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四章二人の魔女の戦争
聖女の光
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扉を開けた瞬間、目を覆いたくなるほどの光が俺を襲う。嫌になるほどの快晴。
「そんなに嫌な顔しないの。ほら、私出れないでしょ?」
魔女が出れない事に気づいたウォークスは横に退いた。彼女は肢体をくねらせながら歩き始めた。
「どこに、行くんだ・・・?」
「近くにある村よ」
「何を、するんだ・・・?」
「破壊するのよ。ロマニア王国への見せしめの為にね」
「俺がやる、のか・・・?」
魔女はぴたりと歩みを止めると、俺の兜に手を沿え、微笑んだ。
「ええ、そうよ。貴方が壊すの」
「分かっ、た・・・」
許否する理由はなかった。かと言って率先的にやりたいとは思わない。俺はコイツに従うしかない。それしかやることがないからだ。
「さあ、行きましょう。ウォークス」
黒い兜がコクりと縦に頷くのを見て納得した魔女はウォークスと共に村へと向かっていった。大きな教会がある村へ。
★
「随分と良い天気だな・・・」
嬉しさ半分、苦しさ半分である。晴れれば心が爽やかな気持ちになるが、日が強いと汗をかき、服が肌にはりつく。この感触は何とも嫌だった。
昨日皆と夜遅くまで酒を飲んでいたせいか二日酔いはないが、とても眠い。今日が門番の日だと言うことを昨日の俺はすっかり忘れていた。
門番は日替わりで若い衆が務める。村にはまだ幼い子供や老人がいる。守るためには村の唯一の入り口に門番を作らなくてはならない。
と、言っても入り口に現れるのは商いをしに来た商人や、群れから離れた雑魚の魔物なのでそこまで難しい仕事ではない。
群れから離れた魔物と言えど、魔物は魔物。油断をすれば死ぬ。だから決して雑魚でも手を抜いたりはしない。まあ、魔物が現れるのはごく稀の事だ。頻発には現れない。
「・・・ん?」
ぼんやりと遠くを見ていると2つの影が見えてくる。人の影だ。1人は真っ黒な鎧を身に付けていて、もう1人は魔術師らしき何とも綺麗な女性だった。
旅人、男の頭にまず最初に思い浮かんだ言葉であった。
よくある事だ。旅人が宿や食料にありつく為に村に訪れる事は。実際に今より若い頃にも旅人が何度か訪れた事があった。
だから男は特にこれと言った警戒心は抱かなかった。魔術師の女性が火の玉を村に向かって放つまでは。
★
「敵襲だ~!」
若い男の大声が村中に響き渡る。世間話をしていた女、友達と遊んでいた子供達は一目散に家の中へと逃げ込んだ。
女は人が逃げ込んだ家から次々と燃やしていく。一方の黒の鎧を着込んだ戦士は武装した若い男達と戦いを繰り広げていた。
最初の頃は両者一歩も引かない良い勝負をするが、やがて村人の方の体力に限界が来て謎の戦士に負けてしまう。
襲来者は2人だった。だが力の差は圧倒的だった。何せこの村にいる若者はステータスカードを持ってはいるが、戦いにおいては素人そのものである。一方の謎の戦士の剣捌きは見事な物であった。瞬く間に村人を疲労させて、気絶させる。
「フフ、良い調子よウォークス。若い男は殺さないようにね?後で実験に使うから」
女は不敵な笑みを浮かべる。その笑顔で恐らく全員が察したであろう。この女は魔術師等ではなく、魔女であると。
「もっと若い奴らを連れてこい!出ないとコイツを止められないぞ!」
謎の戦士は無敵状態であった。相当の手練の者であると戦いの素人である村人でも分かる。しかし、村人は疑問に思う事があった。
戦士は戦っているというよりも作業を行っているかのようなのだ。まるで飼い主の命令に従う忠犬のように。
「皆さん、お疲れ様でした」
ふと、後ろから声が聞こえてきた。年老いた優しい声だ。聞いているだけで心が安らぐような。
その場にいる全員が後ろを振り向いた。声の正体はシスター・マリーであった。絶望していた男達の顔が一気に明るくなるのが手に取るように分かる。
「あら、貴女は?随分と期待されていますこと」
「大した者ではありませんよ。ただの聖職者です」
マリーが手に握るは青の魔力のこもった大きな宝石があしらわれた杖だった。途端に魔女の笑みが歪む。
「申し訳ありませんが、もう一度ご身分をお聞きしてもよろしいですか?」
「だから、ただの聖職者ですよ」
次の瞬間であった。マリーの身体から神々しい光が溢れだした。謎の戦士と魔女は思わず顔を手で覆う。
「ちょ、シスター・マリー!?」
村人の叫びも虚しく、マリーは穏やかな笑顔を称えると、ゆっくりとした歩みで黒の鎧の戦士に近づいた。
「シスター・マリー!戻ってきて下さい!危険です!」
必死に呼ぶも、戻ってくる気配はなし。このままでは危険だと考えて男達は各々の武器を持って戦闘体制に入っていたが、何やら謎の戦士の様子がおかしい。それに魔女も。
2人はマリーから発生している光を浴びて苦しんでいるのだ。彼女が発しているのは聖なる光。邪悪なる者を清める効果があるのだ。
マリーは謎の戦士の被る兜に手を触れ、優しく囁いた。
「苦しいでしょう?さあ、解放されなさい」
マリーの身体から発生している光が強くなる。謎の戦士は苦しみながら後退する。
「Uwaaaaaaaaaaaaaaaa!!」
鎧の戦士の身体じゅうから黒く禍々しい煙りが噴き出す。しばらくすると黒い煙は噴き出さなくなり、変わりに鎧の騎士は糸の切れた操り人形のようにバタリとうつ伏せになって倒れた。
急すぎる展開に村人達は口を半開きにして固まる。マリーが笑顔を向けるとハッ、と我に返った。
「な、何が起こったんだ・・・?」
「分かんねぇけんど、シスター・マリーが状況を良くしてくれたに違ぇねえ」
村人達は歓喜の声を叫ぶ。まるで今から祭りでも始まるかのよう騒ぎっぷりである。
かつん、とマリーは杖の石突きで近くにあった岩を思いきり叩いて騒ぐ村人達を静めた。
「まだ終わりではありません。武器を構えていなさい」
「分かりました」と素直にさっきの盛り上がりから一転して武器を構える。言動はまるで怒られた子供のようである。
「き、貴様・・・!私の騎士に何をした!!」
「特に悪い事はしていませんよ?ただ、彼を縛っている物を取り除いてあげただけです」
むくりと謎の戦士は何事もなかったかのように立ち上がった。魔女はすぐさま戦士に歩み寄った。
「大丈夫か、ウォークス?怪我はしていないか?」
「・・・誰だ?」
「え・・・?何を、言っているんだウォークス?」
「僕はウォークスじゃない・・・」
剣の切っ先が魔女に向けられる。戦士は切っ先を向けながら兜を外し、地面に放り投げた。
「僕は、小野山歩だ・・・!」
歩は剣を魔女を振り下ろした。動揺する魔女であるが、歩の一撃を紙一重でかわした。
「くっ───!」
魔女は鈍く舌打ちをすると、ぎろりとマリーを睨み付けて、跡形もなく消えていった。
「はぁ、はぁ・・・・くそったれ・・・」
歩も洗脳により疲弊していたようでその場に倒れ伏せてしまう。
「若い皆様、この人を教会まで運ぶので手伝っていただけますか?」
「は、はいですだ!」
村人達は数人がかりとで気絶した歩を教会まで運んでいった。
「そんなに嫌な顔しないの。ほら、私出れないでしょ?」
魔女が出れない事に気づいたウォークスは横に退いた。彼女は肢体をくねらせながら歩き始めた。
「どこに、行くんだ・・・?」
「近くにある村よ」
「何を、するんだ・・・?」
「破壊するのよ。ロマニア王国への見せしめの為にね」
「俺がやる、のか・・・?」
魔女はぴたりと歩みを止めると、俺の兜に手を沿え、微笑んだ。
「ええ、そうよ。貴方が壊すの」
「分かっ、た・・・」
許否する理由はなかった。かと言って率先的にやりたいとは思わない。俺はコイツに従うしかない。それしかやることがないからだ。
「さあ、行きましょう。ウォークス」
黒い兜がコクりと縦に頷くのを見て納得した魔女はウォークスと共に村へと向かっていった。大きな教会がある村へ。
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「随分と良い天気だな・・・」
嬉しさ半分、苦しさ半分である。晴れれば心が爽やかな気持ちになるが、日が強いと汗をかき、服が肌にはりつく。この感触は何とも嫌だった。
昨日皆と夜遅くまで酒を飲んでいたせいか二日酔いはないが、とても眠い。今日が門番の日だと言うことを昨日の俺はすっかり忘れていた。
門番は日替わりで若い衆が務める。村にはまだ幼い子供や老人がいる。守るためには村の唯一の入り口に門番を作らなくてはならない。
と、言っても入り口に現れるのは商いをしに来た商人や、群れから離れた雑魚の魔物なのでそこまで難しい仕事ではない。
群れから離れた魔物と言えど、魔物は魔物。油断をすれば死ぬ。だから決して雑魚でも手を抜いたりはしない。まあ、魔物が現れるのはごく稀の事だ。頻発には現れない。
「・・・ん?」
ぼんやりと遠くを見ていると2つの影が見えてくる。人の影だ。1人は真っ黒な鎧を身に付けていて、もう1人は魔術師らしき何とも綺麗な女性だった。
旅人、男の頭にまず最初に思い浮かんだ言葉であった。
よくある事だ。旅人が宿や食料にありつく為に村に訪れる事は。実際に今より若い頃にも旅人が何度か訪れた事があった。
だから男は特にこれと言った警戒心は抱かなかった。魔術師の女性が火の玉を村に向かって放つまでは。
★
「敵襲だ~!」
若い男の大声が村中に響き渡る。世間話をしていた女、友達と遊んでいた子供達は一目散に家の中へと逃げ込んだ。
女は人が逃げ込んだ家から次々と燃やしていく。一方の黒の鎧を着込んだ戦士は武装した若い男達と戦いを繰り広げていた。
最初の頃は両者一歩も引かない良い勝負をするが、やがて村人の方の体力に限界が来て謎の戦士に負けてしまう。
襲来者は2人だった。だが力の差は圧倒的だった。何せこの村にいる若者はステータスカードを持ってはいるが、戦いにおいては素人そのものである。一方の謎の戦士の剣捌きは見事な物であった。瞬く間に村人を疲労させて、気絶させる。
「フフ、良い調子よウォークス。若い男は殺さないようにね?後で実験に使うから」
女は不敵な笑みを浮かべる。その笑顔で恐らく全員が察したであろう。この女は魔術師等ではなく、魔女であると。
「もっと若い奴らを連れてこい!出ないとコイツを止められないぞ!」
謎の戦士は無敵状態であった。相当の手練の者であると戦いの素人である村人でも分かる。しかし、村人は疑問に思う事があった。
戦士は戦っているというよりも作業を行っているかのようなのだ。まるで飼い主の命令に従う忠犬のように。
「皆さん、お疲れ様でした」
ふと、後ろから声が聞こえてきた。年老いた優しい声だ。聞いているだけで心が安らぐような。
その場にいる全員が後ろを振り向いた。声の正体はシスター・マリーであった。絶望していた男達の顔が一気に明るくなるのが手に取るように分かる。
「あら、貴女は?随分と期待されていますこと」
「大した者ではありませんよ。ただの聖職者です」
マリーが手に握るは青の魔力のこもった大きな宝石があしらわれた杖だった。途端に魔女の笑みが歪む。
「申し訳ありませんが、もう一度ご身分をお聞きしてもよろしいですか?」
「だから、ただの聖職者ですよ」
次の瞬間であった。マリーの身体から神々しい光が溢れだした。謎の戦士と魔女は思わず顔を手で覆う。
「ちょ、シスター・マリー!?」
村人の叫びも虚しく、マリーは穏やかな笑顔を称えると、ゆっくりとした歩みで黒の鎧の戦士に近づいた。
「シスター・マリー!戻ってきて下さい!危険です!」
必死に呼ぶも、戻ってくる気配はなし。このままでは危険だと考えて男達は各々の武器を持って戦闘体制に入っていたが、何やら謎の戦士の様子がおかしい。それに魔女も。
2人はマリーから発生している光を浴びて苦しんでいるのだ。彼女が発しているのは聖なる光。邪悪なる者を清める効果があるのだ。
マリーは謎の戦士の被る兜に手を触れ、優しく囁いた。
「苦しいでしょう?さあ、解放されなさい」
マリーの身体から発生している光が強くなる。謎の戦士は苦しみながら後退する。
「Uwaaaaaaaaaaaaaaaa!!」
鎧の戦士の身体じゅうから黒く禍々しい煙りが噴き出す。しばらくすると黒い煙は噴き出さなくなり、変わりに鎧の騎士は糸の切れた操り人形のようにバタリとうつ伏せになって倒れた。
急すぎる展開に村人達は口を半開きにして固まる。マリーが笑顔を向けるとハッ、と我に返った。
「な、何が起こったんだ・・・?」
「分かんねぇけんど、シスター・マリーが状況を良くしてくれたに違ぇねえ」
村人達は歓喜の声を叫ぶ。まるで今から祭りでも始まるかのよう騒ぎっぷりである。
かつん、とマリーは杖の石突きで近くにあった岩を思いきり叩いて騒ぐ村人達を静めた。
「まだ終わりではありません。武器を構えていなさい」
「分かりました」と素直にさっきの盛り上がりから一転して武器を構える。言動はまるで怒られた子供のようである。
「き、貴様・・・!私の騎士に何をした!!」
「特に悪い事はしていませんよ?ただ、彼を縛っている物を取り除いてあげただけです」
むくりと謎の戦士は何事もなかったかのように立ち上がった。魔女はすぐさま戦士に歩み寄った。
「大丈夫か、ウォークス?怪我はしていないか?」
「・・・誰だ?」
「え・・・?何を、言っているんだウォークス?」
「僕はウォークスじゃない・・・」
剣の切っ先が魔女に向けられる。戦士は切っ先を向けながら兜を外し、地面に放り投げた。
「僕は、小野山歩だ・・・!」
歩は剣を魔女を振り下ろした。動揺する魔女であるが、歩の一撃を紙一重でかわした。
「くっ───!」
魔女は鈍く舌打ちをすると、ぎろりとマリーを睨み付けて、跡形もなく消えていった。
「はぁ、はぁ・・・・くそったれ・・・」
歩も洗脳により疲弊していたようでその場に倒れ伏せてしまう。
「若い皆様、この人を教会まで運ぶので手伝っていただけますか?」
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