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第十話

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「ククッ。1人で何が出来るというんだ」

「あなたこそ私を相手に一人でどうにかなるとでも思っているの?」

 トラブルのところにかけたが、特に動きはなかったらしい。
 俺が到着しても2人ともなにやら言い合いを続けていた。

 こんな雨が降ってる中よくゆっくり話すなぁ。
 ただ、2人姿が見えるようなってわかったが、俺が思ってたより状況は悪いようだ。

 襲われているのは妙齢の女性で、その顔はとても凛々しくて美しい。
 フードをかぶっているので襲っている男の顔はわからないが、声を聴く限りそれなりに年齢はいってそうだ。

 ただ、聞こえてくる話の内容を聞く限り女性が美しいから襲っているわけでもないらしい。
 どうやら襲われいる女性が男の目的遂行の邪魔になるらしい。

 だからって殺すはあかんやろって思うけど、こんな悪事を働くやつにそんな良心を期待するのもおかしい話か。

「話は十分分かったし、そろそろ止めに入った方がいいか」

 今は大雨が降っているので、俺が何度もやらかしてる枯葉ガサッから気づかれる落ちになることは無い。
 視界もかなりさえぎられているし、変なことさえしなければ見つからずに接近することが出来る。


 一応音を立てないように意識しつつ、可能な限り男にばれないように接近する。
 人間相手には俺のスキルは発動できないし、今回に関しては本当に実力でなんとかするしかない。まぁ、そんなものないんだけど。

 一応片手剣と盾を装備しているので、この2つをうまく活用して女性を助けだそう。


「それじゃ、いくぞ!-アクアドラゴンッッ!!!」

「なぁ!? あんたこの状況でそんなの呼び出してどうするつもりよ!?」

「だから言っただろ? お前1人じゃどうしようもないんだよ」

 男が呼び出しのは水色のドラゴンだ。全長は4mほどと大きく、蛇のような形をしている。
 ドラゴンを呼び出すのには数十人単位の力がいる、見たいな話を聞いたことがあったけど、こんな簡単に呼び出せたのか。


 今まで落ち着いていた女性が、男が呼び出したドラゴンに驚いたのか大声を出した。
 それに対して男は得意げだ。顔は見えないけど、それでもドヤ顔をしているのが目に浮かぶ。

「雨さえ降っていなければどうとでもなるのに……」

「残念だったなぁ!! さぁ、アクアドラゴンよ、この女の命を刈り取れ!」

「GUAAA!!!」

 叫び声をあげたドラゴンが女性に向かって2mほどの水球を一瞬で吐き出す。
 水のスキルを使える人間でもこれほどの水球を生み出すのにかなりの時間を要する。

 ドラゴンの強さがいまいちピンと来ていなかったが、今ので良く分かった。
 やっぱドラゴンって化け物だわ。こんなものをくらったら絶対にダメだ!!

 ただ、それでも女性が水球をかわすような時間はない。
 俺が様子を見ている間にもドラゴンの水球は女性に迫っている。


「いくらドラゴンが相手だからってそんな簡単にやられてあげないわ! バーストフレイム!」

 ドラゴンの水球にあわせて女性が巨大な炎をぶつけて相殺する。水と炎がぶつかったことであたりに大量の水蒸気が発生し、一時的に周囲の視界が封じられる。



「案外なんとかなるものね? ドラゴンっていうだけでビビりすぎていたわ」

「紅姫の名は伊達じゃねーな。雨でスキルの力が半減していてもこの力か」

「侮ってもらっちゃ困るわ。そう簡単にやられてなんてあげないわよ?」

 えぇ……
 水蒸気が晴れると、そこには水蒸気で湿っているものの、無傷の女性が立っていた。
 俺としては驚きのあまり空いた顎がふさがらないが、男はそこまで驚いていない様子だ。


 この女性ってドラゴンとタメはれるのを予想できるぐらい強い人なの?
 俺は今まで冒険者をやってきたわけじゃないから、どんな冒険者が強いっていうのは話で適当に聞いてきただけで詳しくない。

 もしかしたらこの人は知る人ぞ知る名冒険者なのかもしれない。
 そうじゃないとドラゴンの攻撃と互角の魔法を放てるなんておかしいしね。


「うーん、出るタイミングは失ったけど、水なら分解できるか?」

 俺は今まで食材を調理することにしか自分のスキルを使ってこなかったけど、このドラゴンって分解できるんだろうか。一応ドラゴンのさばき方だけは見たことがあるので形はわかる。

 問題は俺が一度もやったこともないものまでスキルを発動できるかどうかだ。
 ただ、2人の話を聞く限り女性の力だと時間の問題で押し切られるのかもしれない。
 だったら、さっさと動くしかない。

 このまま出番をうかがっている間にやられてしまうなんてことになったら後悔で押しつぶされそうだ。今のところ誰も俺のことに気が付いていない様子だし、サクッとドラゴン狩りをさせてもらおう。


「よし、やるぞ」

 都合が良いことにドラゴンと女性はかなり近距離にいるが、男は高みの見物を決め込んでいるつもりなのか少し離れた位置にいる。これなら俺がどんな動きをしても妨害されることはなさそうだ。

 深呼吸をして気持ちを落ち着けたあと、ドラゴンを狩るためにきをかきわけて全速力で接近する。


「だ、誰!?」

 真っ先に気付いたのは女性だ。
 俺のことを的だと思ったのか、手に持っている剣を俺の方に向ける。

「違う、味方だ! ドラゴンを吹っ飛ばすからそのままドラゴンを引き付けてくれ!」

「わ、わかったわ! バースト!」

「GUAAA!!!」

 女性が俺の指示をきいて間髪いれずにドラゴンに炎をぶっぱなす。
 ドラゴンも俺の方に意識が向いていたので、無防備なところに炎の直撃を受けた。

 丈夫そうな鱗で体を覆っていたにも関わらず、かなり威力があったらしく炎を受けた部分はボロボロだ。

「好機!! お前は、食材だ!」

 このチャンスを逃す手は無い。
 痛みで隙だらけになっているドラゴンに触れると、スキルを発動させる。

 ボンッ!!

「よしっ! うまくいった!」

「えぇ!? あんた何者なの!?」

 俺がドラゴンに触れると、ドラゴンは今まで触れてきた獣系モンスターと同じように部位ごとにバラバラになった。俺がさばいた経験が無くても、イメージさえ出来れば分解できるようだ。

 うーん。ドラゴンって美味いんだろうか。
 話には聞いたことあるけど一度も食べたことないからなぁ。
 このトラブルを片づけたら街で食べてみよう。

「な!? 何だお前は!!」

 驚いているのは急にドラゴンを消滅させられた男だ。
 ドラゴンに対して絶対の自信を持っていたようだし、急に自分の切り札が消滅させられたら動揺もするだろう。

「俺は新米冒険者だよ。俺の目が黒い限りは悪事は許さんぞっ! ってね」

「お前のような男がこの街にいるなんて話は聞いたことがないな。ちっ、あいつら適当に情報収集しやがって」

「それで、あんたはこの状況からどうするつもりなの? ドラゴンを一撃やる男と紅姫である私、両方を相手に戦ってみる?」

 ドラゴンは消滅させられたけど俺はこの男相手には無力だぞ。
 そんなこと男にも女性にもわからないだろうし、何も言わないでおくけど。

 今、男からしたら俺は急にあらわれてドラゴンを瞬殺する化け物だ。
 実態をわかっていなければ 恐怖しか感じないはずだ。

「あー。そんな化け物がいるなら今日は撤収させてもらおう。ただ、お前の命は必ず奪わせてもらうから覚えておけ」

 男は捨て台詞を残してその場から消えた。


 ドラゴンを召喚するスキルを持っているのに、ワープするスキルなんて持っているのか。
 撤収してくれて良かった。このまま戦闘になっていたら俺の首かっきられてただろうな。

 とりあえず、最大の問題は去った。


 次はこの女性が何者かとかだな。雨も降っているし、街に帰りながらそのあたりは聞くことにしよう。あぁ、肉の回収も忘れずに。

 ドラゴンの肉なんて早々食べられるものじゃないし、きっちり調理させてもらおう。
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