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ビビりとモフモフ、冒険開始
鬼ごっこからのお説教と……
しおりを挟む「ミライ~、お兄ちゃんからは攻撃しないから、安心してかかっておいで~♪」
「なんという子供扱いっ!」
大太刀を鞘に入れたまま、構えすらしない。
デイヴィーさんとしては、年の離れた小さい弟と戯れる程度の認識なんだろう。
「よいしょー」
突き出した拳は簡単に鞘でいなされ、スマートに避けられる。
そのままスッ転ぶかと思ったけど、風が柔らかく受け止めてくれた。
なんとまあ、紳士なことで……
「要らない気遣いだった?」
「心情的には超微妙だね!」
「あはは、ごめーんw」
かんっぜんに遊ばれてる…!
回し蹴りで不意討ち狙ってみたけど、垂直に立てた大太刀に止められた。
体勢を整える前に、マタンゴナイトを頭に乗せられる。
ちょ、柴犬くらいデカイから、前見えないんだけど!
「はい、返すね~♪」
「ぅ~…」
『ぶ、無事かの?』
『ムー!』
ま、まあいいや…キノコ無事だし。
一命をとりとめたナイトは、俺の頭から飛び降りて、他のキノコ達と共に並んだ。
「未來くん!」
『総長さん、ダメですよっ!』
「ん?」
「よーし、そんじゃミライ…続きやろっか♪」
突然強くなった風に、声が掻き消された。
風の壁で、囲まれた……?
え、詩音と小梅が何か言ってたんだけど……
「俺はミライ捕まえるから、ミライは捕まらないように抵抗してね!」
「何その遊び?!」
暴力ありの鬼ごっこ……?!
待って、キノコ争奪戦からなんでそうなった?!
「よーい…ドンッ!」
暴風と共に、手を伸ばしてくるデイヴィーさん。
あの、ちょ、勢いが怖いっ!!
轢かれるっ!!
「だぁああああ?!速い速い速い待って!逃げる時間30分以上要るってコレぇえええ!!」
「ミライが30分走ったところで、5秒以内に追い付くよーw」
「だろうね?!」
俺は徒歩で、そっち飛べるもんな!
反射神経フル活用の、その場緊急回避でギリギリ逃げれてる。
ゲームかよっ!スマ●ラとか最近のカー●ィみたいな、回避技使うことになろうとは!
しかもこれ、たぶん手加減してくれてる!
「攻撃していいんだよ?」
「んな暇無いんだって!」
3㎝以上離れられないのに、攻撃動作なんてしたら捕まるじゃねーか!!
っ、あ、あれ?
動きが鈍くなってきた気が……っ!
「おわっ?!」
「おっと、大丈夫?」
「う、うん…」
…脚が縺れて転けるとか…
更に抱き止めて貰うって…子供か……っ!
身体年齢は子供だったね!
ってか、体が重いんだけど……
「んー……」
「…立てる?」
「……無理ぽい。」
…………滅茶苦茶疲れた。
ちょっと立てそうにない…疲労って、急にガクッと来るもんなの?
「よしよし、どした?疲れちゃった?」
「うん…」
「あっちゃー、無理させたか…父さんに殴られそー……。風止めて、皆と合流しよっか。」
ディアさんの拳は、デイヴィーさんでも怖いんだね。
確かに、デコピンでアレなんだから、殴られたくはないなぁ。死ぬと思う。
「…あ。」
「ん、どした?」
「……ごめん、兄ちゃん。殺されないでね。」
「へ?」
…………約束、忘れてた……っ!!
───────
小梅の空間転移で、村まで強制送還。
詩音達にも叱られた。
今日はどうにも皆を心配させちゃうなぁ…
俺とディアさんの約束を知ったデイヴィーさんは
「う、うわぁ~…俺死んだかも……」
と、ガッタガタ震えてた。
最終的に思いっきり拳骨食らって、地面に頭から埋まってたけど、詩音とロゥミアさんが治療しくれてたから、死にはしないと思う。
俺はというと、ディアさんに洗いざらい吐かされて、ほっぺをむにむにされながら、迅速にベッドまで護送されたところだ。
「さて、ミライ…」
「あぃ…」
「送り出す時に、私は何と言ったかな。」
金色の柔らかくて暖かな毛布にくるまれて、ベッドの上で床ドン(?)されてるなう。
…腐の付く女性陣が喜びそうだ。
本当に縛られはしなかったけど、こんな状態で動けるわけない。
正に、蛇に睨まれた蛙。まな板の鯉だ。
笑顔が怖いよディアさん…!ドSが滲み出てる…!
「ミライ?怒らないから、答えたまえよ。」
いやいやいや、今メッチャ怒ってるよね!?
「…息が止まるまで擽るぞ。」
「走らない、戦わない、攻撃魔法使わない、森の奥行かない、体調崩したらすぐ戻る!」
「その通りだ。その内2つも破りおって……!」
「ちょ、ふぁっ?!あははははははwwwや、やめっwww」
結局擽るんかぁーいっ!!
「けほっこほっwふへぇ…」
「全く、お前という子は…」
床ドン状態から抱き起こされて、親が子供にするように、おでこをコツンと合わせられた。
「あまり、心配させてくれるな。」
「…あぅ、ごめんなさい。」
「…解れてはいない、か。単に体力の問題だな。」
「?」
…俺の体、解れるもんあんの?
手術で何か縫合したとか……?
「今日はもう、外出させてやれん。ソレはやるから、大人しくしていなさい。」
「はーい。」
ありゃ、行っちゃった。
これから、デイヴィーさんのお説教?
……兄ちゃん、骨は拾うからね!
くれるって、この毛布のことかな?
良いのかなぁ…スベスベ滑らかな上に、モフモフフカフカで…絶対お値打ち品だと思うんだけど。
金色とか、珍しいし。
「…ディアさんの匂いする。」
普段から使ってるのかな?
…でも、洗ってあるっぽいよなぁ。
……この金色…まさか、ディアさんの髪で出来てたり……無いか。
あと思い当たるのは……
「…魔狼王様の…毛?」
そっちの方が有り得る…
伝説の生物の毛を、何に使ってんだって話だけど…ディアさんならやりかねない!
…まあ、何にせよ……
「コレ…落ち着くなぁ……」
勝手に尻尾が揺れるのを感じながら、毛布に顔を埋めた。
───────
「…俺、今日寝過ぎだろ……」
ふと目を開けると、夕暮れ時になっていた。
いつの間にか、隣で小梅が丸くなってる。
しかも、メイドさんバージョン再び。
可愛い…待ち受けに……ってか、そろそろ俺もスマホ起動したい…!
「ん?アレ?」
…狼に戻ってねーな。
そーいや、幼児化した原因に魔力の乱れもあったんだっけ?
手術で、バランス直してくれたのかな。
『ん~……?』
「おはよ、小梅。」
『…にゃにゃ…』
寝惚けてる?起こそうかな。
眠り姫を起こすには…チューしちゃえ。
「ん♪」
『むにゅっ……ふみゃーっ?!』
「おお、起きたw」
慌ててる慌ててるw
ほっぺにしたんだけどなぁw
『にゃ、にゃにゃ…』
「ごめんごめんw可愛いからついさぁ♪」
『~~っ、せ、責任取ってくださいですっ!』
「はいはい、責任…責任?!と、取るよ、うん。」
『絶対ですよっ!』
…ほっぺチューって、責任取るべき案件だったんだ……!
スゲー、軽い気持ちでしてたぁぁぁごめん小梅ぇぇぇ…っ!!
俺もしかして、気付かないうちに小梅にセクハラしてたことあるかな?!
猫吸いとかはどうなの?!ヤバくない?!
「と、とりあえず…婚約報告ってするべき……?」
『そうですね!しおちゃん達と、ヴァンお兄さんとママとパパと……』
頭が混乱していた俺は、気付いたときには自分で退路を断っていた。
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