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ビビりとモフモフ、冒険開始

運が働かないこともある?

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真っ二つにした幼虫に、恐る恐る近付く。
ドロップ品は、小さな魔石と緑色の皮だ。
皮グロいよ…おぇ……。

「ビッグワームだわ。…どうやって斬ったのか疑問だけど…よくあの距離で倒したわね。」
「ぅ~……こんなもん居る森なら、早く言ってよ…!」
「そんなに、危険なモンスターじゃないわよ?」
「未來くん、昔からこういう系苦手ですよね。」
「……ククッw」
「ラルフ……?」

俺の反応を見て、ニヤリという効果音が着きそうな、悪役スマイルになるラルフ。
ドロップした皮を拾い、此方へやってくる。

え、ちょっと、何をしようというの。
やめて、およしになって。

「ほら、ミライ。おまえの戦利品だ、しっかり持てw」
「嫌だぁああああ!!やめてやめて!ダメなんだって!三次元のキャ●ピー・ビー●ル・コン●ン・ケム●ソ・ツチ●ン・ミノム●チ・クル●ル・フ●デ・メラ●バ・アゴヂ●シ・デンヂ●シの類い(要約・幼虫系)はダメなんだって俺ぇええ!!」
「きゃた…?」
「なんだそれは。呪文か?」
『ふわぁ~……?なにかあったですか?』
「お、落ち着いて未來くん!後半のポケ●ン、殆ど解らないですっ!」

ビッグワームの皮から、逃げるように後退る。

解ってるだろ、ラルフ!
俺はソイツを『絶対触れずに倒す』ために、馴れない剣を抜いて、気合いで斬撃を飛ばすなんてO●E PIE●Eみたいなことまでしたんだぞ!
既に泣きそうなんだ、勘弁してくれ!

「ラルフ、ミライくん虐めないの!」
「そうだな、すまん。お前にも、怖いものがあるのかと思って、ついw」
「ぅ~…ラルフのバカ…!ソレ早くしまって!」
『そうちょーさん、よしよしです。』

小梅…ウィンドホーク戦では、ずっと詩音の腕で寝てたけど、起きてくれた……。
癒されたい抱っこさせて。

「小梅、俺を癒して……。」
『いやしです?はいです!』
「ど、どうぞ、未來くん。」

ありがとう…あー……毛並み気持ちいい……!
体温あったかい!
頬っぺた舐めてくれたぁぁぁ!天使だ天使!

ぶにっ

ん?……背中に、なんか、ぶにって……

「っ……!み、ミライ…こっち来い……。振り向くなよ、絶対振り向くな…!」

それはフリかな、ラルフ。

「ミライくん、何も考えないで…こっちおいで?ね?」

レナさん、顔がひきつってるよ。

「ほ、ほら未來くん!木の枝投げて遊んであげますから!」

お前が投げたら大暴投だろ。

『??どしたのです?』

小梅は解ってないね…俺の胴と頭で見えないんだねきっと……
…………ありがとう、3人とも。
でも、ごめんね…解っちゃった……
その優しさで、寧ろ解っちゃったから…っ

「ぅ……」

ゆっくり上を向いた俺の目に

滅茶苦茶デカい緑の幼虫……ビッグワームの顔が映った。

───────

1時間くらい後

「それであの白炎か!フフッwあっはっはっはっはっ!www」
「笑い事じゃありませんっ!未來くんには、深刻なんですっ!」
[うぅ……絶対夢に出る……!]

思わず…思わず照日之業火を発動してしまい、森全体を覆う炎で、幼虫という幼虫を焼き殺してしまった。
対象となったのは、ビッグワーム,ポイゾネスワーム,レッドワームといった幼虫系モンスターのみ。
それでもかなりの数になったらしい。

らしいっていうのは…照日之業火吐き出し終えた後、背中が奴と密着したショックで、気絶しちゃったんだよね。
で、その間に小梅が森の木にお願いして、ドロップ品回収してくれた、と。
よくできた猫だ。
皮やら尻尾の針やらは、俺の目に触れないよう、さっさとアイテムボックスに突っ込んでくれたそうな。
ありがとう詩音。

目を覚ましたら獣に戻っていて、胡座かいたディアさんに、首をモフられつつ抱っこされてた。
寝惚けて、手を舐めちゃったのが悔やまれる。
お触り禁止令出したのに!俺から甘えてどうすんだぁっ!

そして『舐める』とか『甘噛み』とかに抵抗無くなってることに気付いて、暫く現実逃避した。
そうだよね…俺、狼だもんね……
毛繕い…グルーミングは、狼が親愛の情を表す手段だ。
頭では『ハードル高い、ムリだ!』って思ってても、体が勝手にそう動く可能性はある。慣れねば。

ディアさんは、親父さんからの依頼を終えて、町へ戻る途中だったらしい。
森が白い炎に包まれるのを目撃して、空間転移で飛んできたのだとか。

「しかし、ワーム種の見目に苦手意識を持つ者は多いが…フフフッw森のワーム種を、一度に全て焼き殺したのは君が初めてであろうなw」
「一歩間違えば、大火災だったぞ……。」
「良かったね…対象指定型の範囲攻撃あって。」

うん…良かった……
照日之業火無かったら、森1つ消し炭にしちゃってたよ…

「炎は私が消しておいた。ワーム種以外に被害は及んでおらぬ。」
[ぅ~…ありがとう…]
「未來くん、よしよし…マッサージしたら、少しは落ち着きますかね?」
[魅力的な提案だけど…動きたくなくなる……]
「君さえ良ければ運ぶが。」
[マジっすか。詩音、頼む。]
「了解です!」

なんかもう、お触り禁止令はいいや…お腹は絶対見せてやらないけど!
…ふぅ……詩音のマッサージ気持ちいい……
あ…背中、天使の水薬で洗ってくれるの?
ありがたや、ありがたや。

「人では入手に難儀するアイテムを、惜し気もなく使用するとは…面白いなw」
「体を浄めるのに、調度いいので。」
「……お前らどっかの貴族か?」
「い、いえいえいえ!そんな、滅相もない!」
[名も無きド田舎から、冒険者を夢見て飛び出してきた、ただの村人だよ。]
「…天使の水薬で体洗うって…まあ、ミライくんの精神力回復には、いいのかしら?」

間違っても詩音が魔法で作ったとは…
…このメンバーなら言っても大丈夫、か?
でも一応内緒な。一応。

『もみもみです?』
「そうですよ~。小梅ちゃんも、後でやりましょうね~。」
『わぁ~いです~♪』
「…君は、サンドキャットと会話できるのか?」
「あ、はい。魔力を使った念話の応用で。」
「…シオン、お前はどこまで規格外な魔法を……。」
「え、規格外って程のことなんですか?」
「教えて!アタシも動物と話したい!」
『おはなし、うれしーのです♪』
「ふむ……良きテイマーに成れそうだな。」
[獣特効テイムもあるしね。]

斯く言う俺も、とっくにテイムされてるよ。たぶん。
……詩音になら、降参ポーズ見せてやってもいいかな…いやでも、抱き着かれて大変なことになるかも。

お腹の毛に顔埋められて、猫吸いならぬ狼吸いされそう。
それは嫌だ。恥ずい。

「しかし、これからどうするミライ?」
[何が?]
「……森1つ呑み込む程の聖火を、お前はブレス攻撃として出した。お陰でこの森のワーム種は全滅、さらに土地が聖域レベルまで浄化されたぞ。どう説明する?」

……やっべ、照日之業火に土地空気清浄機能付いてんの忘れてた…!
ってか、ラルフからの訝しげな目が辛い!
『お前本当に獣人か?』って言ってる!

[…………ディアさんのせいにしていい?]
「それは無理だな。」
「無理、ですか?」
『ダメです?』
「私がやったと言えば、大抵の者は納得して、追及もしては来ないだろうが…鑑定慣れした者がワーム種の討伐証明部位を鑑定すれば、誰が倒したのかは一目瞭然だ。」
「か、鑑定って、凄いんですね……。」
「ネージュの鑑定は、かなりの精度よ。毎日皆の討伐証明部位や、採集アイテムの鑑定してるから…。」
「間違いなく、お前の仕業だとバレるな。」
「パパに直接渡せればいいんだけど……。」
『うぅ…コウメ、おやくに たてなさそうです……。』

どうしよ……ネージュさんに突っ込まれたら……

「……実は、今回の私の獲物がやたらと大きくてな。」
「大きい、ですか?」
「うむ。故にギルド前の広場で、御披露目しようかと思っている。レオンは奥で仕事中だろうが、ネージュには外へ出てもらわねばならぬな。」
[いや、それが何だと……]
「それです!皆が野次馬になり、ネージュさんもそちらへ掛かりっきりになっている隙に、レオンさんに渡せば……!」
「フフッ、そういうことだ。レオンはあの炎のことも、知っているのだろう?」
[う、うん!]

ディアさぁああんっ!
不審者とか、ウザイとか思ってごめんなさいっ!

『かいけつ、なのです?』
「はい!きっと上手くいきます!」
「……で?」
[ん?]
「俺だけ、何を知らないんだ?あの炎を見ても、レナもシオンも特に疑問には思っていなかった。ディアドルフ殿も、さっきの今で何かを理解しているようだが?」
[……あー…………]

……やっぱ気になる?
まあ、うん、ただの獣人が、聖火なんて吐かないよねー……。

…………どーしよ。
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