口から出たのは、愛

らむね

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口から出たのは、愛

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 美桜 麗(みおう うらら):高2-A。凪來のことが大好きな、ヘタレイケメン攻め。陽キャのふりしている陰キャ。
 凛藤 凪來(りんどう なぎ):高2-C。いつも飄々とした態度でいる、クール美人受け。言葉足らずなところがある。麗が素を見せる数少ない人物。
 架堂 咲皐(かどう さつき):高2-D。凪來の幼馴染。2人の関係を知っている唯一の人物。麗が素を見せる数少ない人物。
 柳木(やなぎ):高2-A。麗の友人。麗の陽キャ姿しか知らない。


「あ、凪來くん。おはようございます」
 朝、駅のホームで凪來を見つけた麗は声をかけた。
 凪來はいつも通り漫画を読んでいる。
「…はよ。……ねぇ、近い。ただでさえ暑いのに、余計暑くなるんだけど」
「っす、すいません。…それ何巻ですか?見たことないシーンなんですけど」
 凪來の手元にあるのは麗たちが大好きな漫画で、麗はそれが気になるようだった。
「これ最新。昨日発売日だったの、知らないの?」
「えっほんとですか、完全にリサーチ不足……帰りに本屋、付き合ってくれませんか?」
「やだ。本屋なら昨日行ったし、今日行く意味がない。咲皐と行けば?」
「そうなりますよね……いいですよ。僕、咲皐ちゃんと二人で行きますので」
 麗は二人ということを強調したが、
「そうすれば」
 と、凪來は相変わらず無関心な様子。
 (うう…相変わらず凪來くん塩対応……まあ、そこが好きなんだけど)
「ボソッ少しくらい嫉妬してくれてもいいのに……」
 無関心な凪來への不満がポロっと口から出てしまった。
「なんか言った?」
「い、いえ!何も!!」
「…?あっそ」
 (まずい、思わず口に出てた。聞かれたら絶対重いって思われる…)
 二人の間に沈黙が流れる。
 なんとなく気まずい麗は、思わず口を開いた。
「っな、凪來く…」
「もしも~しおふたりさ~ん。朝から駅でいちゃつくの、やめてもらえません~?」
「わっ!?咲皐ちゃん、急に出てこないでください。っそ、それにい、いちゃついてなんかいません!!」
 急な咲皐の登場に麗は驚く。
 それとは反対に、凪來は咲皐を気にすることなく漫画を読んでいた。
「へっへっへ~。これに驚くとはミオはまだまだだね~。
 ってか凪來!それはもかしなくても最新刊だよね!!初日に入手するなんてさすが~。私はまだだよ~」
 やはり咲皐も漫画のことを話している。
「咲皐ちゃんもまだ買ってないんですか?」
「も、ってことはミオも?」
 咲皐の問いかけに麗はうなずく。
「それでなんですけど、放課後本屋付き合って貰えませんか?」
「ゴメン!!今日は委員会があるから…ちなみに凪來は?」
「秒で断った」
 凪來はスパッと答える。
 その言葉に麗は少し痛みを感じた。
「だよね~。…凪來に断られてるミオが目に浮かぶ……ドンマイぼっち」
「咲皐ちゃん!?僕はぼっちなんかじゃないですよ!!…」
 咲皐が茶化しているとその時、二人はグンッと引っ張られた。
 何かと思えば凪來が二人のリュックを引っ張っている。
「ねぇ、電車きたんだけど。早く乗んないと置いてくよ」
「うわっホントだ。凪來ありがと~」
「ありがとうございます、凪來くん」
 3人は急いで電車に乗り込む。
 最寄り駅で乗る人は少ないが、電車内は通勤ラッシュで混雑していた。
 車内はぎゅうぎゅう詰めなので、凪來と麗の体はぴったりとくっついていた。

 麗が、朝から凪來に触れられることを内心喜んでいるのはヒミツだ。

 ***

「はあ…つ、疲れた……」
 (なんで先生はこんなこと頼んで来たんだ。別に今日じゃなくてもいいのに。というかなんで僕なんだ?)
 放課後、授業が終わってからしばらく経っているのに、麗はまだ学校にいた。
 
 _遡ること数時間前_
 (帰りに近所の本屋で漫画買って帰るか。ついでに他の新刊チェックも…)
『おっ美桜、いいところに。お前今から帰るところだろ。ちょっといいか』
『っひ、あ、浅川先生…な、なんでしょうか』
『来週配布のプリントのホチどめ、手伝ってくれ』
『うぇ、えっと……は、はい。わかりました…』
『おお、ありがとな。じゃ、これ頼む』
 ドサッ
『え、』
 (これ頼む、で渡してくる量かこれは…)
『じゃ、終わったら職員室に届けてくれ。頼むな』
『……はぃ』

 (やっぱ、断れないよ。浅川先生、なんか陽キャ代表みたいなオーラあるし)
「はぁ、早く新刊読みたかったのに……。ん?」
 無事仕事を終え、1人帰ろうと廊下をトボトボ歩いていると麗は聞き覚えのある声がして立ち止まった。
「凪來、…が……で」
 (やっぱり凪來くんと咲皐ちゃんだ。咲皐ちゃん、委員会終わったのかな?凪來くんは何してたんだろう)
「でさ~、実際のところ、凪來はミオのこと、好きなの?」
「えっ」
 咲皐の質問に麗はドキッとした。
 (咲皐ちゃん、急に、どうしたんだろう)
「急に、何」
「いやだって気になるし。好きってのはミオからはよく聞くけど、凪來から聞いたことないなって思って。いっつも塩対応だし。で、どうなの?」
 盗み聞きは悪いと思いながらも、凪來の返答が気になって麗はその場に立ち止まって耳を澄ましていた。
 (凪來くん、咲皐ちゃん、ごめんなさい!!……でも、凪來くんはなんて答えるんだろう)
「別に麗のこと、好きじゃない」
「…っひゅ」
 (う、そ…でしょ……)
 凪來のその言葉を聞いた瞬間、麗の頭は真っ白になって、気づいたら走り出していた。
 いつもなら気にする周囲の目も、先生の注意の言葉も、今は気にしていられなかった。
 そこからはもう何も覚えていなくて、いつの間にか自分の家の、自分の部屋に着いていた。
 ドサッ
「……はぁ、」
 麗は充電が切れたように制服のままベッドに倒れ込んだ。
 麗の頬に涙がつたい、枕を濡らしていく。
「ぅう……なんで、」
 (やっぱ、好かれてなかったか。…だったらなんで凪來くんは俺の告白受けたの……
 覚悟はしてたはずなんだけど、やっぱ実際に言われると、)
「悲しい、な……」
『麗のこと、好きじゃない』
 凪來の言葉を思い出したらまた涙が溢れてくる。
 涙で枕がグチャグチャになったが、それでも涙は止まらなかった。

 ***


『凪來くん!待ってください!!』
『なに。俺言ったよね、お前のこと好きじゃないって。鬱陶しいから消えてよ』
『な、なんで……なら、告白なんでOKしたんですか』
『そもそも俺OKっていってないんだけど。思い上がんな』
『え……な、凪來くん!待って!!凪來く…』

「凪來くん‼!!」
 ドサッ
 麗は衝撃で目を覚ました。ベッドから落ちたのだ。
 窓の外は真っ暗で、街は静まりかえっていた。
「ゆ、夢…?あれ、僕……」
 (そうか、あのあと寝落ちたんだ…うわ、制服にシワついてる……)
「っくしゅ…さむぃ」
 (あっ、エアコンつけっぱなしだった……)
「もう、母さんたち、起こしてくれても良かったのに……って、今みんな留守だっけ、ついてない……」
 愚痴をこぼしながら鞄をあさり、スマホを取り出す。
「ぅげ、3時…ってことは9時間も寝てたの……」
 (今日、凪來くんと顔合わせるの気まずい……咲皐ちゃんとも会いたくないなぁ…
 いつもより1時間早く出よう)
 一度目が覚めてしまったらもう眠れないので、麗は起きることにする。
 麗は心なしかいつもより重たい体を動かして家を出る支度を始めた。

 ***

 (……どうしよ、頭グラグラする)
 3限目、麗は体調が最悪だった。
 やはり、エアコンつけっぱなしで寝たのが悪かったのか、風邪をひいたようだ。
 でも麗は先生に体調不良を伝えられるわけがなく、そのまま耐えて3限まで来てしまった。
 幸い凪來たちと顔を合わせることはなかったが、問題は次の体育だ。
 凪來のクラスとの合同授業である。
 昨日あんなことを聞いて、しかも体調も崩している状況で正直凪來とは顔を合わせたくはなかった。
「…では、今日はこれで終わりです。今日の復習をちゃんとするように」
 ぼーっとしていたらいつの間にか授業が終わって、数学の先生はもう教室から出ていた。
 (マズい、全然話聞いてなかった。……後で柳木にノート写させてもらうか…)
「みーおうっ!早く着替えてグラウンド行こうぜ!!」
 後ろから誰かが抱きついてきた。
「うわっ柳木、お前元気だなあ。体育なんて楽しいか?」
「おう!楽しいぜ!!なんつーか、体動かすと元気になれっからな!」
「出た脳筋。…あ、そうだ。後で数学のノート写さしてくんね?」
「いいぜ!でも、お前がノート写してねーなんて珍しいな」
「まぁ、ちょっとね……」
 柳木に不審がられて言葉を濁したが、ふーんと言うだけでそれ以上は追求されなかった。

 グラウンドに出ると、すでに凪來は来ていた。
 今のところ麗には気づいていないようだが、麗は凪來から隠れるようにして動いた。
 ピピーッ
 先生が授業開始のホイッスルをならす。
「今日は二人一組の準備運動のあと、シャトルランをやる。シャトルランも二人一組でやるからな。まず、10分間準備運動だ。始め‼」
「「「はーい」」」
 二人一組と言われたら、いつもは凪來を誘っているが、今日はそういうわけにもいかず、麗は柳木を誘った。
「なぁ柳木。今日俺と組んでくんない?」
「おう‼…今日はいつもの凛藤とじゃなくていいのか?」
「いいの、別に」
「…喧嘩でもしたか?」
「まあ、そんなとこ」
「ふーん。早く仲直りできるといいな!」
「…そだね。それより、早くやろ。時間なくなっちゃう」
「だな!」
 麗は誰かに見られているような気もしたが、無視して準備運動を始めた。

 _その頃凪來は…_
「……始め!!」
 (二人一組、か…。まあ、いつも通り麗が誘ってくると思うからそれでいっか。それに他に組む人いないし)
 凪來はそう思い麗の方を見ると麗は別の人に声をかけていた。
 (えっなんで……いや、別に俺以外がいいって言うならならいいんだけど…)
 そう凪來は納得しようと思ったが、いつも声をかけてくれる麗が自分のところに来てくれないのはモヤモヤした。
 その時、凪來は麗の様子に違和感を覚えた。
 (なんか麗、顔赤くない?それに少しフラフラしてるし。……まあ、気のせいか)
 けれど、準備運動のペアに誘ってくれなかったことで拗ねていた凪來は見てみぬふりをして、自分のペアを探しに行った。
 その選択がのちに後悔を生むことも知らずに。

 準備運動はまだ良かった。でも、シャトルランとなるとキツい。
 もともと運動が苦手な麗は体調不良も重なってとても辛かった。
 足はフラフラで、頭痛も酷くなっていて、走るのもぎりぎりな状態だった。
 でも、50回以上やらないと、放課後練習+後日再テストがあるので、やらないわけにはいかない。
「美桜ー、今25回だよー」
 記録をしている柳木が、現在の回数を伝える。
 (い、今…25回……あと半分、か…)
「きっつ……」
 思わず本音が漏れるが諦めるわけにもいかず、麗は流れてくる地獄の音楽とともに再び走り始めた。
 その時、目の前が真っ暗になる。
 (えっ、なにこれ…や、ば………)
 ドサッ
 足がもつれて麗は転んでしまった。
 周りの生徒が気づいてザワザワ騒ぎ始める。
 先生がやってきてなにか話しかけているが、朦朧とした意識の中では何を言っているかわからなかった。
 もうだめ、と思い意識を手放す瞬間、『麗』とだれかに呼ばれた気がした。

 ***

「…んう、ここ、は…?」
「あ、ミオおはよ、ってもう夕方だけど。体調、大丈夫?」
「なんで、咲皐ちゃんが…」
 麗が目を覚ますと目の前には咲皐がいた。
 咲皐はのんびり漫画を読んでいる。
「ここは保健室。ミオは体育の途中で倒れたの。覚えてない?」
 咲皐に今の状況を言われて、覚醒してきていた麗は自分がどれだけ人に迷惑をかけたのかに気づき、一気に青ざめた。
 目の前に、今日会いたくなかった二人目がいることにも。
「ねぇ、今日なんで朝いなかったの?体調悪かったなら言えばよかったのに。せめて連絡だけはしてよね」
 やはり聞かれた。
 でも、『凪來くんに好きじゃないって言われてふて寝して風引いた』なんて口が裂けても言えない。
「………」
 麗はだんまりを決め込んだ。
「まあ、ミオのことだから理由があったんだろうけど……。でも、すっごく心配したんだからね。私も、凪來も」
「え……凪來くん、も…?」
 咲皐の言葉に麗は驚く。
「そうだよ。…ほら凪來、隠れてないで出てきなよ。そんな少女漫画みたいなベタな行動してないでさあ」
 咲皐は保健室の入り口の方に向かって言うと、ドアの後ろから凪來が姿を現した。
「おい、少女漫画みたいなことなんて俺してないんだけど」
「はいはい、どの口が言うんだか。じゃ、私は飲み物でも買ってくんね。お二人でごゆっくり~」
 と言って咲皐は保健室から出ていったが、今の麗には凪來と二人なんて拷問のようなものだ。
「「……」」
 二人の間には気まずい沈黙が流れる。
 先に口を開いたのは、麗だった。
「あっ、あの……僕のこと、好きじゃない、んですよね」
「は?」
 麗の発言に凪來は戸惑う。
 麗は凪來の目を見ずに続ける。
「ご、ごめんなさい。昨日、放課後聞いちゃって……今まで、僕の一方的な気持ちに巻き込んじゃって、すみませんでした」
「は、おまっ、急に、何言ってんだよ……なに、勘違いしてんの?」
「へ?勘、違い…ですか?」
 麗も凪來の発言に戸惑い、再び沈黙が訪れる。
 その時、
「おっまたせ~!飲み物買ってきたけど、どれがい~い?」
 と、腕にいくつかのペットボトルを抱えた咲皐が入ってきた。
「……って、どしたの二人とも。そんな、気まずそうな顔して。うーん……
 あっ、ミオ、昨日あの漫画買った?私は結局昨日も買えなかったんだよね~」
 重い空気を変えようと、咲皐は昨日話していた漫画の話題を出した。
「昨日はちょっと、色々あって、買えなかったんです…」
「そなの?でも、なんも予定ないって言ってなかった?」
「浅川先生に雑用を頼まれて……」
「ミオもか~。凪來も頼まれててさ~、私も委員会の後で手伝ったんだよね」
「そうなんですか!?だから、教室に…」
「え、まさか見かけてた?なら声かけてくれたらよかったのに~。そしたら一緒に本屋行けたかも~」
「声、なんてかけられませんでしたよ。…だって、凪來くんが僕のこと好きじゃないって、言って……」
 言っているうちに涙が溢れてくる。
「だからそれは勘違いだから」
 また凪來が否定する。
「勘違いじゃないです!!だってちゃんと聞きました、から……」
「まあ落ち着きなって。泣くともっと辛くなるよ?
 それとミオ、それって『好きじゃない』の後まで聞いた?」
 泣いている麗に咲皐は質問する。
「いっ、いえ…あのあと、すぐに家に帰って……」
「やっぱりかぁ。それ、勘違いしてるよ」
「で、でも…」
「昨日ね……」

 _昨日の放課後_
『でさ~、実際のところ、凪來はミオのこと、好きなの?』
『急に、何』
『いやだって気になるし。好きってのはミオからはよく聞くけど、凪來から聞いたことないなって思って。いっつも塩対応だし。で、どうなの?』
『別に麗のこと、好きじゃない』
『え、それ酷くない?ならなんで付き合ってるのよ』
『そうじゃなくて、…………あ、愛してる、から…。好き、なんかじゃ足りないくらい……』
『うわっ、うわ~…。目の前に私の知らん幼馴染がいる……
 まあ、幸せなら、いいんじゃん』
『うん、幸せだよ。とっても』
 パシャ
『何撮ってんの?盗撮なんだけど』
『いやあ、めっちゃいい顔してたから、ミオに送ろうと思って』
『おいやめろ』
『ヤダね。てかもう送っちゃったし』
『おい!!!』
『さ、仕事終わったんだし、職員室行こ。早くしないと6:30のアニメに間に合わないんだけど』
『分かったから引っ張るな!!』

「ってな感じで、仕事手伝ってあげてたら、惚気られたわけさ」
 咲皐は、はあ~と溜息をつく。
「っそ、そう、なんですか?」
 衝撃の事実で、麗はポカンとする。
「おい、なに勝手に話してんだよ。……そうだよ。だから、お前は勘違いしてただけなんだよ」
「うっわ~~……超恥ずかしい…。なんか、勘違いして、それ気にして、しかもそのせいで体調崩すとか、さいあく……」
 事実を知った途端、麗は恥ずかしさでいたたまれなくなった。
「え、ミオが体調崩したのって、そのせいなの?」
「~~……!!ぼけつほった……そうですよ。なぎくんのはなしにショックうけて、ふてねして、えあこんつけてたからかぜひいちゃったんですよ…」
 熱のせいか、恥ずかしさのせいか、麗は顔を赤く染めて言う。
「っふふ、凪來、めっちゃ愛されてんじゃん」
 咲皐が冷やかす。
「うっせ。…てか麗、なんか様子おかしくねぇか」
 凪來が麗の異変に気付く。
「…確かに。なんか、喋り方が変」
 その時、麗の体がぐらりと傾いた。
「なぎ…く…だい、すき……で…」
「うおっ」
 ポスッ
 凪來が倒れてきた麗を受け止める。
「スー…スー…」
 麗から規則正しい寝息が聞こえてきた。
「あ、寝た」
「あー…体調悪いのに喋らせ過ぎちゃったかな。それにしてもミオ、昨日のこと、聞いてたとは…
 凪來、ミオのこと大切にしなよ」
「言われなくても」
「わ~。凪來、顔真っ赤。照れてやんの」
 咲皐が揶揄う。
「うるせえな。夕日のせいだよ」
「……ふふっ。どうだか」

 ***

「おっはよ~ミオ!体調回復したんだ、良かったね!!」
 次の日、麗を見かけた咲皐は声をかけた。
「咲皐ちゃん、おはようございます」
 麗は見ていたスマホの画面から顔をあげ、咲皐に挨拶を返す。
「何見てんの…ってあれ?そのスマホの待ち受けってもしかしなくても……」
 咲皐は麗のスマホの待ち受けに目を留めた。
「そうです!この前送ってもらった凪來くんの写真です!!ほんと、ありがとうございました!」
「っふふ、そんないいって。それにしてもこの写真いいよね~。凪來のこの表情はレアだよ~」
 二人が凪來の写真で盛り上がっていると、
「ねぇなに話してんの」
 後ろか凪來が現れた。
「うわっ凪來!?」「凪來くん!!」
「噂をすれば、だね~」
「噂?…って麗、その写真なに待ち受けにしてんの」
「えっ、と…その……な、凪來くんが可愛くって、つい……。ごめんなさい…」
 麗はモゴモゴと言い訳を言う。
「つい、じゃない。それに俺は可愛くないし…」
「いえ!!凪來くんはとてもかっこよくて、とっても可愛いですから、自信を持って下さい!!」
「…ええ……」
 麗の発言に凪來は戸惑う。
「凪來~、照れてんの~?うぶだね~」
 咲皐はニヤニヤしながら言う。
「……うっせ」
 凪來はプイッとそっぽを向いてしまった。
 (なんだこれ、顔熱い。可愛いって、嬉しくないはずなのになんでこんなドキドキするんだ……?)
 凪來はまだ、この顔の熱さが何かを知らない。
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