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本編

平和の擬人化

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「くっ・・・!!」

「おいおい、そんなに熱い視線を俺ちゃんに向けないでくれよぉ!!恥ずかしくなるだろう!?」

 舐め腐った男の態度に茜は両手共に拳を作り、爪を手の平に食い込ませて怒りを抑えているが、いつ爆発してもおかしくない状態だ。

「そっちの刑事さんはすっごい冷静だなぁ。その冷静さは経験で得たものかい?」

「経験と・・・元々の性格からだ。君もその人を見下すような性格を治せばきっと習得できるよ」

「・・・それは、ちょっと無理そうだね。少しクールな大人には憧れを抱いていたが、今日限り諦めるとしようかな?」

 そういう男の目尻はつり上がっていた。腰に納めたナイフにも手をかけている。無作為に挑発するのはあまりよろしくないようだ。

「おっと?ごめんよw脅かすつもりはなかったんだ。だけど、ついイラっとしちゃってさ?わかるだろ?な?な?」

 手元でくるくるとナイフを回して男は遊ぶ。殺す寸前のようだ。

「・・・おい!何やってんださっきから!全然進んでいないぞ!!」

「す、すんません!旦那!!でも何故だか進まなくって・・・」

 スキンヘッドの強面の男はアクセルを思いきり踏んでいるにも関わらず、車は一ミリも前に進んでいなかった。


 それにイラついた幹部の男は俺は機嫌が悪いぞアピールしながら運転手の強面の男性を怒鳴り付ける。

「おいおいマジかよ。機械トラブル?俺ちゃん弱いんだよ~そういうハプニング」

「いえ、恐らく機械が問題ではないかと・・・エンジンを付きますし、」

「あ?じゃあ、何が問題だっての?」

「恐らく、何か引っかかっているのかと───少し見てきます」

「おう・・・」

 スキンヘッドの男は運転席から外へと出ると、タイヤを付近を確認し始める。

 しかし、前には進行を邪魔しているような物は見つからなかった。

「おかしいな」と呟きながら後ろのタイヤを確認しに後ろへと向かう。その時であった───。

「ぐへぇ!?」

 ドンッ!という衝撃音と共にスキンヘッドの男は奇天烈な断末魔が発声して5m先にあった電柱に思いきりぶつかる。

「ちょ───何だよっ!!」

 流石の異常事態にナイフで遊んでいた幹部を外へと飛び出していった。

「おい!どうしたんだよ!?」

 倒れるスキンヘッドの男を起こす。衝撃で気を失っているだけで、どうやら胴体を激しく打ち付けただけで死んではいないようだ。
 
 部下が死んでいない事に安堵すると、早速幹部の男は犯人探しをし始める。

「おい!何処だ!!よくも俺ちゃんの部下を痛め付けやがって!!卑怯者!!でてこい!!」

「意外と部下思いなんですね・・・」

「仲間意識が高いんだろうよ。何たっていつ裏切られてもおかしくない世界で食いつないでるんだからな・・・・それよりも、誰があの巨体の男を吹き飛ばしたんだ?」

 スキンヘッドの男は正確ではないが、パット見でも185㎝はあり、筋骨隆々だった。そんな男を5mも吹き飛ばすなんて・・・。

「月島警部補、あの人じゃないですかね?ほら、あの顔にヘルメット被ってる」

 月島は茜が目線を向けている方向を即座に見る。すると確かに男性らしきシルエットが一切動かずに立っていた。

 月島は目を凝らし、男性のシルエットを解いていく。段々暗闇にも目が慣れてきて、シルエットからはっきりと姿が見えるようになる。

 ヘルメットと呼ぶには少し小さい顔を覆うフルフェイスの仮面。所々綻びているボロボロのライダースーツ。

 はっきりと目でその男性の姿を見た月島は目をかっ開き、声を震わせながら喋る。

「・・・・・・まさか、あれは・・・!!」

「ど、どうしたんですか!?」

 あれから8年が経過。とても長かった。それでもなお、記憶に焼き付いて離れないあの姿形。

 またこの目で目の前で生で拝めるとは思わなかった・・・。

 月島の目から一筋の涙が溢れる。

「警部補?どうしたんです?何かあったんですか?」

 彼女はまだあの男の正体に気づいていないようだ。なら、すぐに教えてあげねば・・・。

 月島は震えながらも茜に語るように話す。

「全善人が愛し、全悪人が恐れた黒い流星群。平和の象徴、又は擬人化として敬い尊敬した最強最高の男───その名もストロング・ソルジャー・・・君の命の恩人だよ」

「え────」

 月島の答えに茜は静かに驚き、感涙する・・・。

「あれが・・・ストロング・ソルジャー・・・」

 幼き頃の悪夢のような記憶と共に彼の勇姿が頭の中に再び鮮明に蘇る。

 だけど何で────・・・。

「何でここにいるの・・・?」
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