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5章 望まれていない勇者
97話 ケルビムという少女
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シームさんとケルビムが宿の方角に歩いていくのを目で確認してから、僕は調査に動き出した。
道ゆく人に話しかけて、質問するだけでも、山のように彼女の情報を手に入れる事が出来た。
「ああ!あのダークエルフの混血か!!」
「混血っ事はどの種族とのハーフ何です?」
「ヒュームだよ。知らねえのか?いや、お前よく見たら見た事ない顔だな。知らないのも仕方ねぇか」
混血は、半端者と呼ばれ、差別される事がある。しかし、魔族よりかは遥かにマシで、街ゆく人に舌打ちされるくらいだ。
だが、ケルビムはどう見ても、実害が出ている。混血以外にも何か理由があるかもしれない。更に調べる為に老舗の酒場に入る。
「ケルビムって子。混血で差別されてるのは分かるけど、少し過激すぎません?」
「まあ、生まれの問題だろうな。アイツの母はダークエルフだったんだが、エンデで大分悪行を働いてたんだ。死人が出るほどのな」
「子供に罪はないでしょう?」
「分かってても、憎いもんなんだよ。それだけじゃない。アイツの母親は、強姦されて妊娠したんだ。ヒュームの男にな」
時々聞こえてきた望まれない子とはそういう意味だったのか。彼女に身寄りが無く、馬小屋で生活しているのも、両親が既にいないかららしい。
「本当にそれだけで皆、あんなに酷い態度を取ってるのか?」
「それだけ?十分な理由だろう?汚らわしい!!」
ああ、そうだった。この国では、ヒューム以外へと差別は当たり前。ヒュームこそが素晴らしい種族だと思っているんだった。
「なら、何故この町から追い出さない?臭いものに蓋するのが貴方達エンデ人の十八番でしょう?」
「うるせぇ!こっちにも事情があるんだよ!事情が!!どんな事情かは一般人の俺にはわからんけどな!!」
情報集めから数時間。分かった事を整理したいと思う。まず、ケルビムが差別されているのは、種族と生まれによるもの。
そして、嫌っているのに、町に留まらせているには何か理由があり、その理由は一般人は知らない・・・と。
「追い出さない理由・・・何か裏があるな?」
ただ、留まらせているだけじゃない。訓練兵と共に育てている。ただ、いじめる為なら分かるが、しっかりと基礎や練習試合などをさせている。
もしかして、彼女は魔王軍優勢の現状を打破できるほどのポテンシャルを持っているのではないのだろうか?それに気づいた国王が追放しないでいる可能性がある。
「もう少し調べてみるか・・・ん?」
裏路地から、足音が聞こえてくる。金属板が擦れ合う音もセットだ。
視線を向けると、裏路地の先に、鎧を纏った骸骨・・・アンデッドが僕の方をじっと睨んでいた。
「幻覚・・・ではないみたいだね」
この町で暴れる為に現れたのではなく、視線からして、僕目当てみたいだ。
「とりあえず・・・逃げろっ!!」
戦う気はないので、逃げさせてもらうが。
道ゆく人に話しかけて、質問するだけでも、山のように彼女の情報を手に入れる事が出来た。
「ああ!あのダークエルフの混血か!!」
「混血っ事はどの種族とのハーフ何です?」
「ヒュームだよ。知らねえのか?いや、お前よく見たら見た事ない顔だな。知らないのも仕方ねぇか」
混血は、半端者と呼ばれ、差別される事がある。しかし、魔族よりかは遥かにマシで、街ゆく人に舌打ちされるくらいだ。
だが、ケルビムはどう見ても、実害が出ている。混血以外にも何か理由があるかもしれない。更に調べる為に老舗の酒場に入る。
「ケルビムって子。混血で差別されてるのは分かるけど、少し過激すぎません?」
「まあ、生まれの問題だろうな。アイツの母はダークエルフだったんだが、エンデで大分悪行を働いてたんだ。死人が出るほどのな」
「子供に罪はないでしょう?」
「分かってても、憎いもんなんだよ。それだけじゃない。アイツの母親は、強姦されて妊娠したんだ。ヒュームの男にな」
時々聞こえてきた望まれない子とはそういう意味だったのか。彼女に身寄りが無く、馬小屋で生活しているのも、両親が既にいないかららしい。
「本当にそれだけで皆、あんなに酷い態度を取ってるのか?」
「それだけ?十分な理由だろう?汚らわしい!!」
ああ、そうだった。この国では、ヒューム以外へと差別は当たり前。ヒュームこそが素晴らしい種族だと思っているんだった。
「なら、何故この町から追い出さない?臭いものに蓋するのが貴方達エンデ人の十八番でしょう?」
「うるせぇ!こっちにも事情があるんだよ!事情が!!どんな事情かは一般人の俺にはわからんけどな!!」
情報集めから数時間。分かった事を整理したいと思う。まず、ケルビムが差別されているのは、種族と生まれによるもの。
そして、嫌っているのに、町に留まらせているには何か理由があり、その理由は一般人は知らない・・・と。
「追い出さない理由・・・何か裏があるな?」
ただ、留まらせているだけじゃない。訓練兵と共に育てている。ただ、いじめる為なら分かるが、しっかりと基礎や練習試合などをさせている。
もしかして、彼女は魔王軍優勢の現状を打破できるほどのポテンシャルを持っているのではないのだろうか?それに気づいた国王が追放しないでいる可能性がある。
「もう少し調べてみるか・・・ん?」
裏路地から、足音が聞こえてくる。金属板が擦れ合う音もセットだ。
視線を向けると、裏路地の先に、鎧を纏った骸骨・・・アンデッドが僕の方をじっと睨んでいた。
「幻覚・・・ではないみたいだね」
この町で暴れる為に現れたのではなく、視線からして、僕目当てみたいだ。
「とりあえず・・・逃げろっ!!」
戦う気はないので、逃げさせてもらうが。
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