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第十三話

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「それで、これからどうするつもりなの? ある程度は考えてるんだよね?」

「考えてるわけないじゃない。冒険はいきあたりばったりで楽しむものなのよ」

 えぇ……。
 普通の冒険者ならともかく、あんな化け物に狙われてる身の上なのに何も考えてないのか。
 俺が思っているよりも数段図太い。

「俺は何の縛りもないから問題ないけど、それで王様は納得してくれるの?」

「家出した時点で何しても同じよ。どうせ怒られるんだし、それなら自由にやった方が楽しいじゃない?」

 ふてぇよぉ……。
 見た目は華奢なのに中身が太すぎる。

「それだったら俺も色々教わりたいからな、王国に帰る前に色んなところに寄ってもらいたいんだ」

「良いじゃないのぉ! 私はそういう意見を待ってたのよ!」
 マーリーはとても嬉しそうだ。
 お前は絶対王国に帰りたくないだけだろ、とは言えない。

「俺は外の国に一度も行ったことないんだけど、マーリーは色々冒険してるんだよな?」

「もちろんよ! 隙を見つけては抜け出してたから色んなところに冒険にいったわ! これで20回目の逃走になるわね!」

 この姫ろくなもんじゃねぇ……。


 毎度脱走される護衛も間抜けだけど、マーリーを探すために相当手間がかかってるはずだ。
 さぞかし王も頭を悩ませてるだろう。さっさとどこかの嫁に出したいはずなのに、こんな中身だから外に渡すわけにもいかないとみた。

「まぁ、それなら俺は安心して行き先を任せるよ。いきなり厳しいところは止めてくれよ?」

「最初は冒険初心者でも問題なさそうなグーベル草原に向かうとしましょう。毒や麻痺を使ってくるモンスターもいないし、よく見渡せるから不意打ちを食らうようなこともないわ」

 ふむ、それなら安心だ。
 ルーさんと一緒にいった森も強いモンスターは出てこないが、見渡しはあまり良くなかった。
 草原でなら足場が悪いってこともないだろうし、マーリーの支援があるならなお安心だな。

「それじゃ、準備が出来たら向かおう。俺は特に持っていきたいものとかないんだけど、準備した方が良いものとかあるか?」

「ハルには食事当番を担当してもらいたいからこの魔法袋に調理器具とか食材なんかの食事に必要なものを入れてきてよ」

 手渡されたのは大きさ30センチ程度の布製の袋だ。
 なにやら袋によくわからない文字が書かれているけど、なんだこれ?

「こんな小さい袋に調理器具入れろっていってもほとんど入らないぞ」

「この袋は見た目以上に中身を入れられるのよ。とりあえず手を突っ込んでみればわかるわ」

「うぇっ!?」

 マーリーに言われたので袋に手を突っ込んでみる。
 30センチ程度のサイズなので本来なら肘まで入らないはずだが、袋に突っ込んだ俺の手は際限なく奥まで突き進む。

「なんだこれ……」

「スキルで作られた特別性の袋よ。この袋ならかなりの量の荷物を入れることが出来るわ。しかも重さは本来の5分の1まで抑えらえるし、自分の取り出したいものを念じると出てくるのよ。便利でしょ?」

 便利なんてもんじゃねぇ。
 こんなすごいアイテムは話にも聞いたことが無い。

「これ、高いのか?」

「そうねぇ。この袋1つで家1つは買えるんじゃないかしら」

「そんな貴重なもの適当に渡すなよな!? 見た目は高そうじゃないから適当に扱うところだったぞ!」

「消耗品なんだから別にかまわないわよ。もしダメになっても別のを用意するから問題ないわ」

 そんなに貴重なものなら丁重に扱わねばならん。
 調理器具の汚れとか絶対袋につけないようにしよ……

「まぁ、良いか。俺は必要な機材とか食材を集めてくるから、それが終わってからの出発だな」

「そうね。別に急いでいるわけでもないんだけど、どれぐらい準備期間が必要かしら?」

「1日あれば十分だな。今日中には全て集めきれるから、明日のお昼ごろに出発しよう」

「分かったわ。それなら明日の昼過ぎに街の南門に集合して頂戴。私は久しぶりの街を楽しんでくるわー」


「了解した。それじゃ一度解散しよう」

 調理機材なんかは俺の家にあるし、ある程度食材も備蓄してある。
 なるべく腐らない食材を市場で買いそろえておけば良いだろう。

 マーリーは適当に街をぶらつくようだが、顔丸出しになっていたけど結局同伴なしになってるけど大丈夫なんだろうか。


 まぁ、マーリーはドラゴンの攻撃も相殺できるような強さを持っているし、暴漢に襲われても軽くひねって事が済みそうだ。

 今の俺の方が圧倒的に弱いし、特に力にもなれることもないから放っておくことにしよう。
 さて、それじゃ食材集めと行きますか!
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