上 下
230 / 249
ビビりとモフモフ、冒険開始

奴はいつか殴る

しおりを挟む
水洗いは…水洗いだけは…!

『洗濯機は流石に可哀想だ』と言ってくれる、おとーさんにしがみつく。
そこで、おとーさんの身長(約2メートル)と変わらないデカさに成ってた事に気付き、冒険者さん達が近付いて来る前に、大型犬サイズに成った。
誤魔化せたかな…?

「洗わないと、ベタベタ取れないわよ。」
「攻撃魔法じゃなければ、大丈夫なんだろう?」
「未來くん、アレだけ自力で回れたんですから、きっと大丈夫です!」
『いや、皆アレよく見て?!洗濯機だよ洗濯機!』
「少量であれば、簡単に蒸発させられるのだが……」
「ここまでベッタリでは、難しいですよ。ほら、怖くありませんから。」
『やだぁーっ!!』

そうして、拒否柴のごとく抵抗すること数分。

『ごぼぼぼぼぼ』
「後でちゃんと、乾かしてあげますからね。」
「…せめて顔だけは、出してやらないか…?」
「頭から被っちゃってますから、ちゃんと洗ってあげないとダメです。」

抵抗虚しく、丸洗いなう。
いやうん、おとーさんが提案した『タオルでスライム液拭き取ってから、炎で残りを蒸発』は、タオルそんなに無かったんで、無理だってのは解るんだけど。

火属性云々以前に、息子を水製洗濯機に入れるのは酷くない!?
そりゃ頑丈だし、多少荒めに洗っても大丈夫だけどさ!
できれば、優しくシャンプーにして欲しかった!

「なあ…アレって、虐待か…?」
「止めるべきかしら…」
「いやでも、スライムの粘液って、結構強く洗わないと落ちないからな…」

ほら、冒険者さん達にも、虐待疑われてるよ!
ダメージには成ってないけど、鎮火しちゃったのか寒いし、息苦しいし、水流でグルグルして酔いそう。
うへぇ。

『ぷはっ』
「そろそろ、良いでしょうか。」
『す、スライムより……この洗浄方法がトラウマに成る……』
「未來くん、大丈夫ですか?」
『だいじょばないかも…へぷちっ…!』
「…お前、くしゃみ可愛いな。」
『あぅ。』

うー、寒い。
コレまでで、1番寒い気がする。
水に浸かってる時間が、長かったからかな?

「おいで。馬車の中で暖まると良い。」
『はーい。』

流石に、事情知らない人の前で、俺を炎に放り込むのはアウトだもんね。
庭の砂漠地帯で、じっくり暖めてもらおう。

馬車へ入る前に皆から少し離れ、ブルブルッとして水を飛ばす。

『あ、そうだ。おかーさん、コレ軽く火で炙って、このクッキーで挟んで、被害に遭った人達に配ってあげてほしいんだ。ある意味、俺らのせいで巻き込まれてるし。』
「ギルモブですか?…コレは、ミライ達のお金で買ったモノでしょう。」
『どのみち、今日のおやつ予定だったから。』
「解りました。ミライの分も、ちゃんと確保しておきますね。」

お願いね~。

───────
──────
─────

そんなわけで、庭の砂漠地帯にて。

おとーさんが出してくれた、青い炎へダイブ!!
全身隈無く当たるよう、炎の中でコロコロ転がる。

パッと見は拷問だけど、俺的には、炬燵でゴロゴロしてるのと、同じような感じだ。
ぬくぬく快適である。
因みにこの炎、普通の人間が触れたら、一瞬でウェルダンらしい。

「もう少し、優しく洗ってやりたかったが…済まないな。」
『まあ、早くベタベタ取れるように、あの方法選んだんだと思うし。いやー、まさか破裂するとは。』
「あまり知られていないが、奴等の打撃耐性にも限度がある。強過ぎる圧がかかれば、破裂して『核』をドロップするのだよ。」
『スライムの核?…薬の材料?』
「いや、割ると出てくる液体が、衝撃吸収材に加工できるらしい……ビルムに渡せば、喜ぶぞ。」

そう言って、バスケットボールくらいの、黒い玉を渡してきた。
巨人スライムの核かな?

『おとーさん、コレ奴等の一部だけど、大丈夫なの?』
「プルプルした半透明の生物でなければ、問題無い。」

成る程。とりあえず、貰っとくね。

そろそろ、暖まったかな。
軽くグルーミングもして、と。
よしよし、いつものフカフカな毛並みに戻った。

「もう良さそうか?」
『うん。あ、残りの炎モグモグしていい?』
「構わんぞ。」

やった!青い炎は、赤い炎よりちょっと美味しいんである。
うまうま。

ポカポカして、バトル前より体調良くなった気がする。
さて、皆の所へ戻ろう。

───────

てなわけで、外に戻って来た。

「ありがとうな、狼くん!俺達だけだったら、今日中には片付かなかったよ。」
「本当に、助かったわ。まさかスライムが、あんなに降ってくる・・・・・なんて…」
[え、降ってきたの?]
「ああ。俺達の目の前に、突然。明らかに人為的だから、盗賊の罠かとも思ったんだがな。」
「それにしては、私達が馬車を離れても、誰かが襲ってくる事もなくて。」
「悪戯にしては大掛かりだし、何が目的なのかさっぱりなんです。」

犯人の目的は、家のおとーさんをからかう事だよ……。

「ただでさえ助けて貰ったのに、オヤツまで貰っちゃって…」
[…迷惑料とでも思ってよ。犯人俺らの知り合いだから……]
「なんだって?!」
「こんな事をするなんて、どんな人なんですか?」
[基本ふざけてて、人をおちょくる事に全力で、愛人めっちゃ居るらしいけど、本命とは見詰め合うと素直にお喋りできない、残念なイケメン。]
「ちょw否定はしないけどさwww」

出やがった…!

「いやぁ、君達マジ最高だわw笑った笑ったwww親子2代で同じ失敗するとかw何してんのwww」

イラッ

『ダガミシスベシフォーウッ!!』
「うぉっとぉっ!?」

チッ、かわされたか。
どの面下げて来とんじゃ元凶!

「あはは、元気だなぁw」
『がるるる』
「ま、まさかコイツが…?」
「衛兵に突き出すか。」
「神妙になさい!」
「おっと、捕まる気は無いんだなぁコレがw」

いやもう、1回ブタ箱経験しとけ。

「何の用だ、ロラン。」
「ヤッホー♪君達をからかいに来たよ~♪」
「よし、歯を食い縛れ。」
「イ・ヤ・で~す☆」
「逃げたぞ!」
「追え!」

追いかけっこを始めた、神様2名と冒険者さんは、放っとくとして。
皆、大丈夫?

『とりあえず、シオンちゃんには近付けない!』
『お姉ちゃんは、死守するよ~♪』
『おしおき、する!』
『よーし、若葉と時雨は、そのまま詩音を頼む。陽向は無理しないでな。』

さて、俺は……

『《ヴァリアント》!!』

ぽふっ

「小梅。」
『むぅ。』

小梅の正面に行き、スッと正座。
両手の指で山型を作り、そっと地面へ着く。

「いきなりぶん投げて、すみませんでしたぁっ!!」

そして、ちゃんと目を見て謝ってから、頭を下げる。
コレぞ、正しい土下座の姿勢だ。

『ツーンなのです。』プイッ

くっ…可愛い…!声だけでも可愛い…!
兄ちゃん達の言ってた、夫婦生活の注意事項にあったな……
怒ってる嫁に『怒ってても可愛い』と思ってる事を悟られると、更に怒らせてしまうかもだから、顔に出すべからず。

「ごめんっ!巻き込みたくなくて!」
『優しく降ろすことも、できた筈です。』
「ごもっとも!」
『まあ、過ぎたことは良いのです。頭を上げるです。』
「はいっ!」

ちょっとツーンとしながら、寄って来てくれた。
ここで、むぎゅっとしちゃうと、謝る気が無いと見なされるかもだから、我慢我慢。

「ん?ちょ、小梅?背中ズボーはダメだって!ベストとシャツの間じゃ、俺が立ったら落ちちゃうよ?!」
『ここから出て欲しかったら、沢山ぎゅ~して、いっぱいナデナデするのです。』
「する!します!寧ろさせて!!」

俺にとってもご褒美だけど、良いの?
それじゃあ、早速…

モフモフ ナデナデ モフモフ ナデナデ ぎゅ~

「ふぅ……可愛い…」
『ふにゃ~♪』
「ミライ、炙ったギルモブ、取っておきましたよ。」
「ありがと!」
「あと食べてないの、未來くんだけですよ。とろーり蕩けて、美味しかったです♪」
「ヒナタとワカバの口を拭くのが、なかなか大変だったけどな。」
「ワカバくんは、自分で頑張ろうとしてくれてたんだけどねw流石に、難しかったみたいよ。」

それはしゃーないねw
つか逆に、小梅と時雨は、ベタベタに成らなかったのか。凄くね?

「あだだだだだギブギブギブッ!!」
「この度は、馬鹿が大変申し訳ありませんでした。コイツ、捕まえても即脱獄するのが目に見えてるんで、俺が預ります。」
「よ、よろしくお願いします。」
「…この人、どっから出てきた…?」
「さ、さぁ……」
「すまんな、ビルム。」
「いえ。」

あ、駄神捕まった。
ビルムさんが、時止めて取っ捕まえたのか。
きっとおとーさんじゃ、周辺に被害出さず捕まえるの、無理だったんだね。

「マジで痛いって…!ビルムくん、なんか何時になく、積極的に攻撃してない!?」
「軽く頭抑えてるだけ、ですけどねぇ。」
「コレが軽くなら、左腕のメンテするべきだよ!!わかったわかった、ごめんなさいってば!」
「はい、よく謝れました。んじゃ、姉さんと母さんがお待ちかねなんで、行きますよ。すみません、失礼します。」
「え」

わぁ、駄神が青ざめる所、初めて見た。
がんぱれー。死ぬなよー。

ピコン♪

ん?

[生きてる内に渡しとく。今回のお詫びに、ミライくんが見逃した、コウメちゃんの『焼きギルモブモグモグタイム(動画)』をどーぞ。]

おお。可愛いなぁ…できれば生で見たかった。

[てなわけで、シオンちゃんがやらかした、決定的瞬間の写真は保存させてもらう!]
[何に使うのさ]
[観賞用]
[観賞用…?!]
[ほら、今にも泣きそうなこの表情。素晴らしく苛めたい。]
[待て変態野郎]

決めた。
俺もっと強くなって、詩音のために、あの神1発ぶん殴る。

…あ。ビルムさんに、核渡せば良かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...