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ビビりとモフモフ、冒険開始

初恋の味

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明日の俺の動きは、午後1時に屋敷へ到着。
そのまま厨房へ入って、3時のお茶会に間に合うよう、薔薇を使ったパンケーキを作る。
時間が余るようなら、詩音のアイテムボックスで一時的に保管。

「てなわけで、お前厨房に居てもらうからな。」
「はい。…お手伝いは、ありますか?」
「…………強いて言うなら、味見?」
「解りました、大人しくしてます……。」

すまねぇな。
同時進行でお茶もいれて、世界樹の花の蜜を使った、ハニーティーにする。
その時ラルフに、ちょっと手伝って貰おうと思う。

3時になったら、パンケーキとお茶をワゴンで運んで、クレアさんがドアを開けてくれるまで待機。
奥方様が、簡単に俺とパンケーキの紹介をしてくれるから、お辞儀する。
ハニーティーについては、奥方様にも内緒だから…俺が説明するっきゃないか。

「紹介を終えたら、ミライ殿は退室していただきますわ。」
「俺の部屋を使っていい。呼ばれるまで、ゆっくりしてろ。」
「ん、ありがとラルフ!」
「終わるのは、5時の予定でしたね。」
「女性の会話が、予定通りに終わるとは限りませんが…目安には成るでしょう。」

お茶会が終わったらお見送りに玄関行って、お土産のクッキーをお客様方に、従者の人にはキャンディを渡す。
梱包は陽向にお願いして、若葉付き添いの元エデンくんにクッキーを渡してもらう。
キャンディの方は、そこそこ人数居そうだから、小梅と時雨にパパッとやってもらう予定。

「エデン、大役ですわよ♪」
『がんばりゅっ!』
「おめかしして、頑張りましょうね。」
『ボクも居るから、大丈夫!』
『皆でサポート、するのです。』
『私はアメ配る~♪』
『ボクつつむのー!』

モフモフ達のやる気も充分。
予定通りに進めば、少しはゴブリン退治できそうだな。

「打ち合わせは、こんなとこっすかね?」
「ええ。明日、よろしくお願い致しますわ。」
「期待してますわよ♪」
「うっす!」

よっしゃ、後は……ラルフの部屋借りれないかな。
レシピもう一部コピーしないと、ファルさんに渡せない。
……そういや、レナさんにも前『教えて』って言われてたっけ?

「それじゃ、行くぞミライ。」
「ん、何処に?」
「何処って…父上の執務室だ。」
「あ、私は待ってても良いですか?もう少し、エデンくんの観察をしたいので。」
「…いいけど…なんで執務室?」
「レシピの代金。」
「あ。」
「……お前を見てると、時々心の底から心配になる。」
「ごめごめ、ありがと!行ってきまーす!」

い、いやぁ、面目ない。
…そうだ!奥方様には内緒だけど、領主様になら聞いても良いよね、ハニーティーのこと!
ただのハニーティーなのか、レモン入りとかジンジャーミルクとかなのか…領主様も、実際飲んでる筈!

あと、折角2人きりだし…今の内に打診しよう。

「ねえラルフ、お母さん好き?」
「当然だ。」
「んじゃさ、ちょ~っとだけ手伝ってくれ!」
「…何を。」
「明日の紅茶の仕上げ、お前にやって貰おうと。」
「……お前…昨日のアレ料理教室で懲りてなかったのか…?!」

ラルフ、そこまで酷くなかったじゃん。
知識さえあげたら、ちゃんと出来るって、結構センスある方だよ?

「大丈夫だって、最後に世界樹の蜜入れて、混ぜてもらうだけだから。」
「世界樹の……?!そんな希少品、素人に扱わせようとするな…!」
「イケるイケる。奥方様の分だけで、良いからさぁ。」

頼むよ、奥方様お前に八つ当たりしちゃったことで、自己嫌悪成ってるんだって。
俺がお茶渡すより、ラルフが日頃の感謝述べながら渡した方が、元気に成るってきっと。

「明日早めに来るからさ、ちょっとだけ、練習しよ?」
「そ、それはまあ…良いんだが……そもそも、世界樹の蜜を手にいれる、当てはあるのか?」
「デイヴィー兄ちゃんと、おとーさん。」
「…確かに持ってそうだな。」
「でしょ?あと最終手段として、世界樹の精霊さんに交渉かな、と。」
「ああ…お前聖獣だったな……。よく忘れそうになるが……」
「大丈夫大丈夫、俺自身『ぽくない』って思うからw」
「何が大丈夫なんだか…。」

そんなことを話しつつ、執務室へ到着!

「父上、ミライを連れて参りました。」
「ありがとう、ラルフ。お入り。」
「失礼致します。」
「失礼しまーす!」

領主様、こんにちはー。

「ミライ殿、よく来てくれた。先日は、妻と長男が、大変無礼な振る舞いをして…本当に申し訳ない。」
「いやいやいや、領主様頭上げて?!俺もやられっぱなしじゃ無かったからさ!それに、お兄さんとは殴り合って多少解り合えたし、奥方様も偏見超改善されてるし、もう気にしてないんで!」 
「そうか…ならば、感謝だけでも受け取ってほしい。君が切っ掛けで、妻と子供達の偏見が、大幅に改善された。屋敷も以前より、随分と明るくなっている。ありがとう。」
「いやー、俺どっちかってーと、色々引っ掻き回しただけなんすけど…でも、感謝ならありがたく受けとりまーす♪」

雨降って地固まったなら、何より。

「んで、えっと…レシピの買い取り?」
「うむ。一通り読ませて貰ったのだが、とても素晴らしい内容だった。解りやすい上、香辛料を揃えにくい庶民のために、代用食品まで書き記してあるとは。」

詩音監督の元、滅茶苦茶頑張ったんで!

「代金の話の前に、1つ確認したい。これらのレシピを『シルフィード伯爵家』に売る、ということは、『シルフィード領で自由に広めて良い』と解釈することになるのだが…構わないかな?」
「問題無いっす!美味しい物は、広めるべきだと思うんで!」

領主様にレシピ売るって、そんな規模の話なのかぁ。
そりゃ、相場50万とかになるわ。

「ありがとう。では、代金なのだが…質の高さへの評価と、君への感謝と誠意を上乗せして、1つにつき100万Gで如何だろうか。」
「ひゃくっ…?!」

待て待て待て待て高い高い高い高い!
相場の2倍とか、受けとる勇気無いっ!!
1.5倍に吹っ掛けるのだって、俺の中では結構思いきってたんですけども?!

「いや、あの、領主様、俺も詩音もお金に対して小心者って言うか…感覚完全庶民なんで2倍はちょっと怖いっす…。」
「大商会の商会長の息子が何を言う。」
「一昨日まで、そんな記憶なかったもん…!」

つか、色々思い出しはしたけど、基本聖域で遊んでた記憶しかねぇわ!
狼の俺は両親兄姉の仕事とか、全く知らんかったの!

「しかし、将来的に店を出したりするのであれば、ある程度の蓄えは必要ではないかな?」
「それは何となく解るんすけど、なんせ脱ニートしたんが『10日前』なんで、今から感覚麻痺るとヤベーんじゃねぇかと…」
「…ニートとは、何かな?」
「簡単に言うと、無職無収入の状態。」
「成る程…その不安も、解らなくはない。」
「因みに、ミライは幾らにしようと、思ってたんだ?」
「…慰謝料込み75万。」

なんかもう、今となっては慰謝料とかも、別に良いんだけどさ。

「……そだ!領主様、レシピ代75万にして、差額は情報ほしいっす!」
「情報?君がそれで良いなら、構わないが…何を聞きたいのかね?」
「奥方様と初めて会ったパーティーで振る舞われた、紅茶について!覚えてる事、あればで良いんで!」

貰い過ぎんの、やっぱ怖いし!
ラルフに対する、友情割り引きってことで!

「おお、あの紅茶か。勿論覚えているとも…世界樹の花の蜜を使った、ミルクティーだったよ。確か…シュミットの香りも、仄かにしていたかな。」
「つまり、シナモンハニーミルクティー…!ありがとうございますっ!」
「こんなことで良いのかね?あと何か…そうだ、あの紅茶をいれた人物は、ヴァールフラン商会の所属だった筈。名前は………うむむ…済まない。何やら、耳馴染みの無い名前だったことは、覚えているのだが…何ぶん、46年前の事でね。男性であることは、確かだ。」
「それだけ解れば、充分っす!おとーさんに、聞いてみるんで!」

これで、本人に教えて貰える可能性、出てきたぞ!
つか、46年も前の事、よくそんなに覚えてんね!
俺とか、昨日今日の事も忘れるのに!←








───【作者コメント】───

我が家のライフラインは、無事復旧しました。
親族等も無事です。
まだ強めの余震はありますし、油断はできませんが、可能なタイミングで更新していきます。
これからも、よろしくお願い致します。
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