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本編

明かされる真実

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「不倫された友達を慰めに行ってたんじゃなかったの!?」

「あれは・・・嘘だ」

 パチンッ!

 再びビンタが炸裂する。既に新山さんの右頬は真っ赤だ。

 止めなきゃいけない・・・そう分かっていても驚きで身体が動かなかった。衝撃という名の電撃が身体を麻痺させたのだ。まさか新山さんが・・・ストロング・ソルジャーだったなんて!!

「ねえ!アナタ!私達が結婚する時なんて約束した!?」

「・・・もう2度と戦わないと約束した」

「そうよね!?なのに何で戦ったの!?」

「・・・俺をこんな身体ストロング・ソルジャーにしたヤツの息子が悪意を持って生きている。その事に危機感を感じて俺は再びストロング・ソルジャーになった」

「それは・・・本当にアナタがやるべきだったの・・・?」

 我に返ったのだろう。芽依さんは目からボロボロと涙を流し、新山さんの胸にそっと寄り添う。

「・・・ああ」

「警察が解決してくれる事じゃなかったの?」

「・・・ヤツらは俺に使った薬の完成形を持っていた可能性があった。戦力が図りきれなかった。だから俺が向かった」

「アナタがいなかったら沢山の人が死んでた?」

「・・・ああ」

「そう・・・良かったわね」

 彼女を宥めるように新山さんも両の手を芽依さんの背中にそっと添え、抱いた。2つの手の平の体温は芽依さんの傷ついた心を癒す。私は2人の愛を邪魔をする事は出来ず、事が済まされるまでしばらく座って待っていた。

 芽依さんが泣き終えたのは10分後であった。

「・・・ごめんなさいね・・・醜い所を見せちゃって・・・」

「そして黙っていて済まなかった・・・茜さん・・・」

「い、いえ・・・とんでもない。私こそ変な事を言ってすみませんでした」

 2人の喧嘩が終わると同時に私の脳内のパニックも終止符を打っていた。

「いつかバレる事だったから君の過失ではない。今回過失を犯したのは俺のみ。ストロング・ソルジャーとして再び戦った事を芽依に知られ、君に正体がバレた」

 冷静になることで今更気づいたが、新山さんの一人称が僕から俺に変化している。口調も穏やかなものからストロング・ソルジャーのような淡々としたものへと変わっていた。

「さて・・・正体を知られたからには、俺は君にお願いをしなくてはならないな」

「お願い・・・とは?」

 すると新山さんはゆっくりと正座をして額を床につけて懇願してきた。

「頼むっ!俺の正体を黙っていてくれ!!」

 綺麗な土下座を私にしてきた彼の口から出てきたのは口封じの要求だった。

 1人の愛する妻、2人の愛娘。守るべき存在がいる為、素性が世間にバレるのは都合が悪いのだろう。頭の悪い私でも分かる。

 新山の背景を察した茜は彼の土下座がとても素晴らしいものに見えた。男の覚悟を垣間見た。そんな彼女の口から出てくるのは勿論─────

「バラすわけないじゃないですか・・・アナタは芽依さんの夫で照子ちゃんと陽子ちゃんのお父さんなんですから・・・」

「・・・すまない!ありがとう・・・」

 この日でまさかストロング・ソルジャーの理想像が2度も崩れるとは思ってもいなかった。新しくできたのは愛する者も守る強き者の像だった。

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