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終章4
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数週間後。奈菜と会った。
やつれていた。
奈菜の両親から聞いたところによると、どうやら鬱になったらしい。
奈菜は何も語らなかった。
僕と奈菜の両親で、これからの話をした。
別居をすることになった。
別居をしても、心にできた大きな穴は簡単には埋められない。
でも、お互い、一人になる時間が必要だった。
時間を置いて、また話そう。何かあったら、電話でもメールでもしてね。
そう言い残して、奈菜の実家を後にした。
その日、電話があった。奈菜の携帯からだ。
「奈菜。どうしたの?」
「星有さん、早く来て。桜庭病院。奈菜が、奈菜が…」
病院に着いた時、奈菜の両親は泣き崩れていた。奈菜が死んだ。聞いてなくても、一瞬で分かった。
「蒼原さん、こちらへ」
案内されたのは、霊安室だった。
「死因はオーバードーズです」
なんとなく知っていた。僕もいざという時のため、ネットで調べたことがある。
奈菜が死んだのは病院に着いてすぐに理解していた。でも、分かりたくなかった。矛盾しているのは分かっている。
でも、それでも分かりたくない。
呆然と奈菜の遺体を見つめる僕が、考えていることは一つだけだった。
「死にたい」
「えっ?」
僕の周りにいた、奈菜の両親や医師、看護師などが振り向いた。
「僕の人生で何人知り合いを失ったのか、奈菜は知っていただろう?なんで奈菜まで僕の心にできた穴を広げるの?君の気持ちを僕は全てを理解することが出来なかった。今もそうだよ。奈菜、すぐに奈菜の元に行くからさ、そうしたら教えてよ。なんで死んだの?なんで僕を独り残したの?」
パシンー。
頬に何かが当たった。
姉を看ていた看護師からの平手打ちだった。
「梨結ちゃんも琴理ちゃんも乃々ちゃんもそんな事は望んでいない。梨結ちゃん、蒼原さんの為に文章を残したんでしょ?あの文章の意味がまだ分からないの?死なないで、生きて。そういうことでしょ?」
その看護師は、泣いていた。
僕は医師に他の部屋まで連れていかれた。
精神科。僕は分からなかった。
精神なんて、おかしくなっていないのに。
死にたいって思うことがなんでだめなんだろう。思うことは自由じゃないのか。
色んな質問をされた。
僕はなんでもないように振舞った。
精神科医師は少し困ったような顔をして、こう言った。
「何かあれば、ここに来てね。話、聞くからね」
また耳を通り過ぎていく。
「分かりました。ありがとうございます」
今できる最高の笑顔を作り、診察室を後にした。
やつれていた。
奈菜の両親から聞いたところによると、どうやら鬱になったらしい。
奈菜は何も語らなかった。
僕と奈菜の両親で、これからの話をした。
別居をすることになった。
別居をしても、心にできた大きな穴は簡単には埋められない。
でも、お互い、一人になる時間が必要だった。
時間を置いて、また話そう。何かあったら、電話でもメールでもしてね。
そう言い残して、奈菜の実家を後にした。
その日、電話があった。奈菜の携帯からだ。
「奈菜。どうしたの?」
「星有さん、早く来て。桜庭病院。奈菜が、奈菜が…」
病院に着いた時、奈菜の両親は泣き崩れていた。奈菜が死んだ。聞いてなくても、一瞬で分かった。
「蒼原さん、こちらへ」
案内されたのは、霊安室だった。
「死因はオーバードーズです」
なんとなく知っていた。僕もいざという時のため、ネットで調べたことがある。
奈菜が死んだのは病院に着いてすぐに理解していた。でも、分かりたくなかった。矛盾しているのは分かっている。
でも、それでも分かりたくない。
呆然と奈菜の遺体を見つめる僕が、考えていることは一つだけだった。
「死にたい」
「えっ?」
僕の周りにいた、奈菜の両親や医師、看護師などが振り向いた。
「僕の人生で何人知り合いを失ったのか、奈菜は知っていただろう?なんで奈菜まで僕の心にできた穴を広げるの?君の気持ちを僕は全てを理解することが出来なかった。今もそうだよ。奈菜、すぐに奈菜の元に行くからさ、そうしたら教えてよ。なんで死んだの?なんで僕を独り残したの?」
パシンー。
頬に何かが当たった。
姉を看ていた看護師からの平手打ちだった。
「梨結ちゃんも琴理ちゃんも乃々ちゃんもそんな事は望んでいない。梨結ちゃん、蒼原さんの為に文章を残したんでしょ?あの文章の意味がまだ分からないの?死なないで、生きて。そういうことでしょ?」
その看護師は、泣いていた。
僕は医師に他の部屋まで連れていかれた。
精神科。僕は分からなかった。
精神なんて、おかしくなっていないのに。
死にたいって思うことがなんでだめなんだろう。思うことは自由じゃないのか。
色んな質問をされた。
僕はなんでもないように振舞った。
精神科医師は少し困ったような顔をして、こう言った。
「何かあれば、ここに来てね。話、聞くからね」
また耳を通り過ぎていく。
「分かりました。ありがとうございます」
今できる最高の笑顔を作り、診察室を後にした。
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