20 / 47
第8章:人は見た目で判断してはいけない(シンクロイド視点)
20.
しおりを挟む
「二人が言い合って、どうするんだ。今は健人たちの能力がどのくらいかを測定するのが先だろう? 何のためにここまで来たんだ。仲良く喧嘩するくらいだったら、俺は部屋に帰るぞ」
「琥太郎、ごめんって。とりあえず健人さんたちの能力がどのくらいか見てみよう。今からタイムアタックの設定をするから、ちょっと待ってね」
夏希は機嫌を損ねた琥太郎に平謝りし、ホログラムモニターを表示させ、設定を入力していた。夏希が入力し終えると、設定データをスマートウォッチに転送したと言われ、健人と一緒にデータを見た。設定条件は『半径五十メートル圏内に存在する十体の疑似シャドウを殲滅せよ』というものだ。疑似シャドウはアイリスが敵視している未知なる脅威から生まれ出てくる人型の黒い靄――いわゆるシャドウを疑似体したものらしい。蘇芳はそんな簡単な条件でいいのかと疑問に思った。
「こんな生温い条件でいいのか? 拍子抜けしそうだ」
「生温いって。蘇芳は簡単そうに言うけど、結構難しいって聞いたことあるよ。今のところ、夏希君たちが暫定一位で、それを超えられる人はずっといないんだよ。僕たちは実践なしで挑むんだよ。僕もどうすればいいか分からないのにさ」
「まぁ、そこは二人で作戦会議してもらって。健人さんは僕と同じように感覚超越があるんだから、それをうまく駆使すれば――」
「おい、夏希。それ以上アドバイスをしたら、二人のためにならんだろ。色々と教えてやりたい気持ちは分かるが、今はライバルとして見守れ」
夏希は不貞腐れたような顔をして、琥太郎とともにコントロールルームへ戻った。どうやらコントロールルームで俺様たちの行動を見るらしい。
「所定の位置につけば、カウントダウンが始まるから、そこからは健人さんたちだけで頑張ってね! 言い忘れてたけど、疑似住民も配置されるから、気を付けてね。誤って攻撃した場合は失格だからね」
健人は夏希の追加情報に唖然とし、眉間に皺を寄せていた。そして、俺様の服を何度も引っ張った。
「やっぱり、実践ゼロの僕たちじゃ無理だよ。そもそも蘇芳は普通の人間と疑似シャドウの見分けとか出来るの? 蘇芳のことだから、そんなの関係なしに攻撃しそうで心配なんだけど」
蘇芳は健人の言葉にピクッと青筋を立て、不安を吐露する健人の両頬を掴み、タコの唇にさせた。そして、深いため息をつき、肩を落とした。
「あのな、確かに俺様はお構いなしの戦闘狂かもしれないが、今は違う。あの部屋から救い出してくれた貴様に恥をかかせたくない。それに、この結果はどうせあのクソジジイにも伝わるはずだ。だから、俺様はあのクソジジイを見返してやるんだ。あんな場所には二度と戻りたくない」
「蘇芳……。分かった、僕は蘇芳を信じるよ」
「よし、ハイスコアを叩き出すぜ」
蘇芳は健人とともに、所定の場所へ進みながら、作戦を話し合った。そして、ホログラムモニターの開始ボタンを押した。
『カウントダウン開始。……三、二、一。スタート』
「琥太郎、ごめんって。とりあえず健人さんたちの能力がどのくらいか見てみよう。今からタイムアタックの設定をするから、ちょっと待ってね」
夏希は機嫌を損ねた琥太郎に平謝りし、ホログラムモニターを表示させ、設定を入力していた。夏希が入力し終えると、設定データをスマートウォッチに転送したと言われ、健人と一緒にデータを見た。設定条件は『半径五十メートル圏内に存在する十体の疑似シャドウを殲滅せよ』というものだ。疑似シャドウはアイリスが敵視している未知なる脅威から生まれ出てくる人型の黒い靄――いわゆるシャドウを疑似体したものらしい。蘇芳はそんな簡単な条件でいいのかと疑問に思った。
「こんな生温い条件でいいのか? 拍子抜けしそうだ」
「生温いって。蘇芳は簡単そうに言うけど、結構難しいって聞いたことあるよ。今のところ、夏希君たちが暫定一位で、それを超えられる人はずっといないんだよ。僕たちは実践なしで挑むんだよ。僕もどうすればいいか分からないのにさ」
「まぁ、そこは二人で作戦会議してもらって。健人さんは僕と同じように感覚超越があるんだから、それをうまく駆使すれば――」
「おい、夏希。それ以上アドバイスをしたら、二人のためにならんだろ。色々と教えてやりたい気持ちは分かるが、今はライバルとして見守れ」
夏希は不貞腐れたような顔をして、琥太郎とともにコントロールルームへ戻った。どうやらコントロールルームで俺様たちの行動を見るらしい。
「所定の位置につけば、カウントダウンが始まるから、そこからは健人さんたちだけで頑張ってね! 言い忘れてたけど、疑似住民も配置されるから、気を付けてね。誤って攻撃した場合は失格だからね」
健人は夏希の追加情報に唖然とし、眉間に皺を寄せていた。そして、俺様の服を何度も引っ張った。
「やっぱり、実践ゼロの僕たちじゃ無理だよ。そもそも蘇芳は普通の人間と疑似シャドウの見分けとか出来るの? 蘇芳のことだから、そんなの関係なしに攻撃しそうで心配なんだけど」
蘇芳は健人の言葉にピクッと青筋を立て、不安を吐露する健人の両頬を掴み、タコの唇にさせた。そして、深いため息をつき、肩を落とした。
「あのな、確かに俺様はお構いなしの戦闘狂かもしれないが、今は違う。あの部屋から救い出してくれた貴様に恥をかかせたくない。それに、この結果はどうせあのクソジジイにも伝わるはずだ。だから、俺様はあのクソジジイを見返してやるんだ。あんな場所には二度と戻りたくない」
「蘇芳……。分かった、僕は蘇芳を信じるよ」
「よし、ハイスコアを叩き出すぜ」
蘇芳は健人とともに、所定の場所へ進みながら、作戦を話し合った。そして、ホログラムモニターの開始ボタンを押した。
『カウントダウン開始。……三、二、一。スタート』
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる