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小魚、街に行く

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「これが、街! それに人がたくさんいる!!」

「恥ずかしいから騒がないで。元々恥ずかしい見た目なんだから余計に目立つでしょ」

 リズに連れてこられた街は活気溢れる城下町だった。獣人、人間、悪魔。

 色々入り混じってるせいで見た目はちょっと不気味だけど、みんな楽しんでいるのが分かる。

 色んな種族がいても俺は不気味な存在のようで、街に入ってからも好奇の目に晒されている。

 見られるのは諦めて街を楽しむことにしたのだ。リズが連続で悪口を言ってくるのが気にならないぐらいには、今テンションが上がっている。

 ペチペチと地面を歩けることを感謝しながら、街を歩いていると、嫌な光景を見ることになった。

「あ、あのあの! 解放してほしいんですけど!?」

「そんなこと言うなって? 俺が遊んでやろうって言ってんだぜ?」

 白昼堂々、男が白い装束を身に纏った女の子に話しかけている。
 それも、声から察するに無理矢理どこかに連れて行こうとしているようだ。

 周りのプレイヤーもそれは分かっているはずだが、声をかけるやつはいない。
 どうしてかと思ったが、男の装備がやけに強そうなものを使っているからかもしれない。

 どんな装備を使っていようが、全裸の俺には関係ない。
 ヒロインを救う外見じゃないが、助けに行こう。

 俺が声を出して男を止めようとした時だった。

「あんたさぁ、その子が嫌がってるって分からないわけ? 周りの人もあんたにドン引きしてるんですけど」

 先にリズが動いた。
 随分とご立腹のようだ。会ってから一度も見たことないような表情を浮かべている。

「な、何か変なものを連れてるがお前も可愛いじゃないの」

 男は一瞬俺のことを見た後、リズに向いて言葉を発する。

 あいつ、俺のことをチラッと見たよな。
 変なのって俺のことを言ってんのか? いや、周りに俺より変わった外見のやつなんて一人もいないから間違いない。

 確かに俺はトカゲとおたまじゃくしの間みたいな! 
 そんな出来損ないのモンスターみたいな容姿をしているけど!

 人から言われたら傷つくんだ。

「はぁ? あんたにそんなこと言われてもうれしくないわよ。その子も迷惑しているみたいだし、貰っていくわよ」

 リズはドンドンと足音を鳴らしながら男と女の子の間に入り、女の子の腕をつかんでその場を離れようとする。

「俺が相手してやろうって言ってんのに何処行こうとしてるんだ?」

 離れようとしたリズの腕を男がつかむ。
 結構強く握ったようで、リズが動きを止められた。

「うるさいっ。その汚い手を放しなさい」

 パンッ!!! パンッ!!!! ドンッ!!! ゴッ!!

 ここで少女漫画なら平手打ちの1つでも喰らわせるのがセオリーなんだろうが、残念ながらこの世界はそんなに甘くない。よりによって相手はリズだ。

 リズは男の顔面を2回ぶん殴ったあとに腹に膝をぶち込んだ。
 前かがみになったところで股を蹴り上げる。

 えげつねぇ……。
 リズの腕をつかんだだけでここまでぶちのめされるのか……。

 男は膝から崩れ落ち、股間を抑えながらリズを見上げる。

「おもしれぇ……おんな……っ……」

 おとこぉぉぉ!!!!!
 少女漫画の不良ポジションみたいなセリフを残したまま、ガクッと倒れた。

 いや、このゲーム痛覚とかないし間違いなく演技。
 そもそも気絶したらログアウトするので、こいつはやられたふりをしてるだけ。

 おもしれぇ男だ……。

「あぁぁ! リュウくんが倒れてる!? 大丈夫!?」

「リュウ……どうして倒れてるの……」

 男はリュウというらしい。
 騒ぎを聞きつけたのか、取り巻きらしい女の子がゾロゾロと現れた。

 このまま放っておくとさらに揉め事に発展しそうだ。

「リズ! 一時撤退!」

「仕方ないわね」


「な、なにこのキモい生物」

「いやぁぁ!!」
 リュウをじっと見ていてもなかなか起き上がらないし、女の子も注目されちゃって可哀想なので、リズを回収して別の場所に移ることした。


 回収ついでに取り巻きの子たちからは悲鳴が上がったが、強い俺は気にしない。


 画面が歪んでいる気がしたが、それはきっと気のせいだ。
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