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本編

ついにその日がやって来た

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 ジリリリリリ‼

 耳元に置いた目覚まし時計が私の鼓膜を破きかねない大音量で私を眠りから覚まさせる。

「ふぁぁ・・・よく寝た」

 遠足前、修学旅行前などはいつも楽しみというか緊張で眠れなかったのだが、大人になったからなのだろか?それとも?疲れる事を体が想定して私を安眠へといざなってくれた。

 お陰で朝から元気満タン!あとは朝食を食べればいつでも

「勿論今日は朝から炊き立ての白米にわかめ味噌汁に目玉焼き‼」

 いつもパンですませているのでいたって普通の食事だというのに特別感に溢れている。

 もしかしたらこのご飯が最後の晩餐かもしれない。そう思うと自然と箸が進み、あっさりと完食してしまった。

「・・・ごちそうさまでした‼」

 今腹に入れたばかりの食材に感謝を述べた後、スーツに着替え、出かける準備をする。

「・・・あれ?うまくボタンが留められないな・・・」

 何もかも順調だったのにここで一気に歯車が狂いだす。手が震えてボタンが留められないのだ。

「やっぱり・・・・怖いなぁ・・・」

 目尻からじんわりと涙が零れる。死にたくない。まだ若いのに死にたくない。まだ幸せになるスタートダッシュを切ったばっかりなのに死にたくない。

 茜はその場にへたれこんでしまう。するとその時─────。

 コンコンとドアをノックする音が聞こえる。誰だろうと覗き穴からのぞいてみるとそこにいたのは新山隆さんの奥さんである芽依さんだった。

 私は慌てて扉を開ける。すると、芽依さんは今にも泣きそうな顔で私を両腕で包みこんでくれたのだ。

 まるで童心に返ったかのような気持ちになり、それと同時に涙腺が緩くなり私は何も知らないはずの芽依さんの胸の中でわんわんと怪我をした子供のように泣きじゃくった。

「大丈夫だよ・・・大丈夫・・・きっと上手くいくから」

「芽依さん・・・芽依ざぁん・・・あだじ、死にだぐない・・・!もっと生きたい・・・!」

 魂の叫び。心の底からの本音を吐き出すようにぶちまける。なにがなんだが芽依さんにとっては意味が分からないはなのに彼女は子供を慰める母のようにうなずき頭を撫でてくれた・・・。

「・・・茜ちゃんの部屋から泣く音が聴こえたからきてみたんだけど・・・来て正解だったみたいね。何があったかは分からないけど、きっと大丈夫。仏様が貴方を守ってくれるから・・・」

 それから10分程泣いただろうか。私は次第に落ち着きを取り戻していき、手の震えも消えていった。

「──────良し!大丈夫みたいだね・・・気を付けて行ってきなさい!」

「・・・はい!」

 芽依さんの笑顔に背中を押されて私は靴を履き、外へと出ていく。

 外には車に乗って私を迎えに来てくれた月島警部補の姿があった。だが、やはり決戦の日という事でいつもとは面構えがかなり違う。闘争心にもえる熱い目つきをしていた。

「待ち合わせ時間から5分遅刻だ・・・・

「・・・はい」

「・・・行くぞ」

 車に乗り、シートベルトを締める。同時に絶対死なないという決意のこもった心も固く紐で締める。

「待ってろよ・・・新清水組・・・」

 月島警部補の車は警視庁へと走っていった。




 同時刻、某ビル地下駐車場。

「またこの日がくるとは思わなかった・・・」

 ここにも一人決意を固めている男がいた。男は全盛期のコスチュームを纏い、初心の心を再度思い出す。

 苦い思い出とともに蘇ってくる果てしない憎悪。男は憎悪は自制心で抑えてバイクにまたがる。

「作戦を──────開始する」

 男が乗ったバイクは目的地めがけて走り出す。すべては日本の未来の為という大義の下に私怨を隠して・・・。
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