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第4章 竜と思ったらトカゲだった
11-4 3匹目がやってきた
しおりを挟む「おや、王子様が危ないみたいだよ、ミス・ラビリンス」
上空高く、風になぶられる黒髪をシルクハットで押さえ、男がこともなげに言った。
「仕方がない人ね。本当に私がいないとダメなんだから」
タイトスカートから伸びる足を優雅に組み替え、女が嬉しそうに笑う。
「その台詞、言ってみたかっただけでしょ?」
「ふふっ」
鋭い指摘に、含み笑いで答えるミス・ラビリンス。
「随分早く尻尾を出したね、やっこさん。やっぱりDとの接触が利いたのかな」
「そうね。進行が早くて助かるわ」
まるで退屈な催しでも見るように、姿勢を崩して腰掛けた女がステッキを弄んだ。
「この展開は割と都合がイイんじゃない? 君、シグルドに関係のない仕事を押しつけられるのブーブー言ってたじゃない」
突如人間界に現れたホワイトドラゴンとシグルドの転生が接触したのは全くの予想外だ。
だがそれを皮切りに、彼らがかねてから追っていた人物に新たな動きがあった。
ミスター・スラングとタッグを組むよう協力を要請されたのが、シグルドの血の監視役であるミス・ラビリンスだったのは、彼の言う通りこうなると好都合だったと言える。まさか、そこまで読んでの人事とは到底思えないが。
「それはそうだけど……まったく、私の仕事はブルークラウンの血を監視することだっていうのに、本部は人使いが荒くて困っちゃうわ」
「とはいえ殆ど趣味で青い髪の坊ちゃんしか見てないじゃないか。しかも手まで出すし」
「いいじゃないの。シグルドの転生が現れた時点で、私は彼だけ見ればよくなったんだから。趣味と実益を兼ねるのは仕事を楽しむための基本よ?」
まぁいいけどね、とは答えず男は肩をすくめただけだった。
「さて、そろそろいきましょうか、ミスター・スラング」
軽く伸びをし、ミス・ラビリンスは腰掛けていたソファの羽を撫でた。
「『エルトシャン』の名を騙る悪党共にはお仕置きが必要ね」
赤褐色の翼を羽ばたかせ急降下する姿を見送り、男がため息を吐く。
「仕方がないないなぁ。実はちょっと面倒臭くなってきたんだけど」
やる気のないことを言って、ミスター・スラングは青銅色の翼を翻した。
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