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4章 最終防衛戦門

6話 出国!!!

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「それじゃあ・・・いつ出る?俺はちょっと体がだるいから、明日以降にしてほしいんだけど」

「今日よ」

「オッケー。おけおけ・・・は?」

 モネさん。俺の今の発言聞いてた?俺まだ疲れ取れてないから、明日にしたいって言ったんだけど。

 まだ、今日帰る予定~とかなら分かる。けど、今の言い方からして、決定事項じゃん。

「悪いんだけど、まじで早くここから出てった方が良いと思う」

「モネの言う通りだね。実は、ヒスイが眠ってる3日間、ずっと良く分からない魔物が攻めて来たんだ」

「サラマンダー、ボンバーストーン、炎の魔人。完全に森を燃やすばっかり!わたしの水の魔術の水圧で押し殺したんだよ!!」

「そっか、それは大変だったね」

 現在、ナチュレは戦力が大幅に下がっている。リリとシュエリ王女が居たから何とかなったのだろう。

「草原にいるはずのない魔物だったのは分かるわよね?それだけじゃなくて、その魔物ら、この2人を狙ってたのよ!確実に狙いに来てるじゃない!!」

「ヒスイには凄い申し訳ないけど、ナチュレにこれ以上迷惑かけるわけにも行かないよ。体調は良くないのは分かるけど、すぐにここから出なきゃ」

 俺だけに迷惑がかかるならどうでも良いが、他の人どころか、国に迷惑がかかるとなると話は別だ。

 鉛のように重い体を腕で持ち上げ、立ち上がる。今更だが、戦いの時に着ていた服と違う。〈災害〉の体液で溶けてしまったからだろう。

 俺が持って来た服とは違うけれども、着心地が良く、鮮やかな緑のパーカーはかなり好みかもしれない。

「〈紫陽花〉は?それと、脇差と荷物」

「かなりボロボロですが、刃は大丈夫です!」

 柄には木と布を使っている為、妖刀かと疑うくらいボロボロだが、言われた通り、刃は大丈夫。柄は握っても壊れないので、リオまでは保ちそうだ。

「シュエリ王女。シャイ団長に許可は?」

「ご安心を。既にリャオ様が相談済みです」

「ご心配なく、ヒスイ王子、シュエリ王女。このシャイ・マスカッツ、必ず安全にリオまで送り届けます」

 扉の外で待機していたのだろう。シャイ団長が入ってくる。足は再生してもらったのか、二本足で立っており、武装もしっかりとしている。

 既に俺らを護送する気満々なのだろうが・・・・。

「シャイ団長、貴方はナチュレに留まってください」

「なっ!何故です!ヒスイ王子!病み上がりの私では力不足でしょうか!ご安心を!私の足はこの通り、リャオのおかげで十分に────」

「そういう事を言っているんではありません。今、ナチュレは〈災害〉との戦いで満身創痍。主戦力であり、皆の指揮をしなければならない者が国を離れてどうするのです?」

 シャイ団長が戦力外だなんて、1ミリも思っていない。むしろ、いてくれた方が助かるまである。

 しかし、シュエリ王女が言った通り、ナチュレの戦闘力は非常に弱い。例えるなら、風前の灯や虫の息と言える状態。

 そんな状態の国から、指揮官兼最高戦力がいなくなったらどうなるか?どんなに頑張っても士気は下がり、下手をしたら、国が滅んでしまう。

 シャイ団長も心の何処かで分かってはいたようで、言葉では表現できないさまざまな感情が混ざった複雑な表情を浮かべていた。

「わ、分かりました・・・ヒスイ王子!」

「は、はい!」

「シュエリ王女をどうか・・・どうか頼みます!!」

「それは勿論。俺の命に替えても守って見せますよ」

 不安と心配で震える手を、包み込むように触れて安心させる。約束すると、シャイ団長の表情は、一変し、明るい表情へと変化する。

「ありがとうございます!!ありがとうございます!!」

 俺の言葉で安心してくれたようで、シャイ団長の顔は、涙で少し崩れていた。

「まあ!ヒスイ様!何と頼もしい!!・・・ですが、守るのは私の方です。ヒスイ様をもう2度と危険な目には合わせませんので・・・ネ?」

「あ、はい・・・」

 同じ戦いの中で、2度も死にかけたせいで、シュエリ王女にトラウマを根付かせてしまったのか、この時の王女の瞳からは光が消えていたような気がする。
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