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本編

動き出す闇

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 ダァン!ダァン!ダァン!

 日本某所。一見ただのマンションにしか見えない建物から数えきれない程の銃声が響き渡ってくる。建物の中では秘密裏に新清水組の処刑が行われていた。

「さて次は・・・お前だ三下。政府の犬達の拉致に失敗した挙句、一応幹部の所を犬共に奪われた失態・・・お前ならどう挽回する?」

「ええと・・・・あああああの・・・・」

 鬼の形相で銃口を跪く貧相な見た目をした男に向ける大柄の男。貧相な見た目の男は銃口を向けられながら話しているからか、男は呂律がうまく回っていない様子。男は新清水組の幹部である所と一緒に刑事を捕まえに言ったにも関わらず、見事に返り討ちに合って尻尾を巻いて逃げてきた所の部下の1人だった。

 少し前までは逃げてきた仲間達が数人居たのだが、今ではただの物言わぬ肉の塊と化してしまっていた。

「言い方が悪かったか・・・?なら、カニみそ程度しかないお前の頭でも理解できるように一言で説明してやる。清水正武しみずまさたけさんの顔に泥を塗った罪、お前ならどう挽回するんだ?えぇ⁉」

「ばっばばばばばば挽回・・・」

 男は考える。自分が横で額から血を流して動かなくなっている元仲間達のようにならないために。死なない為に。

 俺は他の奴らとは違う。先に死んでいった奴らは「なんでもやります」「どんな仕事でもこなしてみせます!」といった耳障りだけ良い言葉を述べて殺されていった。

 その死に様を見ていた俺はゆっくりと考えて、ボスに向かって自分の技術、才能全てを述べる。

「俺・・・私は!生まれつき視力が良いので狙撃には自信があります!ハンドガンでも1キロ先の敵の頭にも当てる事ができます!このまま生き残る事が出来たなら、あなたの為にこの技術を使う事を誓います!」

 入社時の面接の時に言うような自己アピール。それでも他の5人よりかは格段にマシだったようで、大柄の男は表情を和らげる。

「ほう・・・目が良いのか。数字で表現するならどのくらいだ?」

「せ、先月計った時は2.8はありました‼」

「2.8か・・・なら・・・」

「え・・・・・」

 大柄の男は貧相な男の眼球は素手でつまむ。そして前へて引っ張り―――――。

「あ゛ぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ‼」

 自分の身体が奪われているという恐怖と痛みに貧相な男は恐怖する。

 壮絶な痛みが始まってからわずか10秒で貧相な男は自慢の目の片方を大柄の男によって奪われた。

「あぁ・・・俺の・・・俺の目が・・・」

「へへっもらっとくぜ」

「な、なんで・・・⁉」

「何で?と申しますか・・・貴方、相当の馬鹿ですねぇ・・・」

「―――――――!!あ、あなたは・・・!!」

 血のプールと化した建物内に入ってきたのは喪服来た笑顔のさわやかな青年だった。

・・・どうしてここに・・・」

「いやさ、取引が想像の20分早く終わったからさ、ちょっと様子を見に来たんだ。無能共の死にざまをね・・・」

「ひぃ・・・!!」

 貧相な男は清水の笑顔に想像もできない程の恐怖心を抱く。その恐怖心は銃口を突き付けられている時よりも、目玉をほじくられている時よりも大きな恐怖だった。

 笑顔とはだいぶ離れた惨状だというのに、何故だろう・・・床に飛び散る血とボスの笑顔はとても似合うのは――――――。

「でも、ちょっと遅かったみたいだね・・・ま、ビデオで録画してるからいっか!してるよね?」

「勿論ですとも!しっかりと撮影はしていますのでご安心を!6!」

「6⁉」

 ど、どういう事なんだ⁉俺は・・・生かしてもらえるんじゃなかったのか⁉

「その表情・・・何で殺されるのか分からない!って顔してるね?よければ俺が教えてあげようか・・・?」

「は、はい・・・お願いします・・・」

「うん!良いよ‼じゃあ、まず君は何て自己アピールをしたんだい?」

「視力が良いから狙撃は上手いと――――――」

「そうだね!でも、狙撃がうまいヤツってうちの組には山ほどいるんだよね~だから狙撃が上手い人はもう必要ないの!だとすると、君の長所はどこにある?」

「目・・・」

!つまりそれ以外は必要ないわけ!」

「そ、そんな・・・!お、お願いです!どうか命だけは・・・」

 もう目なんてどうでも良い!己の命さえ助かれば良い!きっと、目さえ差し出せばそれ以外はいらないと殺されてしまう。だから―――――――――。

「うーーーん・・・じゃあ、俺のクイズに答えられたら命だけは助けてあげる!」

「クイズ・・・わ分かりました‼お願いします!」

「ok!じゃあ、問題‼―――――俺がいつも喪服をきているのは何故でしょう?10秒以内に答えてください‼」

「え――――――」

 そんな問題分かるわけないじゃないか!人様の趣味なんて把握あんて―――――。

「はーい‼ゲームオーバー!―――――死ね」

 清水の手に握られた拳銃から容赦なく鉛玉が発射され、貧相な男の脳を打ち抜く。男は断末魔ではなく、真っ赤な脳漿を巻き上げて死亡した。

「答えはね―――――――お前みたいな無能をほぼ毎日殺してるから喪に服してんだよ・・・」

 そう言って、清水は残りの眼球をくり抜き、大柄の男に渡す。

「ああ、あと吉田大柄の男の苗字

「はい!なんでしょう?」

「俺の事は組長じゃなくてちゃんとって呼べよな‼」

「あ――――す、すみませんでした‼」
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