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3章 異世界旅行録
43話 猛攻すれど・・・
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「命中しました!」
「次の矢を用意しろ!エンチャントは待て!」
爆発が収まり、再び〈災害〉の姿が露わとなる。災害は未だ健在。なにごとも無かったかのようにこちらへと向かっている。
「全く効いていない!?」
最低でも火薬10kgの爆発はあったのに、全くの無傷。寧ろ、毒液が飛び散って周りの草木が枯れてしまった。
この魔物、傷つけても放っておいてもこの世界に害を与えるのか?
「いや・・・そんな事も無いかも・・・確実にダメージは入ってる。それが微小なだけで」
震えながらもついて来ていた大門寺さんが喋る。トラウマを抱えているのだろうに、俺達の事を気遣ってついて来てくれたらしい。
「だとしても絶望的状況は変わらんな。他に何か有益な情報はあるか?」
「奴はスライムとしては珍しく知恵と自我を持っている・・・攻撃したら、はっきりこちらを敵と認識して殺しにかかってくる」
「それはつまり・・・我々は敵と認識されたという事か?ー
「・・・あれを見てほしい。敵として認識された証拠だ」
迫り来る軍勢。規模は、ナチュレ軍の約2倍。〈災害〉よりかは幾分かマシだが、遅い歩み。
体を構成する肉はぼとりと音を立てて落ち始めており、〈災害〉が放つ腐敗臭とはまた別の腐敗臭がする。
「「「「「「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」」」」」」
「ゾンビ軍団か・・・」
「それは想定内です。剣士隊!前へ!!」
「「「「ハッ!!!」」」」
「構え!!」
剣を引き抜き、大きく振るかぶる形で構えさせる。かなり隙だらけの状態だが、ゾンビはまだ、5km先にいるので、攻撃を喰らう事はない。
「水エンチャント準備!!」
「「「「水の魔術!!」」」」
刃に水が纏わりつく。毒でもなければ、薬でもない水が剣を保護するように覆うのを確認すると、シャイ団長は振り下ろすように命令する。
「「「「はぁっ!!!」」」」
剣が振られると、纏わりついていた水は斬撃となって飛んでいく。生命を維持するのに必要な物である水も使い方次第で武器となる。
水の斬撃は剣士達の数少ない遠距離攻撃手段。誰でも扱えるような技だが、扱いやすさに反映してか、威力はあまり高くはない。人を殺す程の威力を求めるのならば、それ相応の鍛錬が必要となる。
しかし、対象は人間だった者。既に今世での役目を終えた者の残骸。中身が無くなり、腐ってしまった殻だ。
達人級の腕が無くても、切断が可能・・・と思われていた。
到達した水の斬撃は、ゾンビに打ち水のように当たるだけで、全く外傷はなし。倒れたのは、1万はいるゾンビのうち、僅か50体程だった。
「何!?何故、肉体が腐りきっているゾンビが倒せない!」
「それも<災害>の力ですね・・・奴は死体を呪いでゾンビにするだけでなく、近くに存在すれば、肉体の強化までしてしまうんです・・・」
「チィッ・・・!!そんな情報資料には無かった・・・!」
「俺らが直で戦う事で気づいた事なんで・・・」
「つまり、接近しなきゃゾンビは倒せないってことか?」「でも、500m以上も離れたら呪いと毒が・・・」「馬鹿野郎!そんなのにビビってて戦士が務まるか!!」「それだけじゃねぇ!!俺らが呪いと毒で死んだら、皆の敵になるんだぞ!?そんな事想像もしたくない!!」
遠距離が駄目なら、近距離中距離。正しい判断だ。
しかし、兵士達も言っていた通り、少しでも前に出れば、呪いと毒に体が侵される。
それだけならまだマシな方で、もし死んだ場合は<災害>の傀儡と化し、皆の敵となる。
かと言って、ゾンビがこちらのテリトリーに入ってくるまで待っても、数の暴力で潰される。
早くも兵士や騎士達は絶対絶命を意識しているが、俺や門番仲間、シャイ団長は大して驚きはしたが、動揺はしなかった。
「ヒスイ!もしかしなくても、わたしの出番だよね?」
「ああ、今回はフルパワーで良いよ」
「勿論!シャイ騎士団長、許可をお願い」
「分かりました、いつでも構いませんよ」
ナチュレに来る前、俺達は小規模のゾンビの群れに襲われ、リリの力によって、怪我無く戦闘を終わらせる事ができた。
まさか、あの時の戦いがこんなにも早く役に立つとは思わなかった。
「フルパワーでいくよ!!氷の魔術!!」
リリの手から放たれた冷気は、こちらへと向かってくるゾンビを囲う。既に死んでいるゾンビ達は寒さを感じずに、前へと進んでこようとするが、数秒後には物理的に前に進む事が不可能となっていた。
「足が凍ってる?」「そうか!別に倒す必要はない!凍らせておけば!」「万事解決!」
兵士達の士気が戻る。しかし、念には念を。敵には徹底的に戦闘不能にしておくのが安牌である。
魔力を更に流す事で、冷気を更に強化し、ゾンビの足だけでなく、全身までも冷凍化。ゾンビには痛覚がなく、凍った足を破壊してまでも敵に進んでくるので、凍らせるなら全てを凍らせなければならない。
「最後の一押し!!」
念には念を。更に念を入れられるなら徹底的に。リリの100%の力はこんなものではない!今までは50%程である。
リリのフルパワーで出した氷の魔術は、ゾンビ達を凍らせるだけでなく、1つの巨大な氷塊に閉じ込めたのだ。
小さな山くらいの氷塊にナチュレの兵士達は言葉を失い、手が緩む。
「アンタら、動かないならアタシがいかせてもらうよ!腰抜けエルフども!!」
兵士の隙間を走り抜ける矮躯の少女。両手には身の丈と同じ長さのモーニングスター、目はぎらつき、闘争心に火が付いている。
「おい待てハーフドワーフ!!その先は毒と呪いが────」
「そんな事、知った事か!!」
安全地帯を抜け、力を振り絞りジャンプ。モーニングスターを振り上げ、重力に従い、落下。
「砕け散れぇぇぇぇぇぇぇ!!」
氷塊の真上へと到達したモネさんは力の限り、モーニングスターを振り下ろし、ゾンビごと氷塊を粉砕。辺りには、人間のパーツが氷に閉じ込めたものが散らばった。
「これがドワーフパワァァァァァァ!!」
この勇気ある行動が原因かは分からないが、ナチュレはドワーフと歩み寄る決心をしたとか、しなかったとか。
「次の矢を用意しろ!エンチャントは待て!」
爆発が収まり、再び〈災害〉の姿が露わとなる。災害は未だ健在。なにごとも無かったかのようにこちらへと向かっている。
「全く効いていない!?」
最低でも火薬10kgの爆発はあったのに、全くの無傷。寧ろ、毒液が飛び散って周りの草木が枯れてしまった。
この魔物、傷つけても放っておいてもこの世界に害を与えるのか?
「いや・・・そんな事も無いかも・・・確実にダメージは入ってる。それが微小なだけで」
震えながらもついて来ていた大門寺さんが喋る。トラウマを抱えているのだろうに、俺達の事を気遣ってついて来てくれたらしい。
「だとしても絶望的状況は変わらんな。他に何か有益な情報はあるか?」
「奴はスライムとしては珍しく知恵と自我を持っている・・・攻撃したら、はっきりこちらを敵と認識して殺しにかかってくる」
「それはつまり・・・我々は敵と認識されたという事か?ー
「・・・あれを見てほしい。敵として認識された証拠だ」
迫り来る軍勢。規模は、ナチュレ軍の約2倍。〈災害〉よりかは幾分かマシだが、遅い歩み。
体を構成する肉はぼとりと音を立てて落ち始めており、〈災害〉が放つ腐敗臭とはまた別の腐敗臭がする。
「「「「「「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」」」」」」
「ゾンビ軍団か・・・」
「それは想定内です。剣士隊!前へ!!」
「「「「ハッ!!!」」」」
「構え!!」
剣を引き抜き、大きく振るかぶる形で構えさせる。かなり隙だらけの状態だが、ゾンビはまだ、5km先にいるので、攻撃を喰らう事はない。
「水エンチャント準備!!」
「「「「水の魔術!!」」」」
刃に水が纏わりつく。毒でもなければ、薬でもない水が剣を保護するように覆うのを確認すると、シャイ団長は振り下ろすように命令する。
「「「「はぁっ!!!」」」」
剣が振られると、纏わりついていた水は斬撃となって飛んでいく。生命を維持するのに必要な物である水も使い方次第で武器となる。
水の斬撃は剣士達の数少ない遠距離攻撃手段。誰でも扱えるような技だが、扱いやすさに反映してか、威力はあまり高くはない。人を殺す程の威力を求めるのならば、それ相応の鍛錬が必要となる。
しかし、対象は人間だった者。既に今世での役目を終えた者の残骸。中身が無くなり、腐ってしまった殻だ。
達人級の腕が無くても、切断が可能・・・と思われていた。
到達した水の斬撃は、ゾンビに打ち水のように当たるだけで、全く外傷はなし。倒れたのは、1万はいるゾンビのうち、僅か50体程だった。
「何!?何故、肉体が腐りきっているゾンビが倒せない!」
「それも<災害>の力ですね・・・奴は死体を呪いでゾンビにするだけでなく、近くに存在すれば、肉体の強化までしてしまうんです・・・」
「チィッ・・・!!そんな情報資料には無かった・・・!」
「俺らが直で戦う事で気づいた事なんで・・・」
「つまり、接近しなきゃゾンビは倒せないってことか?」「でも、500m以上も離れたら呪いと毒が・・・」「馬鹿野郎!そんなのにビビってて戦士が務まるか!!」「それだけじゃねぇ!!俺らが呪いと毒で死んだら、皆の敵になるんだぞ!?そんな事想像もしたくない!!」
遠距離が駄目なら、近距離中距離。正しい判断だ。
しかし、兵士達も言っていた通り、少しでも前に出れば、呪いと毒に体が侵される。
それだけならまだマシな方で、もし死んだ場合は<災害>の傀儡と化し、皆の敵となる。
かと言って、ゾンビがこちらのテリトリーに入ってくるまで待っても、数の暴力で潰される。
早くも兵士や騎士達は絶対絶命を意識しているが、俺や門番仲間、シャイ団長は大して驚きはしたが、動揺はしなかった。
「ヒスイ!もしかしなくても、わたしの出番だよね?」
「ああ、今回はフルパワーで良いよ」
「勿論!シャイ騎士団長、許可をお願い」
「分かりました、いつでも構いませんよ」
ナチュレに来る前、俺達は小規模のゾンビの群れに襲われ、リリの力によって、怪我無く戦闘を終わらせる事ができた。
まさか、あの時の戦いがこんなにも早く役に立つとは思わなかった。
「フルパワーでいくよ!!氷の魔術!!」
リリの手から放たれた冷気は、こちらへと向かってくるゾンビを囲う。既に死んでいるゾンビ達は寒さを感じずに、前へと進んでこようとするが、数秒後には物理的に前に進む事が不可能となっていた。
「足が凍ってる?」「そうか!別に倒す必要はない!凍らせておけば!」「万事解決!」
兵士達の士気が戻る。しかし、念には念を。敵には徹底的に戦闘不能にしておくのが安牌である。
魔力を更に流す事で、冷気を更に強化し、ゾンビの足だけでなく、全身までも冷凍化。ゾンビには痛覚がなく、凍った足を破壊してまでも敵に進んでくるので、凍らせるなら全てを凍らせなければならない。
「最後の一押し!!」
念には念を。更に念を入れられるなら徹底的に。リリの100%の力はこんなものではない!今までは50%程である。
リリのフルパワーで出した氷の魔術は、ゾンビ達を凍らせるだけでなく、1つの巨大な氷塊に閉じ込めたのだ。
小さな山くらいの氷塊にナチュレの兵士達は言葉を失い、手が緩む。
「アンタら、動かないならアタシがいかせてもらうよ!腰抜けエルフども!!」
兵士の隙間を走り抜ける矮躯の少女。両手には身の丈と同じ長さのモーニングスター、目はぎらつき、闘争心に火が付いている。
「おい待てハーフドワーフ!!その先は毒と呪いが────」
「そんな事、知った事か!!」
安全地帯を抜け、力を振り絞りジャンプ。モーニングスターを振り上げ、重力に従い、落下。
「砕け散れぇぇぇぇぇぇぇ!!」
氷塊の真上へと到達したモネさんは力の限り、モーニングスターを振り下ろし、ゾンビごと氷塊を粉砕。辺りには、人間のパーツが氷に閉じ込めたものが散らばった。
「これがドワーフパワァァァァァァ!!」
この勇気ある行動が原因かは分からないが、ナチュレはドワーフと歩み寄る決心をしたとか、しなかったとか。
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