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小魚、連れ去る
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街の構造はよくわからなかったが、路地をうまいこと使って移動すると人目につかないところまで女の子を連れてこれた。
あたりには俺たち以外にプレイヤーもおらず、遠くから城下町の騒がしい声が聞こえてくる。
「ど、どこに行くんですかー」
女の子が不安そうにしているし、移動はやめて話を聞いても良いだろう。
「人気のないところの方が話しやすいかと思ってさ」
「確かにこの辺で十分ね」
「さっきの奴は何だったんだ? 結構な絡まれ方をしてたけど」
古代のナンパのやり方のように見えた。
俺としては新鮮だったけど、やられる側からしたらたまったもんじゃないはずだ。
「なんか、俺と遊べるのは光栄なことだぞって言ってきてたんですけど……。興味ないし大変だったんです」
「まぁ、あの態度だと何を言ってもおかしくないよなぁ」
「20年ぐらい前の人間のやり方よね……。見てて痛いし寒かったわ」
20年前の漫画の世界のやり方だったしな。
女性陣にも不評のようだが、最後に出てきた取り巻きの女性達がなんだったのかは気になる。
リュウのことを心配していたようだったし、普通にあの男のことを好いてるんだろうか。
あんな化石のような口説き方をするやつですらモテてるというのにどうして俺はトカゲもどきで燻っているんだ……。
「とにかく、すごく助かりました。始めたのは良いものの右も左も分からなくて本当に困惑してたんです」
「別にいいのよ。もしよければだけど、私たちと一緒にやらない? 一人で何も分からずにやるよりは良いだろうし」
「そうだな。一人よりみんなでやった方が楽しいし。さっきの男みたいに無理強いはしないけどね」
「もちろんですっ! 頑張るのでよろしくお願いしますねっ!」
女の子はリズと俺の誘いに二つ返事で答えた。
女の子の名前はアリスというらしい。
アリスをパーティに誘い、これから3人で狩りにでも行こうかと話していたところ、
「そういえばアリスはなんて種族にしたの? 人間?」
アリスの姿は完全に人間のそれだけど、容姿がいじられている気がする。
髪は金髪だし、なんか尊い感がすごい。崇めたくなる。
「一応種族的には人間なんですけど、私は特殊なんです」
「「特殊?」」
リズと顔を見合わせる。
種族が色々あるのは知ってるけど、人間って職業が固定されてるのに特殊なことなんてあるんだろうか。話には一度も聞いたことがない。
「私は、人間ですけど聖女なんです。人間の種族を選んだ時に与えられた私だけのユニークジョブです」
「せ、聖女!? リズ、聞いたことあるか?」
「ないわよ……。というか、だからそれっぽい格好してたのね」
「そういや修道女っぽい格好してるな。なるほど、崇めたくなるのは聖女だったからか」
「えぇっ……。あんたそんなこと思ってアリスに接してたの? 気持ちわる……」
リズにドン引きされて少し悲しくなる。
助けを求めてアリスの方を見てみたが、似たような表情で俺のことを見ていた。
仕方ないだろっ!! そんな感じがしちゃったんだから。
きっと俺が魚だから変な感情が生まれてくるに違いない。
化物魚のことをママとか呼ぶぐらい狂ってるからな。うん。
「その話は苦しいからやめよ? もう今からどうするか話をしようよ」
「そうね。とりあえずアリスがどれだけ戦えるのかみたいわね。まだ狩りもろくにしてないんでしょ?」
「少しだけ……ですかね。一応レベル10にはなってますけど、多分ちゃんとやってる人からしたら全然なんだと思います」
右も左も分からないって感じだったからどうかと思ったけど、意外とアリスのレベルは高かった。
レベルが10まで上がっていて、ユニークジョブを獲得してるなら一緒の狩場でも問題ない気がする。
まぁ、俺が言えたことじゃないんですけどね。
「ウィズがどれだけ陸地で戦えるようになったのかもみたいし、ちょっとやりにいきましょうか」
「はいっ! 私、リズさんと一緒に頑張ります!トカゲさん? もよろしくお願いしますね」
「名前はウィズだから……。トカゲさんじゃないからね?」
とにもかくにも新たな仲間、アリスと一緒に冒険にいくことになった。
俺の評価は後々上がっていくと……信じたい。
あたりには俺たち以外にプレイヤーもおらず、遠くから城下町の騒がしい声が聞こえてくる。
「ど、どこに行くんですかー」
女の子が不安そうにしているし、移動はやめて話を聞いても良いだろう。
「人気のないところの方が話しやすいかと思ってさ」
「確かにこの辺で十分ね」
「さっきの奴は何だったんだ? 結構な絡まれ方をしてたけど」
古代のナンパのやり方のように見えた。
俺としては新鮮だったけど、やられる側からしたらたまったもんじゃないはずだ。
「なんか、俺と遊べるのは光栄なことだぞって言ってきてたんですけど……。興味ないし大変だったんです」
「まぁ、あの態度だと何を言ってもおかしくないよなぁ」
「20年ぐらい前の人間のやり方よね……。見てて痛いし寒かったわ」
20年前の漫画の世界のやり方だったしな。
女性陣にも不評のようだが、最後に出てきた取り巻きの女性達がなんだったのかは気になる。
リュウのことを心配していたようだったし、普通にあの男のことを好いてるんだろうか。
あんな化石のような口説き方をするやつですらモテてるというのにどうして俺はトカゲもどきで燻っているんだ……。
「とにかく、すごく助かりました。始めたのは良いものの右も左も分からなくて本当に困惑してたんです」
「別にいいのよ。もしよければだけど、私たちと一緒にやらない? 一人で何も分からずにやるよりは良いだろうし」
「そうだな。一人よりみんなでやった方が楽しいし。さっきの男みたいに無理強いはしないけどね」
「もちろんですっ! 頑張るのでよろしくお願いしますねっ!」
女の子はリズと俺の誘いに二つ返事で答えた。
女の子の名前はアリスというらしい。
アリスをパーティに誘い、これから3人で狩りにでも行こうかと話していたところ、
「そういえばアリスはなんて種族にしたの? 人間?」
アリスの姿は完全に人間のそれだけど、容姿がいじられている気がする。
髪は金髪だし、なんか尊い感がすごい。崇めたくなる。
「一応種族的には人間なんですけど、私は特殊なんです」
「「特殊?」」
リズと顔を見合わせる。
種族が色々あるのは知ってるけど、人間って職業が固定されてるのに特殊なことなんてあるんだろうか。話には一度も聞いたことがない。
「私は、人間ですけど聖女なんです。人間の種族を選んだ時に与えられた私だけのユニークジョブです」
「せ、聖女!? リズ、聞いたことあるか?」
「ないわよ……。というか、だからそれっぽい格好してたのね」
「そういや修道女っぽい格好してるな。なるほど、崇めたくなるのは聖女だったからか」
「えぇっ……。あんたそんなこと思ってアリスに接してたの? 気持ちわる……」
リズにドン引きされて少し悲しくなる。
助けを求めてアリスの方を見てみたが、似たような表情で俺のことを見ていた。
仕方ないだろっ!! そんな感じがしちゃったんだから。
きっと俺が魚だから変な感情が生まれてくるに違いない。
化物魚のことをママとか呼ぶぐらい狂ってるからな。うん。
「その話は苦しいからやめよ? もう今からどうするか話をしようよ」
「そうね。とりあえずアリスがどれだけ戦えるのかみたいわね。まだ狩りもろくにしてないんでしょ?」
「少しだけ……ですかね。一応レベル10にはなってますけど、多分ちゃんとやってる人からしたら全然なんだと思います」
右も左も分からないって感じだったからどうかと思ったけど、意外とアリスのレベルは高かった。
レベルが10まで上がっていて、ユニークジョブを獲得してるなら一緒の狩場でも問題ない気がする。
まぁ、俺が言えたことじゃないんですけどね。
「ウィズがどれだけ陸地で戦えるようになったのかもみたいし、ちょっとやりにいきましょうか」
「はいっ! 私、リズさんと一緒に頑張ります!トカゲさん? もよろしくお願いしますね」
「名前はウィズだから……。トカゲさんじゃないからね?」
とにもかくにも新たな仲間、アリスと一緒に冒険にいくことになった。
俺の評価は後々上がっていくと……信じたい。
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