3 / 4
3
しおりを挟む
真人と離れることでようやく本当の自分を取り戻せた気がしたんだ。だから本当に二度と会いたくなかった。
「毎日ちゃんと店を開けてるんだな」
「…………」
店の前で看板を出していると、真人の声がした。恐る恐る振り返ると、本当に真人が立っていた。
「…………」
「そんな怯えた顔をするな。俺がいじめてるみたいだろ?」
「…………」
顔がどタイプ過ぎるし、無表情のときの真人は圧迫感が凄すぎる。情けなくも尻餅をついてしまった。
「コ、コーヒーでも」
尻餅をつきながらなんとか店を指差したけど、真人は店を一瞥しただけだった。
「まだ開店前だろ」
肌寒い季節だから真人はスーツの上に薄いコートを着ている。……格好良過ぎる。どうかしてる。バランスとかなにもかもが完璧過ぎて涙が出そうになった。
「大丈夫か?」
真人が手を差し出してくれたが、その手を取れなかった。恐れ多くて。もう恋人じゃないから。俺は真人を傷付けて逃げたから。
「……俺に優しくしないで」
その優しさが怖いんだ。
後ずさりながら自動ドアにぶつかりつつも、転がり込むように店の中に入った。
真人にとんでもない態度をとってしまったが、でも仕方なかった。今手なんか握ってしまったら、ストーカー熱が再熱してしまい、また真人の何もかもを知らないと気が済まなくなってしまいそうだったから。
「お前の家は?」
「…………」
閉店間際にひょっこり現れた真人は、俺の閉店作業を見守っていた。聞こえないふりをしていると、真人が見せつけるようにコートのポケットからスマホを出した。
「オーナーに聞いてもいいんだぞ? ついでに俺たちの過去もバラしてやろうか」
「わ、わかったからっ!」
急いで閉店作業を終えて、店に鍵をかけ、上着を着て歩き出すと、真人が後ろを付いてきた。
「ここ」
歩いて五分のところで足を止めると、真人は俺の住む二階建てアパートを見上げた。その横顔の鼻筋が信じられないほど美しくて、また後ずさってしまったが、真人に手を掴まれた。
「どの部屋だ?」
「…………」
黙っていると、真人は俺を強引に引っ張りながら階段を上りだした。
「ちょっと待って!」
手を引っ張り返したが、真人はびくともしなかった。
「怖がりなお前のことだ。一階には住んでないだろ?」
「…………」
二階に上がったところで真人が立ち止まり、俺を振り返った。
「全部のドアをノックさせる気か?」
「…………」
しぶしぶ家のドアまで歩いて鍵を開けると、真人が横からドアを開けて勝手に中に入り、散らかった部屋を見回した。
「一人か?」
「……そうだよ」
家族以外に人を入れたことないのに。まさか男がいると思ったのか?
まだ玄関にいる俺に真人がゆっくりと近付いて来て、まるで巨大な蛇に睨ませたみたいに足が竦んだ。
「俺がどれだけお前に優しくしてやったと思う? 俺はお前が何をしても許してやるつもりだったんだ。それなのにお前は逃げた」
「…………」
「だったらもう優しくしてやる必要はないな?」
片手で首を掴まれ、そのまま頭を壁に押し付けられた。
「……ごめ」
首を掴む真人の腕を両手で引き離そうとしたが、真人の力には敵いそうになかった、
「お前に出会わなければ俺は前の会社のままで平穏に暮らせていたんだ」
「……ごめんなさい」
泣いたって意味がないのは分かっていた。それでも出てしまう涙が頬を流れると、真人に腕を引っ張られ、浴室に連れて行かれた。
「……やめてっ!」
ユニットバスのバスタブの中で、服のままシャワーを頭から浴びせられていた。
「俺のためなら何でもするって言ったよな?」
「…………」
「忘れたのか?」
顔にシャワーをかけられて、思わず咳き込んだ。
「俺がいなきゃ生きていけないって言ったよな? 俺と別れるくらいなら俺を殺してやろうと思ったんだよな?」
「……ごほっ、ごほっ……!」
バスタブの中でむせていると、さらに顔にシャワーをかけられた。
……その通りだけど、もうあのころには戻りたくないんだ。もうあんな風に人を愛したくはない。
「お前は俺を傷付けるだけ傷付けてから逃げて、ここでのうのうと一人で生きてたんだよな?」
「……ごめんなさい」
もう二度と会わないことが償いになると思っていた。でもそれは俺がそう思っていただけで、真人にしたら、ただ逃げただけだったんだ。
謝ろうにも顔にシャワーを浴びせられ続け、あまりに苦しくて涙が出た。
「俺がいない間一人でどうしてたんだ? お前が我慢できるわけがないよな?」
「……ごほっ、ごほっ」
「やってみろ。今日はそれで許してやる」
「…………」
……真人は俺に復讐がしたいんだ。
ベルトを外し、濡れたジーンズを太ももまで下げ、下着の中に手を入れだが、こんな状況ではとても無理だった。
真人に見つめられているのに、体は何の反応も示さなかった。
すると突然シャワーのホースを投げ出した真人に、胸ぐらを掴まれ、キスをされた。
「…………っ!」
初めて真人とキスをしたときは、天にも昇る気持ちだった。だけど今は地獄を味わっている気がした。もう二度とあのころには戻りたくないのに。
キスをしながら、真人が俺の下着を下ろした。
「…………」
真人の手が俺に触れると、真人の首に腕を回し、自ら真人の唇に唇を押し付け、真人の舌を貪った。
真人の手から繰り出される刺激は懐かしくて苦しかった。しかし我慢できずにあっという間に真人の手の中でイッてしまった。
「毎日ちゃんと店を開けてるんだな」
「…………」
店の前で看板を出していると、真人の声がした。恐る恐る振り返ると、本当に真人が立っていた。
「…………」
「そんな怯えた顔をするな。俺がいじめてるみたいだろ?」
「…………」
顔がどタイプ過ぎるし、無表情のときの真人は圧迫感が凄すぎる。情けなくも尻餅をついてしまった。
「コ、コーヒーでも」
尻餅をつきながらなんとか店を指差したけど、真人は店を一瞥しただけだった。
「まだ開店前だろ」
肌寒い季節だから真人はスーツの上に薄いコートを着ている。……格好良過ぎる。どうかしてる。バランスとかなにもかもが完璧過ぎて涙が出そうになった。
「大丈夫か?」
真人が手を差し出してくれたが、その手を取れなかった。恐れ多くて。もう恋人じゃないから。俺は真人を傷付けて逃げたから。
「……俺に優しくしないで」
その優しさが怖いんだ。
後ずさりながら自動ドアにぶつかりつつも、転がり込むように店の中に入った。
真人にとんでもない態度をとってしまったが、でも仕方なかった。今手なんか握ってしまったら、ストーカー熱が再熱してしまい、また真人の何もかもを知らないと気が済まなくなってしまいそうだったから。
「お前の家は?」
「…………」
閉店間際にひょっこり現れた真人は、俺の閉店作業を見守っていた。聞こえないふりをしていると、真人が見せつけるようにコートのポケットからスマホを出した。
「オーナーに聞いてもいいんだぞ? ついでに俺たちの過去もバラしてやろうか」
「わ、わかったからっ!」
急いで閉店作業を終えて、店に鍵をかけ、上着を着て歩き出すと、真人が後ろを付いてきた。
「ここ」
歩いて五分のところで足を止めると、真人は俺の住む二階建てアパートを見上げた。その横顔の鼻筋が信じられないほど美しくて、また後ずさってしまったが、真人に手を掴まれた。
「どの部屋だ?」
「…………」
黙っていると、真人は俺を強引に引っ張りながら階段を上りだした。
「ちょっと待って!」
手を引っ張り返したが、真人はびくともしなかった。
「怖がりなお前のことだ。一階には住んでないだろ?」
「…………」
二階に上がったところで真人が立ち止まり、俺を振り返った。
「全部のドアをノックさせる気か?」
「…………」
しぶしぶ家のドアまで歩いて鍵を開けると、真人が横からドアを開けて勝手に中に入り、散らかった部屋を見回した。
「一人か?」
「……そうだよ」
家族以外に人を入れたことないのに。まさか男がいると思ったのか?
まだ玄関にいる俺に真人がゆっくりと近付いて来て、まるで巨大な蛇に睨ませたみたいに足が竦んだ。
「俺がどれだけお前に優しくしてやったと思う? 俺はお前が何をしても許してやるつもりだったんだ。それなのにお前は逃げた」
「…………」
「だったらもう優しくしてやる必要はないな?」
片手で首を掴まれ、そのまま頭を壁に押し付けられた。
「……ごめ」
首を掴む真人の腕を両手で引き離そうとしたが、真人の力には敵いそうになかった、
「お前に出会わなければ俺は前の会社のままで平穏に暮らせていたんだ」
「……ごめんなさい」
泣いたって意味がないのは分かっていた。それでも出てしまう涙が頬を流れると、真人に腕を引っ張られ、浴室に連れて行かれた。
「……やめてっ!」
ユニットバスのバスタブの中で、服のままシャワーを頭から浴びせられていた。
「俺のためなら何でもするって言ったよな?」
「…………」
「忘れたのか?」
顔にシャワーをかけられて、思わず咳き込んだ。
「俺がいなきゃ生きていけないって言ったよな? 俺と別れるくらいなら俺を殺してやろうと思ったんだよな?」
「……ごほっ、ごほっ……!」
バスタブの中でむせていると、さらに顔にシャワーをかけられた。
……その通りだけど、もうあのころには戻りたくないんだ。もうあんな風に人を愛したくはない。
「お前は俺を傷付けるだけ傷付けてから逃げて、ここでのうのうと一人で生きてたんだよな?」
「……ごめんなさい」
もう二度と会わないことが償いになると思っていた。でもそれは俺がそう思っていただけで、真人にしたら、ただ逃げただけだったんだ。
謝ろうにも顔にシャワーを浴びせられ続け、あまりに苦しくて涙が出た。
「俺がいない間一人でどうしてたんだ? お前が我慢できるわけがないよな?」
「……ごほっ、ごほっ」
「やってみろ。今日はそれで許してやる」
「…………」
……真人は俺に復讐がしたいんだ。
ベルトを外し、濡れたジーンズを太ももまで下げ、下着の中に手を入れだが、こんな状況ではとても無理だった。
真人に見つめられているのに、体は何の反応も示さなかった。
すると突然シャワーのホースを投げ出した真人に、胸ぐらを掴まれ、キスをされた。
「…………っ!」
初めて真人とキスをしたときは、天にも昇る気持ちだった。だけど今は地獄を味わっている気がした。もう二度とあのころには戻りたくないのに。
キスをしながら、真人が俺の下着を下ろした。
「…………」
真人の手が俺に触れると、真人の首に腕を回し、自ら真人の唇に唇を押し付け、真人の舌を貪った。
真人の手から繰り出される刺激は懐かしくて苦しかった。しかし我慢できずにあっという間に真人の手の中でイッてしまった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
君が好き過ぎてレイプした
眠りん
BL
ぼくは大柄で力は強いけれど、かなりの小心者です。好きな人に告白なんて絶対出来ません。
放課後の教室で……ぼくの好きな湊也君が一人、席に座って眠っていました。
これはチャンスです。
目隠しをして、体を押え付ければ小柄な湊也君は抵抗出来ません。
どうせ恋人同士になんてなれません。
この先の長い人生、君の隣にいられないのなら、たった一度少しの時間でいい。君とセックスがしたいのです。
それで君への恋心は忘れます。
でも、翌日湊也君がぼくを呼び出しました。犯人がぼくだとバレてしまったのでしょうか?
不安に思いましたが、そんな事はありませんでした。
「犯人が誰か分からないんだ。ねぇ、柚月。しばらく俺と一緒にいて。俺の事守ってよ」
ぼくはガタイが良いだけで弱い人間です。小心者だし、人を守るなんて出来ません。
その時、湊也君が衝撃発言をしました。
「柚月の事……本当はずっと好きだったから」
なんと告白されたのです。
ぼくと湊也君は両思いだったのです。
このままレイプ事件の事はなかった事にしたいと思います。
※誤字脱字があったらすみません
年上が敷かれるタイプの短編集
あかさたな!
BL
年下が責める系のお話が多めです。
予告なくr18な内容に入ってしまうので、取扱注意です!
全話独立したお話です!
【開放的なところでされるがままな先輩】【弟の寝込みを襲うが返り討ちにあう兄】【浮気を疑われ恋人にタジタジにされる先輩】【幼い主人に狩られるピュアな執事】【サービスが良すぎるエステティシャン】【部室で思い出づくり】【No.1の女王様を屈服させる】【吸血鬼を拾ったら】【人間とヴァンパイアの逆転主従関係】【幼馴染の力関係って決まっている】【拗ねている弟を甘やかす兄】【ドSな執着系執事】【やはり天才には勝てない秀才】
------------------
新しい短編集を出しました。
詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
くっころ勇者は魔王の子供を産むことになりました
あさきりゆうた
BL
BLで「最終決戦に負けた勇者」「くっころ」、「俺、この闘いが終わったら彼女と結婚するんだ」をやってみたかった。
一話でやりたいことをやりつくした感がありますが、時間があれば続きも書きたいと考えています。
21.03.10
ついHな気分になったので、加筆修正と新作を書きました。大体R18です。
21.05.06
なぜか性欲が唐突にたぎり久々に書きました。ちなみに作者人生初の触手プレイを書きました。そして小説タイトルも変更。
21.05.19
最終話を書きました。産卵プレイ、出産表現等、初めて表現しました。色々とマニアックなR18プレイになって読者ついていけねえよな(^_^;)と思いました。
最終回になりますが、補足エピソードネタ思いつけば番外編でまた書くかもしれません。
最後に魔王と勇者の幸せを祈ってもらえたらと思います。
23.08.16
適当な表紙をつけました
浮気性のクズ【完結】
REN
BL
クズで浮気性(本人は浮気と思ってない)の暁斗にブチ切れた律樹が浮気宣言するおはなしです。
暁斗(アキト/攻め)
大学2年
御曹司、子供の頃からワガママし放題のため倫理観とかそういうの全部母のお腹に置いてきた、女とSEXするのはただの性処理で愛してるのはリツキだけだから浮気と思ってないバカ。
律樹(リツキ/受け)
大学1年
一般人、暁斗に惚れて自分から告白して付き合いはじめたものの浮気性のクズだった、何度言ってもやめない彼についにブチ切れた。
綾斗(アヤト)
大学2年
暁斗の親友、一般人、律樹の浮気相手のフリをする、温厚で紳士。
3人は高校の時からの先輩後輩の間柄です。
綾斗と暁斗は幼なじみ、暁斗は無自覚ながらも本当は律樹のことが大好きという前提があります。
執筆済み、全7話、予約投稿済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる