106 / 191
3章 異世界旅行録
33話 飲んだくれ
しおりを挟む
「あの、僕達任務で遠征組を見つけにきた門番デシテ・・・」
「えぇ?門番んんん?君達のような門番は見たことないけど・・・」
「貴方がザナに遠征に向かった次の日に就任したから顔を知らないのも無理ないわ。この子なんて就任してから1か月も経ってないし」
「どうも~~」
アルコールでとろけた脳みそでしばらく考え、手をポンと叩き納得する。
「確かに言ってた気がする!俺達が遠征に向かう前、主任が!!君達がその子達だったのか!いやぁ~~元気そうでなにより!元気な後輩が出来ておじさん嬉しいよ~~」
なんだか、親戚の何やってるか分からないおじさんのような雰囲気の人だ。
酒は人の本性を暴く。この性質から、ダイモンジさんは悪い人ではないのだろう。
話が通じそうな人で一安心だが、同時に疑問がわいてくる。
何故この人は健康体なのにリオに帰ってこないんだ?・・・と。
「それで?見つける為だけに君達がやってきたわけじゃないんでしょ?」
「飲み込みが早いのは酒だけじゃないみたいね。ならさっさと帰る支度をしなさい。他の7人にも伝えなさい」
ダイモンジさんのグラスを持つ手がピタリと止まる。そのまま口へと運ばず、テーブルに再び置くと、呟くように僕達に言った。
「死んだ・・・・」
端的かつ事務的に知らされる7人の死亡。
ダイモンジさんだけがこの酒場にいる事、店主が他の7人を知らない事、魔物が門番を壊滅させるほどの力を持っている事から、心のどこかで気づいていたのかもしれない。証拠としてあまり驚かなかった。
「俺は・・・無様にも生き残った腰抜けだ・・・皆が立ち向かっている中、俺は・・・俺は・・・何もできなかった!!」
先程まで笑みを浮かべていた酒で真っ赤な顔には悔しさがにじみ出ており、目からは涙が一筋流れている。
「俺が怪我か何かして帰ってこれなかったと思っていたんだろうが、それは違う・・・仲間が死んだことを報告する事が怖くてここで飲んだくれになっていただけだ!ただのクズだ俺は!!」
酒は悲しい気持ちから一時的に開放してくれる。しかし、脳に焼き付いた嫌な記憶までは癒してはくれない。
ダイモンジさんもそれを承知を上で飲んだくれまで落ちぶれていたのだろう。
「俺を迎えに来てくれたのはありがとう・・・でも、俺はもう帰れない・・・皆が苦しで死んだのに俺だけ帰って元の生活に戻る事なんて出来っこない!!」
実際に遠征組と、強力な魔物の戦いを見ていないので推測に過ぎないが、ダイモンジさんは何もできなかったとわけではないと思われる。
彼が患っているのは、サバイバーズ・ギルト。事故や災害で大勢が死んだにも関わらず、自分だけが生き残り、罪悪感から鬱や不眠を起こす罪悪感の一種と思われる。
「俺は既に死んだと伝えてほしい・・・」
「それはかなり無理のある話デスネ。貴方を探すのに、魔力探知機を使いましたから」
手の平の魔力探知機の針はくるくると回っている。主任に曰く、目的の人が近くにいると回るらしい。どうやら故障はしておらず、しっかりと機能しているようだ。
横に備え付けられたスイッチを押し、ダイモンジさんの探知を止めて、針の動きを止めた。
「それなら問題はないよ。俺はこれから死ぬ。アイツに一矢報いる為には、このお粗末な命を使う必要があるからね」
腰に装着していた武器を握る。顔は赤いが、戦士の顔つきだ。
小さな金属音が静かな店内に響く。音源は僕の手の平。ダイモンジさんの探知を止めて、今回の任務の役目を終えた懐中時計型魔力探知機だった。
「えぇ?門番んんん?君達のような門番は見たことないけど・・・」
「貴方がザナに遠征に向かった次の日に就任したから顔を知らないのも無理ないわ。この子なんて就任してから1か月も経ってないし」
「どうも~~」
アルコールでとろけた脳みそでしばらく考え、手をポンと叩き納得する。
「確かに言ってた気がする!俺達が遠征に向かう前、主任が!!君達がその子達だったのか!いやぁ~~元気そうでなにより!元気な後輩が出来ておじさん嬉しいよ~~」
なんだか、親戚の何やってるか分からないおじさんのような雰囲気の人だ。
酒は人の本性を暴く。この性質から、ダイモンジさんは悪い人ではないのだろう。
話が通じそうな人で一安心だが、同時に疑問がわいてくる。
何故この人は健康体なのにリオに帰ってこないんだ?・・・と。
「それで?見つける為だけに君達がやってきたわけじゃないんでしょ?」
「飲み込みが早いのは酒だけじゃないみたいね。ならさっさと帰る支度をしなさい。他の7人にも伝えなさい」
ダイモンジさんのグラスを持つ手がピタリと止まる。そのまま口へと運ばず、テーブルに再び置くと、呟くように僕達に言った。
「死んだ・・・・」
端的かつ事務的に知らされる7人の死亡。
ダイモンジさんだけがこの酒場にいる事、店主が他の7人を知らない事、魔物が門番を壊滅させるほどの力を持っている事から、心のどこかで気づいていたのかもしれない。証拠としてあまり驚かなかった。
「俺は・・・無様にも生き残った腰抜けだ・・・皆が立ち向かっている中、俺は・・・俺は・・・何もできなかった!!」
先程まで笑みを浮かべていた酒で真っ赤な顔には悔しさがにじみ出ており、目からは涙が一筋流れている。
「俺が怪我か何かして帰ってこれなかったと思っていたんだろうが、それは違う・・・仲間が死んだことを報告する事が怖くてここで飲んだくれになっていただけだ!ただのクズだ俺は!!」
酒は悲しい気持ちから一時的に開放してくれる。しかし、脳に焼き付いた嫌な記憶までは癒してはくれない。
ダイモンジさんもそれを承知を上で飲んだくれまで落ちぶれていたのだろう。
「俺を迎えに来てくれたのはありがとう・・・でも、俺はもう帰れない・・・皆が苦しで死んだのに俺だけ帰って元の生活に戻る事なんて出来っこない!!」
実際に遠征組と、強力な魔物の戦いを見ていないので推測に過ぎないが、ダイモンジさんは何もできなかったとわけではないと思われる。
彼が患っているのは、サバイバーズ・ギルト。事故や災害で大勢が死んだにも関わらず、自分だけが生き残り、罪悪感から鬱や不眠を起こす罪悪感の一種と思われる。
「俺は既に死んだと伝えてほしい・・・」
「それはかなり無理のある話デスネ。貴方を探すのに、魔力探知機を使いましたから」
手の平の魔力探知機の針はくるくると回っている。主任に曰く、目的の人が近くにいると回るらしい。どうやら故障はしておらず、しっかりと機能しているようだ。
横に備え付けられたスイッチを押し、ダイモンジさんの探知を止めて、針の動きを止めた。
「それなら問題はないよ。俺はこれから死ぬ。アイツに一矢報いる為には、このお粗末な命を使う必要があるからね」
腰に装着していた武器を握る。顔は赤いが、戦士の顔つきだ。
小さな金属音が静かな店内に響く。音源は僕の手の平。ダイモンジさんの探知を止めて、今回の任務の役目を終えた懐中時計型魔力探知機だった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
最強執事の恩返し~大魔王を倒して100年ぶりに戻ってきたら世話になっていた侯爵家が没落していました。恩返しのため復興させます~
榊与一
ファンタジー
異世界転生した日本人、大和猛(やまとたける)。
彼は異世界エデンで、コーガス侯爵家によって拾われタケル・コーガスとして育てられる。
それまでの孤独な人生で何も持つ事の出来なかった彼にとって、コーガス家は生まれて初めて手に入れた家であり家族だった。
その家を守るために転生時のチート能力で魔王を退け。
そしてその裏にいる大魔王を倒すため、タケルは魔界に乗り込んだ。
――それから100年。
遂にタケルは大魔王を討伐する事に成功する。
そして彼はエデンへと帰還した。
「さあ、帰ろう」
だが余りに時間が立ちすぎていた為に、タケルの事を覚えている者はいない。
それでも彼は満足していた。
何故なら、コーガス家を守れたからだ。
そう思っていたのだが……
「コーガス家が没落!?そんな馬鹿な!?」
これは世界を救った勇者が、かつて自分を拾い温かく育ててくれた没落した侯爵家をチートな能力で再興させる物語である。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~
ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。
城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。
速人は気づく。
この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ!
この世界の攻略法を俺は知っている!
そして自分のステータスを見て気づく。
そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ!
こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。
一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。
そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。
順調に強くなっていく中速人は気づく。
俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。
更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。
強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
カクヨムとアルファポリス同時掲載。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ドロップキング 〜 平均的な才能の冒険者ですが、ドロップアイテムが異常です。 〜
出汁の素
ファンタジー
アレックスは、地方の騎士爵家の五男。食い扶持を得る為に13歳で冒険者学校に通い始めた、極々一般的な冒険者。
これと言った特技はなく、冒険者としては平凡な才能しか持たない戦士として、冒険者学校3か月の授業を終え、最低ランクHランクの認定を受け、実地研修としての初ダンジョンアタックを冒険者学校の同級生で組んだパーティーでで挑んだ。
そんなアレックスが、初めてモンスターを倒した時に手に入れたドロップアイテムが異常だった。
のちにドロップキングと呼ばれる冒険者と、仲間達の成長ストーリーここに開幕する。
第一章は、1カ月以内に2人で1000体のモンスターを倒せば一気にEランクに昇格出来る冒険者学校の最終試験ダンジョンアタック研修から、クラン設立までのお話。
第二章は、設立したクラン アクア。その本部となる街アクアを中心としたお話。
第三章は、クラン アクアのオーナーアリアの婚約破棄から始まる、ドタバタなお話。
第四章は、帝都での混乱から派生した戦いのお話(ざまぁ要素を含む)。
1章20話(除く閑話)予定です。
-------------------------------------------------------------
書いて出し状態で、1話2,000字~3,000字程度予定ですが、大きくぶれがあります。
全部書きあがってから、情景描写、戦闘描写、心理描写等を増やしていく予定です。
下手な文章で申し訳ございませんがよろしくお願いいたします。
俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~
平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。
異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。
途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。
しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。
その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる