6 / 117
第一章:苦痛な日々からの脱却
1-5:やましい気持ちは全然ありません!
しおりを挟む
そんな充実した日々が続き、テネブリスの杖の強化も終わり、希空も雫のアドバイスが無くても、一人で立ち回れるようになったある日。二人は一通りのタスクを消化し終えると、夜這い星の崖で星を眺めていた。
「あの、雫さんに相談したい事があるんですけど……、大丈夫ですか?」
「うん、いいよ。何かあった?」
「あの、僕……。雫さんとリアルで会ってみたいです!」
希空の突然の申し出に、雫は飲んでいたお茶を吹き出しそうになった。確かにゲーム内で仲良くなって、リアルで会う人はいなくはない。ギルドメンバーでオフ会をするのも、今ではそんなに珍しくはない。希空のプライベートの話はよく聞いていたが、雫はあまりプライベートの話はしなかった。それもあってか、何故自分に会いたいと思うのだろうかと雫は疑問に思った。
「えっ、私と? 私とリアルで会ったとしても、面白くないよ。第一、自分自身の事なんて話してないし、素性も知らない人と会うの、怖くないの?」
「確かに怖くないって言うと嘘になりますけど、雫さんだったら、安心かなって。優しいし……」
「優しいって……」
雫は少し戸惑ったが、レイスと筋肉バカとは昔開催されたオフラインイベントで会った事あるし、希空は悪いような子じゃないのは分かっていた。少し考えた後、雫はどうにでもなれという気持ちでチャットを打った。
「……分かった。でも、私は至って普通だし、面白味ないよ」
「会ってくれるんですか! 嬉しいです! これ、僕のアカウントです」
希空は雫にメッセージアプリのアカウントを教えた。雫は返答の速さに驚き、最近の子は意外と大胆だなと思った。雫はアプリにアカウントを登録すると、メッセージを送った。これまた速攻で返事が来た。
「雫さん、よろしくお願いします! 僕は東條市に住んでいるんですけど、雫さんはどこに住んでいるんですか?」
(東條市って……住んでるとこ一緒じゃん。世の中狭いとは思っていたけど、こんなにもご近所さんとは)
「雫さん、どうかしましたか?」
「いや、ご近所さんだなって」
「本当ですか? 嬉しいです! 雫さんに早く会いたいです! いつなら会えますか!」
グイグイ来る希空に雫は困り果てた。これがジェネレーションギャップなのかと思いつつ、スマホのカレンダーを見た。上司との関係が終わってから、休みの日は予定が無い。予定と言っても、ゲーム内イベントを消化したり、そういう予定だけだ。
「希空の予定に合わせるよ」
「本当ですか! 平日は学校なので、土日が良いです!」
上司との一件もあり、雫は人肌が恋しかった。もし、リアルで会って、希空が可愛かったら、ワンチャンあるかもしれないと雫は良からぬ事を考えた。そんな下心を押し殺しながら、雫は希空とリアルで会う約束をした。
◆◇◆◇◆◇
久々に予定が入った土曜日。雫はジャケットを羽織り、会社に行く時とは違う香水をつけた。少し色気がある優しい甘さに、香りに深みがあって、落ち着きが感じられるこの香水は相手を誘う時につける、要するに如何わしい事がしたい時につける香水だ。姿鏡で全身をチェックした雫は希空と待ち合わせている駅前まで急いだ。
「まだ来てないかな? と言うより、希空は俺の事を男だって分かってんのかな? 俺は希空の事を年下の男だと勝手に思ってるけど……。あぁ、可愛いと良いなぁ」
雫がやらしい妄想をしていると、希空からメッセージが届いた。メッセージを見ると、首から下が写った全身写真が送られてきた。雫はその写真を見ながら、辺りを見渡した。待ち合わせの駅前はそれなりに人通りがあり、休日であったため、混んでいた。しかし、雫は容易にその服装をしている子を見つける事が出来た。その子はショーウィンドウを鏡代わりにして、髪の毛を直したり、服装をチェックしたりしていた。雫はその子の近くに行くと、声を掛けるのではなく、「近くにいるよ」とメッセージを打った。
(声かけてもいいけど、ちょっと可愛い反応見てみたい……。ごめんね、意地悪して)
「――えっ! 雫さん、どこだろう? あぁ、緊張するな。こんな僕に会って、幻滅しないかな……?」
(可愛い……。リアルでも子犬みたいで抱き締めたくなる!)
希空はきょろきょろしながら、雫を探していた。自分の恰好などは一切伝えていないのに、一生懸命探している希空を見て、雫は声を出して、笑った。希空は雫の笑い声にビクッとした。そして、雫にメッセージのやり取りの画面を見せられ、希空はボッと顔を赤くし、顔を両手で隠した。
「うわぁ! 隣にいるなら、声かけて下さいよ! なんか恥ずかしいじゃないですか!」
「あははっ……。ごめん、ごめん。あまりにも可愛くてさ。……で、希空さんで合ってるかな?」
「はい、高槻 希空って言います。雫さん……ですよね?」
「あっ、フルネーム言っちゃう感じ? ま、いいか。俺は富塚雫。よろしく」
「雫さんってカッコいいですね。……男の人で良かったぁ」
「じゃ、早速だけど、ご飯食べに行こうか。何が食べたい?」
「うーん。……じゃ、パスタが食べたいです!」
希空は嬉しそうに雫の隣に並んだ。雫の予想していた以上に、希空は小さくて可愛くて、ゲーム内での素直さなどを加味すると、ご飯よりも先に食べてしまいたいと思った。そんな下心をグッと抑え、希空のリクエスト通り、パスタが美味しいお店へ入った。
「あの、雫さんに相談したい事があるんですけど……、大丈夫ですか?」
「うん、いいよ。何かあった?」
「あの、僕……。雫さんとリアルで会ってみたいです!」
希空の突然の申し出に、雫は飲んでいたお茶を吹き出しそうになった。確かにゲーム内で仲良くなって、リアルで会う人はいなくはない。ギルドメンバーでオフ会をするのも、今ではそんなに珍しくはない。希空のプライベートの話はよく聞いていたが、雫はあまりプライベートの話はしなかった。それもあってか、何故自分に会いたいと思うのだろうかと雫は疑問に思った。
「えっ、私と? 私とリアルで会ったとしても、面白くないよ。第一、自分自身の事なんて話してないし、素性も知らない人と会うの、怖くないの?」
「確かに怖くないって言うと嘘になりますけど、雫さんだったら、安心かなって。優しいし……」
「優しいって……」
雫は少し戸惑ったが、レイスと筋肉バカとは昔開催されたオフラインイベントで会った事あるし、希空は悪いような子じゃないのは分かっていた。少し考えた後、雫はどうにでもなれという気持ちでチャットを打った。
「……分かった。でも、私は至って普通だし、面白味ないよ」
「会ってくれるんですか! 嬉しいです! これ、僕のアカウントです」
希空は雫にメッセージアプリのアカウントを教えた。雫は返答の速さに驚き、最近の子は意外と大胆だなと思った。雫はアプリにアカウントを登録すると、メッセージを送った。これまた速攻で返事が来た。
「雫さん、よろしくお願いします! 僕は東條市に住んでいるんですけど、雫さんはどこに住んでいるんですか?」
(東條市って……住んでるとこ一緒じゃん。世の中狭いとは思っていたけど、こんなにもご近所さんとは)
「雫さん、どうかしましたか?」
「いや、ご近所さんだなって」
「本当ですか? 嬉しいです! 雫さんに早く会いたいです! いつなら会えますか!」
グイグイ来る希空に雫は困り果てた。これがジェネレーションギャップなのかと思いつつ、スマホのカレンダーを見た。上司との関係が終わってから、休みの日は予定が無い。予定と言っても、ゲーム内イベントを消化したり、そういう予定だけだ。
「希空の予定に合わせるよ」
「本当ですか! 平日は学校なので、土日が良いです!」
上司との一件もあり、雫は人肌が恋しかった。もし、リアルで会って、希空が可愛かったら、ワンチャンあるかもしれないと雫は良からぬ事を考えた。そんな下心を押し殺しながら、雫は希空とリアルで会う約束をした。
◆◇◆◇◆◇
久々に予定が入った土曜日。雫はジャケットを羽織り、会社に行く時とは違う香水をつけた。少し色気がある優しい甘さに、香りに深みがあって、落ち着きが感じられるこの香水は相手を誘う時につける、要するに如何わしい事がしたい時につける香水だ。姿鏡で全身をチェックした雫は希空と待ち合わせている駅前まで急いだ。
「まだ来てないかな? と言うより、希空は俺の事を男だって分かってんのかな? 俺は希空の事を年下の男だと勝手に思ってるけど……。あぁ、可愛いと良いなぁ」
雫がやらしい妄想をしていると、希空からメッセージが届いた。メッセージを見ると、首から下が写った全身写真が送られてきた。雫はその写真を見ながら、辺りを見渡した。待ち合わせの駅前はそれなりに人通りがあり、休日であったため、混んでいた。しかし、雫は容易にその服装をしている子を見つける事が出来た。その子はショーウィンドウを鏡代わりにして、髪の毛を直したり、服装をチェックしたりしていた。雫はその子の近くに行くと、声を掛けるのではなく、「近くにいるよ」とメッセージを打った。
(声かけてもいいけど、ちょっと可愛い反応見てみたい……。ごめんね、意地悪して)
「――えっ! 雫さん、どこだろう? あぁ、緊張するな。こんな僕に会って、幻滅しないかな……?」
(可愛い……。リアルでも子犬みたいで抱き締めたくなる!)
希空はきょろきょろしながら、雫を探していた。自分の恰好などは一切伝えていないのに、一生懸命探している希空を見て、雫は声を出して、笑った。希空は雫の笑い声にビクッとした。そして、雫にメッセージのやり取りの画面を見せられ、希空はボッと顔を赤くし、顔を両手で隠した。
「うわぁ! 隣にいるなら、声かけて下さいよ! なんか恥ずかしいじゃないですか!」
「あははっ……。ごめん、ごめん。あまりにも可愛くてさ。……で、希空さんで合ってるかな?」
「はい、高槻 希空って言います。雫さん……ですよね?」
「あっ、フルネーム言っちゃう感じ? ま、いいか。俺は富塚雫。よろしく」
「雫さんってカッコいいですね。……男の人で良かったぁ」
「じゃ、早速だけど、ご飯食べに行こうか。何が食べたい?」
「うーん。……じゃ、パスタが食べたいです!」
希空は嬉しそうに雫の隣に並んだ。雫の予想していた以上に、希空は小さくて可愛くて、ゲーム内での素直さなどを加味すると、ご飯よりも先に食べてしまいたいと思った。そんな下心をグッと抑え、希空のリクエスト通り、パスタが美味しいお店へ入った。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。
異世界転移したら何故か獣化してたし、俺を拾った貴族はめちゃくちゃ犬好きだった
綾里 ハスミ
BL
高校生の室谷 光彰(むろやみつあき)は、登校中に異世界転移されてしまった。転移した先で何故か光彰は獣化していた。化物扱いされ、死にかけていたところを貴族の男に拾われる。しかし、その男は重度の犬好きだった。(貴族×獣化主人公)モフモフ要素多め。
☆……エッチ警報。背後注意。
【騎士とスイーツ】異世界で菓子作りに励んだらイケメン騎士と仲良くなりました
尾高志咲/しさ
BL
部活に出かけてケーキを作る予定が、高校に着いた途端に大地震?揺れと共に気がついたら異世界で、いきなり巨大な魔獣に襲われた。助けてくれたのは金髪に碧の瞳のイケメン騎士。王宮に保護された後、騎士が昼食のたびに俺のところにやってくる!
砂糖のない異世界で、得意なスイーツを作ってなんとか自立しようと頑張る高校生、ユウの物語。魔獣退治専門の騎士団に所属するジードとのじれじれ溺愛です。
🌟第10回BL小説大賞、応援していただきありがとうございました。
◇他サイト掲載中、アルファ版は一部設定変更あり。R18は※回。
🌟素敵な表紙はimoooさんが描いてくださいました。ありがとうございました!
BLが蔓延る異世界に転生したので大人しく僕もボーイズラブを楽しみます~愛されチートボーイは冒険者に溺愛される~
はるはう
BL
『童貞のまま死ぬかも』
気が付くと異世界へと転生してしまった大学生、奏人(かなと)。
目を開けるとそこは、男だらけのBL世界だった。
巨根の友人から夜這い未遂の年上医師まで、僕は今日もみんなと元気にS〇Xでこの世の窮地を救います!
果たして奏人は、この世界でなりたかったヒーローになれるのか?
※エロありの話には★マークがついています
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
異世界でひとりぼっちのSub ~拾ったDomを育てたら執着されてしまいました~
てんつぶ
BL
ヨウスケは大魔法使いとして異世界に召喚され、仲間と共に無事に「瘴気」を封じて早数年経った。
森の中で一人暮らしているヨウスケだったが、自分の魔力でSubとしての欲求を抑える日々が続いている。
日本ではもはや周知されきっていたDom/Subユニバースという第三の性は、この異世界には存在しない。つまり、ヨウスケはこの世界でたった一人のSubであり、ただただ身体の不調と不安感を押し殺すだけだった。
そんな中、近くの廃村で一人の少年と出会う。少年は異質な容貌――頭に獣の耳のようなものを付けて、寒空の下座っている。そして何より彼はヨウスケに「命令」を与えたのだ。
Subとしての本能は自然とそれに従った。少年は、この世界でただ一人のDomだった――?
そしてその少年の正体は――
メインは19歳✕26歳、攻めの小年時代は一瞬です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる