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残り物には福がある?
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「失礼だと思わない!?」
飲み始めて開口一番、大学時代の先輩である高瀬芽依はそう口にした。
何でもクリスマスにも関わらず職場の上司に残業を言い渡されたらしい。しかも「しかし高瀬くん、クリスマスなのに一緒に過ごす相手はいないのか?気をつけた方がいいぞ。女はクリスマスケーキと同じだからな」などというありがたい助言まで頂戴したのだそうだ。
意味が分からず首を傾げる俺に。
「クリスマスケーキって25日には半額セールでしょ?」
中ジョッキを一気に煽った先輩はとても素敵な笑顔で笑いかけた。
「つまり、売れ残りって言いたい訳よ」
笑顔にも関わらず目が笑っていないから正直怖い。これは相当怒っている証拠だ。
俺が大学を卒業してから二年。
職場が近いこともあり先輩とは月一ペースで一緒に飲んでいる飲み友達だ。しかも自分が飲みたい時にだけ突然呼び出してくる若干迷惑ともとれる感じの飲み友達。
もっともサバサバとした性格で学内でも人気があった美人な先輩に呼び出されて迷惑だと思ったことは一度もない。卒業を機に疎遠になることが多い中、こうして会えるのだからむしろ役得と言っても良いくらいだ。
一緒に飲むようになってから最初こそは彼氏さんに怒られはしないかとヒヤヒヤしたものだが、どうやらここ二年ほどそういう相手はいないらしい。だからこそ今日、声をかけられて密かに期待したりもしたのだが……。
この様子ではやけ酒に付き合わせたかっただけだろう。先輩からしたら俺は呼べば来る便利な相手なのかもしれない。
それにしても……。
荒れてるなぁ……。
一つ上の先輩は現在25歳。
つまりは先輩が言うところの半額セールに当たるわけで。
でもそれなら……。
「セール中なら俺でも買えるかな?」
「は?」
「いや、先輩はね、俺からしたら高嶺の花で。とても手が出せるものじゃなかったんだけど……」
それでも毎月こうやって呼び出してくるのは。
クリスマスって日に声をかけてくれたのは。
少しは脈があるって思っていいのかな?
「先輩……いや芽依さん。俺は芽依さんが好きだよ。俺と付き合ってくれませんか?」
真っすぐに芽依さんを見つめて告げた俺を。
中ジョッキ片手に驚いた顔で見た芽依さんが。
俺に答えをくれたのはジョッキをテーブルに置いたすぐ後のこと。
微かに俯いたその顔が、アルコールとは違う要素で真っ赤になっていて。それが可愛くて愛しくて仕方ない。
「ねぇ芽依さん。俺、残ってて良かったって思えるくらい芽依さんのこと大事にするからね」
「ばぁか!」
売れ残りでもなんでもいいじゃん。これはきっと幸せなクリスマス。
飲み始めて開口一番、大学時代の先輩である高瀬芽依はそう口にした。
何でもクリスマスにも関わらず職場の上司に残業を言い渡されたらしい。しかも「しかし高瀬くん、クリスマスなのに一緒に過ごす相手はいないのか?気をつけた方がいいぞ。女はクリスマスケーキと同じだからな」などというありがたい助言まで頂戴したのだそうだ。
意味が分からず首を傾げる俺に。
「クリスマスケーキって25日には半額セールでしょ?」
中ジョッキを一気に煽った先輩はとても素敵な笑顔で笑いかけた。
「つまり、売れ残りって言いたい訳よ」
笑顔にも関わらず目が笑っていないから正直怖い。これは相当怒っている証拠だ。
俺が大学を卒業してから二年。
職場が近いこともあり先輩とは月一ペースで一緒に飲んでいる飲み友達だ。しかも自分が飲みたい時にだけ突然呼び出してくる若干迷惑ともとれる感じの飲み友達。
もっともサバサバとした性格で学内でも人気があった美人な先輩に呼び出されて迷惑だと思ったことは一度もない。卒業を機に疎遠になることが多い中、こうして会えるのだからむしろ役得と言っても良いくらいだ。
一緒に飲むようになってから最初こそは彼氏さんに怒られはしないかとヒヤヒヤしたものだが、どうやらここ二年ほどそういう相手はいないらしい。だからこそ今日、声をかけられて密かに期待したりもしたのだが……。
この様子ではやけ酒に付き合わせたかっただけだろう。先輩からしたら俺は呼べば来る便利な相手なのかもしれない。
それにしても……。
荒れてるなぁ……。
一つ上の先輩は現在25歳。
つまりは先輩が言うところの半額セールに当たるわけで。
でもそれなら……。
「セール中なら俺でも買えるかな?」
「は?」
「いや、先輩はね、俺からしたら高嶺の花で。とても手が出せるものじゃなかったんだけど……」
それでも毎月こうやって呼び出してくるのは。
クリスマスって日に声をかけてくれたのは。
少しは脈があるって思っていいのかな?
「先輩……いや芽依さん。俺は芽依さんが好きだよ。俺と付き合ってくれませんか?」
真っすぐに芽依さんを見つめて告げた俺を。
中ジョッキ片手に驚いた顔で見た芽依さんが。
俺に答えをくれたのはジョッキをテーブルに置いたすぐ後のこと。
微かに俯いたその顔が、アルコールとは違う要素で真っ赤になっていて。それが可愛くて愛しくて仕方ない。
「ねぇ芽依さん。俺、残ってて良かったって思えるくらい芽依さんのこと大事にするからね」
「ばぁか!」
売れ残りでもなんでもいいじゃん。これはきっと幸せなクリスマス。
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