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六章2つの世界

出力最大召喚

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「や、やはりチーフを牢獄から脱獄させてから再開した方が良いのでは・・・?」

「我々にもうそんな時間は残っていない!!あのバカチーフのせいで街の警備も厳しくなっているのだからな!!」

 禿頭の白衣を着た中年の男は身体にストレスを溜め込みながらも機械を操作し続ける。

 目が痛くなるくらい精密な機械。デコピンしたら壊れそうな部品もある。こんな機械を操作するのはかなりのストレスが貯まるであろう。

 だが、禿頭の男はスムーズに進めていく。

「アイツは才能があるからと鼻を伸ばしていた天狗だ。それにアイツは私達よりも開発に力を入れるべきなのにまったく入れておらんかったしな!」

 鮮明に思い出させるチーフの才能を鼻にかけたニヤケ面。先程からグツグツと煮えたぎっている怒りがさらに煮えたぎる。

「よし!出力最大だ!!どのくらいのレベルの魔物が呼べる!?」

「キ、キング級は確実に呼び出せます・・・」

「そうか。なら、竜の巣に繋げ───いや、待てよ」

 キング級の竜がいれば街なんぞ簡単に壊すことは出来よう・・・魔王城に強者がいなければ。

 噂によると竜殺しの英雄の生まれ変わりがいるとのこと。生まれ変わりは竜殺しで有名な奥義ドラゴブレイクが使えるとのこと。

 ここでキング級の竜を呼んだとしても負けてしまう。

 ならどうすれば・・・。

「もし竜が嫌でしたらこの前遺跡で見つけたを使ってはどうでしょうか?」

「何?もう分析は終わったのか?」

「99%終わっているそうです。全長6メートルあるわりには行使魔力は燃費が良いそうです」

「どのくらいの魔力では使えるのだ?」

「平凡な魔術師1人で2時間は保つそうです」

「本当に燃費が良いな・・・」

 幸いにも平均を満たした魔術師はこのチームに20人いる・・・いや、1人捕まったから19人か。

 単純計算で・・・38時間は保つことはできるな。

「よし。すぐにに連絡して運びだしの許可を取れ」

「で、ですが流石に怪しまれるのでは・・・?」

「未分析の部分が見つかったからもっと設備がしっかりしている所で分析したいと言えば了解してくれるだろう」

「分かりました。すぐに連絡します」

 さあ、準備が終わるまでやることがない。ゆっくりと酒でも楽しんでいようか。



「成る程。分かった許可しよう」

 ボル伯爵は繋りの石で誰かと会話をしていた。歩は料理を楽しんでいると、1人でべちゃくちゃと喋っているボル伯爵を見つけたのである。

「あぁ。が人力で持ち運ぶのは無理なのは分かっている。使用を許可しよう。ただし、壊すなよ?」

 念を押すとボル伯爵は繋りの石をポケットにしまって、再び料理を楽しみ始めた。

 先程メスールさんに嫌味ったらしく言っていたの話かもしれない。

 するとボル伯爵は視線に気づいたようでこちらの方をギロリとにらんできた。僕は慌てて目を反らす。

「チッ・・・聞かれていたか・・・」

 後で因縁をつけられないだろうか・・・。

「どうしたんだ?歩君。ボル伯爵が気になるのかい?」

 リズベルさんはいつ敵が襲ってくるか分からないと貴族達がアルコールで顔を赤くする中、彼だけが酒を飲んでおらず、素面のままだった。

 マーブルからの話によるとお酒が飲めないわけではないらしく、ただ酔いやすく酒癖がとても悪いから飲んでいないのだとか(マーブル曰く泣き上戸なのだとか)。

「繋りの石で誰かと会話していたそうなのですが、誰だろうなって」

「・・・彼にはあまり関わらない方が良い。実業家としても名が知れているが、黒い噂も絶えない」

「えっ・・・」

 あの性格から何となくは予想はしていたが・・・よく平和記念パーティーに呼ばれたものだ。

「呼ばなかったら呼ばなかったで後で仲間外れにされたとか言いふらすのよアイツ」

 主催者であるプリクルもあまり良くは思っていないようだ。顔がひきつっている。

 皆がボル伯爵の話題を話している中、シトラはそっちのけで窓から外を見ていた。

 夜景を眺めているだけだろうと最初は思っていたが、5分ぐらいずっと見ている。

 流石に様子がおかしいと思った歩はシトラの肩を叩く。

「どうしたんだシトラ?」

「いや、あれ何だろうな・・・って」

 そう言って彼女が指さしたのは空に浮かぶ大きな光の輪っか。光の輪っかは時間が経つごとにどんどん大きくなっていき、最終的には7mまで巨大になった。

「おい、何だあれ?」

「綺麗ね。花火かしら?」

「今回のパーティーを祝っての花火かもれしないな」

 しまいには次々と貴族や王族達が窓に張り付いて外を見始めた。

 確かに花火に見えないことはないが、僕はあれを見たことがある気がする。しかも最近のことだ。

 あれはエデンで魔物を倒しにいった時に見た・・・そう、ライムさんと共に戦ったあの時。

 ・・・そうか!あれは!! 

「「裂け目だ!!」」

 歩とシトラの声がハモる。二人はお互いの顔を見ると、頷いてその場から走る。

「お、おい!歩!シトラ!どこに行くんだ!?」

「きっと歩君のことだ何かとんでもない事に気づいてしまったのだろう」

「じゃあ追いかけますか~」

「えっ!?まだショートケーキ食べてな・・・」

「マーブル、後にしなさい」

「そうそう、後でいっぱい食べよう?」

「ふぇぇ~私のショートケーキぃぃ・・・!!」

 泣きわめくマーブルを引きずって亮一達は歩を追いかける。

「歩!どうするの!?」

「取り敢えず王様達に指示を仰ぐ!」

 優秀な彼らの事だ。きっと的確な指示を出してくれるだろうと判断した歩はまずロマニア王の元へと走る。

 ロマニア王の近くにはラグドさんとライムさんが居た。

「おう、アユ公!宴は楽しんでるか?」

「楽しんではいますが、少し緊急事態です!!」

「何だあの群がってるのがか?」

「はい!外に巨大な裂け目が・・・!!」

「「「「何だって!?!?」」」

 三人は目玉が飛び出る勢いで、驚いて歩に詰め寄る。歩はすぐに窓まで案内して外を見せた。

「確かによく似ている・・・だが、大き過ぎやしないか!?」

「それは僕も思いましたが───はっ!そうだ!!」

 昼時の出来ごとを思い出す。そう、僕とプリクル女王が力を合わせて研究員の男とその要心棒らしき男を倒した時のことである。

 盗聴していた際に研究員の男が言っていた最大出力の裂け目なのではないのだろうか?

「可能性としてはあり得るな・・・」

「てか団長!早く武器取りにいきましょう!!あの裂け目からすると大量の魔物か巨大な魔物が出てきそうです!!」

「そうだな。ロマニア王、どうか我らに命をお与え下さい」

「う、うむ!分かった。裂け目から出てくるであろう魔物を被害が大きくなる前に倒せ!!」

「「はっ!!」」

 二人は拳を胸に当てて叫ぶとパーティー会場を走り去っていった。

「私は今から各国の王にこの事態を伝えて増援を頼んでくる。君達は行きなさい!!」

「はい!!」

「ありがとうございます!!」

 歩とシトラもパーティー会場を走っていった。
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