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本編

襲撃

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「もういい加減に口割れよ・・・尋問始まってから72時間───つまり3日経ってるぞ」

「・・・・・・言わねぇ」

「頼むから言ってくれ・・・俺ももう眠りたいんだ」

「だったら交代すりゃ良いじゃねえか。刑事なんて腐る程いるだろ」

「イ・ヤ・だ・ね!お前が口を割るまで俺はお前の尋問を続ける」

 霞ヶ関にある警視庁の尋問室。そこで72時間に渡る長時間尋問が行われていた。

 尋問されているのはこの前月島と茜が捕まえた坊主頭のヤクザ。清水組の組員と思われるのだが、中々口を割らない。

 情報を吐くまで寝ずに尋問を続ける狂気の尋問者高山警部補もそろそろ限界を迎えようとしていた。

「高山警部補の今までの最高記録って何時間てしたっけ?」

「52時間だな。もう20時間も記録更新してる」

「怖・・・」
 
その執念は恐怖を覚えるほど。高山警部補の長時間尋問を初めて見る茜は苦笑を浮かべている。

 目の下に浮かび上がっている黒い隈。充血した目が更にホラー感を引き立たせる。

「そろそろカフェインが切れる頃か。茜君、ブラックコーヒーを淹れてきてくれ」

「了解です」

「早く言え!!言うんだ!!さもなくば俺はここに居続ける!!」

「言ってたまるものか・・・・・・」

 この後も尋問は10時間程続いたが、坊主頭のヤクザは粘った為に喋らず、2人同時に睡眠不足で倒れる事で尋問は一旦終了となった。



 次の日。茜は通常通りに出勤してくる。しかし、警視庁内は通常通りではなかった。

 皆不安そうな表情をしながらあれではないか?これではないか?と話している。

 来たばかりの茜は何がどうなっているのか分からず、夜勤だったという先輩に何があったのかを聞いてみた。

「殺されたんだよ。森島さんと月島警部が捕まえたヤクザ」

「え────」

 突然言い渡された事実に頭が真っ白になる茜。ゆっくりと深呼吸をしながら先輩にゆっくりと説明してもらう。

「82時間の尋問の後、尋問室に布団敷いて寝かせたのは覚えてるだろ?その1時間後に殺されてたんだ」
 
「それって・・・私が帰った50分後の出来事じゃないですか!!死因は何だったんです?」

「刺された事による出血性ショック死。心臓と両方の肺を刺されて死んだらしい」

「刺されたって・・・誰かが侵入して殺したって事ですか!?」

「らしい。僕は事件に関わってないから尋問室の監視カメラの映像を見せて貰えなかったけど、きっと森島さんなら見せて貰えるんじゃないかな?月島さんに頼んでみな」

「そうします」

 茜はそうと決めると早速尋問室の前に顔を手で覆いながら立っている月島さんを見つけて話しかける。

「ああ、茜君か。実は────」

「何が起きたかは先輩に聞きました。私に監視カメラの映像を見せて下さい」

「そうか・・・なら、すぐに見せよう」

 そう言って月島は監視カメラの映像が見れるノートパソコンを借りてきて茜に坊主頭のヤクザが殺された時間の映像を見せる。

「血は大丈夫か?」

「所沢市爆破テロで慣れてます」

「そりゃ頼もしい。じゃあ、映すぞ」

 慣れた手つきでノートパソコンを操作する。映された映像の時間帯は午後11時。私が帰ってから数十分経った後だ。

 画面にはぐっすりと敷き布団で眠る坊主頭のヤクザが映されている。

 尋問室は外の景色が見れる窓と、尋問の様子を見る窓と、出入口の扉のみ。

「ここからだ」

 月島さんは外が見れる窓を指差す。すると、窓から四角い透明な板が床に向かって落ちたのだ。

「ガラス?」

「犯人はガラスを丁寧に高熱の何かで四角に切って尋問室に侵入したらしい。しかも強化ガラスだと分かって床に落としやがった」

 四角く切られた外の窓から現れたのは全身黒ずくめの男らしい体格をした人物。顔はフルフェイスのヘルメットをかぶっているせいで見ることができない。

黒ずくめの男は腰からナイフを引き抜くと、坊主頭のヤクザの口を塞いでから心臓に向かってナイフを落とす。

 しばらく痛みで暴れるヤクザだったが、心臓をやられた事ですぐに動かなくなる。床はこの時点でヤクザの血で真っ赤に染まった。

 死んだと確認した黒ずくめの男は念のためだろうか両胸にナイフを刺してから窓から尋問室を出ていった。

 そしてその10分後、見回りに来た人が発見して騒ぎになった所で月島さんはノートパソコンを閉じた。

「ヤクザを殺した黒ずくめの男は外の監視カメラからバイクで逃げた事はわかっているんだが・・・バイクのナンバープレートをはずしていた事と、監視カメラが設置されてない場所を使って逃げたせいで追跡はできないのが現状だ」

「でも、犯行をしたのは清水組の息のかかった人ですよね・・・」

「だろうな・・・・茜君、君も俺と一緒に捜査に協力してくれないか?」

 いきなり協力を頼まれた事に驚く茜。理由が分からない茜は月島に聞いてみる。

「え?私?もっと優秀な人がいるでしょう?」

「遠くにいる優秀なヤツと近くにいる優秀なヤツ。君だったらどっちを使う?」

「・・・ありがとうございます!!」

 自然と月島さんに向かって敬礼をしてしまう茜。

 月島さんはド新人の私を優秀だと言ってくれた。期待に何としても答えなくては・・・!!

「そうと決まればついてきてくれ」

「は、はいっ!!」
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