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ビビりとモフモフ、冒険開始

止まらぬ馬車にお客様

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馬車はのんびりと、街道を進む。
たまにすれ違う旅人や冒険者さんが、時雨と若葉を二度見したり、俺と小梅に『猫抱えてなにやってんだあの子w』的な視線寄越したりするけど、概ね快適だ。

屋根の上、やっぱいいよ~♪
景色良いし、風も陽射しも気持ちいい。
更に、小梅が即席砂座椅子作ってくれて、座り心地がアップした。
ついでに、詩音に俺と小梅の索敵をスキルリンクして貰って、より広範囲を警戒中。
盗賊出るって聞いたから、一応ね。
ガロンさん達や、玉ねぎ村に出た盗賊団のことかもしれんけど。

『シグレちゃ~ん、ちゃんと着いて来てるぅ~?』
『大丈夫だよ~♪』
『はいはーい。馬車自前とか、マジ助かるわぁ~。行きは護衛の人も乗せてたからさぁ、めっちゃ重くてぇ~。もう、乙女に何させんのよっ!って感じでさぁ~。』
『大変だったねぇ。』

シグレは、目の前を行く馬車を引いてる、ホーンホースの女の子とすっかり仲良しになっている。
名前はポプラちゃん。
喋り方がギャルっぽいけど、お仕事真面目にする良い子だ。
若葉と小梅は、周囲の警戒をしているからか、あまり会話に入ってない。

『そ~なのぉ~。てか、シグレちゃんホント大丈夫~?そっち超乗ってんじゃ~ん。』
『大丈夫大丈夫♪殆ど子供だし♪』
『そっか、重戦士とかも居ないしねぇ~。でも、疲れたら言ってよ?ウチのパパに訴えて、休憩挟ませるからさぁ~。』
『うん♪』

お馬さんに『パパ』と呼ばれてることを知ったら、御者さんどう思うかねぇ。
案外嬉しいのか、愕然とするのか。
俺は微妙な心持ちに1票。

…ん?何か近付いて来てるな。

『総長さん!』
「小梅も気付いた?敵性反応ではないね。」
『でも、味方とも出てないのです。』
『兄ちゃん、どうする?』
「とりあえず、俺と小梅で相手してみるよ。襲って来るようなら、若葉も入ってくれ。時雨は気にせず進んで。」
『了解!』
『はーい!』
『え、なになに?何か来てる系?やばそーだったら、守ってよ?!ウチ戦うとかマジ無理だかんね!』

安心しろ、その為に俺らが居るんだ。
いざとなったら、おとーさんも居るし。
んん~…?反応の方を見ても、道があるだけだよなぁ。
……上か?あ、何かデカイ鳥が…

『でぃーあーどーるーふーさーまぁー!!』

おとーさんの名前叫びながら、飛んで来てる。
あの様子なら、味方判定でいいかな。

「…今の声は、ロクスケか?」
「ロクスケ?またなんか和名っぽい…」

おとーさん、走行中に窓から屋根へ登るのやめて。
詩音と陽向が真似したら危ない。

『ディアドルフ様!お久し振りです、ロクスケですぅ!』
「久しいな。ロランの使いかね?」
『はい!』

飛んで来たのは、熱帯に居そうなカラーリングの、フクロウくんだった。
羽の先が黒で、すぐ内側が白、更に内側は赤黄色緑とめっちゃカラフルだ。
種類は、メンフクロウに見える。

『はじめまして、ミラージュオウルのロクスケと申します。』
「未來っす。」
『小梅なのです。よろしくです。』
『よろしくお願いします!マスターから、物凄く御迷惑をお掛けしたから、御詫びの品をお渡しするよう言われまして。まずミライくんには、此方です。』
『それは、何です?いい匂いなのです。』
「お酒?」
「…………ミライが成体に成るまで、封印だな。預かっておく。」
「えーっ?!ちょっとくらい飲んでみたい!」
「ダメだぞ。お前はヒトで言えば『乳幼児』の時期だ。酒は毒にしかならん。」
「ちぇー。」

せめて銘柄見せてよ。……『マタタビ酒』?

「……コレ、俺ってか小梅にじゃね?」
『えーと、マスターからの伝言メモが……「将来、大人の階段昇るときにでもどうぞ☆」だそうです。』
「小梅酔わせて襲えってか?!」
『にゃっ…?!』
「何と言うか…奴らしい贈り物だな。」

俺も小梅も、まだ仔狼に仔猫なんですけど?!

『此方はディアドルフ様に、ヴォルテナ王国のお酒らしいです。』
「ほう。王都に着いたら、ガルヴァとビルムも誘って晩酌するか。」
「また酒?」

ヴォルテナって何処?
…へぇ、ドワーフさんの国なんだ。
つか何、ロランさん酒好きなの?
その荷物、全部酒じゃないよね?

『マスター、お酒マニアですからねぇ。あ、コレはお酒じゃないですよ。フルーツたっぷりの、ロールケーキです。滅茶苦茶可愛い、真っ白な子に渡してって言われて……あ、可愛いって言ったのナイショって言われてたんでした!』

詩音に、か。

『毒味が必要なのです。』
「鑑定で良いんじゃないかな。」
「私が視てやろう。《鑑定》…ふむ……奴の手作りで、やたら良い素材を使っているということ以外に、特筆する事は無いな。」
「待って。」

手作り?ロランさんの手作り?!
それ、本当に大丈夫なんだよね?!

『確か此方にもメモが…「モフモフちゃん達や、レナちゃんにラルフくんの分も兼ねてるから、変なもんは入れてないよ~♪」らしいです。』
「ロランの料理は、真面目に作ればなかなかの物だぞ。ビルムに料理を教えたのは、奴だ。」
「うっそ。」

ロランさんが…ビルムさんに料理教えたって……想像できねぇ。

『そうなのです?』
『はい。ビルム様は、ディアドルフ様とロゥミア様を御育てするために、お料理を始められたそうで…基礎はマスターに習ったのだとか。』
「仕方ないことだが、1番最初は酷いものだったな。…初日の夕方には、今思えばおかしいレベルで上達していたが。」

ビルムさん、時止めて練習したん?

『そういえば、その頃ディアドルフ様は、ビルム様を兄と慕っておられたそうですね!』
『成る程です。きっと、頼ってくれる弟分に、美味しい物を食べさせてあげたかったのです。』

それはあるかもなぁ。
俺も、妹に食べたいと言われた料理は、全力で練習した覚えが。

「当時もそうだが、今でもビルムのことは、兄のように思っている。」
「そうなんだ?!」
『ちょっと意外なのです!』

じゃあ、あの無茶振りとか諸々は、お兄ちゃんに甘えてる感じだったりすんの?!

「今『にに』や『にーたん』と呼ぶと、物凄く嫌がられるがなw」
「うん、それは嫌だと思う。」

からかってんのが、とても良く解るから。
つか、『にに』とか『にーたん』って…ほんと幼少期のおとーさん可愛いな!

『ハッ…!ついつい、雑談に興じてしまいました!贈り物は以上ですので!』
「わざわざ、ありがとね。」
『お疲れ様なのです。』
『はい♪では、ディアドルフ様!配達頑張ったので、ご褒美ください!』
「……今でなくてはダメか?」

んん?おとーさん…?
なんでそんな、眼剃らしてんの?

「おとーさん、ケチってないで、ご褒美あげようよ。わざわざ配達してくれたんだし。」
「いや…躊躇うだけで、惜しくは無いのだが……」
『お願いしますぅ。あ、ミライくんでも良いですよ!』
「俺?何が欲しいの?」
『あまり高価な物だと、用意できないかもなのです。』
『大丈夫です!基本無料ですので!』

んー?
基本無料で、俺でも良くて、おとーさんがなんか困るような物?

『このロクスケに!思いっきり噛み付いてくださぁ~い♪』
「……………なんて?」
『できれば、獣の姿でお願いします!』
「いや、ちょ、待て。」
『遠慮なさらず!さあ!』

遠慮とかじゃねーから、ちょっと待て。

『…………マゾヒスト、という奴なのです…?』
「…私がやると、1噛みで死なせてしまうのでな……。」
「うん、ケチとか言ってゴメン。確かにコレは困るわ。」

ドMって、初めて見た。

『ミライくん、Sの素質あると思いますよ~。』
「ん、まあMよりは、S寄りな自覚はあるけど。望まれて攻撃するって、したことなくてさ。」
『じゃあもう、軽くキュッとしてくださるだけでも良いので!』
「キュッて……ギュッじゃダメ?」
『あ…コレはコレで癒されます♪』

ハグ&お疲れ様ナデナデで、我慢してくれぃ。
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