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遣らずの十六夜
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今夜は満月が綺麗で、見ていると吸い込まれそうになる。月見酒を楽しみながら、そんな素敵な時間を過ごしたいと思っていたが、俺は今、騒がしい酒屋でビールジョッキ片手に席の隅でちびちび呑んでいた。
仕事も落ち着いてきたし、新たな出会いを見つけるために、SNSで見かけた『ゲイだけの合コン』に参加したのだ。
「はぁ……、やっぱりと思ってたけど、身内ばっかりで、一人で来た俺が入るとこ……ねぇじゃん」
俺は溜め息をつきながら、周りを見渡した。
オネェ丸出しのママみたいなゴリゴリマッチョを囲むように、店子や常連客が耳障りな声を出して、盛り上がっている。初めて参加しているような人もチラホラいたが、その盛り上がりに俺と同じように若干引いていた奴らもいた。
そんな中、そんな騒がしい席の隣のテーブルでは料理を取り分けたり、飲み物を頼んだりして、気が効いている俺好みの可愛い子がいた。
「あ、あの子、可愛いな」
俺はその子をボォーッと眺めていたら、その子は視線を感じたのか、少し微笑み、会釈した。
「可愛いなぁ」
その子の席に移動しようと思ったが、すでにデレデレして、鼻の下を伸ばしきったおやじ達が要塞を築くように固まっていた。おやじ達はその子に下ネタやセクハラをしており、見ている俺は終始イライラした。
「裕介君はどんな人がタイプなの?」
「僕ですか? うーん、思いやりがあって、優しい男性ですかね」
「――お、俺、思いやりあるよ!」
裕介という子は話を上手く流せるタイプなのか、愛想笑いや相槌が上手だった。なんかおやじ慣れしてて、ちょっと怖いと感じた。
「こういう可愛い子に限って、おっさんを散々もてあそんで、ポイするパターンだったりして……」
俺は失礼だと感じながらも、黙って、机にある冷めた焼き鳥を食べた。
「じゃぁ、そろそろお開きにしましょ~」
店のママが突然、仕切り出し始めた。どうやら二次会を自分の店で開くようだ。俺は全くもって興味が無かったので、ビールを飲み終わると、早々に店を出た。
「あー、SNSで主催される合コンには今後マジで行かねぇ。萎える。完全にハズレ」
俺はネオンが輝く繁華街を抜け、駅へ向かおうとスクランブル交差点で信号待ちをしていた。
「あー、月見酒してぇな」
満月を見ながら、俺が黄昏れていると、服を引っ張られる感じがあった。どうせキャッチだろう、と無視しようとしたが、何かが違っていた。
「はぁはぁ……。あの、さっきの会に参加してた方ですよね?」
なんとなく聞き覚えのある声に、俺は信号が青になったが、後ろを振り向いた。さっきの合コンで目があった子だ。膝に手をつき、息を切らしながら、俺を見上げ、微笑んでいた。しかし、どう話を返せばいいか分からなかった。そうこうしていると、信号が赤になり、タクシーやバイクが忙しく行き交っていた。
「あの……ずっと話したいなって思ってたのに、なかなか声を掛けられなくて……ごめんなさい」
「そ、そう……楽しそうだったから、俺の事、興味ないんだと思った」
俺はなんて素っ気ない態度を取ってしまったんだ、とため息をつき、頭を掻いた。
「そうですよね……。でも、ああいうの苦手で。なんで年を取ると、皆さん、セクハラや下ネタばっかりなんですかね。……考えが単細胞だし、本当にああいう人いなくなって欲しい。愛想笑いしてんの、本当に分かんないのかな」
俺は酒屋での様子を見ていたため、彼の変容ぶりに思わず声を出して、笑ってしまった。
「笑うとか、酷くないですか! 少しでも興味があるんだったら、助けに来てくれれば良かったのに……」
「……あ、ごめん。会場の雰囲気が最悪だったから、もういいかなって」
「あー、分かります! なんですか、あれ? SNSで集まる合コンはマジ無いって思いました」
俺と彼は何度も信号が青になったのを無視して、そばにあるガードレールにもたれ掛って、今日の事を話した。オネェ丸出しだったり、身内参加だったり、おやじしか寄り付いて来ないなど……。俺らは気付けば、三十分位話をして、バカ笑いしていた。
「ここじゃ、アレだから、今から呑み直す?」
「そうですね。なんか落ち着いたお店で呑み直したいですね。ご飯も食べられなかったので、ご飯ありなお店が良いです」
「じゃ、行こうか」
意気投合した俺らは繁華街方面へ戻り、ネオン街が無くなり、人気が少ない雑居ビルにやってきた。小さなエレベータに乗り、最上階のバーに着いた。
俺らは空いているテラス席に座った。ウッドデッキで出来た席からはネオン街が一望出来て、吹く風が心地よかった。
「なんでこんな素敵なお店、知ってるんですか?」
「うーん、まぁ、元彼のデートでよく使ってたとこ」
「元彼のデートに使ってたって……その言葉で雰囲気台無しじゃないですか」
「そうだね」
頭を掻きながら、苦笑いしてると、彼も笑って、ツッコミを入れてくれた。俺らはとりあえず、互いの自己紹介をした。彼の名は裕介で都内在住の大学生。落ち着きがあって、話しやすい。そして、何より可愛い。
「大輔さんは会社員なんですね。いつもお仕事お疲れ様です」
裕介は俺に笑顔で労ってくれた。俺はその笑顔を見て、さっきまでの嫌な気持ちが吹き飛んだ気がした。
「それより、今日は月が綺麗ですね」
裕介は頬杖をつき、月を眺めた。俺も月を眺めながら、ハイボールを呑んだ。
「そうだな。これでやっと月見酒が出来たよ……」
月から裕介の方へ視線を変えると、裕介はなんだか不服そうな顔をしていた。
「あ、もしかして、この名ゼリフ知らないんですか?」
「名ゼリフ?」
「月が綺麗ですねって知らないんですか?」
「……わりぃ、分かんねぇ」
俺はスマホで『月が綺麗ですね』について調べた。スクロールして、ザッと読み、なんとなく理解した俺は恥ずかしくなり、頬を赤くし、頭を掻いた。
「調べました?」
「お、おう……分からなくてごめん」
裕介はコークハイを呑み、溜め息をつくと、俺を見つめ、再び同じ言葉を発した。
「今日は月が綺麗ですね」
「えーと、うーん、……今日は肌寒いですね」
俺をスマホで返し言葉の一覧を見て、適当な返しをしてしまった。その言葉に裕介は一瞬、キョトンとしたが、声を出して笑った。
「あはは……。大輔さんがまさかその返しをしてくるとは。面白いですね」
裕介に笑われ、俺は恥ずかしの余り、俯いた。裕介はテーブルから立ち、俺の耳元で小さく囁いた。
「……寂しいんですか?」
俺よりも年下なのに、余裕がある甘い声に俺は耳がビクッとして、頬を赤くした。こんな時に頷いて、軽そうな男だと思われたくなかったが、耳に残る裕介の声に我慢が出来なかった……。
「いや、その……」
「もう終電無くなりますし、僕の家近いんで、僕の家で呑み直しましょ」
俺らは月の見えるバーから出て、裕介が住んでいるアパートへ向かった。向かう途中にコンビニに寄り、酒やつまみを買った。
「はい、どうぞ。入って下さい」
「失礼します」
裕介の部屋は壁に光を反射させ、幻想的な雰囲気だった。家具もビンテージ感のあるものばかりでセンスのある落ち着く部屋だった。
「裕介君はセンスあるね。俺はセンス無いから、羨ましいよ」
「そうですか? 統一させただけですよ」
俺らはソファに座り、映画を観た。俺はいつもより緊張し、顔が火照るように熱かった。裕介はソファに置いた俺の手を取り、優しく握ってきた。
いつもの俺なら握る側なのに、初めて握られる側になり、少し焦って、心臓がバクバクだった。
「大輔さん、こっち向いて下さい」
「……」
さっきの可愛げがある裕介とは違い、男の表情をした裕介が俺をまっすぐ見つめてくる。そして、裕介は俺にキスをしてきた。
「今日は肌寒いんですよね?」
「……お、おう」
「じゃ、僕が大輔さんを温めますね」
「…………ん? ちょ、ちょっと待って!」
「大輔さん、どうしたんです?」
俺はまさかと思い、裕介の体を押し退けようとした。
「いや、俺さ、タチだからさ」
「そうなんですか? てっきりネコだと思ってました」
「普通は俺が抱く方だろ。一応、年上な訳だし」
動揺する俺を尻目に、裕介は少し微笑むと、俺の体をソファに押し倒した。
「大丈夫ですよ。抱かれる方も意外と気持ち良かったりしますから」
「そうかもしれないが……」
裕介が俺の頬を触る感触が心地良かった。俺の震える唇を親指でなぞり、裕介は俺に顔を近づけた。
「物は試しですよ。嫌だったら、僕がネコになってもいいんで。ね?」
「……ああ」
俺は返す言葉が思い浮かばず、祐介の押しに負けてしまった。そんな俺を見て、裕介は小さく笑い、キスをして、舌を絡ませる。
「震えてますよ」
「う、うるせぇ……」
「大輔さん、ベッド行きましょ」
俺は裕介の声にゾクゾクし、頬を赤くした。そして、裕介に手を引っ張られ、ベッドへ行き、再び押し倒された。
「体が熱くなるまで……楽しみましょ。大輔さん……」
「俺……タチだから、なんというか……その、リードされるのって慣れなくて」
「大丈夫ですよ。優しくしますから。大輔さんだって興奮してるじゃないですか」
「これは……生理現象だ」
俺らは時間を忘れる位、何度も体を重ねた。痛かったりするだろうと覚悟を決めていたが、裕介は優しく抱いてくれた。何度も俺の名前を呼び、俺の経験したことの無い快楽を教えてくれた。俺は快楽に飲み込まれ、口は緩み、涎を垂らし、自分でも聞いた事が無いような卑猥な声で啼いた。
「大輔さん……可愛いですよ。もっと啼いてください」
「おまっ! んっ! あっ……やべぇ。 気持ち良い! んあっ、またイッちまう! ……イクイクッ!」
俺らの体の相性は良く、長年彼氏がおらず、ネコの経験も無い俺にとっては体が蕩けてしまうんじゃないかと思う程だった。
「僕達、体の相性もいいみたいですね」
「んあ! 祐介君、そんなにしたら、またイッちゃうからぁ……」
「良いですよ、もっと淫らな大輔さんを見せて下さい。好きですよ」
「お、お、うあっ。お、俺も祐介の事、す……きだ。ああ!」
大輔は裕介に気持ち良いとこを突かれながら、半分意識が飛ぶ中、今日はやっぱり合コンに来て良かったかもしれないな……と、思った。
仕事も落ち着いてきたし、新たな出会いを見つけるために、SNSで見かけた『ゲイだけの合コン』に参加したのだ。
「はぁ……、やっぱりと思ってたけど、身内ばっかりで、一人で来た俺が入るとこ……ねぇじゃん」
俺は溜め息をつきながら、周りを見渡した。
オネェ丸出しのママみたいなゴリゴリマッチョを囲むように、店子や常連客が耳障りな声を出して、盛り上がっている。初めて参加しているような人もチラホラいたが、その盛り上がりに俺と同じように若干引いていた奴らもいた。
そんな中、そんな騒がしい席の隣のテーブルでは料理を取り分けたり、飲み物を頼んだりして、気が効いている俺好みの可愛い子がいた。
「あ、あの子、可愛いな」
俺はその子をボォーッと眺めていたら、その子は視線を感じたのか、少し微笑み、会釈した。
「可愛いなぁ」
その子の席に移動しようと思ったが、すでにデレデレして、鼻の下を伸ばしきったおやじ達が要塞を築くように固まっていた。おやじ達はその子に下ネタやセクハラをしており、見ている俺は終始イライラした。
「裕介君はどんな人がタイプなの?」
「僕ですか? うーん、思いやりがあって、優しい男性ですかね」
「――お、俺、思いやりあるよ!」
裕介という子は話を上手く流せるタイプなのか、愛想笑いや相槌が上手だった。なんかおやじ慣れしてて、ちょっと怖いと感じた。
「こういう可愛い子に限って、おっさんを散々もてあそんで、ポイするパターンだったりして……」
俺は失礼だと感じながらも、黙って、机にある冷めた焼き鳥を食べた。
「じゃぁ、そろそろお開きにしましょ~」
店のママが突然、仕切り出し始めた。どうやら二次会を自分の店で開くようだ。俺は全くもって興味が無かったので、ビールを飲み終わると、早々に店を出た。
「あー、SNSで主催される合コンには今後マジで行かねぇ。萎える。完全にハズレ」
俺はネオンが輝く繁華街を抜け、駅へ向かおうとスクランブル交差点で信号待ちをしていた。
「あー、月見酒してぇな」
満月を見ながら、俺が黄昏れていると、服を引っ張られる感じがあった。どうせキャッチだろう、と無視しようとしたが、何かが違っていた。
「はぁはぁ……。あの、さっきの会に参加してた方ですよね?」
なんとなく聞き覚えのある声に、俺は信号が青になったが、後ろを振り向いた。さっきの合コンで目があった子だ。膝に手をつき、息を切らしながら、俺を見上げ、微笑んでいた。しかし、どう話を返せばいいか分からなかった。そうこうしていると、信号が赤になり、タクシーやバイクが忙しく行き交っていた。
「あの……ずっと話したいなって思ってたのに、なかなか声を掛けられなくて……ごめんなさい」
「そ、そう……楽しそうだったから、俺の事、興味ないんだと思った」
俺はなんて素っ気ない態度を取ってしまったんだ、とため息をつき、頭を掻いた。
「そうですよね……。でも、ああいうの苦手で。なんで年を取ると、皆さん、セクハラや下ネタばっかりなんですかね。……考えが単細胞だし、本当にああいう人いなくなって欲しい。愛想笑いしてんの、本当に分かんないのかな」
俺は酒屋での様子を見ていたため、彼の変容ぶりに思わず声を出して、笑ってしまった。
「笑うとか、酷くないですか! 少しでも興味があるんだったら、助けに来てくれれば良かったのに……」
「……あ、ごめん。会場の雰囲気が最悪だったから、もういいかなって」
「あー、分かります! なんですか、あれ? SNSで集まる合コンはマジ無いって思いました」
俺と彼は何度も信号が青になったのを無視して、そばにあるガードレールにもたれ掛って、今日の事を話した。オネェ丸出しだったり、身内参加だったり、おやじしか寄り付いて来ないなど……。俺らは気付けば、三十分位話をして、バカ笑いしていた。
「ここじゃ、アレだから、今から呑み直す?」
「そうですね。なんか落ち着いたお店で呑み直したいですね。ご飯も食べられなかったので、ご飯ありなお店が良いです」
「じゃ、行こうか」
意気投合した俺らは繁華街方面へ戻り、ネオン街が無くなり、人気が少ない雑居ビルにやってきた。小さなエレベータに乗り、最上階のバーに着いた。
俺らは空いているテラス席に座った。ウッドデッキで出来た席からはネオン街が一望出来て、吹く風が心地よかった。
「なんでこんな素敵なお店、知ってるんですか?」
「うーん、まぁ、元彼のデートでよく使ってたとこ」
「元彼のデートに使ってたって……その言葉で雰囲気台無しじゃないですか」
「そうだね」
頭を掻きながら、苦笑いしてると、彼も笑って、ツッコミを入れてくれた。俺らはとりあえず、互いの自己紹介をした。彼の名は裕介で都内在住の大学生。落ち着きがあって、話しやすい。そして、何より可愛い。
「大輔さんは会社員なんですね。いつもお仕事お疲れ様です」
裕介は俺に笑顔で労ってくれた。俺はその笑顔を見て、さっきまでの嫌な気持ちが吹き飛んだ気がした。
「それより、今日は月が綺麗ですね」
裕介は頬杖をつき、月を眺めた。俺も月を眺めながら、ハイボールを呑んだ。
「そうだな。これでやっと月見酒が出来たよ……」
月から裕介の方へ視線を変えると、裕介はなんだか不服そうな顔をしていた。
「あ、もしかして、この名ゼリフ知らないんですか?」
「名ゼリフ?」
「月が綺麗ですねって知らないんですか?」
「……わりぃ、分かんねぇ」
俺はスマホで『月が綺麗ですね』について調べた。スクロールして、ザッと読み、なんとなく理解した俺は恥ずかしくなり、頬を赤くし、頭を掻いた。
「調べました?」
「お、おう……分からなくてごめん」
裕介はコークハイを呑み、溜め息をつくと、俺を見つめ、再び同じ言葉を発した。
「今日は月が綺麗ですね」
「えーと、うーん、……今日は肌寒いですね」
俺をスマホで返し言葉の一覧を見て、適当な返しをしてしまった。その言葉に裕介は一瞬、キョトンとしたが、声を出して笑った。
「あはは……。大輔さんがまさかその返しをしてくるとは。面白いですね」
裕介に笑われ、俺は恥ずかしの余り、俯いた。裕介はテーブルから立ち、俺の耳元で小さく囁いた。
「……寂しいんですか?」
俺よりも年下なのに、余裕がある甘い声に俺は耳がビクッとして、頬を赤くした。こんな時に頷いて、軽そうな男だと思われたくなかったが、耳に残る裕介の声に我慢が出来なかった……。
「いや、その……」
「もう終電無くなりますし、僕の家近いんで、僕の家で呑み直しましょ」
俺らは月の見えるバーから出て、裕介が住んでいるアパートへ向かった。向かう途中にコンビニに寄り、酒やつまみを買った。
「はい、どうぞ。入って下さい」
「失礼します」
裕介の部屋は壁に光を反射させ、幻想的な雰囲気だった。家具もビンテージ感のあるものばかりでセンスのある落ち着く部屋だった。
「裕介君はセンスあるね。俺はセンス無いから、羨ましいよ」
「そうですか? 統一させただけですよ」
俺らはソファに座り、映画を観た。俺はいつもより緊張し、顔が火照るように熱かった。裕介はソファに置いた俺の手を取り、優しく握ってきた。
いつもの俺なら握る側なのに、初めて握られる側になり、少し焦って、心臓がバクバクだった。
「大輔さん、こっち向いて下さい」
「……」
さっきの可愛げがある裕介とは違い、男の表情をした裕介が俺をまっすぐ見つめてくる。そして、裕介は俺にキスをしてきた。
「今日は肌寒いんですよね?」
「……お、おう」
「じゃ、僕が大輔さんを温めますね」
「…………ん? ちょ、ちょっと待って!」
「大輔さん、どうしたんです?」
俺はまさかと思い、裕介の体を押し退けようとした。
「いや、俺さ、タチだからさ」
「そうなんですか? てっきりネコだと思ってました」
「普通は俺が抱く方だろ。一応、年上な訳だし」
動揺する俺を尻目に、裕介は少し微笑むと、俺の体をソファに押し倒した。
「大丈夫ですよ。抱かれる方も意外と気持ち良かったりしますから」
「そうかもしれないが……」
裕介が俺の頬を触る感触が心地良かった。俺の震える唇を親指でなぞり、裕介は俺に顔を近づけた。
「物は試しですよ。嫌だったら、僕がネコになってもいいんで。ね?」
「……ああ」
俺は返す言葉が思い浮かばず、祐介の押しに負けてしまった。そんな俺を見て、裕介は小さく笑い、キスをして、舌を絡ませる。
「震えてますよ」
「う、うるせぇ……」
「大輔さん、ベッド行きましょ」
俺は裕介の声にゾクゾクし、頬を赤くした。そして、裕介に手を引っ張られ、ベッドへ行き、再び押し倒された。
「体が熱くなるまで……楽しみましょ。大輔さん……」
「俺……タチだから、なんというか……その、リードされるのって慣れなくて」
「大丈夫ですよ。優しくしますから。大輔さんだって興奮してるじゃないですか」
「これは……生理現象だ」
俺らは時間を忘れる位、何度も体を重ねた。痛かったりするだろうと覚悟を決めていたが、裕介は優しく抱いてくれた。何度も俺の名前を呼び、俺の経験したことの無い快楽を教えてくれた。俺は快楽に飲み込まれ、口は緩み、涎を垂らし、自分でも聞いた事が無いような卑猥な声で啼いた。
「大輔さん……可愛いですよ。もっと啼いてください」
「おまっ! んっ! あっ……やべぇ。 気持ち良い! んあっ、またイッちまう! ……イクイクッ!」
俺らの体の相性は良く、長年彼氏がおらず、ネコの経験も無い俺にとっては体が蕩けてしまうんじゃないかと思う程だった。
「僕達、体の相性もいいみたいですね」
「んあ! 祐介君、そんなにしたら、またイッちゃうからぁ……」
「良いですよ、もっと淫らな大輔さんを見せて下さい。好きですよ」
「お、お、うあっ。お、俺も祐介の事、す……きだ。ああ!」
大輔は裕介に気持ち良いとこを突かれながら、半分意識が飛ぶ中、今日はやっぱり合コンに来て良かったかもしれないな……と、思った。
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