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本編

終戦

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 1人の警官と1人のヤクザが揉み合いを行っている。警官の武器は麻酔銃と警棒。対してヤクザの武器はだんびら。近距離戦に持っていかれた警官は完全に劣勢であった。

「くっ・・・・や、やめろぉ!!」

「へっへっへ・・・これで終わりだあ!!」

 体勢を崩して警官が芝生に仰向けに倒れる。ヤクザは厭らしい笑みを浮かべだんびらを大きく振りかぶり突き下ろす──────

「やめろぉ!!てめぇら!!」

「「「「「!!!!!!」」」」」

 聞き覚えのある声にとどめを刺そうとしたヤクザを含めた警官と争っているヤクザが武器を振るう手を止める。

 警官も異変に気づいて麻酔銃の構えを解いた。

 声の主はこの場にいる新清水組に所属するヤクザのトップである清水正武であった。

「ボ、ボス・・・?」「どうしたでやんすか・・・?」「儂らの勝利は目前でっせ!それなのに・・・」

 清水の中止の号令に疑問を抱くヤクザ達は清水の声が聞こえた方へと顔を向ける。するとそこには手錠で手首を拘束された清水と戦場を見渡すストロング・ソルジャーの姿があった。

「う、嘘でしょ・・・」「そういう作戦何ですよね?ね?」

「違うっ!!俺はこいつに負けた!!そうして今手錠にかけられて終戦の号令を出した!!」

疑うヤクザ達にきっぱりと宣言。ヤクザ達は一気に戦意を失う。全員武器を地面に置いて硬直した。様々か個所がショックで固まる中、唯一固まらずに済んだのは舌のみだった。

「そんな・・・それじゃ俺達はもう・・・どうしたら良いんですか!!ボス!」

「俺はボスがいなかったら何もできないっすよ!!」

 ヤクザ達の口からこぼれたのはボスの喪失を嘆く悲痛の声であった。落胆するその表情は親を無くした幼い子そのものだった。

 そんな彼らに清水は今にも泣きそうな表情で部下達の方を向き、頭を下げる。

「・・・・すまなかった」

 一言言い残すと清水はストロング・ソルジャーに連れられて近づいてきたパトカーの中へと入っていく。

 車内に入った瞬間、清水は虚ろな瞳でストロング・ソルジャーを見つめ、問う。

「俺は・・・間違っていたんだろうか」

「何処が間違っていると思った?」

「全てだ。俺のやってきた全ては間違っていたのだろうか・・・」

「・・・人道と社会的には確実に間違っていると断言できる。だが、それ以外の側面で見たらわからない。俺も一介の人間だからな」

「そうか・・・・分かった」

 清水を乗せたパトカーは警視庁に向かって走っていく。パトカーのサイレンは洋館の敷地中に広まり、終戦の合図の代わりとなっていた。

 約20分の戦いにて死亡者は警察側は45人、ヤクザ側は5人という生々しい結果が残った。

 全てが終わった戦場には終わった事による喜びの声ではなく、仲間を弔う言葉が飛び交った。
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