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サースティールート
学園生徒になるの日
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翌朝私は起こされた。――幻聴に。
『ミュトラスの乙女……』
それは何度も聞いていたはずの声で、私ははっとして目を開けると、ベッドの上に飛び上がるように起き上がった。
けれど部屋を見渡しても誰もいない。やはり幻聴か……もう一度寝るか。
そう思っていると、見えない誰かからの声が、更に続いて聞こえてきた。
『新たな願いを叶えよう……』
新たな、願い……?
そう言えば、最初の幻聴でも、願いを聞かれていた気がする。私はなんて答えたのだっけ、と考えて思い当たる。
――サース様を、見たい――
「お前かーーーーーー!?」
私は部屋の中で絶叫をあげるように叫んだ。すると、階段からバタバタと音が聞こえてしばらくすると部屋のドアが勢いよく開かれた。
「どうしたの!?砂里サリちゃん!?」
「…………なんでも、ないです………」
今日は両親ともに休日で家にいるみたい。お母さんがエプロン姿のまま飛び込んできた。
「寝ぼけてました……」
お母さんはじっと私を見つめた後に、落書きのちらばった部屋と、洋服のまま寝ている私を眺めてから、深いため息をすると部屋を出て階段を下りて行った。
娘の頭の心配をされている気がするけれど、今はそれどころじゃない。
「……あなたは誰なの?」
誰もいない部屋に、私は小さく声を出す。
『僕はミュトラスの使いの一人。ミュトラスの力を使った者に対価を与える者』
誰もいないのに、頭の中に声が響いてくる。
『ミュトラスは神、と言われる概念に近い者。ミュトラスの力は、稀に現れる聖なる者にしか使えない。ミュトラスの力を使った者には、ミュトラスの祝福として、対価が与えられる』
「何を言っているのか分かりません」
『……君は聖女。一昨日の対価は既に与えてあるから、昨日の分の対価を追加であげるよって話』
フランクな口調で話す神の使いの言葉はうさんくさい内容にしか思えない。けれど私は、あの世界を見てしまっていたから。
立ち上がり押入れのふすまを開けた。――塔のような城の一部が見える空が広がっている。
「一昨日の対価は、ここをラーバンダー王国と繋げたってこと?」
『そう』
「ここは……いつまで繋がっているの?」
『無期限だよ』
「無期限!?」
『君が望めば閉ざすことは出来るけれど……』
「望みません、止めて下さい」
『この場所、に特定した場だから、扉を変えたくらいじゃ場は動かないけれど、この家自体を建て直したら場はなくなるよ』
「えええーーーーーーーー!」
『そうしたら新たなミュトラスの力を使って、場を違う場所に作り変えればいい。君ならそれが出来るのだから』
「……」
なんだか分からないけれど、なんだか分かったような気持ちになる。
『昨日もミュトラスの力を使ったから、あと3回願いを叶えられるよ』
「3回!?」
『君の能力は、未来視、だけど、予測の未来視じゃない。現実を君の絵に寄せる方向の、強力な未来視だ』
「……はい?」
『願望視、という方が近いかもしれないけれど。とにかく、君の絵は、いつか現実になるものが描かれている』
「……はぁ」
『昨日3枚増えたから、なんでも願いを叶えられるよ』
「……よく分かりません」
昨日何を描いたかって、ひたすらサース様の絵を描いていただけのような気がするけれど……。
「とりあえず、ナビが欲しいです……」
『ナビ……』
「ナビというか、道案内というか、学園の中をウロチョロするだけで誰にも見つからないように必死にならなくてはならなかったので、安全に動き回れる情報が欲しいというか……」
『面倒くさいなぁ』
神(?)の使い(?)が不適当な言葉を言っていた気がする。
『情報だけなら、心の中で僕に呼び掛ければいつでも教えてあげるよ。僕の名前はミューラー』
「了解です!ミューラー」
『聖女なんだから、学校の生徒にしておいてあげるよ。そうすれば寮に部屋も持てる。寮の部屋のクローゼットもここに繋がる場にしておくよ』
「ええ!!神ですか!!ありがとう!!!?」
喜びが心に満ち溢れ、今すぐあの世界に旅立ちたくなってしまった。
「支度をしてくるので、すぐに旅立ちます……!」
『待ってよ。願いごとは?3つあるのだけど』
「……あれ、減ってないの?」
『減ってないよ』
「……有効期限は?」
『無期限』
「……じゃあなんだか分からないので保留で!」
そう言い捨てると、部屋から出て顔を洗いに行く。さー今日も楽しい一日がはじまる!はず。
着替えを済ませて乗り込みました。本日も無事に学校の屋上です。
すると、ミューラーの声が降って来た。
『校長室に行ってくれない?制服が用意されてるから』
「……仕事早いね」
なんでも学校にご神託を下ろした後、すぐに準備をしてくれていたそうだ。
校長室どこだったかなー。と、ゲーム内でも明らかにされていなかった校内地図に思いを巡らせる。ファンサイトで考察されていたんだよなぁ。
「1階かなぁ」
『1階の西側だよ』
「……ナビ居たーーー!」
忘れてました。なんて使えるナビなんだ。
「ん?西とか東とか、この世界にもあるの?」
『基本的な部分はよく似ていて、ほぼ同じだよ。二つの世界は作られたとき一つだったから』
「……はぁ」
また分からない話が始まりそうだな、と思った時に、校長室の前に辿り着いた。
ノックをすると返事が返ってきたので、ドアを開ける。
「聖女様、よくいらっしゃいました」
柔和な笑顔の、灰色のワンピースを着た、銀髪の年配の女性が佇んでいた。
(校長先生ーーーーーー!)
ゲームの中でも学校行事のあるときに度々背景の中に存在していたその姿を、何度も見たことがあった。
「聖女様は、いつも突然やってきます。この世界からも、他の世界からも。ミュトラスのお導きでやってくる聖女様を保護する目的と、そして、知識を教える役目を担って、この学園が創設されました」
(……なにその裏設定。初めて知りましたよ)
「制服はこちらです。寮の部屋まで、わたくしが案内致します。その道中でご説明を致しましょう」
紙袋を渡され、そこに黒い制服が入っているのが見えた。
校長先生は、いつ来てもいい聖女の為に基本的なものは寮の部屋に揃えているので、全て使ってくれていいと教えてくれた。
また、特別教室で授業をするので、時間がある時にだけくればいいとのこと。
私だけではなく異世界から聖女が来ることがあり、普通の授業を受けられない人もいたという。
異世界、って概念、この世界にあったんだーと驚いた。もちろんゲームの中に描かれていなかったし。
寮の部屋も聖女用の別棟の中にあって、他生徒と顔をあわせることなく出入り出来るようになっていた。校長先生と別れてから部屋を確認してみたけれど、確かにタオルから下着、普段着のワンピース、また通貨らしいものまで揃っていた。教科書とノート、筆記具、また鞄などもあった。
制服が手渡しだったのは、サイズを確認して渡したのかな?と気になりつつも、着てみたいというむずむずとした欲求が沸き起こる。
黒のワンピースの制服だった。所々に上品な白のレースと、刺繍が施されている。
ラーバンダー王国一番の、由緒正しい家柄の子息と、特別な能力を持つ聖女のみが入学を許される、フィルド学園の制服。ヒロイン聖女が着ていた、あの、あの制服!
(あああああ)
今私はそれを着ている。顔が違うけれど。平たい顔族だけど。ヒロインのコスプレをした気持ちになり、気分が高揚する。
(そうだ、今日はこのまま出かけよう!)
学園の生徒であるならば、制服で出歩いても不審者にはなるまい。
街に出て来た。
寮の部屋を出る前にカレンダーを確認したら、なんと地球のカレンダーとほぼ一緒だった。本当の異世界ならこんな偶然無いだろうし、ここはやっぱりゲームの世界なのかもしれないな、なんて思う。そして今は5月の2週目の休日だった。
今がサース様の幾つの歳の5月かは分からないけど。
もしも、ゲームが始まった年の5月ならば!
それが意味するものは一つだった。
(ヒロインの、初デートイベント……!)
ヒロインと一番好感度が高い攻略相手が、遠回しなデートに誘い休日を町で過ごすのだ。
あんなにカッコイイのだから、サース様が選ばれているに違いないと私は思い、デート場所の一つを張ることにした。
ミッションワン。
デートを覗き見ろ。
昨日はうっかり見つかってしまったけれど、隠れてこっそりお姿を垣間見るくらいなら、許して欲しいと思う。
ゲームの中で2人は、お昼に街角のオープンテラスのカフェに入るのだ。
サース様は人と食事を共にしたことがほとんど無くて居心地悪そうにしているのだけど、ヒロインは和ませるように穏やかに隣で微笑み、そんな彼女に心を開いていく――
広場の角から待ちかまえること30分。
ピンク色の髪(生で見るとインパクトが強かった)のヒロイン聖女と共に、金髪の王子様のような男性が現れた。
王子様のような、というか王子様だった。彼の名前は、アラン・ラーバンダー。この国の第二王子だ。金色のサラサラとした髪と、緑色の瞳を持つ、天使のような笑みを浮かべる美男子だった。平民のようにラフな格好に身を包み、眼鏡も掛けていたけれど、それでも隠し切れない美しさが辺りに溢れていた。
(アラン様もカッコイイ……)
ため息が出るような思いで、二人が微笑み合う美しい情景を隠れ見ていた。
しばらく見つめたあとに、はたと、気付く。
(サース様は……いずこに?)
ヒロインが今アラン様ルートを進んでいるのだとしたら、サース様には……。
魔王堕ちエンドが、待っている。
サース様は、サース様のハッピーエンドルート以外では、ラスボスの魔王になって聖女と他の攻略対象に殺されて終わるのだ。
サース様のハッピーエンドを迎えたときにだけ、サース様は魔王になる寸前で聖女に心を癒され幸福なエンドを迎えることが出来る。
ゲームの中でのサース様の運命の残酷さが、私は耐えられない位哀しくて、心を掴まれたのだ。
ふと気付くと、私の反対側からとても美しい人――黒い髪黒い瞳の――サース様が歩いてくるのが分かった。
そうだ、ここは、聖女ヒロインに初めて嫉妬し、恋心に苦しみ出す、サース様が魔王となる布石になる場所だったのだ。
私は駆けだした。
全速力で駆けだした私を、町の人たちが驚いたように見つめ、そして、彼も私を振り返った。
何気なく振り向いた、その長い睫毛の下の黒い瞳に驚きが浮かぶ。
「お前……」
ああ、声まで良い……私はちょっと泣きそうになりながら、彼の視界に入ったことを確認するとカフェとは反対方向に走った。
少し走っただけで息切れしてしまい、街角でぜぃぜぃはぁはぁと息を整えていると、後ろから足音が聞こえてくる。振り向くと、サース様が立っていた。
白いシャツに黒いズボンを履いた普段着の姿で、少しだけ息を弾ませて立つサース様は、とてもナチュラルな男の子のように思えて、私は心臓をどきどきとさせる。普段着なんて貴重な一枚だし!
無表情に私を見据えていた。
片手を顎に当てて、不機嫌そうに何かを考えている。
「……学校の生徒だったのか」
ぽつりとそう言う。私は制服を着ていた。
なんと答えようかと思っていたら、突然、小さな声を出して笑い出した。
「……さすらいの絵かきじゃなかったのか」
口元を押さえながら、面白そうに肩を揺すって笑っている。
笑うたびに、長い黒髪が揺れる。
輝きがもれているみたいだって思った。笑うたびに光がもれているみたいだって。
呆然と笑う姿を見つめていると、私の視線に気づいた彼は、気まずそうに視線を伏せしばらく考えるようにしてから言った。
「……スケッチブックを預かってある。寮に帰ればいつでも返せるが……このまま取りに来るか?」
それは一緒に帰ってもいいということなんでしょうか!?
「ご迷惑じゃなければ……」
ちょっと考えてから、無難にそう答える。
私の返事に、サース様はふっと笑った。
黒い瞳が細められ優しく輝く。漂う色気にクラクラとした。
「魔道具屋に行って来たところだ。もう帰るだけだが……昼を食べてないな。お前は食べたのか?」
「まだですけど……」
「良かったら、帰り道のカフェにいくか?」
「行きます!」
帰り道ならば広場のヒロインデートカフェとも違う場所だろう。
これはきっと神様がくれたご褒美なのだ。なんのご褒美かも分からないけれど今はそれを堪能したい。
嬉しくて堪らなくて、笑顔でニコニコとサース様の横に歩いていくと、少しだけ不思議な顔で見下ろされた。
「……行くぞ」
「はい!」
そうは言っても、道中だんだんと昨日の所業を思い出し、不安になってきた私は、思っていたよりも話しやすそうな彼に聞いてしまった。
「私のこと怖くないんですか……?」
「……」
するとまた不思議そうな顔で見下ろされてしまった。なんだろう。
「……何を怖がるんだ?」
「……不審者だったから……」
自分で言ってても凹む。というか恥ずかしい。穴があったら入りたい。
顔を真っ赤にして俯いて言う私を、また、ふっと笑う声がした。
「ずいぶんと変わった人間だとは思うが」
……はっきりと言われてしまった。
「魂がこもっているような絵だった。絵を描くのが好きなんだろう?」
あなたさま限定ですが。魂こもってましたか。
「はい……」
「次からは隠れてないで描けばいい」
「はい?」
「あれだけの絵が描けるなら隠れる必要もないだろう」
一体どういう意味で言っているのだろうかと、頭がぐるぐるとする。
「あなたの絵を描いてもいいの?」
名前を知っていると知られたら、またストーカー疑惑が生まれるかと思い、私はあえて名前を出さなかった。
するとサース様は立ち止まり、私を見下ろすと、少しだけ優しく微笑むように言った。
「俺の名前はサースティー・ギアン。放課後はいつも研究室にいる。いつでも来るといい」
太陽を背にした、明るい日差しの元の、暗黒に堕ちるはずのその瞳は煌めきながら私を見ていた。
「行きます!絶対行きます!明日行きます!!」
意気込んで大きな声で言った私に、サース様はまた笑いそうになっていた。
おかしいな、こんな笑い上戸の人だったかな、と私は違和感を抱えていたのだけど、その後のカフェのランチも、寮までの帰り道も、機嫌の良さそうな表情を私に向けていた。
あと私は偽名に、サリーナ・リタと名乗ることにした。日本名は成田砂里だけど、これだと違和感あるし。
そうして寮の部屋に戻り、クローゼットを開けると、その向こうに押入れが広がっていた。
うーん、異世界から見つめる押入れってかなりシュールだな、と思いながらも。制服を脱ぐと洋服に着替え、私はクローゼットの中に入り込んだ。
(学園の生徒になれたけど、そんなことよりサース様とカフェに行けた……もう成仏してもいい……!ああでも、明日に備えて今日は早く寝なくちゃ……成仏している暇なんてない……そんなことを思っているうちに寝てしまった日)
『ミュトラスの乙女……』
それは何度も聞いていたはずの声で、私ははっとして目を開けると、ベッドの上に飛び上がるように起き上がった。
けれど部屋を見渡しても誰もいない。やはり幻聴か……もう一度寝るか。
そう思っていると、見えない誰かからの声が、更に続いて聞こえてきた。
『新たな願いを叶えよう……』
新たな、願い……?
そう言えば、最初の幻聴でも、願いを聞かれていた気がする。私はなんて答えたのだっけ、と考えて思い当たる。
――サース様を、見たい――
「お前かーーーーーー!?」
私は部屋の中で絶叫をあげるように叫んだ。すると、階段からバタバタと音が聞こえてしばらくすると部屋のドアが勢いよく開かれた。
「どうしたの!?砂里サリちゃん!?」
「…………なんでも、ないです………」
今日は両親ともに休日で家にいるみたい。お母さんがエプロン姿のまま飛び込んできた。
「寝ぼけてました……」
お母さんはじっと私を見つめた後に、落書きのちらばった部屋と、洋服のまま寝ている私を眺めてから、深いため息をすると部屋を出て階段を下りて行った。
娘の頭の心配をされている気がするけれど、今はそれどころじゃない。
「……あなたは誰なの?」
誰もいない部屋に、私は小さく声を出す。
『僕はミュトラスの使いの一人。ミュトラスの力を使った者に対価を与える者』
誰もいないのに、頭の中に声が響いてくる。
『ミュトラスは神、と言われる概念に近い者。ミュトラスの力は、稀に現れる聖なる者にしか使えない。ミュトラスの力を使った者には、ミュトラスの祝福として、対価が与えられる』
「何を言っているのか分かりません」
『……君は聖女。一昨日の対価は既に与えてあるから、昨日の分の対価を追加であげるよって話』
フランクな口調で話す神の使いの言葉はうさんくさい内容にしか思えない。けれど私は、あの世界を見てしまっていたから。
立ち上がり押入れのふすまを開けた。――塔のような城の一部が見える空が広がっている。
「一昨日の対価は、ここをラーバンダー王国と繋げたってこと?」
『そう』
「ここは……いつまで繋がっているの?」
『無期限だよ』
「無期限!?」
『君が望めば閉ざすことは出来るけれど……』
「望みません、止めて下さい」
『この場所、に特定した場だから、扉を変えたくらいじゃ場は動かないけれど、この家自体を建て直したら場はなくなるよ』
「えええーーーーーーーー!」
『そうしたら新たなミュトラスの力を使って、場を違う場所に作り変えればいい。君ならそれが出来るのだから』
「……」
なんだか分からないけれど、なんだか分かったような気持ちになる。
『昨日もミュトラスの力を使ったから、あと3回願いを叶えられるよ』
「3回!?」
『君の能力は、未来視、だけど、予測の未来視じゃない。現実を君の絵に寄せる方向の、強力な未来視だ』
「……はい?」
『願望視、という方が近いかもしれないけれど。とにかく、君の絵は、いつか現実になるものが描かれている』
「……はぁ」
『昨日3枚増えたから、なんでも願いを叶えられるよ』
「……よく分かりません」
昨日何を描いたかって、ひたすらサース様の絵を描いていただけのような気がするけれど……。
「とりあえず、ナビが欲しいです……」
『ナビ……』
「ナビというか、道案内というか、学園の中をウロチョロするだけで誰にも見つからないように必死にならなくてはならなかったので、安全に動き回れる情報が欲しいというか……」
『面倒くさいなぁ』
神(?)の使い(?)が不適当な言葉を言っていた気がする。
『情報だけなら、心の中で僕に呼び掛ければいつでも教えてあげるよ。僕の名前はミューラー』
「了解です!ミューラー」
『聖女なんだから、学校の生徒にしておいてあげるよ。そうすれば寮に部屋も持てる。寮の部屋のクローゼットもここに繋がる場にしておくよ』
「ええ!!神ですか!!ありがとう!!!?」
喜びが心に満ち溢れ、今すぐあの世界に旅立ちたくなってしまった。
「支度をしてくるので、すぐに旅立ちます……!」
『待ってよ。願いごとは?3つあるのだけど』
「……あれ、減ってないの?」
『減ってないよ』
「……有効期限は?」
『無期限』
「……じゃあなんだか分からないので保留で!」
そう言い捨てると、部屋から出て顔を洗いに行く。さー今日も楽しい一日がはじまる!はず。
着替えを済ませて乗り込みました。本日も無事に学校の屋上です。
すると、ミューラーの声が降って来た。
『校長室に行ってくれない?制服が用意されてるから』
「……仕事早いね」
なんでも学校にご神託を下ろした後、すぐに準備をしてくれていたそうだ。
校長室どこだったかなー。と、ゲーム内でも明らかにされていなかった校内地図に思いを巡らせる。ファンサイトで考察されていたんだよなぁ。
「1階かなぁ」
『1階の西側だよ』
「……ナビ居たーーー!」
忘れてました。なんて使えるナビなんだ。
「ん?西とか東とか、この世界にもあるの?」
『基本的な部分はよく似ていて、ほぼ同じだよ。二つの世界は作られたとき一つだったから』
「……はぁ」
また分からない話が始まりそうだな、と思った時に、校長室の前に辿り着いた。
ノックをすると返事が返ってきたので、ドアを開ける。
「聖女様、よくいらっしゃいました」
柔和な笑顔の、灰色のワンピースを着た、銀髪の年配の女性が佇んでいた。
(校長先生ーーーーーー!)
ゲームの中でも学校行事のあるときに度々背景の中に存在していたその姿を、何度も見たことがあった。
「聖女様は、いつも突然やってきます。この世界からも、他の世界からも。ミュトラスのお導きでやってくる聖女様を保護する目的と、そして、知識を教える役目を担って、この学園が創設されました」
(……なにその裏設定。初めて知りましたよ)
「制服はこちらです。寮の部屋まで、わたくしが案内致します。その道中でご説明を致しましょう」
紙袋を渡され、そこに黒い制服が入っているのが見えた。
校長先生は、いつ来てもいい聖女の為に基本的なものは寮の部屋に揃えているので、全て使ってくれていいと教えてくれた。
また、特別教室で授業をするので、時間がある時にだけくればいいとのこと。
私だけではなく異世界から聖女が来ることがあり、普通の授業を受けられない人もいたという。
異世界、って概念、この世界にあったんだーと驚いた。もちろんゲームの中に描かれていなかったし。
寮の部屋も聖女用の別棟の中にあって、他生徒と顔をあわせることなく出入り出来るようになっていた。校長先生と別れてから部屋を確認してみたけれど、確かにタオルから下着、普段着のワンピース、また通貨らしいものまで揃っていた。教科書とノート、筆記具、また鞄などもあった。
制服が手渡しだったのは、サイズを確認して渡したのかな?と気になりつつも、着てみたいというむずむずとした欲求が沸き起こる。
黒のワンピースの制服だった。所々に上品な白のレースと、刺繍が施されている。
ラーバンダー王国一番の、由緒正しい家柄の子息と、特別な能力を持つ聖女のみが入学を許される、フィルド学園の制服。ヒロイン聖女が着ていた、あの、あの制服!
(あああああ)
今私はそれを着ている。顔が違うけれど。平たい顔族だけど。ヒロインのコスプレをした気持ちになり、気分が高揚する。
(そうだ、今日はこのまま出かけよう!)
学園の生徒であるならば、制服で出歩いても不審者にはなるまい。
街に出て来た。
寮の部屋を出る前にカレンダーを確認したら、なんと地球のカレンダーとほぼ一緒だった。本当の異世界ならこんな偶然無いだろうし、ここはやっぱりゲームの世界なのかもしれないな、なんて思う。そして今は5月の2週目の休日だった。
今がサース様の幾つの歳の5月かは分からないけど。
もしも、ゲームが始まった年の5月ならば!
それが意味するものは一つだった。
(ヒロインの、初デートイベント……!)
ヒロインと一番好感度が高い攻略相手が、遠回しなデートに誘い休日を町で過ごすのだ。
あんなにカッコイイのだから、サース様が選ばれているに違いないと私は思い、デート場所の一つを張ることにした。
ミッションワン。
デートを覗き見ろ。
昨日はうっかり見つかってしまったけれど、隠れてこっそりお姿を垣間見るくらいなら、許して欲しいと思う。
ゲームの中で2人は、お昼に街角のオープンテラスのカフェに入るのだ。
サース様は人と食事を共にしたことがほとんど無くて居心地悪そうにしているのだけど、ヒロインは和ませるように穏やかに隣で微笑み、そんな彼女に心を開いていく――
広場の角から待ちかまえること30分。
ピンク色の髪(生で見るとインパクトが強かった)のヒロイン聖女と共に、金髪の王子様のような男性が現れた。
王子様のような、というか王子様だった。彼の名前は、アラン・ラーバンダー。この国の第二王子だ。金色のサラサラとした髪と、緑色の瞳を持つ、天使のような笑みを浮かべる美男子だった。平民のようにラフな格好に身を包み、眼鏡も掛けていたけれど、それでも隠し切れない美しさが辺りに溢れていた。
(アラン様もカッコイイ……)
ため息が出るような思いで、二人が微笑み合う美しい情景を隠れ見ていた。
しばらく見つめたあとに、はたと、気付く。
(サース様は……いずこに?)
ヒロインが今アラン様ルートを進んでいるのだとしたら、サース様には……。
魔王堕ちエンドが、待っている。
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サース様のハッピーエンドを迎えたときにだけ、サース様は魔王になる寸前で聖女に心を癒され幸福なエンドを迎えることが出来る。
ゲームの中でのサース様の運命の残酷さが、私は耐えられない位哀しくて、心を掴まれたのだ。
ふと気付くと、私の反対側からとても美しい人――黒い髪黒い瞳の――サース様が歩いてくるのが分かった。
そうだ、ここは、聖女ヒロインに初めて嫉妬し、恋心に苦しみ出す、サース様が魔王となる布石になる場所だったのだ。
私は駆けだした。
全速力で駆けだした私を、町の人たちが驚いたように見つめ、そして、彼も私を振り返った。
何気なく振り向いた、その長い睫毛の下の黒い瞳に驚きが浮かぶ。
「お前……」
ああ、声まで良い……私はちょっと泣きそうになりながら、彼の視界に入ったことを確認するとカフェとは反対方向に走った。
少し走っただけで息切れしてしまい、街角でぜぃぜぃはぁはぁと息を整えていると、後ろから足音が聞こえてくる。振り向くと、サース様が立っていた。
白いシャツに黒いズボンを履いた普段着の姿で、少しだけ息を弾ませて立つサース様は、とてもナチュラルな男の子のように思えて、私は心臓をどきどきとさせる。普段着なんて貴重な一枚だし!
無表情に私を見据えていた。
片手を顎に当てて、不機嫌そうに何かを考えている。
「……学校の生徒だったのか」
ぽつりとそう言う。私は制服を着ていた。
なんと答えようかと思っていたら、突然、小さな声を出して笑い出した。
「……さすらいの絵かきじゃなかったのか」
口元を押さえながら、面白そうに肩を揺すって笑っている。
笑うたびに、長い黒髪が揺れる。
輝きがもれているみたいだって思った。笑うたびに光がもれているみたいだって。
呆然と笑う姿を見つめていると、私の視線に気づいた彼は、気まずそうに視線を伏せしばらく考えるようにしてから言った。
「……スケッチブックを預かってある。寮に帰ればいつでも返せるが……このまま取りに来るか?」
それは一緒に帰ってもいいということなんでしょうか!?
「ご迷惑じゃなければ……」
ちょっと考えてから、無難にそう答える。
私の返事に、サース様はふっと笑った。
黒い瞳が細められ優しく輝く。漂う色気にクラクラとした。
「魔道具屋に行って来たところだ。もう帰るだけだが……昼を食べてないな。お前は食べたのか?」
「まだですけど……」
「良かったら、帰り道のカフェにいくか?」
「行きます!」
帰り道ならば広場のヒロインデートカフェとも違う場所だろう。
これはきっと神様がくれたご褒美なのだ。なんのご褒美かも分からないけれど今はそれを堪能したい。
嬉しくて堪らなくて、笑顔でニコニコとサース様の横に歩いていくと、少しだけ不思議な顔で見下ろされた。
「……行くぞ」
「はい!」
そうは言っても、道中だんだんと昨日の所業を思い出し、不安になってきた私は、思っていたよりも話しやすそうな彼に聞いてしまった。
「私のこと怖くないんですか……?」
「……」
するとまた不思議そうな顔で見下ろされてしまった。なんだろう。
「……何を怖がるんだ?」
「……不審者だったから……」
自分で言ってても凹む。というか恥ずかしい。穴があったら入りたい。
顔を真っ赤にして俯いて言う私を、また、ふっと笑う声がした。
「ずいぶんと変わった人間だとは思うが」
……はっきりと言われてしまった。
「魂がこもっているような絵だった。絵を描くのが好きなんだろう?」
あなたさま限定ですが。魂こもってましたか。
「はい……」
「次からは隠れてないで描けばいい」
「はい?」
「あれだけの絵が描けるなら隠れる必要もないだろう」
一体どういう意味で言っているのだろうかと、頭がぐるぐるとする。
「あなたの絵を描いてもいいの?」
名前を知っていると知られたら、またストーカー疑惑が生まれるかと思い、私はあえて名前を出さなかった。
するとサース様は立ち止まり、私を見下ろすと、少しだけ優しく微笑むように言った。
「俺の名前はサースティー・ギアン。放課後はいつも研究室にいる。いつでも来るといい」
太陽を背にした、明るい日差しの元の、暗黒に堕ちるはずのその瞳は煌めきながら私を見ていた。
「行きます!絶対行きます!明日行きます!!」
意気込んで大きな声で言った私に、サース様はまた笑いそうになっていた。
おかしいな、こんな笑い上戸の人だったかな、と私は違和感を抱えていたのだけど、その後のカフェのランチも、寮までの帰り道も、機嫌の良さそうな表情を私に向けていた。
あと私は偽名に、サリーナ・リタと名乗ることにした。日本名は成田砂里だけど、これだと違和感あるし。
そうして寮の部屋に戻り、クローゼットを開けると、その向こうに押入れが広がっていた。
うーん、異世界から見つめる押入れってかなりシュールだな、と思いながらも。制服を脱ぐと洋服に着替え、私はクローゼットの中に入り込んだ。
(学園の生徒になれたけど、そんなことよりサース様とカフェに行けた……もう成仏してもいい……!ああでも、明日に備えて今日は早く寝なくちゃ……成仏している暇なんてない……そんなことを思っているうちに寝てしまった日)
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