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小魚、餌にされる

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ちゃぽん、俺は水に吸い込まれると泳ぎにきていた二人のプレイヤーに声をかける。

「いやぁ、俺魚になっちゃってさぁ。初めてプレイヤーに会ったよ」

「へぇ。そりゃこんなところに普通のプレイヤーはこないだろうしなぁ。会えて嬉しいよ」

「クククッ。カモがネギしょってきたんじゃなくて魚が刺身になりにきたか」

「ん?」

 言っていることはよく分からないが、二人とも笑顔だ。
 2人も魚人で普通のプレイヤーとは違うだろうし、俺みたいなはみだしどころか全だしのプレイヤーを見つけられて嬉しかったのかもしれない。

 これなら仲良くなれそうだ。

「俺はアロンって言うんだ。なぁ、俺達何しにきたと思う?」

 すると、魚人の一人アロンが話しかけてくれた。
 満面の笑みで俺のことを見てくるのはちょっと怖いが、コミュニケーションは大事だよな。

 残念ながら魚面の俺は笑みは浮かべられないので、笑顔になった気分で言葉を発する。

「狩りじゃないのか? 周りを見た感じこの辺りには何もないし、他に出来ることが何もないしな」

「おぉ! 分かってるじゃねーか。狩りにきたんだよ。ここにいるモンスターは結構経験値が多くてうまいんだ」

「そう、なのか? あんまり高いって感じしないけど」

 飛んだ方が経験値稼げるが……。
 もしかしたらあれは小魚って種族の特典なのかもしれない。
 いや、むしろ普通の種族にあんなへんてこりんな特典があってたまるか。

「お、このあたりのモンスターを倒してたのか。それじゃ、結構レベル高そうだな?」

「まだ11だよ。全然スキルも覚えてないし全然育ってない」

「ほー! もうレベル11なのか。そいつは良いじゃねーか」

「あ、ありがと? 結構おいしいのかもな?」

「あぁ、実に美味しいだろうぜ」

 なんだか雲行きが怪しい。
 さっきから俺と二人の会話がかみ合ってない気がする。

「それで、ここで狩るなら俺も混ぜてくれよ。ずっと一人で狩りをしていて悲しかったんだ」

 およそ数時間一人で跳ねていただけなのでとても寂しかった。
 唯一コミュニケーションをとったのが化け物魚のマッマというのがなんとも言えない。

「よっしそれじゃ、俺達は狩りを始めるぜ。準備は出来てるな?」

「あったりめーよ。さっさと糧にしたくてうずうずしてたぜ」

「え? おいおい、なんで俺に武器を構えてるんだよ」

 アロンは腰に差していたノコギリのような剣を俺に向けた。
 あたりにはモンスターもいないので、標的は100%俺だ。

 いや、どうしてこの話の流れで標的が俺になるんだ。
 一緒に戦うんじゃなかったのか。

 しかし、戦闘は避けられそうにない。
 アロンは剣を俺に向けているし、もう一人のハッチもニヤニヤとした笑みを俺に向けている。

 こいつらの経験値効率云々は俺のこともこみで言っていたようだ。

「魚人はなぁ、魚系のものを倒すとかなり経験値が貰えるんだよ」

「だからって俺を狙ってくるのはどうかと思うけど……。二人の考えは分かったよ」

 今の俺がどこまで戦えるか分からないが、やってやる。
 小魚の下克上だ。

「おらぁ!!」

 アロンが剣で斬ろうとしてくきたので、なんとかそれをかわす。魚人だからなのか分からないが、水中でも全然動きが鈍くない。

 リーチのある武器を持たれてるってだけでも厄介なのに、その上速くて相手は2人。思った以上にヤバい状況だ。

「いくぞぉぉ!!」

 それでも、攻撃を仕掛けなければやられるだけだ。
 今まであげた敏捷をいかし、水中を高速で移動して撹乱する。

 一瞬、アロンに隙を見つけたので腹に全力の一撃を叩き込む。

「え、え?」

「やっぱ餌は弱いよなぁ!!」

 確実にクリーンヒットした一撃だったが、アロンのHPはあまり減っていなかった。
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