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5年後
憩いの場
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夏川にある小さな喫茶店。そこは地元でも別の国からもかなり有名な店。
20代後半の中性的な顔の男性と誰もが二度見するくらい美しいエルフの女性2人が店を切り盛りしていた。
「歩!ハヤシライス5つ!」
「はいはーい!」
当店自慢のハヤシライスを皿に注いで妻に渡す。今日は休日なので店がいつもよりも繁盛していた。
人だけではない。何処かから来た異種族もこの店で食事をしている。
最初は僕がルルドを倒した戦士だと聞いてこの店に来たという人が大半だった。最初は勝負しろ等色々言ってきた者はいたが、全員叩きのめしてハヤシライスを食わせた所、味覚はやはり人間と同じで好評価をもらった。
そして僕にボコされた戦士達が母国に帰って僕の店『憩いの場』のハヤシライスは美味いと教えて回ったそうだ。
その結果が今の繁盛ぶりである。
「お父さん!ただいまー!」
「もう帰ってきたのか」
裏口から入ってきたのは4歳の僕の娘恵だ。幼稚園から帰ってきたようだ。恵は僕に笑顔でブンブンと手を振ると妻の方へとダイブする。
「あらあら~今日は何作ってきたの?」
「これ!」
と言って愛娘が妻に渡したのは一枚の絵であった。それはワニの絵だった。小さいながらも上手く描けた物だ。
やがて日が暮れて店の営業終了を余儀なくされる。僕ら小野山家は営業終了の札を店の扉にかけると晩御飯の準備を始める。今日は3日前からリクエストがあったオムライスだ。
「どうだ?美味しいか?」
「うん!流石お父さん!」
ワシャワシャと愛しい娘の頭を撫でる。妻に似て整った顔をしている。妻は目元が僕に似ていると言っているが。
「明日は休日だね!お父さん!」
「そうだな。でも、明日は幼稚園のお友達とは遊べないからな」
「えー?何でー?」
「前に言ったじゃないか。明日はお祖父ちゃんの命日だからお墓参りに行くよって」
「ええー・・・」
「嫌な気持ちもわかるけど、お父さんに付き合ってくれ。曾お祖母ちゃんも来るからさ」
「曾お祖母ちゃんくるの!なら良い!」
晩御飯を食べ終わり、風呂に入って、そのままベッドに入り眠りにつく。次の日、僕達は身だしなみを整えると店で祖母の来訪を待っていた。
しばらくすると、ガランガランと来店を知らせる鐘が鳴る。扉の方を見ると祖母が笑顔を称えて現れた。
「曾お祖母ちゃん!」
「あらあら、恵ちゃんは今日も元気ねー」
マリーは恵を抱き上げると、僕達に近づいてくる。
「お久しぶりです。お祖母ちゃん」
「前に会ったのはたしか・・・半年前だったかしら?最近物忘れが酷くて困るわー」
「そんな事言わないでくださいよ。さ、早く行きましょ?」
歩は全員が外に出たことを確認すると、扉の鍵を閉めて墓まで歩く。10分ほど歩くと、墓場に到着した。墓場の端らへんにある小野山家の墓の前に立つ。
墓石にこびりついたコケ、花瓶の花の取り替え、落ち葉の掃除をしてからお線香を捧げる。娘はまだ4歳だというのにも関わらずお祈りを捧げている時は何も喋らずに手を合わせている。自分の子ながら実にできた子だ。
「じゃあ、帰るか」
「うん!」
★
「声が小さいぞー!もっと腹から声を出せ!」
休日の真っ昼間。夏川にある剣道場では竹刀を振る音と門下生の元気な声が響いていた。
「よし!休憩!」
道場を切り盛りする青年の素振り終了の合図と共に門下生達は竹刀を置いて給水に入る。
門下生の中には人だけでなく、エルフやドワーフ、それに魔族までいた。
「よっ、亮一」
「歩!」
友人が来訪した事に亮一は歓喜し、笑顔で近づいてくる。
「随分と盛り上がってるな」
「あと1ヶ月で市の大会だしな」
彼の道場には老若男女関係なく大勢の門下生がいる。聞く話によると1ヶ月後に小学生の地区大会があるようだ。
「それで、どうしたんだ?今日は『憩いの場』は休みなのか?」
「まあね。今日道場に来た理由なんだけど、これを渡しに来たんだ」
歩は一個の封筒を亮一に渡す。亮一はすぐに封筒を開いて中を確認した。
「何々・・・平和記念パーティーの招待状だってぇ?」
「そうなんだ。今日ポスト見たら入っててさ。亮一と葵の分も入ってたから渡しにきたんだ」
「サンキューな。あれ?明美と悟の分も入ってる。気がきくなプリクル」
悟とは亮一と明美との間にできた恵と同い年の少年である。父親に似て幼いながらも友情に熱い子だ。
「兄貴とか元山さんには渡ってるのかな?」
「渡ってるんじゃないかな?」
亮一の兄である優人と葵の姉である緑はあの戦いの次の月に結婚した。今は温泉等があるドワーフの国で暮らしているらしい。
元山さんはロマニア王国で絶賛隠居中だ。たまに会いにいう度に苦笑いされながらもお茶を出してくれる。
「さて、葵はどうするかな・・・?」
葵はと言うと、結婚はせずに旅の魔術師をしている。まだ電話の回線もしっかりとしていない中、連絡を取る手段は繋りの石しかない。
「ダメ元で連絡取ってみるか・・・」
パーティーまで2ヶ月。それまでに彼女に会えるだろうか?
20代後半の中性的な顔の男性と誰もが二度見するくらい美しいエルフの女性2人が店を切り盛りしていた。
「歩!ハヤシライス5つ!」
「はいはーい!」
当店自慢のハヤシライスを皿に注いで妻に渡す。今日は休日なので店がいつもよりも繁盛していた。
人だけではない。何処かから来た異種族もこの店で食事をしている。
最初は僕がルルドを倒した戦士だと聞いてこの店に来たという人が大半だった。最初は勝負しろ等色々言ってきた者はいたが、全員叩きのめしてハヤシライスを食わせた所、味覚はやはり人間と同じで好評価をもらった。
そして僕にボコされた戦士達が母国に帰って僕の店『憩いの場』のハヤシライスは美味いと教えて回ったそうだ。
その結果が今の繁盛ぶりである。
「お父さん!ただいまー!」
「もう帰ってきたのか」
裏口から入ってきたのは4歳の僕の娘恵だ。幼稚園から帰ってきたようだ。恵は僕に笑顔でブンブンと手を振ると妻の方へとダイブする。
「あらあら~今日は何作ってきたの?」
「これ!」
と言って愛娘が妻に渡したのは一枚の絵であった。それはワニの絵だった。小さいながらも上手く描けた物だ。
やがて日が暮れて店の営業終了を余儀なくされる。僕ら小野山家は営業終了の札を店の扉にかけると晩御飯の準備を始める。今日は3日前からリクエストがあったオムライスだ。
「どうだ?美味しいか?」
「うん!流石お父さん!」
ワシャワシャと愛しい娘の頭を撫でる。妻に似て整った顔をしている。妻は目元が僕に似ていると言っているが。
「明日は休日だね!お父さん!」
「そうだな。でも、明日は幼稚園のお友達とは遊べないからな」
「えー?何でー?」
「前に言ったじゃないか。明日はお祖父ちゃんの命日だからお墓参りに行くよって」
「ええー・・・」
「嫌な気持ちもわかるけど、お父さんに付き合ってくれ。曾お祖母ちゃんも来るからさ」
「曾お祖母ちゃんくるの!なら良い!」
晩御飯を食べ終わり、風呂に入って、そのままベッドに入り眠りにつく。次の日、僕達は身だしなみを整えると店で祖母の来訪を待っていた。
しばらくすると、ガランガランと来店を知らせる鐘が鳴る。扉の方を見ると祖母が笑顔を称えて現れた。
「曾お祖母ちゃん!」
「あらあら、恵ちゃんは今日も元気ねー」
マリーは恵を抱き上げると、僕達に近づいてくる。
「お久しぶりです。お祖母ちゃん」
「前に会ったのはたしか・・・半年前だったかしら?最近物忘れが酷くて困るわー」
「そんな事言わないでくださいよ。さ、早く行きましょ?」
歩は全員が外に出たことを確認すると、扉の鍵を閉めて墓まで歩く。10分ほど歩くと、墓場に到着した。墓場の端らへんにある小野山家の墓の前に立つ。
墓石にこびりついたコケ、花瓶の花の取り替え、落ち葉の掃除をしてからお線香を捧げる。娘はまだ4歳だというのにも関わらずお祈りを捧げている時は何も喋らずに手を合わせている。自分の子ながら実にできた子だ。
「じゃあ、帰るか」
「うん!」
★
「声が小さいぞー!もっと腹から声を出せ!」
休日の真っ昼間。夏川にある剣道場では竹刀を振る音と門下生の元気な声が響いていた。
「よし!休憩!」
道場を切り盛りする青年の素振り終了の合図と共に門下生達は竹刀を置いて給水に入る。
門下生の中には人だけでなく、エルフやドワーフ、それに魔族までいた。
「よっ、亮一」
「歩!」
友人が来訪した事に亮一は歓喜し、笑顔で近づいてくる。
「随分と盛り上がってるな」
「あと1ヶ月で市の大会だしな」
彼の道場には老若男女関係なく大勢の門下生がいる。聞く話によると1ヶ月後に小学生の地区大会があるようだ。
「それで、どうしたんだ?今日は『憩いの場』は休みなのか?」
「まあね。今日道場に来た理由なんだけど、これを渡しに来たんだ」
歩は一個の封筒を亮一に渡す。亮一はすぐに封筒を開いて中を確認した。
「何々・・・平和記念パーティーの招待状だってぇ?」
「そうなんだ。今日ポスト見たら入っててさ。亮一と葵の分も入ってたから渡しにきたんだ」
「サンキューな。あれ?明美と悟の分も入ってる。気がきくなプリクル」
悟とは亮一と明美との間にできた恵と同い年の少年である。父親に似て幼いながらも友情に熱い子だ。
「兄貴とか元山さんには渡ってるのかな?」
「渡ってるんじゃないかな?」
亮一の兄である優人と葵の姉である緑はあの戦いの次の月に結婚した。今は温泉等があるドワーフの国で暮らしているらしい。
元山さんはロマニア王国で絶賛隠居中だ。たまに会いにいう度に苦笑いされながらもお茶を出してくれる。
「さて、葵はどうするかな・・・?」
葵はと言うと、結婚はせずに旅の魔術師をしている。まだ電話の回線もしっかりとしていない中、連絡を取る手段は繋りの石しかない。
「ダメ元で連絡取ってみるか・・・」
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