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第六章:二人の再会と希空のプチ追放

6-1:念願の再会

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 薬草園の中へ入ると、奥の花壇で子供達に薬草の説明をしている希空の姿があった。雫は奇跡の再会だと思い、目頭が熱くなった。そして、大きな声で希空の名を呼んだ。


「これは解毒に使う薬草で――」
「希空! 希空だよな?」
「えっ……」


 希空は声がする方を振り向くと、手を大きく振る雫の姿だった。希空はひどく驚き、今にも泣きそうだった。そして、雫に駆け寄り、抱きついた。


「希空だよ! 雫さん……だもんね? 本当の雫さんだ! え、嬉しい! でも、なんでこんなとこにいるの?」
「そりゃ、希空を助けるために来たんだよ。いやぁ、それにしても、あの魔法陣が本物だとは思わなかったよ。マジで異世界に来ちゃうんだもん。それより、同じ世界に来れて良かったよ……。一時はどうなるかと思ったよ」
「仕事とか大丈夫なの? だって、帰る方法分からないし……」
「あぁ、もうどうでもよくなって、勢いで来た。第二の人生だと思って、試行錯誤しながら、コイツと暮らしてる。……って、あれ? アレックス、どこ行った?」


 雫はさっきまで隣にいたアレックスを探した。子供達がキャッキャと嬉しそうな声がしたため、よく見ると、いつの間にか狼の姿になり、子供達に撫でられていた。


「はぁ……。本当にアイツ抜かりないな。アイツはアレックスって言って、人狼なんだ。狼の姿になったり、人間の姿になったり、案外頼りになる奴なんだ」
「人狼なんだ! 初めて見た!」
「希空は今ここで何やってんだ?」
「今はね、子供達に薬草について教えてるとこ。やる事が無くてさ」
「その子達ってあの南門近くにある孤児院の子達?」
「そうそう。この前、火事があって、ここで預かって貰ってる感じ。ところで、雫さんは何しに来たの?」
「希空を探しに来たってのもあるけど、アラン様に会いに来た」
「そっか……。でも、僕を探しに来てくれたのは嬉しいな。えへへっ」


 希空は頬を赤くし、雫に抱きついた。雫は希空の頭を優しく撫でた。希空とイチャついている所を見て、アレックスが人の姿になり、希空と雫の間に割って入って、雫にしがみついた。


「主はアレックスのもの! 誰にも渡さないんだから!」
「おい、こら! 俺はいつからお前のものになったんだよ!」
「アレックス、主と口付けした。だから、もうアレックスのもの」


 二人が言い合っているのを見て、希空は何かを察したのかニヤリと笑った。


「あー、そう言う事ね。はいはい、大丈夫。取ったりしないから。アレックスは本当に雫さんの事が好きなんだねぇ」
「違うって!」
「うん! アレックス、主の事大好き!」


 子供達は三人のやり取りを純粋な目で見つめていた。雫はなんだか恥ずかしくなり、抱きつくアレックスの体を引き剥がした。希空は子供達に雫の事を紹介すると、顔を明るくし、雫の周りに集まって、色々と質問してきた。
 一通り答え終わると、皆で一緒に部屋へ向かった。部屋に入ると、希空はアランを雫へ紹介した。


「お二人はご友人だったのですね。遥々遠い所からお越しいただきありがとうございます。私は今、孤児院の管理者をしておりますアランと申します」
「アラン様、折り入ってお話したいことがあります。出来れば、子供達がいない部屋とかありませんか?」
「じゃ、僕の部屋で話す? あそこなら誰も来る人いないし」


 希空は子供達に大事な話があるからと言って、いつものミサンガ作りをするように伝えた。そして、四人は希空の部屋へ向かった。部屋へ入ると、エミュがシーツを取り替えたりしていた。


「希空様、子供達とお勉強されていると思っていましたのに……。すみません、すぐ終わらせます」
「エミュ、いいよ。それくらい自分で出来るから。それよりも、僕の友達を紹介するよ」


 希空は雫とアレックスをエミュに紹介してくれた。アレックスが警戒していないという事は悪い人では無さそうと思った。そして、四人が席に着くと、エミュはお茶を淹れてくれた。


「エミュもいてもいいよね?」
「うん、勿論」


 皆が席に着いたのを確認すると、雫はバッグから聖杯を取り出し、テーブルの上に置いた。皆、ハッとした表情をし、聖杯を見つめた。


「驚かれるって事はこれに見覚えがあるって事ですね?」
「これ、孤児院の祭壇に飾った聖杯に似てるような? なんで雫が持ってるの?」
「希空の言う通り、これは焼け落ちた孤児院の祭壇らしき場所に落ちていた聖杯です。現場を見る限り、激しく燃えていたと思います。なのに、この聖杯はススも傷もなく、落ちていました。あと、瘴気を纏っていました」
「希空様から受け取った時は、そのようなものは感じませんでした」
「うん、僕も触ったりしたけど、特に何も感じなかったよ。もしかして、この聖杯が原因で孤児院が火事になったって事? だから、川の水じゃ火が消えなかったんだ」
「そんなまさか……」


 エミュは顔を青ざめて、頭を抱え、俯いていた。近くに座っていた希空がエミュの肩に手を置き、顔色を窺うと、エミュは急に立ち上がり、皆に深々と頭を下げた。
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