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ビビりとモフモフ、冒険開始

魔族は色々知っている

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これ以上お風呂場ですることも無いから、一先ず、おとーさんの所へ戻ることにした。
兄ちゃん達は、休憩切り上げて、外でお仕事してくるってさ。

セレスティアさんも、まだまだやることがあるみたいで、詩音に「リボン外しちゃダメだからね?」と念押ししてから行っちゃった。
詩音のリボンを鑑定した結果がこちら。


『装備品 女神のリボン(水色)』
装備すると魔攻力が10上がる。
装備者に危険が迫ると、小規模の空間断裂による防衛措置が発動。
備考 空間と魔法の女神様お手製。非売品。
彼女との関わりを示す、身分証にもなる。


空間断裂とか、大丈夫なんだろうなコレ。
この世界の神様は、過保護がデフォルトなんだろうか。
あと、リボンが身分証って、どういうこった。
とりあえず、着けたままにしておいてる。

「…詩音、重くない?」
「意外と大丈夫ですよ。」
『時雨ちゃん、狭くないです?』
『快適~♪』
『安心する~♪』
『温か~い♪』

後頭部に陽向、左腕に若葉、ローブのブカブカな袖の中には分裂した時雨。
結構な重量だと思うんだが……それとも、時雨は雲っぽいから軽いのか?

『狭くなったら、此方来るから大丈夫!』
「ふひゃっw し、時雨ちゃんw首はくすぐったいですよぉw」
『わぁ~ゆれる~♪』
『ヒナタくん、落ちないでよー?』

首もとから、白いクジラが顔出すの可愛い。
めっちゃ擽ったそうだけど。
若葉、陽向を尻尾で支えてくれて、ありがとな。

「おや、こんにちは。外はだいぶ整って来たようですよ。見に行かれては?」
「あっ…」
「こんちは~。俺らは、ちょっと此方でお手伝いしてるから、後で見てみるね!」
「そうでしたか。失礼致しました。」

詩音が要らんこと言う前に、割り込んだ。
そのまま、すれ違う。
今の、昨晩助けた魔族のお兄さんだ。
羽根とか無くなってるけど、顔までは変わってないから解る。

…ん?お兄さんハンカチ落としてった?

「あ……詩音、ペン。」
「え?…そうですね。はい、どうぞ。」
「ありがと。」

ハンカチの間に、紙が挟まっていた。

『私は魔族の者です。ディアドルフ様が大変な負傷をされ、面会謝絶とお聞きしました。ご容態は、如何ですか?』

魔族の人は、聖気とかに敏感で、聖獣を見分けられるらしいもんね。
俺が関係者だって、解っても不思議じゃない。
この質問になら、答えても大丈夫だろ。
えーと、『本人元気そうだけど、念のため安静にさせられてます』っと。

「ミライ?何を書いてる?」
「ラルフさんにも、後で教えます。」
「…よし。おにーさーん!ハンカチ落としたよー!」
「おや…ありがとうございます。お手数をお掛けしました。こんなもので申し訳ありませんが、お礼にどうぞ。」
「ん、ありがと!またね~♪」

今度は、紙に包まれたキャンディを貰って別れた。
紙に何か書いてるかなー?

「キャンディ、貰ったのか?」
『お返事あるです?』
「どうでしょう?書く時間なんて、ありませんでしたし…」

んーと、何々?

『お答えいただき、ありがとうございます。立場上、魔王陛下へ、お答えの内容を御伝えしなければ成りません。ご了承ください。暫くは帝都に滞在しております。私でお力になれる事が御座いましたら、何なりとお申し付けください。
コーキュロス国軍第2部隊隊長 ノーマン・ゼブル』

ほほう。たぶん、先に用意してたんだろーね、コレ。
俺がハンカチスルーしたら、処分してたんだろう。

「国軍の隊長って、結構凄い人?」
「…彼は魔族か。レオンさん曰く、魔族は聖気を感じ取りやすく、聖獣や天使を見分けられるそうだが…何を聞かれた?」
「おとーさんの容態、どんなもんかって。たぶん、俺やおとーさんが、フェンリルってことは解ってるんじゃないかな。」
「……それくらいなら、問題ない…かな。確か…コーキュロス国軍の第2部隊は、あらゆる意味での『裏方』を任せられている筈。その隊長ともなれば、まあ凄い人と言って良いだろう。」

ほうほう。

「更に言えば、ゼブル公爵家は魔国コーキュロスの7大貴族の一角で、王家からの信頼も厚いと聞く。」
『ラルくん、詳しいのです。』
「これでも、辺境伯家の次男だからな。ある程度は、他国のことも頭に入れてある。」
『すごいね~♪』
『ラルフ兄ちゃん、物識りだね~♪』
『お勉強したのー?』
「まあ、それなりに勉強はしたな。兄上には及ばないが。」
「セレスティアさんが仰った、『魔族の諜報員』は彼でしょうか。」
「たぶんなー。」

一応、保護者に報告しとくかな。

……ラルフが完全にモフモフ達と会話してんのは、ツッコむべき?

───────
──────

※ノーマン視点

おかしな勘違いを広めようとしていた、新興宗教は壊滅…とまでは行かなくとも、暫くは大人しくなるでしょう。
何しろ、元凶である邪神が、今度こそ討たれたのですから。
いやはや、驚きました。まさか、かの邪神が生き延びていたとは…。

私の従魔達は、キラービースピリットやパピヨンゾンビに、キングスケルトンフライといった、蟲系の中~高位アンデットです。
昨晩帝都で何が起きたのか、全て見てくれていました。
途中で私が呑まれかけ、救出された後のことも。

「バアル、頼みましたよ。」
『ジジジ…』

従魔達のリーダーである、キングスケルトンフライに、報告書を託します。
先程、ミライ様にお逢いできたのは、本当に運が良かった…。
他のフェンリル様方は、大層忙しくされてましたから…魔狼王様のご容態を、お訊ねする隙が無かったのです。
負傷されたことは、従魔から聞いていましたし、多少弱っていらっしゃることも、感じ取れる聖気の強さからも解りますが…暫く安静とは…余程の事態が起きたのでしょう。

さて、今度は報告書ではなく、手紙を書かなければなりませんね。

「…御名前を知るため、無断で鑑定するという無礼を働いたこと、どうかお許しください。」

我が小さな主人からの、お願い事は断れません。
面と向かっては、次の機会に謝罪させていただきます。

「…エクロン、コレを姫様に。」
『♪』

姫様への手紙は、姫様と一番仲の良い、パピヨンゾンビに持たせました。
きっと、手紙の内容は、すぐに王太子様のお耳へ入るのでしょう。
太陽のような笑顔で、はしゃぎながらお話しされる様子が、目に浮かびます。

……姫様、お願いですから、嬉しさ余って城を飛び出さないでくださいね…?

───────
──────
─────

※暫く後、魔王城にて

「~♪ありがと、エクロン!さーくん、さーくん!」
「なんだい、俺のプリンセス?」
「キモいからやめて。」
「酷いなぁ、俺一応王太子なんだけど…それで、どうしたの?」
「あのね、ノンたんからお手紙来た!アホと天使、発見したって!元気そうだって!」
「!本当に…?」
「ブランカの帝都に居るってさ~♪あのアホなら、いつかコーキュロス来るかなぁ?来るよね?」
「うん、きっと。……だから、お城抜け出して逢いに行っちゃ、ダメだからね?お転婆姫様。」
「はーい。楽しみだな~いつ来るかなぁ~?逢えたら、先ずは一撃見舞わないとね!」
「……大丈夫だとは思うけど、程々にしなよ?」

2人が待ち望む者達と出逢うのは、もう少し先のこと。
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