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はれのひ
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今日も雨が降った。
今日も佐奈ちゃんがいた。
明日は晴れる予定だ。
だから、佐奈ちゃんはいないだろう。
明後日は雨だ。
佐奈ちゃんはいるだろう。もしいたら、佐奈ちゃんをまた家に呼ぼう。
翌々日、雨が降った。佐奈ちゃんはいた。
「佐奈ちゃん、家に遊びに来ない?」
「いいの?!行きたいな!」
佐奈ちゃんは家に来る事が好きみたいだ。
「今日、お父さんもいるけどいい?」
「うん!大丈夫だよ」
「お父さん、ただいま。今日、友達の佐奈ちゃんって子と家で遊んでいい?」
「いいよ。君が佐奈ちゃん?」
「はい、そうです」
「俺の妻に似て、美人さんだな」
「お父さん、小学生をナンパしないで下さい!」
「ごめん、ごめん。いや、なんか、本当に妻に似すぎているからさ」
“佐奈ちゃんってお母さんにそっくりじゃない?”
この言葉がまたも頭に浮かんだ。
やっぱりそうなのかな。
よく分からないけれど、佐奈ちゃんは佐奈ちゃんでいてほしかった。佐奈ちゃんは佐奈ちゃんだと、佐奈ちゃんはお母さんじゃないと思い込みたかった。
少ししてから、お姉ちゃんが帰ってきた。
「あっ佐奈ちゃん来てるんだ。いらっしゃい」
なぜだろうか、お姉ちゃんの言葉に何の感情も詰まっていないように感じる。
「あーちゃん、お邪魔してます」
「ねぇ、美雨、こっちに来て」
「うん」
佐奈ちゃんがお姉ちゃんに言った言葉を無視するように私に話しかけた。
「ねぇ、美雨、お菓子だしたら?あと、お茶も。お腹すいてないの?」
「うん、ありがとう」
そう言って、私は台所にお菓子と飲み物の準備をしに行った。
「ねぇ、あなた、本当に佐奈ちゃんなの?私、霊感があるんだけどね、佐奈ちゃんが少しだけ透けて見えるの。この世界に来れたのは良かったけど、透けちゃうからすぐに分かっちゃうよ。ね、紗奈絵お母さん」
「お姉ちゃん、違う。それは違う。佐奈ちゃんが全く透けてなんかないよ」
「美雨は霊感がないからね」
「佐奈ちゃんは佐奈ちゃんだよ。お母さんなんかじゃないよ」
「佐奈ちゃん、違う。お母さん。本当の事を言って。こんなことして、また私と美雨を悲しませようとしてるの?2回目のお別れとか、嫌だからね」
「………」
「お母さん、応えてよ」
いつもはこんなに大声を出さないお姉ちゃんがとても興奮している。
「ねぇ、お母さん」
「お姉ちゃん、今日、お姉ちゃんおかしいよ。どうしたの?ねぇ、お姉ちゃん、落ち着いてよ」
「美雨、雨音、本当にごめんね」
「佐奈ちゃんは佐奈ちゃんだよね?!」
「美雨、ごめんね。2回もお別れするなんて、悲しすぎるよね」
「佐奈ちゃん、なんでこんなこと…」
「どうしても、大きく成長した雨音と美雨に会いたくなって…。本当にごめんね。逆に、悲しませちゃったんだね」
少しの沈黙が過ぎた。
「あのね、これが本当の姿じゃないって気づかれたらね、もう、天国に戻らないといけないの」
「えっ…」
「いつ?いつ帰っちゃうの?」
「次の雨が降る日」
「それって…。明明後日?」
「うん」
「それ、早すぎるよ」
「雨音、美雨、本当にごめんね」
佐奈ちゃんが帰った後、お姉ちゃんと全く喋らなかった。いや、喋りたくなかった。
お姉ちゃんが佐奈ちゃんがお母さんだって気づかなかったら、ずっとずっと、佐奈ちゃんと友達でいられたのに。
佐奈ちゃんがお母さんだと気づいた日から3日後。雨が降った。
お別れの場所である、佐奈ちゃんと初めて会ったバス停までは行った。
バス停に着くと、既にお姉ちゃんがいた。
お姉ちゃんは何かもっている。
それをお母さんに差し出した。
お母さんが消えてしまいそうだと感じると、自然と歩くスピードが早くなっていた。
「お母さん!」
「美雨…」
「はい、これ、持って行って。胡蝶蘭。綺麗でしょ?」
「美雨、ありがとう」
でも、既にお母さんは胡蝶蘭を持っていた。
「やっぱり仲の良い姉妹なのね。2人とも、胡蝶蘭を選ぶなんて。これからもずっと2人、仲良くするのよ」
思えばこの約3日間、お姉ちゃんと全く口を聞いていなかった。
「うん、ありがとう。これからは、もっと美雨と協力していくね」
お姉ちゃん…。
この3日間、ずっと嫌いだったお姉ちゃんが、なんか違って見えた。かっこよかった。
「あっ、もう行かないと。本当にごめんね。2人とも、愛してる」
「あっ…」
お母さんは虹のようにすっと消えた。
お母さんが立っていた地面には、お母さんからの胡蝶蘭が置いてあった。
胡蝶蘭…。
幸せが飛んでくる。
純粋な愛。
私とお姉ちゃんが見たものは、なんだったのだろう。
夢でもいい。
幸せが飛んできて、純粋な愛に再び出会えたのだから。
今日も佐奈ちゃんがいた。
明日は晴れる予定だ。
だから、佐奈ちゃんはいないだろう。
明後日は雨だ。
佐奈ちゃんはいるだろう。もしいたら、佐奈ちゃんをまた家に呼ぼう。
翌々日、雨が降った。佐奈ちゃんはいた。
「佐奈ちゃん、家に遊びに来ない?」
「いいの?!行きたいな!」
佐奈ちゃんは家に来る事が好きみたいだ。
「今日、お父さんもいるけどいい?」
「うん!大丈夫だよ」
「お父さん、ただいま。今日、友達の佐奈ちゃんって子と家で遊んでいい?」
「いいよ。君が佐奈ちゃん?」
「はい、そうです」
「俺の妻に似て、美人さんだな」
「お父さん、小学生をナンパしないで下さい!」
「ごめん、ごめん。いや、なんか、本当に妻に似すぎているからさ」
“佐奈ちゃんってお母さんにそっくりじゃない?”
この言葉がまたも頭に浮かんだ。
やっぱりそうなのかな。
よく分からないけれど、佐奈ちゃんは佐奈ちゃんでいてほしかった。佐奈ちゃんは佐奈ちゃんだと、佐奈ちゃんはお母さんじゃないと思い込みたかった。
少ししてから、お姉ちゃんが帰ってきた。
「あっ佐奈ちゃん来てるんだ。いらっしゃい」
なぜだろうか、お姉ちゃんの言葉に何の感情も詰まっていないように感じる。
「あーちゃん、お邪魔してます」
「ねぇ、美雨、こっちに来て」
「うん」
佐奈ちゃんがお姉ちゃんに言った言葉を無視するように私に話しかけた。
「ねぇ、美雨、お菓子だしたら?あと、お茶も。お腹すいてないの?」
「うん、ありがとう」
そう言って、私は台所にお菓子と飲み物の準備をしに行った。
「ねぇ、あなた、本当に佐奈ちゃんなの?私、霊感があるんだけどね、佐奈ちゃんが少しだけ透けて見えるの。この世界に来れたのは良かったけど、透けちゃうからすぐに分かっちゃうよ。ね、紗奈絵お母さん」
「お姉ちゃん、違う。それは違う。佐奈ちゃんが全く透けてなんかないよ」
「美雨は霊感がないからね」
「佐奈ちゃんは佐奈ちゃんだよ。お母さんなんかじゃないよ」
「佐奈ちゃん、違う。お母さん。本当の事を言って。こんなことして、また私と美雨を悲しませようとしてるの?2回目のお別れとか、嫌だからね」
「………」
「お母さん、応えてよ」
いつもはこんなに大声を出さないお姉ちゃんがとても興奮している。
「ねぇ、お母さん」
「お姉ちゃん、今日、お姉ちゃんおかしいよ。どうしたの?ねぇ、お姉ちゃん、落ち着いてよ」
「美雨、雨音、本当にごめんね」
「佐奈ちゃんは佐奈ちゃんだよね?!」
「美雨、ごめんね。2回もお別れするなんて、悲しすぎるよね」
「佐奈ちゃん、なんでこんなこと…」
「どうしても、大きく成長した雨音と美雨に会いたくなって…。本当にごめんね。逆に、悲しませちゃったんだね」
少しの沈黙が過ぎた。
「あのね、これが本当の姿じゃないって気づかれたらね、もう、天国に戻らないといけないの」
「えっ…」
「いつ?いつ帰っちゃうの?」
「次の雨が降る日」
「それって…。明明後日?」
「うん」
「それ、早すぎるよ」
「雨音、美雨、本当にごめんね」
佐奈ちゃんが帰った後、お姉ちゃんと全く喋らなかった。いや、喋りたくなかった。
お姉ちゃんが佐奈ちゃんがお母さんだって気づかなかったら、ずっとずっと、佐奈ちゃんと友達でいられたのに。
佐奈ちゃんがお母さんだと気づいた日から3日後。雨が降った。
お別れの場所である、佐奈ちゃんと初めて会ったバス停までは行った。
バス停に着くと、既にお姉ちゃんがいた。
お姉ちゃんは何かもっている。
それをお母さんに差し出した。
お母さんが消えてしまいそうだと感じると、自然と歩くスピードが早くなっていた。
「お母さん!」
「美雨…」
「はい、これ、持って行って。胡蝶蘭。綺麗でしょ?」
「美雨、ありがとう」
でも、既にお母さんは胡蝶蘭を持っていた。
「やっぱり仲の良い姉妹なのね。2人とも、胡蝶蘭を選ぶなんて。これからもずっと2人、仲良くするのよ」
思えばこの約3日間、お姉ちゃんと全く口を聞いていなかった。
「うん、ありがとう。これからは、もっと美雨と協力していくね」
お姉ちゃん…。
この3日間、ずっと嫌いだったお姉ちゃんが、なんか違って見えた。かっこよかった。
「あっ、もう行かないと。本当にごめんね。2人とも、愛してる」
「あっ…」
お母さんは虹のようにすっと消えた。
お母さんが立っていた地面には、お母さんからの胡蝶蘭が置いてあった。
胡蝶蘭…。
幸せが飛んでくる。
純粋な愛。
私とお姉ちゃんが見たものは、なんだったのだろう。
夢でもいい。
幸せが飛んできて、純粋な愛に再び出会えたのだから。
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