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第二章 当主編
第五話 城主となる。そして……。
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小山田信茂の娘、幸と婚礼をしてから、三年の時が過ぎ、元亀、(1572年)三年、秋、御屋形様が、室町将軍、足利義昭様の要請を受け、織田、徳川を討伐すべく、大軍を進撃させた。
三日に、軍を出発させ、御屋形の本隊は、遠江の城を次々に落城させ、徳川家康の本拠、浜松城に侵攻したかに見えたが、敢えて徳川を挑発し、三方ヶ原にて、待ち伏せしていた。
その頃、挑発に乗った徳川家康は、織田の援軍も含め、ほぼ、全軍で御屋形様の武田本隊を追撃していた為、浜松城は手薄になっていた。
これに目を付け、策を考えた者がいた。
武田水軍と共に来た二代目山本勘助を自称する山本勘蔵と武藤喜兵衛、(後の真田昌幸)である。
実は山本勘蔵と武藤喜兵衛は、浜松城を落とす為に、特異な部隊を共同して作らせ、実戦で試すつもりである。
浜松城に向かって三十羽の鷹が放たれた。
鷹を良く見ると足に刃物が付けられている。
鷹達は、上空から、浜松城の守備兵を見かけると襲い掛り、次々に殺すか、傷を負わせていた。
浜松の守備兵は大混乱に陥った。
「眼が! 眼を鷹に刺された!」
「おい! 首を鷹に斬り裂かれて死んでおるぞ!」
「助けてくれ!」
その混乱に乗じて、武藤喜兵衛が手で合図し、無言で応えた真田間者衆、六十人が浜松城に侵入し、門を中から開けて、
山本勘蔵が、物見遊山に行くように、楽しげに、
「者共! 手柄の稼ぎ放題だ! 参るぞ!」
山本勘蔵の言葉に応えた山本鉄砲隊、四百人と武田水軍百人が門から入り、浜松城の残りの守備兵をほとんど火縄銃を発砲せず、余裕を持って太刀や槍で殺し、制圧した。
山本勘蔵は、浜松城を制圧し終えると、
「鷹は儂達の秘匿武具ぞ! 隠せ! 門を閉めよ! 退却するであろう徳川、織田連合が来たら火縄銃の弾と弓矢を馳走してやれ! 弾も矢も武具の蔵から出し放題ぞ! わっはっは」
と、笑いながら命じた。
暫くして、御屋形様に敗れ、逃げて来た徳川、織田の軍勢が現れると、浜松城から火縄銃と弓矢が放たれ、逃げて来た軍勢を殺していった。
退却していた軍勢の中に徳川家康がいて、
「儂の武運は落ちた……。直ぐに武田本隊の追撃隊が来よう……。最早、逃げる手立ても無い……。浜松城を奪った武田の武将よ! 儂は自害する故、皆を逃がして下さらぬか? お願い致す!」
すると、浜松城から見物していた俺は、
「徳川殿! 御英断、誠に天晴れ! この山本勘蔵が責任を持って他の徳川の方々の命は助命致そう!」
すると、他の徳川の武将が、
「殿、(徳川家康)だけ死なせませぬ! 共に我々も!」
と、男泣きしながら、死の旅路を共にしようとすると、
「成らぬ! 岡崎城にいる儂の息子、信康を支えよ! 山本殿! 感謝致す! 者共! 去らばじゃ!」
徳川家康は、腹に脇差しを差し、十文字に切り裂くと、徳川一の猛将、本多忠勝が、
「殿! 今楽に! 後免!」
持っていた太刀で、徳川家康の首を撥ね飛ばし、その首級を徳川一の知勇兼備の武将、石川数正が両手に抱きしめ、生き残った徳川、織田の軍勢は、武具、甲冑を捨て投降した。
こうして、浜松城から東の遠江は武田の領地となった。
浜松城にて、御屋形様は、論功行賞にて、
「一番手柄は山本勘蔵とする。褒美として浜松城と周辺十万石を与える!」
「二番手柄は武藤喜兵衛とする。二俣城と周辺五万石を与える!」
俺と武藤喜兵衛は、平伏し、
「「ありがたきしあわせ!」」
と、互いの出世を称え、喜んだ。
だが、約六十日後、三河、岡崎城攻めている御屋形様の体調が急変し、更に元亀四年、(1573年)四月二日。
浜松城に運ばれた御屋形様は、顔は青白く、頬はこけ、身体も一回り痩せ、吐血をしながら、武田の家臣に、
「武田の次の当主は信勝とする……。後見人は勝頼じゃ……。皆の者……。頼むぞ……」
こうして、御屋形様は亡くなった。
三日に、軍を出発させ、御屋形の本隊は、遠江の城を次々に落城させ、徳川家康の本拠、浜松城に侵攻したかに見えたが、敢えて徳川を挑発し、三方ヶ原にて、待ち伏せしていた。
その頃、挑発に乗った徳川家康は、織田の援軍も含め、ほぼ、全軍で御屋形様の武田本隊を追撃していた為、浜松城は手薄になっていた。
これに目を付け、策を考えた者がいた。
武田水軍と共に来た二代目山本勘助を自称する山本勘蔵と武藤喜兵衛、(後の真田昌幸)である。
実は山本勘蔵と武藤喜兵衛は、浜松城を落とす為に、特異な部隊を共同して作らせ、実戦で試すつもりである。
浜松城に向かって三十羽の鷹が放たれた。
鷹を良く見ると足に刃物が付けられている。
鷹達は、上空から、浜松城の守備兵を見かけると襲い掛り、次々に殺すか、傷を負わせていた。
浜松の守備兵は大混乱に陥った。
「眼が! 眼を鷹に刺された!」
「おい! 首を鷹に斬り裂かれて死んでおるぞ!」
「助けてくれ!」
その混乱に乗じて、武藤喜兵衛が手で合図し、無言で応えた真田間者衆、六十人が浜松城に侵入し、門を中から開けて、
山本勘蔵が、物見遊山に行くように、楽しげに、
「者共! 手柄の稼ぎ放題だ! 参るぞ!」
山本勘蔵の言葉に応えた山本鉄砲隊、四百人と武田水軍百人が門から入り、浜松城の残りの守備兵をほとんど火縄銃を発砲せず、余裕を持って太刀や槍で殺し、制圧した。
山本勘蔵は、浜松城を制圧し終えると、
「鷹は儂達の秘匿武具ぞ! 隠せ! 門を閉めよ! 退却するであろう徳川、織田連合が来たら火縄銃の弾と弓矢を馳走してやれ! 弾も矢も武具の蔵から出し放題ぞ! わっはっは」
と、笑いながら命じた。
暫くして、御屋形様に敗れ、逃げて来た徳川、織田の軍勢が現れると、浜松城から火縄銃と弓矢が放たれ、逃げて来た軍勢を殺していった。
退却していた軍勢の中に徳川家康がいて、
「儂の武運は落ちた……。直ぐに武田本隊の追撃隊が来よう……。最早、逃げる手立ても無い……。浜松城を奪った武田の武将よ! 儂は自害する故、皆を逃がして下さらぬか? お願い致す!」
すると、浜松城から見物していた俺は、
「徳川殿! 御英断、誠に天晴れ! この山本勘蔵が責任を持って他の徳川の方々の命は助命致そう!」
すると、他の徳川の武将が、
「殿、(徳川家康)だけ死なせませぬ! 共に我々も!」
と、男泣きしながら、死の旅路を共にしようとすると、
「成らぬ! 岡崎城にいる儂の息子、信康を支えよ! 山本殿! 感謝致す! 者共! 去らばじゃ!」
徳川家康は、腹に脇差しを差し、十文字に切り裂くと、徳川一の猛将、本多忠勝が、
「殿! 今楽に! 後免!」
持っていた太刀で、徳川家康の首を撥ね飛ばし、その首級を徳川一の知勇兼備の武将、石川数正が両手に抱きしめ、生き残った徳川、織田の軍勢は、武具、甲冑を捨て投降した。
こうして、浜松城から東の遠江は武田の領地となった。
浜松城にて、御屋形様は、論功行賞にて、
「一番手柄は山本勘蔵とする。褒美として浜松城と周辺十万石を与える!」
「二番手柄は武藤喜兵衛とする。二俣城と周辺五万石を与える!」
俺と武藤喜兵衛は、平伏し、
「「ありがたきしあわせ!」」
と、互いの出世を称え、喜んだ。
だが、約六十日後、三河、岡崎城攻めている御屋形様の体調が急変し、更に元亀四年、(1573年)四月二日。
浜松城に運ばれた御屋形様は、顔は青白く、頬はこけ、身体も一回り痩せ、吐血をしながら、武田の家臣に、
「武田の次の当主は信勝とする……。後見人は勝頼じゃ……。皆の者……。頼むぞ……」
こうして、御屋形様は亡くなった。
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