上 下
10 / 37

小魚、泳ぐ

しおりを挟む
「お、おもっ」

「し、失礼なっ!? 翼が少し邪魔なだけでしょ!?」

 海に潜ったのは良いものの、リズを引っ張って泳ぐとなるといつもの速度は出ない。

 しかし、潜ってはじめて分かったが、リズの言った通り海中に城があるのが見えた。

 城まではそれほど距離はないので、近辺を泳いでいるモンスターがやたら強くなければいけそうだ。

 レベルも上がったおかげでなんとかリズ引っ張って泳ぐことは出来てるけど、やはりモンスターから逃げ切るのは難しい。

 あまりばたついて泳ぐとリズを振り落としてしまうため、いつもより控えめに泳いでいると、早速モンスターに目をつけられた。

『シースネーク』Lv8

 海蛇のようなモンスターで、サイズは1メートルほど。
 それが3匹俺たちに向かってにょろにょろと向かってきた。

「リズ、行けるか?」

「もちろん。戦闘に集中出来るならここのやつらなんて簡単に倒せるんだから!」

 水の中でも喋れるのか……。
 かなり不思議だが、その方が楽なので気にしないでおく。


 リズはシースネークに向けて、魔法を発動させる。

「この程度なら、一撃! 蒼炎-大蛇-」

 突っ込んでくる蛇に向けてリズも大蛇を放った。
 水の中でもあたりを照らす蒼炎は美しいが、水の中でも炎は衰えてる様子はない。

 シースネーク3匹を丸呑みにし、一瞬で殺したのだ。

「すげぇ。というか、これなら一人でいけるんじゃないか?」

「私、全然泳げないの……。潜れなかった。あと、時間かかりすぎて酸欠ダメージ受ける」


 なるほど。泳げないのなら行けないのも無理もない。
 それに、やっぱり地上にいる種族だからダメージは受けるよな。

 これは悠長にしてられない。竜宮城まで急がないと道中でリズが死んでしまう。

「最大何分持つんだ?」

「2分」

 短けぇ!!
 リアルとほぼ同じじゃないか。

 ここまで泳ぐのと戦闘で20秒近く使ってしまった。
 急がないといけない。

 今までよりも気合を入れ、ヒレを振りまくる。
 多少ばたつくことにはなるが、ゆっくり行っても竜宮城に時間までに間に合わなければ意味がない。

「飛ばすからしっかり掴まってろよぉぉぉぉ!!」

「わ、わかった!!近くにいるモンスターは全部処理するから任せて!」


 さっきの2倍近くのスピードを出して深く潜る。
 海に大量にいるモンスターは俺たちを仕留めようと襲いかかってくるが、全てリズが処理する。

 襲いかかってきたモンスターは蒼炎の餌食になり、竜宮城までの道が開けた。

「今だ!!」

 モンスターが1匹もいない道を突き進む。
 覆いかぶさるようにモンスターが道を塞ぐが、道が閉ざされるギリギリのところですり抜ける。

 -魚ロード突破。経験値2000獲得しました-

 全てを潜り抜け、竜宮城の前にたどり着いたところで、ポップアップが表示された。
 なんとか、なったか……。

「酸欠ダメージはどうなってる?」

「あれ、もうダメージ受けてないや」

 魚ロードを潜り抜けたところでモンスターが追いかけて来なくなったと思ったが、どうやらすでにここは普通のバトルマップではないらしい。

 俺たちが泳いでいるのは竜宮城のマップ内なんだろう。
 ようやく安全地帯にこれたようで良かった。

「とりあえずこれたのは良かったけど、間近でみるととんでもなくでけぇな」

「ほんとにね……。普通に陸にある城より大きいんじゃない?」

 竜宮城はでかいが、それに見た目も普通とは違う。
 巨大なサンゴを組み合わせて作っているような、無骨だがおしゃれなデザインだ。

「竜宮城にいる人ってかなりいろんな種族がいるみたいね」

「ほんとにめちゃくちゃだな」

 城の近くを泳いでいるものを見ると、人魚、魚、亀とありとあらゆる海中生物がそこにいるように思えた。

 さて、ここからどうすれば良いのか分からん。
 一応入り口らしきものはあるが、そこには魚人が槍を持って待機している。

 初めてあった魚人に攻撃されただけに、進んで近づく気にはなれなかった。

 これだけ多種族がいても何も動いてないわけだし、絶対に襲われることなんてないんだろうが、気が進まない。

「何ビビってるの? ただのNPCだよ」

「ビビビってないし」

「魚なのにチキンじゃん」

「違いますー。ビビってないです。ほら、行くぞ」

 俺が躊躇してるのが分かったらしく、リズが煽ってきた。そのまま引っ込むのも嫌なので、ネガティブな感情を殺して門番に声をかけることにした。

 竜宮城に侵入開始だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波
ファンタジー
新入社員として社会の波にもまれていた「青葉 春」。 社会人としての苦労を味わいつつ、のんびりと過ごしたいと思い、VRMMOなるものに手を出し、ゆったりとした生活をゲームの中に「ハル」としてのプレイヤーになって求めてみることにした。 ‥‥‥でも、その想いとは裏腹に、日常生活では出てこないであろう才能が開花しまくり、何かと注目されるようになってきてしまう…‥‥のんびりはどこへいった!? ―― 作者が初めて挑むVRMMOもの。初めての分野ゆえに稚拙な部分もあるかもしれないし、投稿頻度は遅めだけど、読者の皆様はのんびりと待てるようにしたいと思います。 コメントや誤字報告に指摘、アドバイスなどもしっかりと受け付けますのでお楽しみください。 小説家になろう様でも掲載しています。 一話あたり1500~6000字を目途に頑張ります。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

魔王の右腕、何本までなら許される?

おとのり
ファンタジー
カクヨムでフォロワー5000人を超える作品に若干の加筆修正を行ったものです。 表紙はAIによる自動生成イラストを使用していますので、雰囲気だけで内容とは特にシンクロしていません。 申し訳ないですが、Ver.4以降も更新する予定でしたが今後の更新はありません。続きを読みたい方はカクヨムを利用してください。 Ver.1 あらすじ 親友に誘われ始めたGreenhorn-online ハルマはトッププレイヤーの証である魔王を目指す親友を生産職としてサポートしようと思っていた。 しかし、ストレスフリーにひとりを満喫しながら、マイペースに遊んでいただけなのに次から次に奇妙なNPCのお供が増えていく。 それどころか、本人のステータスは生産職向けに成長させているだけで少しも強くなっていないはずなのに、魔王として祭り上げられることになってしまう。 目立ちたくないハルマは仲間を前面に出しては戦いたくなかった。 生産職のDEX振りプレイヤーであるハルマは、いかにして戦うことになるのか!? 不落魔王と呼ばれるまでの、のんびりプレーが始まった。 ―― ささやかなお願い ―― ゲーム内の細かい数字に関しては、雰囲気を楽しむ小道具のひとつとしてとらえてくださいますようお願いします。 現実的ではないという指摘を時々いただきますが、こちらの作品のカテゴリーは「ファンタジー」です。 行間にかんして読みにくいと指摘されることもありますが、大事な演出方法のひとつと考えていますのでご容赦ください。 公開済みのパートも、随時修正が入る可能性があります。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

処理中です...