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一章混沌と魔物

最悪の展開

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「ただいまーレタス買ってきたよー」

「お帰りー・・・ってどうしたんだ?そんな疲れた顔して」

 レタスを1玉買って帰ってきた歩は疲労困憊していた。最悪な事に今日はいつも行っているスーパーでレタスのバーゲンセールだったのだ。

「晩御飯の為にって奮闘する奥様方の戦いに巻き込まれちまって」

「ん?あぁー成る程ね。今日は手伝いは良いから寝てな。考えてみれば昨日も夜遅くまで勉強してたしな」

 一言でバーゲンセールに巻き込まれたと気付いた冬馬は歩を2階へ上がらせて再び作業へと戻る。

「はぁーー・・・」

 ベッドに横たわった瞬間、目蓋が自然と閉じ、睡魔が眠りへと誘いかけてくる。歩は睡魔に抵抗することなく睡魔に身を任せる事にした。



「えーっと・・・あ、これだ」

 タンスの隅に置いてあった小さい箱から3枚のステータスカードを見つけ出す。どれも所有者のいない新品のカードだ。

「さてと、戦力になる者の為に武器を調達しなければな」

 あちらの世界へと飛ぶ前に武器の調達をと、ラグドは王の寝室から出て行き付けの鍛冶屋へと向かおうとしたその時、1人の 青年が全速力でラグドに向かい走ってきた。

「ラグドさーん!大変です大変です!大々々事件でーす!」

 走ってきた青年の名はライム。戦場を共にした事がある槍使いの騎士だ。

「どうしたんだ、ライム君?魔物か?」

「は、はい!」

「何処だ?すぐに向かおう」

「そ、それが───」

 息を切らしたライムはその状態のまま、魔物が現れた場所の情報を教えた。

「あちらの世界になんです」

「何!?」

 冷静だったラグドは目が見開くほど驚く。まだ猶予があると、魔物達を転送していた場所を調査している学者から聞いていたからだ。

「まだ時間はあるんじゃないのか!いや、にしても早すぎる。転送されたのは、昨日だぞ!」

 転送には時間がかかる。人数が多ければ多いほどかかる時間が増えていく。昨日送られた魔物達の数は計り知れなかったが、確実に100体を越えていた。100体以上の転送ならば最速でも、2日は確実にかかる。学者もそう言っていたのだ。それが、何故、こんなにも早く・・・。

「兎に角、早く向かわなければ・・・!」

 戦力増加なんて考えていられない。ラグドは導きの石を取り出し、『ワールドワープ』の詠唱を始める。しかし何故か、導きの石はラグドをあちらの世界へと転送はしてくれなかった。

「こんな時に魔力切れか・・・!」

 導きの石は何時何処でもどんな場所でも転送する事が出来る万能のアイテムだ。しかし、大きな欠点がある。魔力切れをよくおこすのだ。導きの石に魔力を注ぐ事自体はとても簡単でひよっこ魔術師でも出来る程なのだが、急速で蓄えようとすると導きの石が負荷に耐えられなくなり、壊れてしまうのだ。だから、ゆっくりと魔力を蓄えなければならないのだ。

「だったら、俺のを使ってください!最近調子が悪いですが、充電はしっかりしています!」

 ライムは慌てた手つきで、革袋から導きの石を取り出し、ラグドに手渡す。

「感謝する!」

 ラグドは導きの石を強く握り締めて、『ワールドワープ』の詠唱を開始。彼の姿は光と共に跡形もなく消え去った。



「・・・ん、ふあぁ・・・」

 ・・・どうやら、眠ってしまったらしい。目覚し時計で時刻を確認する。15時16分。帰ったきたのが1時20分だから、約2時間程眠っていたらしい。

「きゃーーーー!!」

 女性の悲鳴や、男性の叫び声が聞こえてくる。何かイベントでも、やっているのだろうか?

 グチャ・・・。悲鳴や叫び声ではなく、今度は血肉が混ざり合う音が聴こえてくる。

 ・・・嫌な予感がする。

「父さーん!」

 部屋から顔を出し、父を呼ぶ。しかし、応答はない。おかしい。この部屋から叫べば厨房へと必ず声が届くはずなのに。

 嫌な予感がますます強まってくる。意を決して窓から外を見る。そこにあったのは───。

「ギシャシャシャシャア!!」

 魑魅魍魎の小鬼達が市民を殺戮する地獄絵図だった。
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