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ビビりとモフモフ、冒険開始

純真無垢に敵う術無し

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※ラルフ視点

「くっ…コレが幻術なら、相当に厄介だな…!」

ヒナタが匂いを覚えている内に、先ずは宰相を抑えようとしたのだが……
はぐれた。いや、はぐれさせられた・・・・・・・・

「逃げ足の速いモンスターね!大人しく、アタシの的になりなさい!」
『キー!』
「レナ、ワカバ!気付いてくれ、俺だ!」

城の中央付近にたどり着いたら、突如レナとワカバが襲いかかってきた。
矢を避けるのに必死で、ヒナタがいつ逃げたのかは解らないが…今近くに居ないことは確かだ。
2人は幻術をかけられたのか、俺がモンスターに見えているらしい…どうにかして、正気に戻さなければ!

「拉致があかない!ワカバくん、挟み撃ちよ!」
『キー!』

燭台を器用に伝って、ワカバが俺の後ろを取る。
素早いウィンチエイプに、剣では不利だ。
かといって、魔法なんて当てようものなら、大怪我をさせてしまう。
シオンが居るなら問題ないが、ポーションしか無い現状では得策じゃない。
なら、狙うべきは……

「クソ…レナ!後で殴っても蹴ってもいいから、責任は取らせてくれ!」

ああ、こんなこと絶対したくなかった!
勿論峰打ちにするが、惚れた女へ剣を向ける羽目になるとはな…!
矢を風で避けて、一直線に駆けた。
気絶させられれば、対処法を考える時間が生まれる。

「待ってろ、すぐに助ける…!」

──────

※レナ視点

「もう、やめてって!ラルフ!!」
「チッ…動きが素早いな……!ヒナタ、眠らせろ!」
『めー!』
「アタシだってば!モンスターじゃないからぁー!」
『キキッ!キキッ!』

なんなのよ馬鹿ぁーっ!!
まだアタシ達、西の調査終わってないのに、なんでアンタもう此処に居るわけ?!
どんだけ早い段階で、幻術かけられたのよっ!

「どうしよ、ワカバくん?!ラルフに矢なんて射ちたくないんだけど!」
『キー!』
「やるしかないって?解ってるわよぉっ!」

あー!もう決めた!後で絶対殴るわ!
正気に戻ったら、パパ直伝の正拳突きで、思いっきりブッ飛ばしてやるんだから!

「覚悟しなさい馬鹿ラルフっ!序でにアンタのハートも撃ち抜けたら、万々歳なのにねっ!!」
『キキッ!』
「ワカバくん、ヒナタくんをお願い!」

悪かったわね、色気も無い暴力女が、お貴族様に惚れて!
いっそ、拳と一緒に、思いの丈叩き付けてやろうかしら!
精々反応に困って困って困り果てなさいよ、この無自覚スケコマシぃいいいっ!!

───────

※陽向視点

あれー?
ここ、どこかなぁ?

『ラルフおにーちゃーん?』

レナおねーちゃんと、ワカバおにーちゃんの、ニセモノのところかな?
さいしょーさんの においしたし、さわれないから、ニセモノなんだけどなぁ。

「羊はっけーん!今夜は羊鍋だぜー!」
『あ、おにーちゃんの、ニセモノだー。』

「ひぃいいいっ!?もももももモンスターですぅーっ?!」
『しおにーちゃんも、ニセモノいるんだね~。』

『覚悟するですーっ!!』
『コウメおねーちゃん、そんなこーげき、しないよー?』

ニセモノいっぱい。みち、わかる!
ニセモノのほうに あるくとね、さいしょーさんのにおい、つよくなるの!

「おや、可愛らしいお客様だ。うんうん、仕方なく戻ってきてあげた甲斐があった、という訳だね。」

?おねーさん、さいしょーさんの においしない。
ホンモノ?

「バルザドの幻術をモノともしないなんて、君は…成る程、まだ赤ん坊なのだね。ある意味、疑う心を知らないということか。」
『こんばんはー!』
「ああ、こんばんは。可愛い羊くん、君は男性だが特別愛らしいね。お近づきの印にフワリの葉でも、如何かな?」
『わぁーい♪ありがとう、おねーさん!』

ちょっとだけ、おなかすいてた!
モグモグ…おいし~♪
おれい、しないとね!

『よいしょ、よいしょ…あつめあつめ…』
「何をしているのかな?」
『できたー!わたげ、どーぞ!』
「そうか、ドリームシープは物々交換で、素材を人に分け与えるのだったね。有り難くいただこう。」

ナデナデしてくれた!
おねーさん、おてて やさしいね♪

「さて、癒された所で仕事へ行かないとね。では、また逢おう可愛い羊くん。」
『うん!』
「ボクはセレスティア・ルームオーグ。可愛いモノと、美しいモノの味方だ。覚えておいてくれたまえ。」
『はぁーい!おねーさん、またねー!』

げんき、もらった!
さいしょーさん、さがそー!

「……何も仕込まなかったとはいえ、ああも疑い無く食べるとはね。《不和不信の幻影》が効かない訳だ。御愁傷様、バルザド。」

───────

こっちかなー?…あれれ?かべ?
……あ!コレ、しってる!
おうちに、あるやつ!おへやにも、ある!
コウメおねーちゃん、あけてたの!
えっと、えっと……

『アレだ!えーいっ!』

ジャンプジャンプ!
いろ、ちがうのグイーってしたら、ひらけるの!
えいっ!えいっ!

ペシペシ ポンポン

ガチャッ

「煩いな…ネズミだけでなく、猫でも紛れ込んだか……?」

ひらいたぁ!

『おじちゃん、こんばんはー。』
「なっ、猫ではなく羊?!野良ではない…ということは侵入者の従魔!私の術を破ったと言うのか?!」
『じゅつ?』

じゅつって、なぁに?
あとで、しおにーちゃんに、きいてみよー。

「疑心暗鬼になればなる程、術中に嵌まる筈…ま、まさかこの羊……!」
『くんくん…おじちゃん、さいしょーさん?』
「私の術にかけられて尚!何も誰も疑わず!仲間を信じきっているというのかぁっ!?」
『さいしょーさんなら、おやすみさせるのー!』
「や、辞めろ!そんな純粋な目で私をm……zzz」

えっと、おやすみしたら、ぐるぐるーってしないと。
うーんと…ボクのわたげ、あつめあつめ…のばしのばし…できた!
ぐるぐる、どこするんだろ?ぜんぶ?

『よいしょ、よいしょ!』

わたげ、たりない!あつめあつめ……のばしのばし…どうかな?

やった、さいしょーさん、つかまえたぁ♪
みんな、ヨシヨシしてくれるかなぁ?

『ふわぁ~…ボクもねむねむ……zzz』

───────

※若葉視点

「ほんっと、馬鹿みたいね…!お互いに……」
「ま、まだ、若気の至りで済ませられる年で良かったな…お互いに……」

もー、話せないの不便~…違うよって言ってるのに、レナちゃん全然通じないんだもん。
偽ラルフくんが、矢を剣で弾かないことに気付くまで、足止めされちゃった。

それに、本物に会った確認で、矢を射って剣で弾くか見るなんて…危ないよ。
ラルフくんだから、大丈夫だったけど。

「ヒナタくん、大丈夫かしら…」
『宰相さんの匂いと一緒に、此方から陽向くんの匂いするよ。』
「ワカバ…ヒナタも宰相と共に居ると思うか?」
『たぶん?』

匂い、すっごく近いから。
少なくとも、同じお部屋かなぁー。

『あ!アレ!ドア開いてる部屋!』
「あの部屋だな?行くぞ!」
「よく解るわね、ラルフ…羨ましいわ!」

レナちゃんも、早く解るように成ってね?

『くー…くー…zzz』
「うぅぅ…zzz」

「こ、コレは……」
「……繭?」
「いや、人だな。この顔…間違いない、宰相だ!」

わぁ…陽向くん大金星って奴だ!
そのまま寝てるのは、危ないけど!

『陽向くん、ボク運ぶ!』
「ん、そうか。頼んだワカバ。」
「何て?」
「陽向を運んでくれるらしい。」
「そっか、起こすの可哀想だもんね。」

お疲れ様、陽向くん。
後は、ボクらに任せてね!
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