上 下
51 / 249
ビビりとモフモフ、冒険開始

はじめての依頼

しおりを挟む
周囲の視線を痛い程感じながら、コレは精神的な修行だと自分に言い聞かせること数秒。

「……ネージュさんおはよ~…。」
「お、おはようございます。」

建物に入ったところで、やっと降ろしてもらえた。
うぅ…既になんかもう疲れた……

「ミライくん、シオンくん、おはようございます。……!ディアドルフ・ヴァールフラン様?!」

あぁ、ギルド内の静寂と、周囲からの視線が……。
皆、いつも通りガヤガヤしてていいんだよ!
むしろガヤガヤして!

まあ、Sランク冒険者なんて来たら、注目するよね。
でも、俺らは関係無いんだ!
昨日初対面で断り無くモフモフされて、何故か部屋一緒になって、此処には勝手に着いてこられただけで…!
俺らにまで、興味津々な目を向けるのやめて!
隠し子か?とか言わないで!違うからっ!

「ネージュか。久しいな…元気そうで何よりだ。」
「は、はい!えっと…マスターを、お呼びしましょうか?」
「いや、私と違って忙しかろう。此方から会いに行く。」
「そ、そうですか…マスターは、奥で貸し出し装備の点検中です…。」
「わかった。」

ネージュさん、完全に萎縮してる…。
ディアさんは、親父さんから直接依頼受けるのかな。

「では、また後でな。」

俺と詩音の頭を撫でて、ギルドの奥へ向かうディアさん。
お触り禁止令の意味解ってんのかこの人。
安心感を与えてくる、あの手が憎い。
気持ちがほにゃっとして、大人しく撫でられるしかないじゃないか。

「……レヴァンさんが、帰れ帰れ言ってた理由が解った気がする。」
「……文字通りの、唯我独尊ですね……。」

まさか本当に、魔王様とか無いよね……?

「ミライくん、シオンちゃん!おはよう!」
「おはよー!レナさぁ~ん!あの人距離感おかしいよー!」
「あ、うん…悪い人じゃないんだけどねぇ……って言うか!2人共、ディアドルフ様とお知り合いだったの?」
「いや、昨日初対面。」
「どうも、未來くんの毛並みを、お気に召されたようで……。」
「ディアドルフ様まで、モフモフで虜にしたの?……魔性の毛並みね。」
「変な称号付けないで!」

やめてよ、RPGの称号なんて、一般人から言われた言葉が、まんま付いたりするんだから!

決定、今日は厄日だ。

「…おはよう。」
「ラルフ!おはよー!」

あ、ラルフの視線が小梅に釘付けだ。
後で撫でさせてあげよう。

「おはようございます。」
「おはよう、ラルフ。これで揃ったわね。」
「出入口で小耳に挟んだんだが、あの・・ディアドルフが来てるというのは本当か?」
「本当よ。…今頃、パパで遊んでいらっしゃるわ……。」
「……今日はレオンさんに優しくしてやれよ。」

ああ、やっぱ親父さんも遊ばれるんだ……。

『そうちょーさん、レナちゃん、ラルくん、おともだちです?』

おお、小梅は2人を知ってるのか。

「紹介しとくか。2人共、この子は昨日レヴァンさんから譲り受けた、サンドキャットの小梅。仲良くしてやって。」
『こんにちはです!コウメなのです!』
「コイツは…レヴァンさんが少し特殊だと言っていた、花模様の…。」
「可愛いっ!いいな~サンドキャット。アタシも里親話持ちかけられたけど、ママが飼っちゃダメって言うのよ。」
「上手く躾なければ、家の中が砂漠と化すからな。」

マジか、そんな砂まみれにしちゃうの?
ギルドに連れ込んで良かったのかね?

「あ、ラルフ。撫でたいなら本猫ほんびょうに許可取ってね。」
「……ソイツが撫でてほしそうだったら、撫でてやる。」

素直じゃないなぁ。

「あの、依頼受注って…受付にあの張り紙持って行くんですか?」
「普通はね。今日のは、もう決まってるわ。受付も、済ませておいたから。」
「ありがとうございます。」
「どんなん?」
「対策さえ知っていれば、難しくはないわよ。ミライくんとシオンちゃんが、初めてだからね。今日は、コレよ♪」

そう言って、レナさんが出した依頼書には
『ウィンドホーク討伐 依頼達成報酬5000G』
と書かれていた。

「ホーク……鳥?」
「ええ、鳥系モンスターよ。風属性魔法を少し使ってくるわ。」
「因みに、部位売却すると1羽500Gだ。魔石はゴブリンのより大きくて風属性が着くから、1000Gの値が付く。」

ふむふむ。
……アレ?そういや、昨日の報酬確認してないぞ。
ヤベェ、色々ありすぎて忘れてた。

「鳥ですか…。羽毛触ってる時間、ありますかね?」
「野生モンスターまで、撫で回す気か……。」
「お前だと、そのままテイムしそうで怖い。」
「討伐対象をテイムして連れ帰ったら、報酬半減されちゃうから、気を付けてね。魔石とかも回収できないし。」
「そうなんですか……。」

……金銭面にだいぶ余裕が出たら、やらせてみてもいいかもな。
シェープ様からの軍資金は、いざってときのために貯金しときたい。
できるだけ、自分達の力で生きる方がいいだろうし。

……押し掛け相部屋になった、パトロン(違)の財力は例外ってことで。
そういえば、宿代ツケって言ってたけど…まさか、今日稼いで払うのか?

「それじゃ、お互いにできることを確認しましょ!アタシは弓使いで、風属性魔法も少しできるわ。防御面に不安があるから、護ってくれると嬉しいな。」
「俺は見ての通り、剣を扱う。魔法は風属性と雷属性だ。俺を護ろうとは考えなくていいが、後ろから攻撃はしてくれるな。」
「2人とも、風属性魔法あるんだ?」
「実は、アタシのはラルフから教わったの。適性があったから。」

ほほう。ラルフは先生の才能あるのかね。
魔法教えるのって難しそうだし。

「わ、私は、攻撃力には自信がありません……回復魔法と、光属性魔法,水属性魔法,毒や麻痺の付与ができます。」
「回復魔法か、それはありがたいな。…人族で光属性とは珍しい。もしやエルフの遠縁か?」
「えっ……解りません……。」
「すっごく遠いご先祖様が、そうだったりして。」

エルフの血が入ってると、光属性出やすいのかな?
でも、詩音は天使擬きだよ。

「俺は、拳でいくのが一番楽かな。一応剣と爪もあるけど。魔法は火属性で、スキルに索敵があるよ。あと、防御壁出せる。」
「索敵に防御壁か…いいスキルだな。なら、後衛2人の守備は任せていいか?」
「うん!」

……待てよ…防御壁、どんくらい出せるんだろ。
ヤベェ、自信満々で返事しちゃったけど、早まった?

「防御壁があるなら、いつもより楽にいけそうね。」
「よろしくお願いします、未來くん。」

しかも結構アテにされてる!

「う、うん、頑張る。」
「それじゃ、2人にウィンドホークの対策を、叩き込んであげるね。」
「え?叩き込む?」
「えっと…つまり、実際に動いて覚える、ということですか?」
「ああ。口で教えるより早い。レナはシオンを頼む。」
「ええ。ラルフ、ミライくん虐めすぎちゃダメよ?」
「ミライの実力次第だ。保証はできない。…外へ出るぞ。」

えぇぇ、ラルフ…何すんの?

「あんま酷いことやめてね?俺、喧嘩と痛いこと嫌いなんだ。」
「大丈夫だ、お前達は避けるか防ぐかに徹してくれればいい。」
「……何を?」
「俺とレナの、風属性魔法だ。」

…その笑顔…俺の実力が一定以上なら、大魔術ブッパするつもりだね?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...