まだ付き合い始めたばかりだと思うのに……なんで……?)
焦るようにサースを見上げると、彼もなんとも言えないような表情でみんなを見つめていた。少ししてからサースは困ったような表情で微笑んだ。
「俺はやはり人の心の機微に疎いのだな……」
「わ、私もだよ……」
サースだけじゃないよ、と言う思いを込めて握った手に力を込めたら、サースが微笑んでくれた。
「ならば一緒に知って行こう……」
「うん……」
なんでも一緒に分かっていってくれようとするサースは、やっぱり世界で一番優しい!
「あの~そろそろはじめていい?」
あれ、気が付くと皆の視線が痛い気がする。
「もちろんだ」
「行くよ?」
「ああ」
皆は集中するように瞼を閉じて、それぞれ魔法を唱えだした。
赤、黄、緑、水色、黒色の光が輝きだす。
光の渦が、魔法剣へと吸い込まれていく。
サースが合図のように、私の手を握り締めてくれた。
私は心から願った。
「ミューラー、叶えて。私たちの魔力を一つにして、なんにでも変われる魔力へと変化させて」
空から声が降って来る。
『叶えるよ、サリーナ』
結論から言うと、願いは叶えられて、万能な魔力を作り出すことが出来た。
けれど今日はお試しだけ。
飽和した闇の魔力は膨大で、私たちは一度魔力をリセットするようにして、崩れた魔力バランスを正さなければならない。
歪みの果てに、滅びるはずだった世界を、持ち直さないといけない。
新しい魔力の使い方も、これから調べていく。
まだまだ、サースの運命が変わった訳じゃない。
だけど、未来への新しい道が開けたんだと思う。
滅びではない未来へと続く可能性がここに。
サースはそれから一日忙しく過ごして、私はそんな彼の隣にずっと寄り添っていた。
私には魔法の難しいことは分からないし、出来ることと言えば、これからの為に願いを増やしておくことくらいかなって思って、彼の隣で、以前と同じように絵を描いていた。
私に出来ることは最初からとても少なかったと思う。
彼の隣に立っていても、彼と同じように理解することは難しかった。
けれどサースは、私の出来る数少ないことを、いつもとても大事に思ってくれた。
自分には出来ないことだと、私に憧れるとまで言ってくれた。
私の出来ないことは彼がやってくれたし、それは補い合いながら、二人で過ごせばいいのだと、教えてくれているみたいだった。
夜になり、サースが皆との話し合いの場から立ち上がると、私の手を引いて言った。
「砂里……一度帰ろう」
「うん?」
サースも帰るのかなって不思議に思う。
「これからは砂里の世界から、君と共にこの世界に通う」
「え?……本当?」
「ああ」
サースは私の手を引いて控室に荷物を取りに行く。
そこには、たぶん谷口くんちから持って来ていたんだろう。黒いトートバッグが置いてあった。
「俺は、君の世界で生きることを決めている。この世界の未来への道は、きっともう閉ざされてはいないだろうから」
サースはそう言うと、窓際に置いてあったバッグを持って振り返った。
窓からは、二つの月が輝く夜空が見えた。
サースは優しく細められた瞳で私を見つめている。
(あれ?)
急に、その光景にデジャヴのようなものを覚えた。
(どこかで見たことがある気がする)
あれ?どこで見たんだろう。ゲームの中とか……?
(いや違う……あれは……)
二つの月が輝く夜空を背景に、魔法院の黒いローブを着た彼が、愛しい人を見つめるように振り返る――
それはまるで、初めてミュトラスの願いを発動させたときに、私が描いていた彼の姿そのものだった。
あれ?っと私は混乱する。
(あの絵を描いたとき……彼が愛する人と幸せになってもらいたいなと願いながら描いていたけれど……)
その彼の愛する人が、今、私になっている――?
心臓がどきどきと高鳴った。
(だって彼の愛する人が自分になるなんて、本当に思ってなんていなかった)
そう願ったわけでもない。
少し前までの私なら、自分なんかでは彼にふさわしくないと思っただろう。
(だけど……)
私は彼の元へ歩いて行くとそっと手を繋いだ。
それだけで、彼は嬉しそうに微笑んでくれる。
(――今の私はもう知っている)
彼に笑顔が増え続けた日々。
私を見つけたときに、嬉しそうに微笑むこと。
彼を世界で一番幸せそうに微笑ませることが出来るのは私なのだって、今はもうちゃんと知っているんだ。
(その夜、部屋に帰った私はミューラーを呼び出して、確認のために今までと同じようにサースの魔王堕ちの未来を変えられないかの質問をしてみた。するとミューラーがなんでもないように言った。『未来はもう変わっているよ』私は黒猫を抱きしめながら、嬉し涙を止められずに眠った日)
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※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差)
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